君に気持ちを伝えたい   作:世嗣

12 / 21
中学二年生
「雉咲 禊」クロノ・ハラオウン 中島ギンガ
ディアーチェ・K・クローディア
シュテル・スタークス

中学一年生
中島チンク レヴィ・ラッセル

小学生
フェイト・テスタロッサ 高町なのは
アリシア・テスタロッサ 月村 すずか
アリサ・バニングス「緋芽 シキ」
ユーリ・エーベルヴァイン

名前のみ登場 本人未登場
八神ちゃん 七緒 ソウヤさんの彼女「姉上」
娘キチガイ(プレシアさん) ギンガの父

高校生
「八神 ソウヤ」
アミティエ・フローリアン
キリエ・フローリアン

その他
グランツ・フローリアン 「おやっさん」
高町士郎 リンディ・ハラオウン


「」はオリキャラ。
ユーリは作者の事情で小学生に降格。
だって学校に行かない留学生とか意味わかんないし。


六月二十日 拳に載せる思い

 

 

 

敵は槍持ちのベルカタイプ、銃持ちのミッドタイプに杖のミッドタイプの黒髪。

 

まずは一番近くにいた槍持ちの所へ、虚空を蹴って肉薄した。

一気にインレンジまで踏み込むと少し拳の角度を落とす。

 

魔力収束(チャージ)

 

「し、シールド」

 

目の前に緑色の魔法陣が現れる。

 

「関係、ない、ね!」

 

斜め下からブチ抜くように魔方陣へと拳を振るった。

 

ボクシングでいうスマッシュという技術に似た何か。まあ、遊びで習ったようなにわかのものなのだが。

 

僕のコンステラシオンの右腕は魔方陣の中心を貫いて腹を撃ち抜いた。

 

「がっーー」

 

「はい、さよなら〜」

 

そして追撃の右足の踵落とし。少年が落下をする前に襟首を掴んで、お仲間の方へ全力で投げすてる。

 

「テメェ化け物かよ……」

 

「いや、唯の学生だ」

 

ちょっとばかし脳筋の入ったね。

 

槍持ちの子は銃持ち(ガンナー)に支えられて動かなくなった。

 

「あと二人」

 

一気に距離を詰めて右腕に魔力を集める。

後は戸惑っている間に同じ行為を繰り返すだけの簡単なお仕事。

 

僕が接近すると黒髪とガンナーは僕から大きく距離をとった。

 

「いいね、なかなか賢い選択だよ」

 

僕の基本的な攻撃方法はゼロ距離での肉弾戦。離れて仕舞えばなす術のないただの的だ。

僕の挑発で頭にキていたようだが、お仲間が二人続けて堕ちて落ち着いたのかもしれない。

 

「アクセルシューター」

 

頭上から放たれた五つの弾丸。旋回して避けるも、弾丸は意志を持ったように僕を追跡する。

 

「誘導弾っ」

 

目をつけた先には2丁拳銃のガンナー。これだけの数を同時に動かせるのはなかなかのものだとも言える。

 

避けてもどうにもならないなら、殴って壊せばいいだけだ。

 

そう決めると空中で急停止し、弾丸へと向き直る。

 

魔力を込めた脚を振るって二発を霧散させ、続けて返す刀の左拳で一発、やや下から来ていたものは振り上げた左脚で踵落としのように叩き落とし、最後の顔面に来ていた一発は右手で握りつぶした。

 

「残念。惜しかったよ」

 

ガンナーにそう言うとガンナーは特に悔しぶるそぶりも見せず続けて直射弾を撃ってきた。

 

僕に弾丸が効かないってのは分かってきてるのに、何で諦めないのか……。

ガンナーの彼は僕をそれほどここにはりつけておきたいのか?

 

「やっべ」

 

その考えに至ると背中に汗が流れた。慌てて自分のはるか上空を見ると、魔導の杖を構えて二重の魔方陣を展開する黒髪。

 

僕を誘導弾で手一杯にしたのはこの為かッーー!

 

「どんなに硬くても砲撃を受けて無傷ってワケにはいかないだろ?」

 

ニッと笑うと、杖の先端に巨大な魔力球を生成を始めた。

あ、やべ。これは流石に耐えらんないね。

 

「じゃあ、逃げれば……ん」

 

慌てて飛び立とうとすると僕の右足首は緑の輪っかに捕縛されていた。

 

「バインド……器用だね全く」

 

右足を振りほどくように動かしてみるが、少し軋む程度外れそうにない。

 

「地に堕ちろ!ブレイカー、レイ!」

 

僕に向かって放たれた紅蓮の流星。

 

あれは間違いなく砲撃、よりにもよってブレイカー級だ。いくら僕の装甲が硬くてもブレイカーを受ければやばい。

 

「あんまり使いたく無かったんだけどなぁ」

 

溜息をついて右腕に魔力を収束させる。実は別に詠唱がなくとも収束ぐらいできるのだが、気分だ。

 

右腕が青く光る。体からありったけの魔力を集めて充填、収束、圧縮の工程を繰り返す。

右手が青、というより青白い輝きに包まれる。

 

「さて、目には目を、歯には歯を、砲撃には砲撃を、とね」

 

右手を引いて左手を前に出して照準をつける。目標はあと数秒で僕の元に到達する紅い流星。

 

天蕾(てんらい)

 

拳を振るう。

僕のコンステラシオンと紅い流星とが衝突した。

僕の眼前で赤と青の火花が花火のように咲いた。

臨界点まで貯められた魔力を吐き出して、凄まじい破壊音とともに赤の光を掻き消した。

 

「やー、死ぬかと思った」

 

あっはっは、と笑うと右足のバインドを引きちぎる。

こうしてちゃーんと時間があれば解除は簡単なのだ。

 

煙が晴れた向こう、黒髪は悔しげに唇を噛む。

 

反則(チート)じゃないだろうな」

 

「まさか。ただの一般プレイヤーだよ少年」

 

少年と話しながら右手のコンステラシオンに目を向けると魔力の収束のし過ぎか、焦げて煙を上げていた。

今回のデュエルではもう使えないかもしれない。

左手も残ってるとはいえ、万全の状態じゃないのはちょっと痛いね。

 

「クソッ、喰らえ!」

 

ガンナーが均衡する事態に耐えきれなくなったのかバスター級の弾丸を放った。

 

「甘いよ」

 

右手を引いて飛んでくる弾丸にタイミングを合わせて、正確に弾核を()()

 

「お礼ファイア」

 

体をそのまま半回転させてガンナーにキャッチボールをするかの如く()()()()()

 

ガンナーは避けられるならまだしも、まさか()()()()()()とは思っていなかったようで、惚けたように突っ立ったまま自分の弾丸に激突した。

 

「さて、残るのは君だけになったけど?」

 

あは、と笑いかける。しかし、黒髪は顔を引き締めたまま僕から目を逸らさない。

 

「とりあえず委員長とかにボコったこと()()謝ればこのデュエルやめてもいいけど」

 

詳しい事情を知らない僕にはこれが最大限の譲歩だ。

ひとまず僕が怒ってるのは委員長を傷つけたことについてだ。ユーリちゃんとの約束もあるけど「ディアーチェを助けて」という指令は完了している。

 

僕だって無駄に相手を殴る趣味はない。ここで折れてくれれば僕にとっては最善だが……。

 

「まあ、そうだよね」

 

黒髪は魔導の杖(デバイス)を静かに僕に向けた。

返答はそれで充分だった。

 

こうなればもう言葉は重ねない。相手が僕とのデュエルを所望しているならそれを正面から叩き潰そう。

 

空を蹴る。

 

空中だから実際に蹴っているだけでなく、推進力を得るために足を下げただけなのだが、地を生きる人間としては蹴るという表現がしっくりくる。

 

黒髪に近づいていくが、相手も熟練者であった。あっという間に上昇し、近距離(インレンジ)からミッドタイプの独壇場の遠距離(アウトレンジ)へと飛んでいく。

 

それを見逃すわけにいかない。

 

急旋回し黒髪の背中を追いかける。黒髪は目だけを僕に向けると赤の誘導弾を八つ射った。

 

僅かに減速し高度を落として誘導弾の第一陣をかわした。

 

八つのうち三つは支配を逃れて何処かへ飛んで行ったが、残りの五つは僕を律儀に追いかけてきた。

 

目を向けた先の黒髪は僕を引き離さんと速度を上げて前方を飛ぶだけで特にこちらを見ている様子はない。

 

「エリアサーチで僕を見て指示出してるのかね」

 

そうじゃないと説明がつかないし多分そうだろう。

 

にしても、ずいぶん器用な真似をする。口だけの奴じゃ無かったということだ。

 

「でも、空中戦なら僕に一日の長があるよ」

 

循環する魔力を集めて後ろに向けて放出し、一時的な加速機能とする。

通常僕みたいな装甲が硬いタイプは速度が伴わないのが常なのだが、こうして推進器をつかえば一時的な加速は見込める。

 

その分、これは燃費が悪いし気を抜いたら魔力がきれた、何てことも間々ある。

 

要するに諸刃の剣でもあるのだが、どうやら僕は()()はいれば勝てるようなので後のことはいいだろう。

 

左腕に魔力を収束を開始する。利き腕じゃない為か少し勝手が違うがひとまずは問題ない。

 

推進と収束に魔力を使いすぎたから視界が僅かにぶれる程度の目眩がした。

 

あまり、悠長なことはやっている暇はないだろう。

 

推進に使う魔力を更に増やして黒髪の頭上を位置取る。

 

魔力を解放し、青い閃光を宿して放たれた拳は直前で現れた紅い魔方陣をガラスのように砕いて無防備な背中へと突き刺さった。

 

相手が下へと堕ちていくのを確認すると、推進の魔力を止めた。

僕の傍を赤色の魔力弾が通り過ぎていく。

 

黒髪は制御の切れたラジコンのようにきりもみで堕ちていたが、途中で意識を取り戻したのか空中でギリギリ踏みとどまった。

 

「……こりゃ、まいったね」

 

僕の一撃は凄く重い。

これは自惚れなんかでなくてただの客観的な事実だ。

 

そんな僕の一撃を受けて踏みとどまると言うことは、よっぽど防御技術が上手いか、僕と同じぐらい、もしくはそれ以上硬いかだ。

 

まず、防御技術の件は違うだろう。黒髪は背中にもろに攻撃を受けていたわけだし、防御技術なんか発揮する暇も無かったはず。

 

ーーならば、考えられるのは一つだけ。

 

「少年のアバター()()()()()()()()()だな……!」

 

レアアバター『セイクリッド』。そのコンセプトは『堅牢な防御力と一撃必殺の火力』。

僕の上位互換みたいなアバターだ。もちろん『アーマーナイト』には『アーマーナイト』の良さが有るんだけど、それはまた後日に。

 

それにしても実に困った。

 

さっきの無茶な起動と攻撃のせいで魔力が三割を切った。

そしてその状態で対するはこれといった傷のない『セイクリッド』。

 

「気を抜いたら負けちゃうね」

 

魔力残量の問題から魔力推進は使えない。コンステラシオンは右手がオシャカで魔力収束はできない。

考えうる限りでなかなか最悪に近い。

 

「それでも勝たなくちゃ」

 

委員長にアレだけカッコいいこと言ったんだ。今更負けられるか。

 

魔力推進は使わずに黒髪への方へと加速する。

牽制するように僕に赤の直射弾が放たれる。それをひょいひょいとかわしながら近づいていくと、既に黒髪はさらに遠くへと退避しており、続けて更に牽制を放つ。

 

先ほどとほぼ同じように飛んできた弾丸を紙一重でかわすため僅かに体をずらす。

 

顔の傍を通り過ぎようとする弾丸に目だけを向けて確認すると、僕の目にあり得ない光景が目に入った。

 

弾丸が僕の体のほど近くで野球の変化球のように()()()()コースを修正した。

 

「ーーなっ?」

 

一発だけでない。

僕への牽制の弾丸その()()がコースを修正し僕に殺到した。

 

慌てて腕を上げてガードをしたが、何発かはガードが間に合わず体に直撃した。

 

このデュエル始まって以来初めてのクリーンヒットだった。

 

黒髪は僕にクリーンヒットを当てたことに喜びを表すことはなく、そのまま淡々と次の弾丸を放つ。

 

真っ直ぐ飛んで来たそれは僕が回避すると追ってくるように変化した。

今度は何となく予想していたので冷静に蹴りで霧散させた。

そのあと、時をおかずに反撃のために黒髪に近づくが、再び遠距離(アウトレンジ)へと避けられる。

 

()()()()()()()……!

 

このチームの特色は個々の巧さと卓越した連携の上手さだと見ていた。

 

しかし、その実態はこの黒髪の『セイクリッド』の火力の高さと援護能力、指揮能力にあった。

 

そして指揮すべき仲間がいないコイツはその技術の全てを僕の殲滅に使っている。

 

過去に戻れるならば僕は黒髪から叩くべきだった。指揮系統のトップの黒髪さえ居なくなれば後は烏合の衆だったのに。

 

悔しさのあまり密かに唇を噛んだ。

アバターといえども痛覚は現実にほど近く備えていて、じんわりとした痛みを感じた。

 

僕が悔やむ間にも相手の攻撃は苛烈さを増し、僕の体力(HP)を削っていく。

 

黒髪の曲がる直射弾の種は見えた。

 

ただ誘導弾を魔力の密度を増やし、直前に見せていた直射弾の速さと近づけることで僕に誘導弾を直射弾と誤認させたのだ。

 

「まったく器用なことで」

 

振るった左脚で体に当たりそうな魔力弾を弾きながらボヤいた。

 

黒髪のバトルスタイルは千変万化の誘導弾とそれによって生じる隙を高威力の砲撃で落とすと言うもの。

 

『セイクリッド』には割とありがちのスタイルだが、それは逆に言えば王道ということだ。

王道は多くの人間に使われるからこその王道。

つまりバトルスタイルとして確立されているのだ。

そして、僕と結構相性がよろしくない戦い方だったりもする。

 

一旦呼吸を落ち着けるため離脱しようとしたが、黒髪はそれを拒むように誘導弾を操作し僕を囲った。

 

「ーーつぅッ」

 

かろうじてガードするが半数も防げずに魔力弾が脇腹や側頭部にめり込んだ。

 

このままじゃジリ貧だ。

 

接近は不可能。かといって離脱も困難。

 

こうして遠距離(アウトレンジ)にいる限り僕が打ち勝つのは不可能だろう。

 

「じゃあ、博打打つとしますかね」

 

なら、どうにかにして近づくしかあるまい。

 

腹は決めた。

 

今僕にあるのは半壊のコンステラシオン(デバイス)だけだが、それでも問題はない。

 

カッコよくきめるなら、勝負はデバイスの差でつくわけではないのだ。

 

次々と赤の魔力弾を放つ黒髪を見据えるとガードを上げた。

頭以外ならいくらでも攻撃をもらってやる。

これからは僕が果てるか、僕が黒髪の懐に潜り込むかの我慢勝負だ。

 

向かってくる魔力弾をあえて回避せずに腕で受ける。赤い火花の中黒髪の僅かに驚いた表情が見える。

 

僅かに胸のすく思いを感じながら黒髪との距離を詰めていく。この調子ならば、いずれ近づける……!

 

そんな僕の喜びを感じ取ったのか黒髪は驚きの表情をゆっくりと笑みに変えていった。

 

背筋に冷たいものが走った。

 

慌てて急旋回しようとしたが、それより速い攻撃が僕の後頭部を襲った。

 

「ーーかっ」

 

意識が混濁する。

 

さっきまで極限まで高まっていた集中力はミキサーにでもかけられたの如く歪み出した。

 

ナンデ、ドウシテ、ナニガ。

 

ぐわんぐわんと疑問だけが頭を占拠する。しかしいくら考えても答えが出てくることはなく、疑問が深まるばかりだった。

 

地面へと落下しながら、ぼんやりと黒髪へと目を向けると、杖の先端に先ほどの砲撃を上回る魔力球を生成していた。

 

ーー負けちゃったかぁ。

 

靄のかかった頭でそんなことを考える。

あんなにかっこいい事言ったのにあっさり墜ちてしまう。それがひどく滑稽で悔しい。

 

でも、僕も出来る限りやったんだ。負けても仕方ない……。

 

「雉咲!」

 

声が聞こえた。

 

聞き覚えのあるよく通り、僕を鼓舞する声が。

 

「い、委員長」

 

ビルの屋上にデバイスを杖代わりにしてこちらを見ている少女。

 

「雉咲!勝てーー!」

 

その声で正気に戻る。

 

そうだ、()()()()()()()()()……!

 

委員長を助けると決めたんならさっさと黒髪を倒さなきゃ。

 

だって僕は、今日は、今日だけは。

 

「委員長のためのヒーローなんだからさ」

 

体勢を立て直して地面ギリギリで踏み止まる。

 

魔力収束(チャージ)ッ!」

 

左手のデバイスに魔力を注ぎ込む。

この一撃で間違いなくオシャカになるだろうが、もうそんな事を気にする余裕なんてどこにも無い。

 

「滅せよ極光。インペリアルブレイカー」

 

極太の光線が僕に迫ってくる。

 

先程の砲撃はその名の通り破壊(ブレイカー)光線(レイ)。攻撃範囲を絞る事で貫通性を高めていた。

しかし、こちらは範囲を広くして逃げ場をなくし()()()()ことを目的としているようだった。

 

「正念場だね」

 

状況は絶望。コンディションは最悪。

魔力残量は頼りない。

 

「だからこそ燃える」

 

そうだ、ヒーローならこんくらいの逆境笑って乗り越えるだろう。

 

青白い光をたたえるコンステラシオンを構える。

この一撃を放てばコイツは間違いなくオシャカだろう。

 

でも、構わない。今勝てるならそれで構わないのだ。

 

目の前に迫る赤い壁に苦笑いが漏れる。

 

「気張れよコンステラシオン!」

 

『マスターもな』

 

左拳を強く握りしめた。

 

「天、蕾イイイイイッ!」

 

全力で赤い壁のような砲撃を殴りつけた。

ガリガリと砲撃が籠手を削っていく。

 

「負け、られ、ないんだよね!」

 

体の枯渇寸前の魔力を掻き集め左手に集める。僕は押し返されそうになる左手を必死に抑えていた。

 

「ああ、クソッ」

 

分かる。

 

分かってしまう。

 

分かってしまった。

 

僕はこの砲撃を押し返せない。

 

仮に魔力が全開でコンステラシオンが全開の万全な状態なら分からなかったが、今は無理だ。

 

嫌な音とともに籠手に亀裂が走った。

 

歯を食いしばって必死に耐えるがそれももう時間の問題だ。

 

少しずつ左拳が押し返されていく。

 

ーー後、少し、だったのになぁ。

 

負けを感じ、静かに目を閉じようとする瞬間、一気に体を魔力が満たすのを感じた。

 

何が起こったか分からない。

 

でも、これなら、()()()()()()()()()()()……!

 

「十分だ!」

 

新たに体を満たした魔力を集め飛行に割く魔力以外を全て左拳に収束した。

 

「喰らえッ!」

 

全力を超える全力で左拳を振り切る。

 

堪えきれないように青白い光が四方八方に散って赤の砲撃を掻き消した。

 

それと同時に今まで耐えていた左の籠手が砕け散った。

 

「はは……、残念」

 

ボロボロの左拳を抑えて不敵に笑う。

黒髪は驚きのあまりか惚けたように口を開けて僕を見ていた。

 

その隙を逃すわけにはいかない。

 

僕はボロボロの体に鞭打って黒髪へと近づく。あと数瞬で僕の射程距離に入る、というところで黒髪がギリギリで正気に戻り僕との間に障壁を展開した。

 

「知ぃるぅかぁぁぁぁ!」

 

魔力を足に回して障壁ごと全力で蹴り飛ばす。

なかなか威力のこもったものだったが黒髪はギリギリ耐えて、空中で静止した。

 

「駄目押し!」

 

更に追撃の踵落とし。

その一撃でギリギリで踏みとどまっていた黒髪は限界を迎え、地に足をつけた。

 

それを確認すると最後の一撃のための魔力を集め始める。

地面の黒髪に向けて最速で降下する。このタイミングを逃して逃げられればもう僕に勝機はない。

 

「最後だ!根性見せろコンステラシオン!」

 

『り……ガガ、了……か、い』

 

焼け焦げた右のデバイス(籠手)に魔力を収束する。ボロボロのそれは魔力の蓄積に耐えきれないのか僅かに青い粒子が漏れ出していた。

 

「トドメぇ!」

 

飛行魔法の全速、僕の体重、コンステラシオンに収束された魔力、その全てを破壊力に変えて黒髪へと肉薄する。

 

流星が地に落ちるかの如く僕の全てを黒髪に叩きつけた。

僕と黒髪を隔てる障壁に拳を起点に亀裂が走る。

 

「砕けろぉ!」

 

ガシャン、とまるでガラスが砕けるような音を立てて障壁が粉々に砕け散った。

砕けた破片は桜吹雪のように僕らの周りで光る。

 

地に足をつける。

目の前の黒髪は悔しげに顔を歪ませ僕を睨んでいた。

 

砕ける寸前のコンステラシオンを振るう。

 

拳に纏わりつく空気が動きに従って切り裂かれていく。

 

真っ直ぐ突き出された拳は黒髪の胸に当たると、ドゴンとまるで鈍器で殴ったかのような鈍い音を立てた。

 

「僕の、勝ちだ」

 

めり込んだ拳から黒髪が吹き飛んでいく前に残った魔力全てを放出し黒髪をビル三つ貫くほどの勢いで吹き飛ばした。

 

「はぁ……」

 

拳を振り抜いた体勢のまま荒い息を整える。

 

ーー勝った。

 

ギリギリでいくつか時の運もあったがとにかく、勝った。

 

満身創痍の体に喝をいれて赤い髪の槍使いとそれと戦っているはずのシキを探す。

 

「いた……」

 

僕とその他黒髪の取り巻きとが戦ったのと少し遠くの方で一瞬緋色の光が見えた。

 

すると頭上に赤のホログラムで『YOU WIN』という文字が現れた。

 

守れた。

 

助けられた。

 

ヒーローになれた。

 

頭がその事を頭が理解すると僕の腰がストンと落ちた。

そして、幼児のようにベタっとみっともなく尻餅をつく。

 

「あはは……」

 

自分のあんまりな惨状に苦笑いが漏れた。

 

焼け焦げ、亀裂が走り幾つか破損が目立つコンステラシオンに目を落とす。

 

「お疲れ。とりあえず消えていいよ」

 

コンステラシオンは頼りなくゆらりと瞬くと何も言わずに空気に溶けていった。それを見届けるのと同時に僕の右手首に青いブレスレットが現れる。

 

「ありがとね」

 

労いを込めて優しくブレスレットを撫でた。

 

「まさか本当に勝ってしまうとはな」

 

「委員長」

 

カツカツとデバイスを杖にして委員長が近寄ってきた。

スタン判定は微弱に残っている様だが、こうして歩いて来れているし、もう大丈夫なようだ。

 

「その様子じゃもうお姫様抱っこはいらないかな」

 

「何方かと言えば貴様の方がそれを欲していそうだな」

 

委員長の皮肉に苦笑いを返す。完璧に否定できるほど無事な(アバター)じゃなかったからね。

 

へたり込んでいる僕に手が差し出された。その手の主である委員長はむすっと口を不満げにへの字に曲げている。

 

何も言わずに委員長の白魚の様に白い手を握る。女子特有のしっとりとしたきめ細やかな手触りが……変態みたいなので以下省略。

 

委員長は僕が手を握ったのを確認するというおもむろに口を開く。

 

「その、雉咲……」

 

「ん?」

 

「か、感謝する」

 

早口で告げられたためきき返す暇もなかった。

ぐい、と体が引っ張り上げられ目線が一気に委員長より高くなる。

 

委員長は僕が立ち上がったのを確認するという僕から体を背けた。

 

「委員長、どうかしたの?」

 

不思議に思って尋ねてみた。

 

「……雉咲、もう一度言うぞ」

 

委員長が決心したかの様に再びこちらを向いた。

その顔はリンゴの様に赤みを帯びて目はゆらゆらと揺れて安定しない。

 

「あ、ありがと」

 

ちらっと上目遣いで告げられた。

 

一気に顔に熱が集まるのがわかる。

 

さっきのは反則だ、かわいすぎる。

 

気を抜くとにやけそうになる表情筋を戒めて目をしっかりと委員長に向けた。

 

「どういたしまして」

 

ニヤけない程度に頬を緩める。

 

僕らの間にびゅうと風が吹いた。

 

仮想空間内の再現された風は気象設定が暖か目に設定されているためか温かみを帯びていた。

 

さらさらと委員長と僕の髪を揺らす。

 

僕が久々に感じた、ブレイブデュエルでの勝利の風だった。




次で一章完結。

なんだか主人公が随分強くみえるけどそんな事ないです。
今回の勝利は相手が頭にきてたのと主人公の奇襲が上手くいった成果です。

上のキャラ説明はなんとなくつけました。
私のワガママでちょこちょこ年齢が変わっているので。

オリキャラはこれ以上は出さない予定です。

つまり「」のキャラでないソウヤさんの彼女は……。


お気に入りが減ってた。
マジへこむ。
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