君に気持ちを伝えたい 作:世嗣
とんとんと委員長が書類を揃えてファイルの中に入れる。
「これでよし、と」
僕はその間委員長の作業をぽけ〜っと見ていた。
「これで終わり?」
「一先ずは、な」
ややご機嫌な声色で片目を瞑って見せた委員長を尻目に小さくガッツポーズ。
よし、やっといつも通りに戻れる。
「では我は日下先生にこのプリントを提出してくる」
「うん、後は任せた」
僕はバックを持つと委員長に敬礼して教室を出た。
……かったのだが、その前に委員長が僕のバックを引ったくった。
「まあ、そう急くな」
……急くなって言われても。
僕はそろそろアルバイト先に顔を出したいんだ。副委員長の仕事のせいでしばらく行けてないしおやっさんにも悪い。
僕の不満気な顔を見て委員長が困ったように笑う。
「怒るな雉咲。我もたまには貴様と共に帰路につきたいと思うこともあるのだぞ?」
「ん?えと……どういう意味?」
僕がそう言うと委員長は僅かに顔を赤くして俯く。
「いや、だからだな……」
もごもごと何事かを呟く委員長。
様子を見る限り返答は期待できないようなので自分で考えるしかないだろう。
発言を振り返ろう。
たしか「我もたまには貴様と共に帰路につきたいと思うこともあるのだぞ?」だっけ?
ん?「共に帰路につきたい」?
あれ?これってもしかして?
「委員長僕と一緒に帰りたいの?」
そう言うや否や委員長は赤い顔のまま食らいつくように僕を睨む。
「それくらい分かれこの戯け!」
「えぇー、委員長の喋り方古風すぎてイマイチわかんないしさぁ……」
「ーーくっ」
「一人称我だし」
「ぐっ……」
「戯けとか言っちゃうし」
「うぅ……」
「もうちょい僕みたいな奴にもわかりやすい言葉で話してよ」
「ぐすっ」
ブツブツと文句を言っていたら委員長が若干涙目に、なんか悪いけど可愛い。
まあ、委員長は留学生らしいから何処かで間違った日本語を学んでしまうこともあるのかもしれない。
……あるか?
閑話休題。
「僕と一緒に帰りたいの?」
とりあえず再び尋ねる。
「ーーまあな」
「そっかぁ」
「嫌なのか?」
あまり芳しくない僕の反応に委員長が不安そうな表情を見せる。
「いや、嫌じゃない」
そう、嫌じゃない。嫌じゃないけど……。
「ねぇ委員長は電車通学?」
「ーー?そうだが?」
「あ、じゃあダメだわ」
「ーーなぜだ?良いのではなかったのか?」
「いや、いいけど僕チャリ通なんだよ。だから一緒に帰れないね」
苦笑いで委員長を見る。
誘ってくれたことは嬉しいが流石に僕はチャリで委員長に走らせる、というわけにはいかないだろう。
そのことが伝わったのか委員長は得心したような表情を見せた。
「いや、問題ない。むしろそれだからこそ共に帰れるな」
「は?どういうーー」
言い終わる前に委員長の人差し指が僕の口を押しとどめる。
たちまち僕の顔が赤く染まる。
だからガード緩いって……!
「ただ貴様にはちと頑張ってもらおう」
見惚れるようなイタズラっぽい笑顔をみせながら。
◇◆◇◆◇◆
「よしでは出せ雉咲!」
「本当にやるの?」
今僕は自転車に跨っている。
なぜか荷物置きに委員長を乗っけて。
いや、なんか委員長がプリントを提出したらノリノリで自転車の荷物置きに乗ったんだよなぁ。
因みに僕の自転車は普通にママチャリである。三ヶ月アルバイト代に色をつけて買ったお気に入りだ。
「これセンセーに見つかったら怒られるよ」
厳重注意ものだと思う。
「大丈夫だ。我は普段は優等生だから怒られるのは貴様だけだ」
「いや、庇ってよ」
「気が向いたらな」
「頼むよ委員長」
はあ、とため息をしながらペダルに足をかける。
そうすると同時に僕の腰に委員長の手が回される。
「え?ちょっと、委員長?」
「こうせねば落ちる。我も怪我をするのは嫌だ」
やべぇえええ、委員長柔らけぇ。
女子の体ってのはこんなにも柔らかいのか。僕はそれ程ゴツいわけではないけどそれでも委員長とは段違いだ。
これが性別の違いかやべえな人間。
まあ、せめてもの救いは委員長が体を横に向けているおかげで胸が当たってないことだ。
当たってたら色々やばかった。
主に僕の理性とか理性とか理性とか理性とかナニとか。
いつもより思いペダルに力を込める。最初は僅かに動きにくかったが一度回りだすと案外簡単に回っていく。
少し心配だったが動かせたので一安心だ。
「ねぇ!委員長の家ってどこ?」
少しいつもより大きめの声で尋ねる今はとりあえず駅の方に動かしているがどこまで連れて行けばいいのだろう。
「グランツ研究所だ」
「え?マジ?!」
あの天才グランツ博士が住むっていうあそこか?
「グランツ博士の娘さんなの?」
「まさか。我らは唯の居候に過ぎん。博士の娘はまた別におるよ」
へぇ、委員長居候してるんだ。
「というか貴様の家は何処なのだ?流石に全部送ってもらう訳にはいかん」
「ん?いや、いいよ?僕ん家グランツ研究所の割と近くだし」
「そう、なのか?」
「ホントホント」
嘘だけど。
僕の家は完璧に反対方向である。
まあ、でもこうやって伝わる委員長の体温と感触が駄賃だと言うならそんなに損はしてないだろう。
「ならば頼もう」
「おう、頼まれました」
いつもより僅かに思いペダルに僅かばかりの嬉しさを感じながら僕はペダルを漕ぎ続けた。
しばらくはストックから投稿するつもり。