君に気持ちを伝えたい   作:世嗣

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ユーリ「しりとりしましょう」
シキ「いいぞ」
ユ「しりとり」
シキ「リハビリ」
ユ「りんご」
シ「ごますり」
ユ「え?あ、えーと、り、リス!」
シ「すなずり」
ユ「り、り、り、リンカーン!あ!」
シ「お前の負けだな」
ユ「むむむぅ、シキさんはいじわるです!」
シ「そう怒るなよ」なでなで
ユ「えへへへぃ」

「王よ!怒りを鎮めてください!」
「やめなってディアーチェ!すごくいい雰囲気だし!」
「ならぬ!我の、我のユーリが誑かされておるのだぁ!」
「何やってんの委員長」

想像以上に長くなった。



クロノにも譲れないものがある

スカリエッティ一味、禊が「スカさん」と呼ぶ人の言葉を借りるならば、『秘密結社「セレクタリー」』は綿密に組織された指揮系統(よく考え込まれた脳内設定)によって成り立っている。

 

ドクター『ジェイル・スカリエッティ』。

指揮補佐『ウーノ・ザ・セレクタリー』。

スパイ『ドゥーエ・ザ・ライアー』。

用心棒(バウンサー)『トーレ・ザ・インパルス』。

戦略参謀『クアットロ・ザ・ミラージュ』。

無口系悪役少女『セッテ・ザ・ムーンエッジ』。

 

そして、ドクターのお気に入り。最後の切り札。

 

豪腕騎士『ゼロ・ザ・ジョーカー』。

 

ドクター、ジェイル・スカリエッティは襲撃のために出来うる限りの努力は全力でこなした。

 

ここではないココにはいない一人の少年を切り札にすえる。

 

その戦力を持ってすれば、ここではないココでは成し遂げられなかった目的も、ここならば完遂は容易い。

 

 

ーー()()()()()

 

 

ここでのドクター、ジェイル・スカリエッティの失敗は一つだけ。

 

彼は、自らのお気に入りである少年が周りに与えている影響にも目を向けるべきだった。

 

たった、それだけだ。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

クロノ・ハラオウンは嘆息する。

 

「まったくいきなりやってきて、大した挨拶もなしに良くやってくれたものだ」

 

クロノがそう言って降り立った足元には、ナンバーズ『ドゥーエ・ザ・ライアー』が悔し気に唇を噛んでいた。

 

「さっすが、T&Hの隠し玉。一筋縄じゃいかないわねっ!」

 

そう言ってドゥーエが体幹の力を使い、起き上がると同時に反撃への爪を振るう。現実世界では到底無理なその動きもスカリエッティの作り出した特殊なタイプ『戦闘機人』と呼ばれるアバターの、筋力にものを言わせた動きだ。

全ては初見。どこにも露見したことはなく、誰も見たことがない。

 

しかし、それをクロノは驚いたそぶりもなく淡々と見つめる。

 

「S2U、プロテクション」

 

『All right』

 

薄い青の光が一瞬光り、あと数瞬で到達するドゥーエの爪との間に魔法陣を展開した。

ドゥーエの爪と障壁がぶつかり合い、甲高い音を立てる。

 

「なんて、デタラメ……!」

 

「悪いな、力にものを言わせた脳筋とはやり慣れていてね」

 

クロノは嫌なものを思い出した、とでも言うように顔をしかめると自分のデバイスであるS2Uに次の命を下した。

 

「スティンガーレイ、エクスキューションシフト」

 

『Yes,stinger ray execution shift』

 

瞬間、クロノとドゥーエを囲みこむように表れる無数の魔力剣群。その総数、およそ三十と七。

 

「避けれるものなら避けてみろ。まあ、無理だとは思うが……」

 

クロノは最後に唇の端を僅かに緩め、魔力剣群の空間固定を解除し、一斉に掃射。その剣群をすべて均一のスピードで打ち出すのではなく、それぞれ速度を変え避け難くするというオマケ付きで。

 

そんな鬼畜のような所業を前に、ドゥーエは心の中で呟く。

 

ーーコイツ絶対ドSだ、と。

 

クロノ少年の名誉のために言っておくが、これは彼はただ魔力刃の一、二十本なら殴り飛ばしながら進む脳筋の騎士と戦うために身につけた身につけた技である。

決して逃げ惑う相手を見て微笑んだり、愉悦ったりしてない。決して。

 

「セッテちゃん!」

 

ドゥーエがここではない何処かへと叫ぶと、何処からか無数の黄色の矢が飛来し、クロノの魔力刃を弾き飛ばしていく。

 

「ちっ、新手か!」

 

『dual stinger ray 』

 

青い魔力刃が砕かれていくのを見て、クロノは密かに唇を噛み、再びS2Uに魔力刃展開を命じた。

 

更に飛来する黄色い矢と相対するように展開された七十二の青い魔力剣群。

 

「一斉掃射!」

 

豪雨がコンクリートを打つような音が鳴り響く。黄色い矢は途切れることなくクロノの魔力刃を砕いていくのに対し、クロノは砕かれた分だけ魔力剣群を再展開していく。

 

「私を忘れないでよん!」

 

魔力射撃戦に気を取られていれば、いつの間にか近寄ってきたドゥーエから爪を振るわれる。

間一髪でそれを交わしたが、その隙を縫うように放たれる黄色い矢。

 

地面を蹴り空中を旋回、回避を試みたが、すべてを避けきることは出来ずに僅かに体力が削れた。

 

「随分と息が合っているな」

 

クロノは被弾を隠すためにか、皮肉気に言うとドゥーエは一気に逆転した形勢に余裕の笑みを見せた。

 

「まあ、姉妹だからねん。それになりに息は合うものよ」

 

うふふ、と惑わせるようにその端麗な容姿に艶やかな笑みを浮かべると、両手の爪を愛し気に撫でる。

 

「セッテちゃん」

 

ドゥーエが再びクロノには見えない何処かにいる仲間に呼びかけると、無数の黄色の矢が飛来する。

その総数およそ百。それに対し、クロノの最大展開数を誇る『二重剣群(デュアルスティンガー)』の展開数は七十二。どう考えても防ぎきれない。

ならば、障壁を展開し、魔力矢を防ぎきるのが定石だろう。

 

ちらりと飛来する魔力矢から正面のドゥーエへと目を移せば、彼女はその両爪を振るいクロノへと肉薄している。

 

彼女の攻撃を防ごうと思えば障壁を張るしかないが、そうすれば飛来する魔力矢は防げない。

魔力矢を防ごうと障壁を展開すればドゥーエの爪は防げない。

 

八神はやてや禊が「委員長」とよぶ少女のアバター『L(ロード)O(オブ)G(グローリー)』ならともかく、クロノの『エクスキューショナー』では障壁の多重展開は出来ない。

 

従って、どちらかを防ぎたければ、どちらかを被弾するしかない。

 

「これで、詰みよ!」

 

ドゥーエがクロノへと爪を振るう。その僅かな時間でクロノは追憶する。

 

 

 

ーークロノ・ハラオウンは天才ではない。

 

己は凡才の身だ。

他人よりは少しは優れているという自負はあるが、それも少しだ。

八神はやてのような常識はずれの天才性はないし、格闘戦では禊に遅れをとり、高町なのはのような空を飛ぶ才能もない。

 

ーークロノ・ハラオウンに情熱はない。

 

己には妹たちのようにブレイブデュエルにかける情熱はない。

あくまでも家が行っているゲームだから必要に従って覚えただけであり、フェイトやアリシアが時折見せる敗北の涙など、己からは程遠い。

 

 

ーーーーでも、それでも。

 

「僕にだって譲れないものはある」

 

母の愛するこの店を。妹たちの絆の場所を。子供たちの、遊びと宝物を。

 

ーー僕が守ろう。

 

「S2U!」

 

『protection』

 

ドゥーエの方へと青い障壁を展開。まずは、先にクロノに肉薄していた爪を防ぐことを優先する。

 

ーー僕は昔から優秀ではなかった。

 

クロノは努力に努力を重ね、人と並ぶ秀才タイプであり、そういう点は禊と非常に似通っている。二人のウマが合うのはそういう理由もあるのかもしれない。

 

クロノの障壁とドゥーエの爪がぶつかり合い、青い火花を立てる。

S2Uを両手で握り、障壁を破られないように全力で維持する。

 

「それで、魔力矢はどうするのかしら?」

 

ドゥーエが笑う。クロノが苦しんでいるのを見透かしたように、苦しむクロノへと笑みをむける。

それに対し、クロノは視界の端に黄色の矢を捉えながら答える。

 

「そうだな。確かにS2Uではどうしようもないよ」

 

ーークロノ・ハラオウンは天才ではない。

 

自分は秀才だから。

 

ーークロノ・ハラオウンに情熱はない。

 

店のために覚えただけだから。

 

ーーーーでも、それでも……。

 

ーーでも、クロノ・ハラオウンは、昔から()()()()()と言われてきた!

 

S2Uから左手を離し、飛来する魔力矢に手を向け、叫ぶ。

 

万感の想いで、宣言するように、その名を紡ぐ。

 

()()()()()()!」

 

吹雪が顕現する。

 

「きゃっ!」

 

突然吹き荒れた吹雪にドゥーエが乙女のような声を上げる。

 

クロノは吹き荒れる吹雪を手繰り、己が切り札を、聖剣(デュランダル)の名を冠する、己が杖を左手に掴む。

 

現れたのは、杖。

青と白を基調とした、氷をイメージさせる杖。

 

その名は氷結の杖デュランダル。

 

シャルルマーニュ十二勇士が一人、ローランの剣の名を戴く、クロノの切り札。

 

「凍てつけ!」

 

『eternal coffin』

 

極寒の吹雪が杖から迸り、数多の魔力矢を一斉に凍りつかせる。

氷によって下げられた氷点下の気温のため、吐く息が白い。

 

「うふふ、『二重(ツイン)デバイスのクロノ』は噂じゃなかったってわけね」

 

それは唯一、同時に二つのデバイスを扱ってみせるクロノへの敬意も込められた二つ名である。

 

「……その痛い二つ名で呼ぶのはよしてくれ。体を掻き毟りたくなる」

 

苦笑いで、答えるクロノは諦めたように頬を人差し指でかいた。

 

「行くぞ、セレクタリー」

 

クロノが嗤う。

 

不敵に、お前らなどもう自分の敵ではない、とでも言うように。

 

右肩に黒の魔法杖を、左手に氷杖を構える。

 

「覚悟の準備は充分か」

 

「うふ、上等……!」

 

ドゥーエが駆け、魔力矢が飛来する。

 

「S2U!デュランダル!」

 

爪が伸び、氷は侵食し、青光が謳い、魔力矢は翔る。

 

ーー今、第二ラウンドが始まる。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

意識がダイブする。

 

目を開けばそこは研究所内の、委員長たちのいるバトルステージ、と聞いていたのだが。

 

「ここどう見ても違うよなぁ……」

 

ため息とともに目の前の光景を冷静に分析する。

目の前には黒紫のうにゃうにゃとした壁が立ちふさがっており、それは何かを囲うように半球状になっていた。

 

とりあえずこういうシステムの面は僕にはわからないので、インカム先の相手へ呼びかけた。

 

「おーい、スカさーん」

 

『どうかしたかいゼロ』

 

そんなに間をおかずスカさんの声が返ってきた。

 

「僕の視界ってそっちにいってる?」

 

『ああ、来ているがどうかしたかね?」

 

「じゃあ、これ(黒紫の壁)はどうしたらいいの?というかここどこ?」

 

『ふむ、おかしいな少し待て』

 

インカムからカタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。しばらくそのまま耳にはカタカタという音が聞こえ続けていたが、その音が不意に止まる。

 

『ふむ、それはどうやら「ネットワークうばうくん」の弊害のようだ。奪ったネットワークを奪い返されないように、自分以外の新手のウイルスを防ごうとしている』

 

「つまり僕はどうしたらいいの?」

 

『思いっきり殴り飛ばせばいい。中はおそらくバトルステージのはずだからそれだけで大丈夫だ』

 

「わかりやすくていいね」

 

スカさんの言葉を受けて、唇を歪に歪めて笑うと、胸ポケットからサンバイザーを取り出して目を隠す。

 

魔力収束(チャージ)

 

右手のシオンへ魔力を収束する。濃い青の光が僕の右手を包み込む。

 

「行くぞコンステラシオン!」

 

『心得た』

 

目の前の黒紫の壁へと全力で拳を叩き込む。くらえ「ネットワークうばうくん」!

 

蒼藍(そうらん)!」

 

拳が壁へと炸裂する。黒紫の壁は僕の拳を起点に蜘蛛の巣のようにヒビがはいり砕けた。

 

「よっしゃ」

 

ぴょんっと跳んでバトルステージへ侵入する。

入るとそこは古代ローマのコロッセオみたいなステージだった。これが「ネットワークうばうくん」の一端でスカさんの趣味なのだろう。

 

よし、と意気込み拳に力を込めた瞬間、目の前に黒紫の砲撃が出現した。

 

エ?何コレ。

 

「あがががが!」

 

そして、そのまま撃墜。残念無念。豪腕騎士『ゼロ・ザ・ジョーカー』の次回の活躍にご期待ください!

 

「と、まあ冗談はそこそこにして」

 

体幹の力を利用して、ひょいっと起き上がる。

さっきのは僕の記憶が正しければ、委員長の砲撃『ジャガーノート』。あの珍しい魔力光からも間違いないだろう。

 

体の具合を確認。問題なし、というかいつもより調子良いくらいだ。これも僕のアバターにつけられたスカさん謹製の強化チップのお陰だろう。

 

起き上がろうと半身を起こすのと同時に目の前に青い影が現れる。

 

「雷神滅殺極光斬!」

 

「わ、真華!」

 

慌てて左の手刀で迎撃し数歩後ろへと下がった。

 

やばいやばい、いきなりやられるところだった。というかいきなり人を斬りつけるのってどうかと思う。

 

「いきなり斬りつけるのは礼儀がなってないと思わない?」

 

魔力を体に循環しながら身体強化のレベルを一段引き上げる。

僕を斬りつけたのは長い水色の髪をツインテールにした18か20くらいの女性。

どこかレヴィに似てるけど、僕の知る彼女はこんなに大人じゃないし違うだろう。

というか随分きわどい格好をしてらっしゃる。こう、何かいろいろ落ち着かない。

 

何がとは言わないが、まあ、ナニだ。

 

「お前もあっちのマスクドファイターたちのお仲間なんでしょ?じゃあ、ボクらの敵だよ」

 

水色の人が魔力刃をまとった剣型のデバイスの切っ先を僕に向け、僕にとって驚愕の言葉を続けた。

 

「覚悟しろボクは()()()()()()()()()()。すご〜くカッコいい正義の味方だ!」

 

「ーーーーは?」

 

え、レヴィ?え?でも彼女は僕と同い年で……?

 

『スカさん!これどういう事?!』

 

『つーつー、フハハハハハハ!私は留守だ!かけ直したまえ!』

 

頭の中でラボの中で指揮を取っているスカさんに通信を送るが、死ぬほどうるさい留守電で一蹴された。

 

肝心なところで役に立たないスカさんだ。

 

「君はホントにレヴィ……ザ・スラッシャーなの?僕の知っている……データの中ではもっと胸はちいさ……子供だったけど」

 

ところどころでそうなボロをとり繕いながら目の前の自称レヴィに問い掛ける。

レヴィはアホだからもしかしたら事の真相は語ってくれるかも、という淡い期待もあったりする。

 

「へへーん、知りたい?知りたいよねぇ、いいよおしえてあげる!」

 

うん、想像通りだった。レヴィがアホだった事を喜ぶべきか悲しむべきか。

 

「ふふーん、これはねぇ……」

 

「てい」

 

「へぶ!」

 

「まったく何でもかんでもバカ正直に答える貴女の悪癖はどうかと思いますよ」

 

右手で自称レヴィの頭を叩いたのは、黒と赤の中間のような色を基調とした『セイクリッド』タイプの女性。その容姿は非常に僕の知る『シュテルン』に似ていた。

 

そして目を細めて自称レヴィとシュテルン似の奥を見れば灰色の髪のショートカットの女性が杖を片手にこちらを見据えていた。

 

「そちらのお三方が名高き『ダークマテリアルズ』でいいのかな」

 

「……否定はしません」

 

僕が問うとシュテルン似はゆっくりと頷いて肯定した。

 

もうごちゃごちゃ考えるのはやめよう。あの三人は僕の知る三人。ブレイブデュエルのすごい技術で一時的に大人にでもなっているのだろう。

とりあえず僕だとバレないように気をつけよう。

 

魔力収束(チャージ)

 

先ほどあげた強化のレベルを更に一段階引き上げる。

僕の高まった魔力を感じ取ってシュテルンが杖を展開、レヴィが剣を構えた。

 

「レヴィ、相手はディアーチェのジャガーノートを受けても無傷の難敵です」

 

「それでも、ボクと()()()()が組んで勝てない相手はいないでしょ」

 

「ふふ、違いありません」

 

二人が、いやお二人さんが不敵に笑いあって拳を合わせた。

 

「もういいかな?」

 

シオンへの魔力の充填を確認。

 

「ええ、では尋常にーー」

 

現在の身体強化のレベルは4。最高レベルの5まで上げるのにはさらに五分から七分くらいとみていいか。

 

「勝おおおおおお、ぶっ!」

 

叫んでレヴィが突っ込んできた。その刃を強化した拳で防ぎながら思考を加速する。

 

アレは身体強化を最高まで上げなければ発動できない。

 

それまでは何としても魔力を持たせろ。こういう時くらいスカさんの役に立ってやろうさ。

 

「雷刃極ーー」

 

「させるか!」

 

レヴィが発動しようとしたスキルカードを左の蹴りで牽制し左手を掴んで背負い投げをしようとする。

しかしーー()()()()()

 

くそ、()()

 

大人になってるせいか重さが違う。身長が違う。いつものブレイブデュエルの相手のようにはいかない。

 

内心で舌打ちしながら中途半端な体勢からレヴィを投げるのを中断し地面に叩きつける。

 

「パイロシューター!」

 

離脱しようとした僕に炎の追尾弾が突き刺さる。その殆どは搔き消したが防ぎきれなかったいくつかと、炎熱変換による火傷が僕の体力を減らす。

 

身体強化最高まで、あと四分。

 

「電刃衝おおおおおお!」

 

シュテルンからの追尾弾をいなし、反撃のために拳を握った瞬間背後から無数の雷電の魔力変換をおびた弾丸が僕の背中に突き刺さる。

 

「くそっ!レヴィか!」

 

舌打ちをして体の具合を確認する。たしかにダメージは入ったが深刻なものではない。

 

魔力収(チャー)ーー?!」

 

体が動かない。

どんなに力を入れても、体が痺れたように麻痺している。

一瞬バインドかと思ったが、バインドではこのように全身を縛ることはできない。

 

「な、なにが?」

 

そんな僕の疑問に答えたのは奇しくも敵のシュテルンだった。

 

「レヴィの変換資質をお忘れですか?」

 

「レヴィのーーっ!」

 

魔力変換資質、雷電。レヴィや彼女とよく似た容姿を持つフェイトなどがもつ固有技能の一つ。

その付属効果は低確率で『スタン』を付与できるというもの。

 

「シオン!解除急げ!」

 

『もうやっている。しばし待て』

 

シュテルンはルシフェリオンを右拳に纏わせながらこちらに肉薄する。

見た事がある、アレはシュテルンのデバイスであるルシフェリオンの近接格闘形態ルシフェリオンクロー。

あの時のシュテルンは前衛顔負けのあのスキルが使える。

 

そう考えた瞬間体に悪寒が走る。

 

身体強化最高まで、あと一分。

 

(間に、合わない……!)

 

「此れで、終いです」

 

シュテルンの拳が赤熱化する。紅蓮に燃ゆる炎が明星(あかぼし)の如くあたりを照らす。

 

「ヴォルカニックブロー!」

 

火炎に包まれた拳が僕の顎を狙い、打ち上げる。

それで、決着は着くはずだった。

 

もし、僕の身体強化がこの瞬間に完了していなければ。

 

「◼︎◼︎・◼︎◼︎◼︎」

 

ぼそり、とシュテルンの拳が当たる前に呟く。

 

次の瞬間、シュテルンの一撃が僕に炸裂した。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

シュテルは困惑していた。

 

「やった?!」

 

隣でレヴィが問い掛けてくるが、それに応えることはできず、ただ胸中を困惑が占拠する。

 

相手は吹き飛んだ。それはもう見事に。先程のマスクドファイターのように二、三メートルは吹き飛んだ。

 

にもかかわらず()()()()()()()()

 

拳に伝わる相手の体の固さも、相手の防御を打ち砕いた感触も、()()()()()()

 

ただ空を切ったような空虚な感覚だけしか伝わってこなかった。

 

「シュテるん?」

 

「気をつけてくださいレヴィ。恐らく相手はまだ……」

 

 

靄が、蠢いた。

 

ゆらゆらと侵食するように。

 

「……間に合った。いや、すごくギリギリ。むしろちょっと間に合ってないけど、まあセーフ」

 

そう言って、シュテルが吹き飛ばしたはずの相手はまるでダメージはないようにゆらりと立ち上がる。

 

「此れよりは地獄。光も通さぬ闇の中にて、無様に愚かに足掻くがいい」

 

相手の青と白をベースとしたアバターが灰色に侵食されていく。その姿は、先程の騎士のような姿から比べると異様に禍々しい。

 

「目覚めよーー」

 

シュテルの頭の中で警告が鳴り響く。

数多のデュエルを経たシュテルは相手の切り札が、直感的にわかる。そして、その危険さも。

 

気づけば砲撃魔法「ブラストファイアー」を放っていた。

 

その相棒の異常な緊張を感じ取ったのか隣のレヴィはバルフィニカスを素早く振るい二本の魔力刃を飛ばす。

 

その二撃は真っ直ぐに相手へと伸び、今度こそ決着をつけるかに思われた。

 

相手が嗤う。まるで、この時を待っていた、とでも言うように。

 

 

 

惡食(あくじき)・羅生門」

 

 

 

靄が大きく広がり、まるで巨獣の顎の如く口を開けた。

 

「存分に喰らえ」

 

そして、シュテルたちの砲撃魔法を飲み込んだ。

 

「ーーな」

 

ありえない、シュテルはそう思った。

 

カッコいい、レヴィは胸が震えた。

 

 

そして、奥でじっと戦いを見つめ、次のワクチンプログラムを内包した砲撃魔法の準備をしているディアーチェは、見覚えのあるやつだ、と頭の隅で考えた。

 

「あなたは、何者ですか……」

 

ぽつり、とシュテルがこぼす。いつもは冷静な彼女もこの時ばかりは、動揺していたのかもしれない。

 

「ゼロ。秘密結社『セレクタリー』所属、豪腕騎士『ゼロ・ザ・ジョーカー』」

 

敵は万全となった。

 

実質的な戦力はニ対一。しかし、ゼロはそれに負けないだけの闘気を放っている。

 

「さあ、いこうか」

 

ゼロが拳を構えるのを見て、レヴィは笑う。

 

「は、はは、あはは、いいね、いいねぇ!ボクの方が強い!ボクが最強だ!だから、戦ろうよ!」

 

レヴィが翔ける。それを見て慌ててシュテルは援護のための火炎弾を放つ。

 

「ああ、やろう、デュエル」

 

ゼロも駆ける。そして互いの研ぎ澄まされた一撃が交錯した。

 

明星が照らし、雷光が翔け、黒霧は蠢めく。

 

 

ーー今第二ラウンドが開始される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ただ、強いクロノが書きたかった。


因みに
なのはさんたちはフィールドのはしっこで見学中。
マスクドファイターたちは伸びている模様。

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