君に気持ちを伝えたい   作:世嗣

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本日二度目。

そしてかなり短め。




惡食・羅生門

 

 

レヴィの剣と僕の拳が激突する。

 

「惡食・羅生門!」

 

ゴア、と靄が動きレヴィの剣にまとわりついて魔力刃を咀嚼する。

 

「草月!」

 

怯んだ隙にレヴィの肩へと踵落としを叩き込もうとするが、後方より飛来した火炎弾に邪魔される。

 

「天破・雷神槌!」

 

魔力収束(チャージ)、天蕾!」

 

雷と僕の拳が互いの威力を相殺し、同時に攻撃を守る盾となる。

 

「ディザスターヒート!」

 

頭上から降りかかるは炎熱の砲撃魔法の三連発。その一つ一つが、前戦った黒髪少年の砲撃魔法なみに圧縮された必殺のもの。

 

「惡食・羅生門」

 

防ぐのは不可能と判断、羅生門を展開してその魔力ごと食うことへとシフトする。

盾のように展開された羅生門がシュテルの砲撃を飲み込む。

その姿はさながらブラックホール。全てを喰らう無敵の盾。

 

「なかなか厄介ですねその靄は……」

 

「今の僕には此れだけが切り札でね」

 

地面を蹴って頭上のシュテルへ拳を振るう。シュテルはその一撃を杖の真ん中あたりで受けて後ろへと下がる。

 

「逃がすか!」

 

「コッチのセリフだよ!」

 

追撃しようとして割り込んだのは戦斧形態のバルフィニカスを携えたレヴィである。

 

「光翼、ざぁぁぁぁぁぁん!」

 

「天、蕾!」

 

再び拳と魔力刃が激突し、辺りを青と蒼で染め上げる。

数合やり合ったところで、レヴィの刃が僕の脇腹を狙ってすくい上げるような軌道を描いた。

それを察知すると右手に魔力を回して強化すると素手で掴み取る。

 

「バーストッ!」

 

それをレヴィが刃を爆発させて僕から距離をとる。

 

くそ、やりにくい……。

 

あの二人の技量もだが、なによりコンビネーションがウザったらしい。

レヴィと戦っていれば遠距離からシュテルの援護の射撃が飛んでくるし、かといってシュテるんから潰そうとすればレヴィがカバーにはいる。

 

「まったくよく連携が取れてるよ……」

 

今の僕にあるのは、魔力収束(チャージ)と惡食・羅生門だけ。

なかなかに手札が足りていない。

 

密かに舌打ちをして魔力を収束する。

 

魔力放出(ブースト)!」

 

一気に距離を詰める先は、レヴィ。本当は砲台のシュテルンから倒したいがレヴィにフォローに入られてしまう。ならば、先にレヴィを落とし()()()状態のシュテルンを倒すのが良いだろう。

飛んできた魔力弾は羅生門で十分に対処できるし。

 

「光翼斬!」

 

「惡食・羅生門!」

 

レヴィは近づいてくる僕に魔力刃を飛ばすが危なげなく羅生門を展開して無効化する。

 

「ーーく、やあっ!」

 

レヴィが近寄ってくる僕に戦斧形態のバルフィニカスを振るうが、強化したシオンでいなして懐に潜り込む。

 

「雷刃滅殺ーー」

 

「惡食・羅生門」

 

レヴィは半ば自らも巻き込むようにブレイカー級の魔法を放たれる。しかし、それより早く展開している魔力刃を羅生門で喰らう。

 

次の瞬間にはガラ空きとなったレヴィの腹めがけて拳を強く握る。

 

「天らーー」

 

「パイロシューター!」

 

が、それより早く放たれるシュテルンの援護。誘導弾によって放たれたそれは僕の周りを囲うように四方八方から向かってくる。

 

「く……つ……」

 

急なことのため羅生門が展開できず体に無数の弾丸が直撃した。

シュテルンの魔力変換資質によって炎熱の力が付与された魔力弾により焼かれた僕の防護服が焦げ臭い匂いを僅かに匂わせる。

 

天蕾を中止し、レヴィの肩辺りを蹴飛ばして距離をとる。

 

「だんだん見えてきました。貴方のその黒い靄のタネが」

 

距離をとった僕にシュテルンが言う。

 

「貴方のその靄……『惡食・羅生門』でしたか……は()()()()()()()()()()()()のでは?もしそうでないなら先ほどの私の追尾弾も()()()はずですからね」

 

ありゃ、ばれちゃったか。

 

シュテルンの名推理にサンバイザーの下で苦笑を浮かべる。

 

惡食・羅生門。

 

それはスカさんが僕のアバターに取り付けた強化機能だ。いや、スカさんに言わせれば僕のアバターはこの『惡食・羅生門』を前提に考えられたアバターだとか言っていた。

 

まあ、とにかく機能は至ってシンプル。それは、魔力ならば何でも喰らうというもの。

ただし、発動に毎回「惡食・羅生門」と宣言しなければならないことや、展開できる範囲が決まっているという弱点もある。

 

まあ、詰まるところこいつは、()()()()()()()()というわけだ。

 

実体を持った攻撃でなければ惡食・羅生門は無限に魔力を喰らい続ける。

 

「……たしかにシュテルンの推理どおりだけど、()()()()()()()()()()?君たちは僕の『惡食・羅生門』に対抗できるだけの力を持ってるの?」

 

「……確かにボクたちにはその黒い靄を、アクジキラショーモンを破る力はないよ」

 

「しかし、私たちは出来なくていいんです。貴方の靄を破るのに必要なのは「点」での攻撃ではなく、「面」での制圧ですから」

 

何が言いたんだ?

僕がそういう風に首をかしげるとシュテルンとレヴィが不敵に微笑む。

 

「忘れてませんか?」

 

「こういう事ならおーさまの方が得意だよ!」

 

王様、その言葉を聞いた瞬間、自分の失敗を悟る。

 

「レヴィ、シュテル、大儀であった。後は我に任せよ」

 

三対の漆黒の翼で空を悠々と飛び、ゆっくりと満を持して彼女が姿を表す。

 

「図が高いわ、畏れよ、平伏せ、跪け、紫天の王がここにおる」

 

闇統べる王が、顕現する。

 

「さて、命がけで耐えよ塵芥。死に際まで我を興じさせよ」

彼女が笑う。僕のよく知る彼女の笑顔を、僕の知らない彼女の容姿で。

 

「絶望に足掻け、塵芥」

 

そう言い放つ姿はまさに王。星光の殲滅者と雷刃の襲撃者を従える、闇の王。

 

「ふ、上等!」

 

惡食・羅生門にはもう一つの姿がある。

全てを喰らい、無限に蓄えるのが惡食ならば、コレはその逆。

喰らった全てを吐き出し、目の前の悉くを破壊する。

 

「エクスーーーーーー」

 

「顕現せよ修羅の門」

 

僕の周りの靄が目の前で収束し、手のひら大まで縮まる。

対する彼女は、その杖に無限の闇を集める。

 

「ーーカリバー!」

 

「獄卒・羅生門!」

 

委員長の闇が開放されるのと同時に僕の靄から今まで喰らった魔力が開放される。

 

「ぐ、ぐううううううううううう」

 

押される。どんなに脚を踏ん張っても自分の体が次第に後方へと流されていくのがわかる。

それ程彼女の魔法は強力だった。

 

魔力収束(チャージ)!」

 

砲撃を支える右手へ更に魔力を送り込む。

 

「貴様は、よくやった」

 

遠くから声が聞こえる。

それは間違いなく僕と対面している、彼女のもので。

 

「ただ、それよりも我が強いというだけだ」

 

そういうと彼女が背後に無数の剣を展開する。

その総数、目測で二百本以上。

 

「は、はは、あはは、あんなの反則でしょ……」

 

彼女のアバターは『L(ロード)O(オブ)G(グローリー)』。その特性、それは。

 

「スキルカード保持制限無効化、か」

 

僕の諦めの含まれたつぶやきに彼女は労うような笑みを浮かべた。

 

「さらばだ、良い戦いであった」

 

レギオン・オブ・ドゥームブリンガー

 

彼女のその言葉を合図に剣群が発射され、僕の羅生門を支える手ごと吹き飛ばした。

 

支えがなくなった羅生門は霧散し、代わりに彼女の砲撃が僕へと追撃する。

 

「は、ははは、ごめんねスカさん」

 

そして僕は闇へと飲まれた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

地に降り立つディアーチェは無数の剣群と砲撃を受けた少年へと一歩ずつ近づいていく。

 

自称ゼロには、もはや「羅生門」と呼んでいた靄は微塵もなく、防護服も青と白を基調としたものに戻っている。

 

「……強いね闇統べる王」

 

ゼロが天に拳を突き上げながらポツリと呟く。

その手を纏う籠手はところどころ亀裂が見受けられる。

 

「日々の研鑽と努力の賜物だ」

 

「ふっ、ははは、そっかぁ」

 

ゼロがにこやかに笑う。負けたにも関わらず、さも、面白そうに。幼子が笑うように。

 

そんなゼロを尻目にディアーチェは事実のみを淡々と述べていくことにする。

 

「先ほどこの空間にワクチンプログラムを送った。この空間は時期に元のものとなる」

 

ゼロが倒れてからディアーチェは邪魔されていたワクチンプログラムを再び砲撃魔法としてうった。

最初のワクチンプログラムはゼロが乱入した時に邪魔されていた。

 

「それとマスクドファイターだが、まあ彼奴らは家族に任せた方が良いだろう」

 

ディアーチェは詳しい事情は知らないが、ギンガがマスクドファイターに強く反応していたし大方二人だけ参加していなかった赤毛の妹だろう。

 

「……可愛い妹分なんだ。あんまり怒らないように言っててね」

 

ほう、とディアーチェが眼を細める。此奴は自分の正体がばれそうな事は意図して言っていなかったように思えるが、それを崩すほど大切な存在なのかもしれない。

 

ゼロがふらふらと立ち上がり元来た穴へと歩いていく。

 

それを無言で見送っていると、不意にゼロが後ろを向いた。

 

「……楽しかったよ闇統べる王、ダークマテリアルズ」

 

「我もだ、ゼロ・ザ・ジョーカー」

 

今度こそ、ゼロが去る。

 

敗者は語らない。ただ消え去るのみである。

 

しかし、勝者であるディアーチェにはまだ言いたいことがあった。

 

「今度は味方としてな、()()

 

ディアーチェがそういうと彼の動きがピタリと止まる。しばらく彼は気まずそうに手を震わせていたが、じきにその手を軽く振って元来た穴へと戻っていった。

 

そんな、自分のクラスメイトの姿を見てディアーチェは思わず苦笑いとほんの少しの文句を。

 

「ばーか、バレバレだ」

 

 

 




あー、疲れた。

書いてる途中に何度も「これいるか……?」ってなった。

それくらい難産だった。

次はほのぼのしたのかきたいよー。


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