真・恋姫†無双〜李岳伝〜   作:ぽー

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第百三話 英雄をからめとる罠

 運が無いわけではない、と李岳は馬上で考えた。いや、むしろ類まれな幸運に守護されていると考えた方がいいくらいだ、と思い直した。そうでなければやっていられないだろう、とぼやきたくなることさえこらえる。幸運を一つずつ数える。鳳統に出会ったこと、襲撃から防いだこと、濁流に飲まれても助かったこと。

「もちろん、お前もそうだよ」

 ひた駆ける小雲雀の首を叩いて、李岳は呟いた。小雲雀は素知らぬ顔でかすかな横風の中を疾駆する。

 

 ――鳳統と李岳が命からがら濁流から這い出し、自らの命を狙っているかもしれない討手の気配から身を隠していた時、襲撃時にはぐれたはずの小雲雀がやってきた。襲撃の際のかすり傷はあったものの概ね元気であり、心配そうに何かを探していたのである。李岳と鳳統を探していたのは明らかであった。二人が喜び顔を出せば、一転して不機嫌そうないつもの小雲雀に戻ったものの、それもなお愛嬌である。

 

 いま二人は公孫賛と劉備が落ち合う約定を交わしている北を目指して街道を突っ走っていた。鳳統も馬上にはかなり慣れてきたようで、李岳にしがみついているだけとは言え、難なく話は出来るようになった。

 差分で言えば二日。それをどれほど縮められるかは(はなは)だ心許ない。最悪、両軍が武力衝突の現場に居合わせることになるかもしれない、と李岳は考えていた。

「り、李岳さん……これからのことなんですけど……」

「ええ……戦場の乱戦に分け入る覚悟が必要かもしれませんね」

「……」

 鳳統は李岳の背中の衣を掴むと、ブルブルと腕を震わせた。軍師とは言え戦場の只中に突入したことなどないだろう。あるいは人生で初めて殺し合いの現場に居合わせることになるかもしれないのだ。

「恐ろしいですか」

「はい……でも、止めます」

「劉備殿がすぐに短慮を起こしていなければ、あるいは間に合うかもしれません」

「きっと、大丈夫です」

 鳳統は未だ強く劉備を信じている、というのが伝わってくる声だった。

 李岳は鳳統に対してかなりのところまで打ち明けた。田疇がこれまで企んできた謀略の数々。彼が持つ『太平要術の書』のことまでも話した。そして今、田疇の標的となっているのがおそらく劉備だということも。

 田疇は幽州制覇のきっかけのために劉備を活用しようとしている。そして同時に、劉備を羅刹のような将として生まれ変わらせようとしているのではないか。

 復讐の熱に焼かれた者が、後先考えずに凶行に及ぶさまを李岳は知らないわけではない。あの抗いがたい衝動は、李岳もまた洛陽と祀水関で経験した。目の前の幼い少女を友人として、仲間として過ごしてきた劉備が、理不尽にその生命を奪った者たちを前にして怒りを数日でも耐えることが出来るだろうか――博打はその一点に集約されている。

 鳳統は、自分が到着するまで劉備は闇には堕ちぬと賭けた。鳳統は言う。

「桃香さんは、弱い人です。でも、だから強いんです」

「弱くて強い、ですか」

「はい」

「わかりません。わかりませんが、なんとなくわかる気はします」

 史実の中の劉備も、きっとそのような人だったのだろう、と李岳は漠然と考えた。

 だからといって全てを信頼するわけにはいかないのがもどかしいところだった。劉備が復讐をこらえようとするのなら、それを唆そうとするのが田疇の仕事に違いない。劉備の周りには田疇の手の者で包まれていると考えた方がいいだろう。

「問題は、時間……ですね」

「そうです。整理しましょうか。冀州の実権を握った劉虞と田疇は、なんとしても袁紹を焚きつけ幽州を手中に収めたいと考えるはず。そのための動機として劉備殿と公孫賛殿の間を裂こうと考えている……その理由付けに鳳統殿を狙った」

「わ、わかります……私も……あの雨中の襲撃を見れば、普通の力ではない何かを感じました。その力に、私たちが狙われているということも……それは疑ってません。その者たちが、桃香さんを……騙してしまおうとしていることもわかります」

「問題は準備と日数です。仮に劉備殿が暴発した場合、冀州の対応はどうなります?」

「幽州さんが生き延びた場合、冀州は宣戦を布告してまず西側の黒山賊を釘付けにし、琢郡を目指して進撃するでしょう……正規兵、黄巾兵、そして青州の黄巾鉄騎兵を動員すれば十五万を動かすでしょう……」

 黄巾鉄騎兵というのは初耳だった。祀水関で見た青州兵はみな歩兵だった。あれは本当の姿ではないということなのか。

「……ですけど、それはあくまで幽州さんが生き延びた場合です……もしこの一件で不慮の死を遂げた場合、幽州には空白が発生します。その混乱を収めようとして接収に乗り出すでしょう」

「劉備殿も公孫賛殿も、どっちも死ねば一番いい、ということですな」

 鳳統はコクリと頷いた。全ては劉備の精神力と運にかかっている。この賭けの分が良いか悪いかは、まさに天のみぞ知る、だろう。そして重要視すべきは、この謀略に田疇は相当な期待をかけているということだ。動かしている隠密部隊も精鋭に違いない。劉備の心を千々に乱れさせようとする策略はどれほど張られているのだろうか。仮に陣に入ったとしても、斬り結ぶこともありうるだろう。

 ぎゅっ、と服の背中が引っ張られた。鳳統が李岳にしがみつきながら、悔しさに拳を握っているのだろう、ということがわかった。

 この少女は、本当に劉備が好きなのだ。そして信じたいと思っている。

 李岳はハッと声をかけると、小雲雀はすぐに意を汲んで快速に拍車をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全身に汗をかいていた。だが熱とは無縁な汗だった。ひどく冷たい汗。体も心も冷えきっている。このような状態で、なぜ汗をかけるのか劉備には全くわからなかった。真夏に冷水を注いだ時、器の表面にはしずくが垂れる。自分がいま汗をかいているのはそれと同じ理屈なのかも知れないと思った――魂が冷えきった時、体は結露するのだ。

「桃香様、公孫賛殿が参られました」

「……うん」

 関羽にうながされ、劉備は前を向いた。自分はいまどんな顔をしているだろう。どんな目で親友を眼差しているのだろうか……

「桃香」

「白蓮ちゃん。何があったかはもう聞いてるよね」

 公孫賛はつとめて前を向こうとしているようだ。劉備は公孫賛のその姿勢に健気さを感じ、友情を強く実感したが、それがなおさら敵意を刺激した。

「行軍中にいきなり襲われたの。雛里ちゃんは今も見つかっていないの」

 なるべく平易に話した。感情を荒立てたくなかった。泣き喚いたところで鳳統が戻ってこないことはここ数日思い知った。

 見かねたように関羽が前に出て言葉を続けた。

「捕らえた者の中には烏桓と繋がりがあると供述している者もいる。幽州殿、是非ご協力願いたい」

「協力、とは」

「襲撃した者の逮捕と処罰だ」

 公孫賛はかたわらの趙雲と目配せしてから答えた。

「もう少し、詳しく話を聞かせてくれないか。それに桃香……お前、そんなに泥だらけじゃないか。一度湯を浴びて、一眠りしてからもう一度話そう」

 いらだちが抑えがたい。劉備は膨れ上がる怒りを抑える術を知らなかった。この灼熱の衝動にどう抗えばいいのだろう?まるでなす術がなく、劉備は叫び声をあげていた。

「どうでもいいよ!そんなの、どうでもいい!雛里ちゃんはまだ泥の中にいるかも知れないんだよ!?湯を浴びるとか、一休みするとか、そんなことして雛里ちゃんが帰ってくるの!?」

 公孫賛の顔が凍りつく。鳳統が見つからないということは、つまりはそういうことだ。泥にまみれようが、血反吐を吐こうが大した苦痛ではない。劉備は思う。濁流に押し流され、悶え苦しみながら泥の中に埋もれてしまう最後に比べれば、たかが疲労や苦痛など比較にもならない。

 寂しかったろう、悲しかったろう、遣る瀬なかったろう。

 あんなところで失われていい命ではなかった。もっと素敵なものを見て、人生を楽しんで欲しかった。乱世が終わった時に、一緒に色んなところを見て回りたかったのに。

「私は、私は!」

「桃香、落ち着いてくれ……」

 劉備をなだめようとする公孫賛。その時ふと思いついた。根拠はない、直感だった。

「白蓮ちゃん……ひょっとして、襲撃した者を匿ってたりしてない?」

 ほんの束の間、公孫賛がギョッとしたのを見逃さなかった。

「やっぱりだ。変だね、私はいつも鈍い鈍いってみんなに馬鹿にされるんだけど、今はなんだかすごく頭がすっきりしてる。なんだか色んなことがはっきりとわかるよ」

「桃香、違う、誤解だ」

「そうだね、白蓮ちゃんに悪意はないんだよ。ただ慎重なだけだったんだよね。でもね、私はそれが本当に嫌なの。白蓮ちゃんが私のことを友達だと思ってるのなら、私がこんなことを言い出す前に、自分から言って欲しかったんだ!」

 劉備はきびすを返すと、振り返ることなく言った。

「色々あるでしょうから、しばらく待ちます。あくまでこちらの希望は、私たちの軍を襲撃した人全員を引き渡すことです。私は城外で待ちますから……」

 陣幕に戻ると劉備は関羽さえ遠ざけて一人になった。

 嫌なやつになってる。なんて嫌なやつ……

 でも自分の心を上手に操ることが出来ない。なぜ? 私は私を見失ったの? 劉備の葛藤は未だかつて経験したことのないものだった。本当は公孫賛にあんなことを言うつもりではなかった。烏桓を敵視したって何の意味もないことだってわかってる。そんなことをしても鳳統が生き返らないと言われるべきは私の方だ。けれど一度誰かの前に立つと、今まで知らなかった自分が勝手にこの体を操って好き勝手振る舞いだす。劉備は自分が正義を手放した気がして震えた。穢れた気がして悔しかった。だというのに、この気持ちが自分を奮い立たせ、力を与えていることを自覚し、手放すことを惜しんでいることに愕然とした。何よりもう一度鳳統に会いたくて、泣いた。

 劉備は知らなかった。己の心の動きを制御できず、荒立つ波濤のように狂い始めるこの感情の渦には、古より既に名前が付けられていることを。誰もがそれを自らの内に巣食わせ、それでもって苦しみ、上手に飼い馴らせずに時に自分自身さえ見失ってしまう力――憎しみである。

 憎しみの萌芽は過去を苛む自責の念を糧に、急速に育つ。劉備は自分を恥じて、死にたくなった。それがたとえ一欠片(ひとかけら)でも漏れてしまわないように閉じ込めてしまおうと、地にうずくまり体を丸めた。

 

 ――だったら今まさに、貴様が憎しみを忘れる番だな!

 

 少年に投げかけられた言葉が何度も頭の内側を叩いては響いた。この強い後悔と怒りを忘れる? そのようなこと、一体誰に出来るというのか。あどけない鳳統の笑顔が、次の瞬間には死相に変わり、矢に貫かれ濁流に落水する幻が毎夜劉備をさいなんで片時も離れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両陣営を見下ろす丘の上に馬元義はいた。

 城を前にした対陣から二日が経った頃、劉備と公孫賛の間で再度の会合を開くということで合意が成立した。劉備が公孫賛への怒りをこらえた、という判断で誤りはないだろう。感情のままに生き方を決める娘だと決めつけていたが、それを馬元義は改めた。

「な、なかなか……ねばりよるな。あま、甘くはない」

 知らせを受けて数刻後、田疇から命令書が新たに届いた。いつものこととは言え舌を巻く思いである。ここから田疇の居場所は遠く離れているが、片道七日はかかる。つまり馬元義らの報告を待たずして指示を下しているということだ。

 指示書の中身を読んだ馬元義はフムと頷くと、すかさず配下を呼び集めた。指示は簡潔極まっている。馬元義は城内の家屋に火を放つよう命じた。城内からは部下の叫び声が断続して響いた。

「劉備軍の夜襲だ! 劉備軍が侵入しているぞ!」

 容易いもので、騒ぎはすぐに広まっていった。消火を指示する公孫賛軍の動きはさすがに規律正しいが、民は半ば恐慌状態に陥り始めてもいた。冀州を治める劉虞も袁紹も、反乱とみなした民への仕打ちは苛烈である。公孫賛を受け入れたせいで罰を受けると思えば、不安は頂点に達するだろう。

 この混乱に乗じて、馬元義の部下たちは鳳統を襲った異民族の少年らを逃そうと試みているはずだ。失敗すればその場で殺せと命じている。どちらにしろ対立の種としては十分だった。

 馬元義はさらに他の者を連れると、劉備軍の兵装に着替えた後にその軍営に向かって走った。

「公孫賛軍に異変! 城内にて出陣の気配! さらに裏門より北方に向けて離脱した集団も確認、我が軍を襲撃した一味と思われます!」

 部下にそう叫ばせると、馬元義は悠々と劉備の元へと向かった。

「りゅ、劉備殿」

「馬元義さん!」

 馬元義の顔を見ると、劉備は驚き声を上げた。馬元義は元より田疇の配下として劉備に名と顔を明かしていた。

「ご、ご無事でしたか」

「いつここに」

「田疇様に、し、し、指示を受け……劉備殿をお助けせよと」

「田疇さんが……」

「もっと早くにたどり着ければ、ほ、鳳統殿をお救いできたやもしれませぬのに……ま、まだあんな年頃なのに……」

 劉備は喉をつまらせ、唇を噛み締めた。与える刺激は連続しつつも小さい方がいい。強すぎれば折れる、それではいけない。弱ければ後は勝手に増幅させ、想像を巡らせるだろうから。か弱く程よい力加減こそが、憎悪を最も効率良く育てるのだ。

 馬元義は続けた。

「ところで、ご報告が……じょ、城内で、さ、騒ぎが……公孫賛が逃がしたのではないかと。例の下手人をです。この慌てよう。公孫賛殿には何やら、やま、やましいことがお有りのようで……」

「――どういうことですか。白蓮ちゃんが何を」

「我軍襲撃の黒幕は、こ……公孫賛なのでは? ですから、会合前に……しょ、処理をしようと……あくまで、可能性の話ですが」

 劉備の瞳に、束の間馬元義さえ圧倒されるほどの気迫が漲った。怒りと憎しみが、猜疑を支点として目まぐるしく回転し始めたのだ。

「……全軍、出撃態勢」

「桃香さま、お待ちを! 夜半にこのまま兵を連れ出せば武力衝突となります!」

「た、ためらわれますな……関羽将軍。今は、か、か、火急の時でござる」

「黙っておられよ、そなたはこの軍の指揮官ではない!」

 声を荒げる関羽に向け、劉備はなお静かに言った。

「愛紗ちゃん。私は知りたいの。なぜ雛里ちゃんが死ななければならなかったのか、私は知りたい。もし本当に私たちを襲った人たちが逃げたのなら、それを追って、確かめたい」

「……公孫賛殿がそれに関わっていたと思われたら?」

「――許せないよね」

 劉備の迫力に、関羽は二の句を告げずに頷くばかりであった。夢物語ばかりを語る腑抜けだと思っていたが、この劉備という者もまた英雄だな――と、内心馬元義は舌を巻き、そして同時にそのような英雄を手玉に取り、自在に操ることの愉悦に舌なめずりをした。

 悩み苦しみ、堕ちゆく英雄の姿はなんと甘美なものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「劉備軍が開門を求めています」

「……くそっ」

 公孫賛は吐き捨てると軍兵の集結を命じた。民の避難と矢弓の確保を続けて下知する。何が起こるかわからない以上、城塞の中の住民を守るために備えるのは当然のことだ。それが例え、親友に弓引く一手になろうとも。

「篝火もありったけ燃やせ! 薪をかき集めろ!」

「星!」

「厄介なことになりましたぞ、白蓮殿」

 険しい表情の趙雲が調査の内容を告げた。先ほど突如として城内から出火が確認されたのだ。そして匿っていた異民族の者たちの姿が消えた。そして出火の直後に、劉備の仕業だと訴える声が響いたことも確認された――一夜にして起きたこの出来事の連鎖に、謀略を疑わない者はいないだろう。

 ただ事ではない事態だと察した公孫賛は、即座に趙雲に事態の把握と対処を命じていた。が、その結果がかんばしくなかったことはひと目で理解できた。

「あの者たちはさらわれた可能性が高いですな」

「……まさか、本当に桃香が!?」

「そう思わせたい誰かの仕業やも。いずれにしろ今の時点で真偽は定かならず。であるのなら、すべきことをすべきです」

 いつになく冗談さえ交えない趙雲の様子に、公孫賛は事態の深刻さを改めて痛感した。今ここで劉備と事を構えるとなれば、彼女が仕える袁紹劉虞連合と直接対峙することになる。公孫賛が動員できる単独兵力はせいぜい七万。それに対して袁紹らは正規兵だけで十五万を超え、さらに黄巾の民が決起をするとの分析もある。

 対策として進めていた要塞の建設と、騎馬隊の増強も、烏桓との共同戦線構築も未だ途上である。ここで戦役が突如として勃発するとなれば、公孫賛が甚だ不利なのだ。しかも相手は劉備――関羽と張飛という武勇無双の英雄が仇討ちの勢いで押し込んでくれば、相応の被害は免れ得まい。やはり一歩も引かないであろう楼班を守り通さねばならないという使命もある。烏桓の姫は未だ攻めっ気ばかりが強い難点があるのだ。

 その烏桓の姫が、怒声と共に駆け込んできた。

「あの者たちが消えたと聞いたぞ!」

「落ち着かれよ! 我々も調べの最中なのだ」

「劉備の仕業だというのか、幽州殿」

 さすがに手際が良すぎると考えたのか、楼班の声音は半信半疑という様子であった。

「いや、事が上手く運びすぎだ。謀略の色が濃いだろう。あるいは桃香も踊らされているのかもな……」

「他に仕組んだ者がいると? だったらそれを伝えて共同して当たればいいじゃないか」

「今の桃香は聞かないよ。それに、仕組んだやつはあいつの親玉の可能性が高い。それを伝えてはいそうですか、となるわけなんかない」

 よほどの証拠がいる。そうでなければ劉備の決断はもしやというところに落ち着きかねない。昔から穏やかで心優しい少女だが、激昂すると一歩も引かない力も秘めている。乱世で生き延びているのは伊達ではないのだ。

 その時である。一本の矢が城外から飛来し、陣営の只中に突き立った。すわ攻撃か、と軍団は色めき立ったが、矢には何やら文が巻きつけられているようで、手渡された公孫賛はすぐに目を通した。

「……馬鹿な、冗談だろ!」

 訝しげに覗きこんだ趙雲と楼班もまた目を見開き、そして顔を青ざめさせた。緊張が頂点に達しつつあった城内で、指揮官の沈黙は一種絶望的なまでに異様であったが、三人らに周りを気遣う余裕はしばしなかった。

 やがて平静を取り戻すと、三人は顔を見合わせ、うんと頷きすぐさま動き出した。

 公孫賛は言う。

「搦め手から出撃する! 白馬義従、第一部隊は趙子龍に従え。これより幽州軍は行動を開始する!」




しょちゅ〜おみまい、もうしあげ〜ます〜♪
と言いたかったけど盆が終わってた。残暑やん。夏が終わる。嘘や。

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