真・恋姫†無双〜李岳伝〜   作:ぽー

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第七十三話 睡れる虎

 嫌な予感がした。単福は朝ぼらけの中、官軍が出撃していったという話を聞いて思った。

 総勢一万二千。洛陽より西二十里で起きた反乱を鎮圧に出向く軍勢である。兵力としては十分であろう。

 だが単福は胸騒ぎを禁じ得なかった。反乱の首魁は、正統の皇帝は陳留王であり、現在の皇帝は直ちに玉座を譲り渡すべしと訴えているという。東の反董卓連合と連携しているのは火を見るよりも明らかだ。もしかなりの準備をした決起であれば、あるいは伏兵があるか、それともさらなる陰謀が……

 単福はモヤモヤとした気持ちを引きずったまま水を汲んで家に戻った。朝食の準備をして往診に備えなければならない。

「母上、戻りました」

 そう言って戸をくぐったが、母の姿はなかった。寝台に父が寝るばかりである。あっと察して裏手に回ると、母は下穿きに、胸にはさらしを巻いたのみの姿で立っていた。

 母――丁原の容態は日を追う毎に、恐るべき早さで快復を見せていた。今もまた目の前に立つ丁原の肉体は、全身に汗をかき、今にも筋肉は躍動せんとする兆しさえ見えるほど。貫かれた脇腹と額から顎までの刀傷は凄まじいの一語だが、闘気は息を呑む程の充実を見せていた。

 

 ――まるで今すぐにでも戦いに出向けるように。役目に戻るように。記憶はまだ戻っていないというのに、体が全てを理解しているかのように。

 

「おかえり、福」

 単福がまごまごしていると、目をつむり仁王立ちのまま丁原が声をかけた。

「た、ただいま戻りました」

「うん」

 はあ、と大きくため息を吐いて丁原は笑顔を浮かべ、そして単福の頭を撫でた。優しい『母』の手触りに単福は喜びと、それに倍する罪悪感に揉み潰されそうになった。この笑顔は本来自分に向けられるものではないはずだったもの……しかし自分に向けられて何が悪い? 

 支離滅裂な矛盾が単福を苛むが、母の温もりが問題の直視から遠ざける。うん、と笑って手をつなぎ、家に戻った。そろそろ往診である。食事の準備も済ませなければならない。

 

 ――丁原は単福にとって完璧な母であった。

 

 強く、正しく、優しく、褒めてくれたし叱りもした。

 既に半ば正気を失った父がいつものように単福に暴力をふるおうとした時、まだ完治もしていないというのに片腕で制圧してしまったこともある。それ以後父はすっかり大人しくなってしまった。

 まるで夢の様な時間であった。だが夢の時間が長くは続かないということも知っている。記憶を失ったままこの人がここに留まるはずがない、という逆説的な信頼があった。それはとても良いことであるし、辛いことでもあるし、だが正しいことでもあった。

 断罪される日はいつだろうか。

 鬱々と考えながら二人で食事の用意をしていると、訪いを入れる派手な声が聞こえた。

「単福ちゃん! 単福ちゃぁぁぁん!」

 いつまで経っても慣れない声である。ぶるぁ、と余波を伴った大声が轟けば、深い思考の海に潜っていたさしもの単福とて一瞬で引きずりあげられる。

 筋骨隆々の半裸の男――否、漢女(おとめ)は大げさな身振りで家の戸口に立っていた。

「ちょ、貂蝉さん」

「単福ちゃん! 呼び声にはすぐに応えないといけないわよん! 乙女はいつだって恋と出会える備えをしておかないと、運命の人を捕まえる好機を逃してしまうのだわん!」

 私のようにねん! という貂蝉の鍛えぬかれた大胸筋から目を逸らした。運命の恋って、熊を捕まえるわけでもあるまいし。男とも女ともつかぬこの貂蝉の後ろに、問診に来てくれる医者の姿があった。

 その医者は気色ばんでしまうほどに勢いのある暑苦しい男だったが、妙な礼儀正しさもあった。押し売りの強引さと歴史家の謙虚さが同居しているような男だった。

 

 ――男の名は、華佗といった。

 

「先生、今日もありがとうございます」

 単福が頭を下げると、華佗は白い歯を陽光に煌めかせながらにっかと笑った。

「元気そうだな! 母上のお加減を見に来たぞ!」

「いつも、本当にありがとうございます」

「かたじけないことです」

 華佗は大仰に笑うと単福と丁原を褒めた。

「本当に、感心だ! 毎朝体を動かすとそれだけで元気になるんだからな! 健康が一番だ! しかしご母堂はあまり無理をされても、それはそれでダメだ! 深手だったのだからな。それに怪我の後遺、病魔の根を断つことは天より与えられしこの俺の使命! 安心して身を任せるんだ!」

 華佗はうむうむ、よしよし、と頷いて笑って治療の準備に取りかかりはじめた。そしてそれをなぜか羨ましそうに見守る貂蝉。

 聞くところによると、二人はひょんなことで出会い、流浪を続けている道連れなのだという。その二人が奇遇にも死に瀕した丁原の近くを通ったのだ。

 丁原と蹇碩との決闘の際、貂蝉が覇気を察して駆けつけたのだと言っていた。貂蝉もまた武人として達人の域にあるのかもしれない。

 

 ――この二人が偶然通らなければ、丁原の命は朝露の如く溶けて消えてしまっていただろう。

 

 蹇碩との壮絶な果たし合いの果て、頭蓋の骨を半ばまで断ち割られ、脇腹をえぐられた丁原の傷は到底単福の手に負えるものではなかった。丁原が懸命に伸ばした手を握り返すことしかできなかった。自宅に連れ帰り、懸命な処置を施したはいいものの、そこからの快復は神さえ見放すほどだった。

 そこに現れたのが華佗と貂蝉であった。

 華佗は単福を押しのけると、検分叶わぬ早さで丁原に処置を施し、縫合を行い、そして気合を一閃……そのまま夜を徹して治療を行い、とうとう一命をとりとめさせたのだ。

 万物を書物より学び取ったとにわかに思ったことさえある単福が、瞠目するほどのその技と知識は、その名を知らされなるほどと得心いくものであった。遠く西方、漢中に居を構える一大勢力・五斗米道。漢王朝にも秘匿したる常識に当てはまらぬその面妖な医術は、しかし確かに崇拝を集め数十万もの信者を抱えるに至っている。

 その医術のすべてを極め、さらに前へと推し進める稀代の天才とあまねく賞賛を浴びる男の名前こそが、華佗であった。

 おかげで丁原は命を長らえた。しかしさしもの華佗とて丁原の記憶を呼び覚ますことはできなかったが……毎日検診に来るという約束と、そして助言だけは残した。

『勇気だ。最後に勝利するのは勇気ある者だ。母上が本当の勇気を持っていれば、きっと記憶は戻るさ!』

 単福はその言葉を苦笑いして受け止めるしかなかった。最も勇気のない人間はきっと己だろうから、である。

 華佗の準備が整うと、丁原は寝台の上に座り躊躇いなく服を脱ぎ目をつむった。華佗は言葉の勢いとは裏腹に、繊細な手つきで丁原の顔面の半分を隠していた包帯をほどいていった。額からななめに、顎先まで伸びてる傷は、蹇碩の一撃である。縫合も華佗が行ったが、単福の目にはほぼ快癒したように見える。

 そのまま華佗は、はぁ! と気合を口から発しながら華佗は引き抜いた鍼を素早く、正確に丁原の頭部、さらに脇腹の傷跡にも打ち込んでいった。丁原は目をつむったまま微動だにしない。

 こうなると治療は時間がかかる。単福は自分の仕事にとりかかることにした。

 治療は無料である。が、そのまま返してはならぬと丁原からの厳命があった。治療の間の炊事が単福と、そしてもう一人の人物の仕事である。

「お手伝いいたしますわ」

 

 ――華佗の道連れは貂蝉以外にももう一人いた。

 

 二人が時折連れ歩いている侍女である。五日に一度という割合だが、ここしばらくでよく連れてくるようになった。いつも目が合うとペコリと頭を下げるだけの奥ゆかしい女性で、紅のまぶしい唇がいつもかすかなほほ笑みを浮かべている。華佗の助手とのことだったが身分が低いと言いはり名乗らなかった。

 この侍女を単福は少し苦手とした。丁原の世話も甲斐甲斐しく手伝ってくれたが、なぜか苦手であった。話したくはなかったが、侍女は余裕のある微笑みを浮かべたまま会話を始めた。

「いくさ、どうなりますでしょうか」

 おっ、と思った。侍女とこんな話をするのは初めてだった。単福は若干興味がわいた。じっくりと世俗の人の意見を聞くのは初めてだったからだ。

 少しだけ考えて答えた。

「李岳将軍はかなりの戦巧者です。関所を改造し、物資を整え、別働隊を叩き、敵将の一人を討ち取った。連合軍は疲弊し、兵站は乱れ士気は落ちているでしょう」

「けれど、数がとんでもなく違うのでしょう?」

 侍女の不安そうな顔を見ると、単福はなぜか励ましたくなった。自分の何倍も生きてそうな女性だがハッとするような儚さがあった。

「……そうですね、李岳将軍もきっと考えておられるでしょう、決戦を」

「決戦」

「そう、勝つためには決戦が必要です。多数を一撃で粉砕するような勝利が」

 言ったはいいものの、実はまだ単福にもその『決戦』の実態がわかっていない。李確と郭祀からその旨を記した手紙はないが――二人は単福の助言を守ってよく守戦を戦っているらしい――李岳が決戦を目論んでいるのは単福の目からは明らかだった。しかしその方策だけがわからない。李岳自身答えを見つけているのかどうかさえも。

「勝ちってなんでしょう」

 不意に侍女が根源的な問いを単福に投げた。単福は内から妙な負けん気を発揮してしまい、まるでまくし立てるように論じてしまった。

「勝利、それはすなわち陳留王殿下の奪還です。反董卓連合の御旗はただ殿下それ一本のみ。李岳将軍は謀略も含めて殿下の奪還を目論んでいるはず。決戦さえもあるいは囮やもしれません。劉協様を無事奪還したその時、反董卓連合軍は完膚なきに瓦解するでしょう」

 侍女が、どこか嬉しそうに頷き微笑んだ。しかし単福は突如恥ずかしさに囚われ、ギリギリと歯ぎしりをしながら俯き膝を抱えた。

 

 ――なんて恥知らずなんだろう、私は!

 

 自分に一体何ができるというのか、所詮水鏡先生に号の一つも授けてもらえなかった非才の身。人の親を盗んだ盗っ人だ。クズはどう取り繕おうとクズなのだ。水鏡は諸葛亮には見事な羽扇を、鳳統には分厚い立派な巻物を渡したが自分には名乗る号も記念の品も与えなかった。

 当然だ。戦を楽しみ事として茶々を入れ、人の母を奪い取った稀代の愚人……それがこの単福であるのだから。

「見守る他ない、ということでしょうか」

「……ええ。そうですね。洛陽宮中には賈駆どのもおられます。きっと大丈夫でしょう」

「賈文和様は今朝方出撃されましたよね? 西で起きた反乱を鎮圧するために」

 

 ――侍女の何気ない一言に、単福は背筋に電流が走るのを感じた。

 

「馬鹿な」

「えっ」

「そんな馬鹿な真似が!」

 単福の動揺に、侍女は初めて笑顔以外の表情を見せた。

「賈駆どのが直々に出陣!? 血迷ったのか、何を考えている! てっきり誰か下位の将軍が向かったと思ったのに……!」

 勢い良く立ち上がりすぎたために、下ごしらえしていた野菜が全てこぼれてしまったが単福は気にしなかった。怒り心頭に発し、憤慨が自身で制御できない。

「ぐ、ぐぬぬ……敵を見誤ったか……なんという下策を!」

「――どういうことか、お教えいただけますか」

「敵の狙いは洛陽宮中にあるに決まっているでしょう!」

 反乱などと生半な決断がなければできないものだ。いくら説得力があろうとも、勝算がなければ立ち上がろうなどと思わない。つまり、洛陽近郊で反乱を起こした者に空気を入れた者――そそのかした者は、それ相応の勝機を提示したはずだ。

 それは官軍数万に対して正面対決で勝つ、などというものではないはず。

「……反乱は囮です。洛陽から主力を引きずり出し、城内での内乱を企んでいるに違いないのです。再びこの城中に火を放つか、それはわかりませんが、ともかく狙いは陛下の身柄に他ならないのです! そんなときに宮中の政治的権力の中枢を担っている賈駆どのが場を離れれば……敵の思う壺だ」

 賈駆は焦ったのか、確かに反乱が大規模なものになれば脅威だが、すぐさま洛陽が陥落することなどない。それに李岳さえ勝てば大義名分は失い自然崩壊するのだ、放っておけばよいものを――

「どうすれば」

「えっ」

「どうすればいいのでしょう」

 侍女の言葉に単福は目を剥いた。どうすればいいか、そんなことそんなことは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからの記憶は曖昧であった。ヘラヘラと愛想笑いを浮かべ食事を終えたのだろう。通り一遍の会話を続けて華佗や貂蝉は帰っていったのだろう。薄靄がかかったように頭脳は明瞭とせず、単福はいつの間にやら落日を迎えた空の下で突っ立っていた。目の前にはあの決闘が行われた小川である。

「どうすればいい……か」

 手段があるか、ということだ。事態の深刻さを見抜いているのは今いったいどれほどいるだろう。あるいはこの洛陽中で自分ひとりかもしれない、という恐怖が単福を苛み続けていた。それはまるで盗賊の蛮行を目撃してしまったかのような、決壊する直前の(つつみ)を見つけてしまった少年のような気持ちであった。

 気づいてしまった者の義務感である。

「いや、そんなはずは……李岳や賈駆がそんな愚かなはずはないんだ」

 単福は何度も何度も自分の気付きが錯覚であると、思い込みに過ぎないと信じ込もうと首を振った。

 李岳や賈駆が後方の重要性に気づいてないはずがない。賈駆が出撃したのは既に宮中での防衛体制を確立しているからだ。政敵など既に無力化してしまっているに違いない。

 そう思い込むことは簡単だった。

 

 ――だがもし悪い予感があたった時……この国の命運は変わってしまう。

 

「こんなところでどうした?」

 ハッと振り向いた先には丁原がいた。やはり傷を隠すようにして包帯を巻いてはいるものの、気分は良さそうだった。

「いえ……」

 罪深さに、目を背けて単福はひんやりとした土の上に腰を下ろした。母は何も言わず隣に腰を下ろしてくれた。しばらくの沈黙のあと、単福は口を開いた。

「母さんは」

「ん?」

「不安では、ないのですか……ご自分のこと、何もわからないのに」

「不安だよ。泣きたくなる。娘の辛さもちゃんと汲み取ってやれぬから」

 手が優しく頭を撫でてくれた。それはずっと単福が憧れ、欲しかったものだった。

「ずっと上の空であったよ。何か思い悩んでいるな? また父上が何か」

「いえ……」

「嘘をついてはいかん」

「嘘は、いけませんか」

「大体の場合はな」

 その答えがおかしくって、二人でくすくすと笑った。微睡みのような、夢の中のような温かい嘘の時間だった。この嘘は許される嘘だろうか、許されない嘘だろうか。また眠りにつくことが、それほど罪深いのだろうか?

 そう単福の心が揺らいだ時だった――昼間訪れていた侍女が声を上げながら走ってきたのだった。

「た、単福さま! 母上殿!」

 息せき切って走ってきたであろう侍女は、何度も唾を飲み込みながらやっとの思いで叫んだ。

「洛陽城中で火の手です! まだ小火(ぼや)ですが……このあたりも危のうございます!」

 

 ――嫌な予感はあたった。やはり城外の反乱は陽動だったのだ。この火付けこそが敵の本当の決起の狼煙であろう。

 

 汗みずくの侍女の肩を掴んで単福は問いただした。

「場所は!? 火事の場所!」

「と、東南です。まだ宮中からは遠い場所で」

「消火は」

「張温さま率いる軍勢があたっておられるようで……」

「……陽動だ」

「よ、陽動?」

「敵の本命は宮殿におわす陛下です。洛陽に起きた以前の大火は既に悪夢。軍は必死に消して回るでしょうが、それは宮中を空っぽにするための罠です。恐らくあと二度か三度、城壁の側で火が起こるでしょう。がら空きになったところで宮殿に突入、最悪陛下を弑することも」

「そんな!」

 義を見て為さざるは勇無きなり、などという使い古された孔子の言葉が浮かんだ。義ではない、これは贖罪の機なのだ。天は見放していなかった、命を賭けて償うきっかけを与えてくれたのだ。

 そう、夢の終わりの始まりだった。

 だって、この母の泣く顔を見たくないもの、と。

 単福は振り返ると、母の胸に飛び込んで息をいっぱいに吸い込んだ。香りがした、母の。その他愛のない感触が、単福に罪と向かう勇気を与えた。

「私は嘘つきなのです……貴方は私の母さんではありません」

 告白はすんなりと出た。考えずに言う方がよいと決めていた。胸のつかえが下りたというより、その後の丁原の顔が見れずに胸が締め付けられた。下を向いたまま続けた。

「姓は丁、名は原……字は建陽。執金吾の高位であらせられた将軍……それが貴方です」

 優しい手を振りほどき、単福は立ち上がって大声を上げた。目の前の夢を、幻を追い散らすためにはそれくらいの力が必要だったから。

「このようなあずま屋で暮らす、わた、私の、私などの母ではないのです! 私は、貴方の娘ではないんです! 親子じゃない!」

 パン、と音がしたのは自分の頬をひっぱたかれた音である。単福に動揺はない、殺された所で文句は言えないのだから。しかし丁原の表情は慈愛に満ちたものだった。

「私が仮にその丁原だとして、お前は私の娘に変わることはない。娘を苦しめるようなら丁原に戻らなくてもよい。お前は私の子だ」

 どうしてこんなに欲しい言葉をくれるのだろう。嗚咽になるまでさしたる時間はかからなかった。咳き込みがひどく、けど泣きたくて、絞りだすように何度も何度も涙をこみ上げさせた。そういう甘え方さえも、単福の憧れだった。

 しかし、夢はもう覚めたのである。

 抱きしめられるのに束の間甘えて、これが夢の終わりであり、もう現実に戻るのだと心に決めて、だから最後に目一杯とばかりに単福は母に縋り付き、そして離れた。

「……ありがとうございました、丁原さま」

「福」

「おやめください。貴方は戻らねばなりません。貴方は丁原さまであり、そしていま関で苦戦している李岳将軍のお母上であるのです……本当のお子さんが、いらっしゃるのです」

「李、岳……」

「そう、貴方の本当のお子の名は……李岳! 李信達さまです!」

 単福はふっ、と笑みを浮かべた。短い夢だった。そしてとてもいい夢だった。丁原の瞳に、一筋の明瞭な光がよぎったのを単福は確かにその目で見た。

 それは知の輝きであり、眠っていた魂が再び燃え出した発火のきらめきでもあった。

「……思い出されましたね」

「……私は」

「丁原さま、本当にご迷惑をおかけいたしました」

 単福は深々と頭を下げた。

 あっさりしたものだった、李岳の名前を出した途端に丁原はその記憶を取り戻したのだった。もちろん単福もどこかで気づいていた、血の繋がった親子の絆はたやすく切れはしないのだ、きっと李岳が息子だと告げれば丁原は記憶を取り戻すだろう、と。

 そして、その絆こそが今この洛陽の窮地を救うのだ。

「今はこの洛陽と陛下をお守りせねばなりません。もしものことがあれば李岳将軍も、この漢も滅びます。この単福……我が詐欺は命をもって償う所存ですが、せめてこの危難にて微力を(なげう)った後にお願いいたしたく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巡回中の兵卒を昏倒させ、その剣と馬を盗み、丁原と単福は一路宮殿を目指した。

 敵の狙いは明白である。洛陽城外で反乱を起こし、その討伐に向かった隙に城内で混乱を起こす。放火し宮殿から軍勢を遠ざけた後、皇帝の身に危機が迫っているとして押し迫るのだ。それはすなわち李岳が行ったこととさして変わらぬので非難もかわしやすい。

 皇帝を弑する可能性もあるが、最上は拉致だろう。ではどこへ連れて行くか? 選択肢はそれほどない、絞り込めば敵の姿はおのずと見えてくる。

「敵の正体はわかっているのか」

 馬を駆る丁原が単福に聞いた。その声音は先ほど抱きしめてくれた人と同一のものとは思えない。首を刎ねられてもおかしくないのだ、親子の情と絆を(かす)め取ろうとしたのだから。万死に値するだろう。嫌悪感を懸命にこらえているのかもしれない――いや、きっとそれらは全て勘違いだ、と単福は思い直した。卑屈なのは丁原ではなく、その声を受け止める自分の狭量さにある。

「敵は、恐らく儒を治めたる名家でしょう」

「儒家だと? なぜ儒の者が陛下を」

「名家名族は不満なのです、実力主義の台頭が」

 李岳も董卓も武名で辺境から成り上がった者たちである。武骨者に国家の中枢を支配されるのは彼らの矜持が許さない。再三長安への遷都を企んでは退けられてもいる。そもそも洛陽における一定の勢力はその程度しか残されていないし、今の皇帝劉弁にも元より出自から嫌悪を示している思想家、政治家は少なくない。

「なるほど、私も思い当たる節がある」

「ご迷惑されましたか」

「斬りたくなるやつらさ」

 笑ってしまうような話だが、本音だろう。そうこうする内に馬は街路を駆け抜け、とうとう張温が陣取る本営に辿り着いた。煌々たる篝火である。

 伝令だ、と言い張って丁原は無理やり張温の元に辿り着いた。

「久しいな、張伯慎どの」

 誰だ、と目を細めて見つめる張温だったが、やがて得心行くとその細いまぶたから溢れ落ちんばかりに目を見開いた。

「……いや、待たれよ。わしゃどうにかなってしまったのか? そなたが丁建陽に見えるんじゃが」

「耄碌するには早かろう」

「なんてこと」

「なぜだか生きてるよ」

 ははっ! と張温はらしからぬ笑い声を上げた。

「……いきさつはさておき、その口の利き方は本人のようじゃな。あの世から舞い戻ってきたか!」

「騒々しいので目が醒めた。詳しくは後でだ、この事態にあたる方が先だろう」

 張温は余裕のある笑みを浮かべたまま、事態の経緯を説明した。大したことないと決めつけてしまっているようだ。

「騒がしてすまぬな。しかし鎮火はそれほどかかるまい」

「火だけならばな」

「どういうことじゃ?」

「詳しくはこの者が」

 ここから先は自分の出番だ、と単福はぐっと腹に力を入れた。時はないのだ。

「閣下、それがしは単福と申します。火急の事態にて儀礼が半ばたることは何卒ご寛恕願いたく」

「よい。それで?」

「陛下の御身に危機が」

 張温は好々爺らしい笑顔のまま手を振った。

「その心配は無用である。既に新たな護衛が宮殿に向かった。どこから不埒者が押し寄せようが盤石よ」

「向かわれたのはどなたです?」

「楊彪どのじゃが」

「その者が反乱の首魁です」

 皺だらけの手がピタリと宙で止まった。張温は単福の目を初めて凝視した。

「まさか、信じがたい! 四世太尉とさえ謳われる名門の者じゃぞ!」

「その名門の楊彪どのが真っ先に火事をご報告しにきたのではないでしょうか?」

 張温の老いた頬が真っ青に血の気を失っていった。

「そして、これは敵の陽動の可能性もあるので陛下の御身を守るために宮中に詰める、と申し出られましたね――なるほど、あたりのようで」

 うっ、と息を詰めてしまった張温に単福はまくしたてた。

「この洛陽に大規模な暴動を起こせるような勢力など存在しません。埋伏も非現実的です。そのような危機を煽り宮中に近づくことが楊彪どのの目的なのです」

「……いや、しかし、なぜ」

「楊彪どのは長く遷都を主張されていたのでしょう。今、それを力ずくでなそうとしてる」

 いくつもいくつも思い当たる節が連想されたのだろう、張温は兜を脱ぎ捨て地に(なげう)った。

「……わしはなんという愚かなことを! 急いで向かわねば」

「大軍で向かわれても相手に気取られてはもしものことがありましょう」

 単福は右、左、と陣営を見回して言った。

「ここに軍勢は?」

「四千ほどが。残りは街の中を巡回させておる。大半はまだ集まりきれておらぬが」

「一千を丁原さまにお預けいただくことは?」

「否やはない」

 張温はすぐに部隊長に一千の招集を命じた。時間との勝負だがまだこちらに分がある。

「洛陽城中全ての者に夜間の外出禁止をお命じ下さい。これよりどのような理由があろうとです。そして残りの三千で洛陽城内の主な名家、名族の屋敷を包囲してください。名目は不届き者が襲撃を企んでいるという情報を得た、ということでよいでしょう。張温さまのご権限と兵がいれば問題ないはずです。後続の決起を封じます。そして洛陽全ての門を閉じるのです。残りの全軍――三万ほどでしょうか? 全て城外に布陣させてください」

「ふ、布陣じゃと?」

「この洛陽に包囲戦をしかけるのです」

 何を言っている! 張温の絶叫は面白いほどに響いた。

「この洛陽を包囲するのです、蟻の子一匹這い出る隙間もないように。騎馬隊も全て城外に。もし脱出を許した時はすぐ追撃態勢に移れるように待機させるのです。鎮火には二百で結構。どうせ続きませんのでご安心を。それほどの組織力もない」

 唖然としている張温が単福を震えながら指さした。

「……貴殿は、一体何者なのか」

 丁原もこちらを見つめていた。死ぬのだ、と単福は思った。どうせ夜が明ければ切られる。ならば本当の名で死のう。

「……単福は世を忍ぶ仮の名。我が姓は徐、名は庶。字は元直。荊州は司馬徽門下の第三位。さあ、お時間はありません! 今すぐご出馬あれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が明けた頃には全てが決着していた。

 陰謀を企んでいた楊彪、楊修の親子は即座に捕縛。連座したものおよそ八十名も全員縛についた。やはり皇帝を拉致しようとしていたとのことである。丁原を先頭にほとんど何の被害も出さずに制圧した。董卓陣営の主だった者達はもちろん、彼我含めて一名の死者も出なかった。尋問は即座に行われるであろうが、処断は李岳が帰還した後になるだろう。

 朝陽を浴びながら、徐庶――単福は自宅に戻っていた。歓待を約束した張温の誘いを辞退しての帰宅である。身支度を整えたいといえば、なるほど、と満面の笑みを浮かべた張温は追及してはこなかった。今も訪れるのを待っているだろう。

 いま、単福はあの小川で、司馬徽より授かった例の剣を持っていた――錆だらけの、何も切れないナマクラである。この剣よりは少しだけ役にたっただろうか? あれだけ固執していた驕慢な自尊心も今ではさして気にならなくなっていた。錆びた剣も使いようだ。

「あとは、私の償いだけですね」

 いつの間にか後ろに立っているのは丁原であった。甲冑を着ている。今日にでも鎮圧に向かった賈駆の援軍へと向かうのだろうと思えた。

「見事な手柄だ、単福」

「恐れ多くも」

「そなたの智謀がなければ、この洛陽は混乱に堕していただろう。なれば祀水関も決壊し、この漢は滅んでいたはずだ」

「愚才がお役に立てたのなら幸いです」

 目の前の墓を見た。一つは蹇碩が眠り、一つは何の遺体もない。もし処断されるのならこの墓に埋めてもらおう、と思っていた。

 向き直り、単福は錆びた剣を渡した。丁原ほどの達人ならこの剣でも少女一人即死せしめるだろう。

「私の亡骸はあの墓に……これで嘘をまことにでき、本望です。願わくば父の先行きだけ、何卒よろしくお願いしたく」

「丁原は死んだ」

 渡された剣を鞘から引き抜きながら、丁原は言った。単福の言葉などほとんど聞いていないようで、興味深そうに剣を右から左からじっくりと眺めている。

「……どういう、意味でしょうか」

「蹇碩は私の師であった。その師を命と引き換えに討った。私はあの時確かに死んだのだ。だから亡骸はなくとも、あの墓には丁原という人間の魂が眠っている。それに、お前の命を奪うつもりもない。私の命を救ってくれた恩人だからな」

 

 ――どこか、そうして助命してくれることも期待していた。この浅はかな小賢しい知恵の回し方がきっと諸葛亮や鳳統との差だろう。自嘲も出ない浅ましさだ……

 

「私は行くぞ」

「ご武運を」

「身支度をせよ」

 言葉が中々出てこなかった。身支度とは一体何を指すのか、表彰でも受けろというのか。しかし丁原の声音はそのような響きではなかった。

「私の愛した男がな――まぁ、李岳の父なわけだが、この男、普段無口なくせに時折なかなかいいことを言う。自分の息子に、一振りの剣と餞別に言葉をくれてやったそうだ」

「……なんと申されたんですか」

「気高きに(したが)え」

 丁原の目が真っ直ぐ単福を射抜いた。

「我が子が父から授かった言葉を、私もいま娘に贈ろう。気高きに順え。躊躇うな。義のために動こうとするとき、悩むのなら、己の胸のうちの叫びに抗うな」

 何度泣かせれば気が済むのだろうか? この数日泣いてばかりだ、泣いても泣いても涙が出てくる。孤独で貧しい人生が、友と離れ離れの暮らしが、在野に逼塞する悔しさが、あるものないものが全て押し寄せてくるが、それ以上にたった一つの言葉が、少女を動揺させていた。

 この人は、私を娘と呼んでくれている。

「わ、私……私は、師からも見放され、と、友にも……!」

「人生色々ある」

 笑ってしまうような割り切りに、泣いているというのに笑いが漏れた。不細工な笑い泣きがなかなか止められない。

「……柄だけが立派だが、なぜか小さいな」

 丁原の言葉に、徐庶はゆるゆると顔を上げた。丁原はしつこいくらいに刀身を眺めている。

 やがて悟ったように呟いた。

「はりぼてだな」

「……それが、司馬徽先生が私に下さったものです……私もそのような錆びたはりぼてだと」

「いや、これはがわ(・・)だ」

 そこからは早業であった。丁原は剣を軽く放ると、自らの獲物を抜刀しその刀身を叩き割った――赤茶けた錆が空中に散らかり、刃物の破片がバラバラと飛び散り、そして地面に突き刺さっていた――短剣が。

 単福は息ができない。丁原は地面に突き刺さった、美しい波紋を見せる短剣を引き抜いて検分し始める。

「長剣の中に短剣を隠すとは、中々手の込んだ仕掛けだな。そこらの者では見抜けまい。見事な一振りだな。これは……名のあるものだろう。銘が彫ってある、見えるか?」

 丁原から渡された短剣を、単福はおそるおそる握って眺めた。あの錆びた剣と確かに柄は同じである。剣の中に剣。ふと司馬徽の顔が浮かんだ。

 単福はゴクリと息を飲んで剣を眺めた。確かにそこには二文字の銘が刻まれていた。それは司馬徽から単福……徐庶への贈り物であった。

 

 ――睡虎。

 

「ぐ、ぐうう! ううう!」

 臥せた龍、鳳の雛、そして(ねむ)れる虎……

 司馬徽は決して徐庶のことを軽蔑などしていなかった。信頼と戒めを含めて、この刀剣を贈ったのだ。諸葛亮や鳳統にも比肩しうる号と共に。

「軍師として生きる時、本物の武人に出会わねば不幸になる。力を思う様利用されてしまいかねないからな。切れすぎる刃はいずれ自らの身体さえ切り刻んでしまうかもしれない。この刀剣の仕組みに気づく武人に出会わないのであれば、静かに生きる暮らしもよいだろうと」

「……司馬徽先生は、私を、大事に思ってらっしゃいました……! 私は、ものの見てくれで、そのお気持ちを、疑って……!」

「使い方は教えてやる。蹇碩より受け継いだ撃剣の技だ。李岳が兄弟子になるな。あれはあれで中々筋が良いが、努めれば追い抜くこともできる。兄と妹で仲良くしごいてやるから覚悟せよ」

 それからの記憶は曖昧で、やはり気づいた時には泣いていて、丁原の衣服をぐずぐずに汚してしまっていた。

 鼻をすすり、単福は言う。

「丁原さま」

「丁原は死んだ、と言ったはずだ」

「……ですが」

「名を変えて生きる。これからはな。丁原が実は生きていた、というのも色々ややこしくなるだろう。その名は土に埋めてしまったほうが良いのだ。師・蹇碩へのせめてもの手向けでもある」

「では、新しい名を考えねばなりませんね」

「もう決めた」

 なんとなく、単福にはその名前がわかった。きっとそうに違いないという確信もあった。

「私も、これからは徐庶として生きます。本当の、私の名前で生きます」

「それがいい。血を分けた母上への手向けにもなる」

「は、はい……」

「また泣くか?」

「も、もう泣きません!」

「一生分泣いたようだからな。これからはよく笑え。徐庶」

「真名は珠悠(シュユ)です」

「桂だ」

 朝陽が眩しい、それを素直に美しく思えるようになったのはなぜだろう? 心に張り付いていた薄膜のようなものが、あらゆる全てを曇天に変えてしまっていたに違いない。

 単福の……徐庶の心は晴れ渡っていた。

「お父上のことについては心配するな。下女もつけ、立派な屋敷に住まわせて余生を穏やかに過ごしていただけるよう取り計らう。何も心配することはない」

「……はい。ですが、ちゃんと別れのご挨拶にも行ってきます」

「一人でいけるか?」

「当然です。貴方の娘です」

 徐庶は、久しぶりにちゃんと前を向けている気がした。

 睡れる虎。いま、まどろみの時を終えて世に出る時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――徐庶の姿が完全に見えなくなるのを待って、丁原は声を上げた。

 

「そこにいるのだろう、侍女殿?」

「ホホホ」

 声をかけられ、躊躇いもなく現れたのは華佗や貂蝉と共にやってきていた侍女であった。だがそこに浮かぶ表情はあの慎ましやかなそれではない。

 堅苦しい、とばかりに胸をはだけさせ、まとめていた髪を乱して歩いてくる女。誰と見紛うだろう、黒山賊の頭目・張燕その人であった。

「ようやく戻ったね、桂」

「手間をかけたな紅梅」

「手間? はて?」

 ごまかしても無駄だ、と丁原は睨んだ。

「楊彪や楊修、貴様泳がせていたな? 李岳や賈文和があのような連中を野放しにしておくわけがない。いつでも捕縛できるように監視がついていたはずだ。それを見逃し、あえて行動に移させた」

「あぁら、何のことやら」

「徐庶を試したな。そして、この丁建陽を」

「記憶にござんせん」

 しらばっくれているが丁原は確信していた。

 張燕は楊彪の動向を完全に察知して、あえて行動させた。騒動の相談を単福に持ちかけ、その少女がどういう風に行動するか試したのだ。恐らく何もしなくても皇帝に危険が及ぶことはなかっただろう。だが、この私的な理由での怠慢は、限りなく重罪である。

 そこまでして、張燕は徐庶を試し、動かそうとした。そして丁原を目覚めさせようとしたのだ。

「徐庶が何もしなければどうした?」

「さあ、考えもしなかった」

「私の記憶が戻らないことも?」

「もちろん考えなかった、さ」

 おどけた仕草のまま、張燕は背中に負っていた剣を丁原に向けて放り投げた。はっしと掴んだその剣の感触を忘れるはずも――いや、丁原はあらためて思い出した。未盲剣。李弁が鍛えた剣である。

 やはり何よりもしっくりときた。

「坊やが喜ぶね」

「そのような立場ではもうないだろう。母は死んだのだ。これからはあの男の臣下となる」

「イチャイチャは裏で、というわけね」

「お前のことだけはもう一度忘れたいな」

「いやん」

 未盲剣を抜き、朝陽にかざしてから再び納めた。東方で懸命に戦う子のことを思うた。無事に戻ってくることを毛ほども疑ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 史において定かではないが、終生李岳の片腕となった名軍師の名が反董卓連合軍との戦いの後より浮かび上がる。

 姓は徐、名は庶。

 軍師にあるまじき行動力を発揮し、馬にまたがり剣を振るうこともあったという。その撃剣の腕は並みの武将よりも鋭く、戦場を風のように切り抜けることもしばしばであったという。

 そしてもう一人。李岳を大いに助ける武将の名が上がる。

 生年も出生地も不明であるが、その軍功は李岳軍の中でも水際立つものであった。

 槍を振るえば三人までも同時に突き殺す武、戦場を冷静に見回し騎馬隊を手足のように操る軍略、歴戦の勇将に匹敵する経験を持ち、一軍を率いれば落とせぬ敵陣はないとさえ謳われた。

 異名を陥陣営。

 名を、高順といった。




長い伏線でした。

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