さっそくお気に入りをつけてくださった方がいます。
ありがたい限りです。
では本編どうぞ。
翌日
「おーい。朝だぞー。起きろよボケー。」
誰かがオレの耳元で叫ぶ。
「…あと1時間。」
「何バカなこといってんだ?もう9時だぞ?」
いやいや[もう]9時?バイトは午後からだからまだ寝てていいだろうが![まだ]9時に訂正しやがれ!
………ってかおれは一人暮らしだよな…?
じゃあこいつは誰だ?
こいつもしかして勝手に人の部屋に入ってきてるのか!?
「おい!誰だお前!通報するぞ!いますぐ出ていk……。」
あっ!
「ほぅ。まだ日本にいる気でいるのか。お前は。」
そうだった。ここはロンドンだった。
「ん~。しょうがねぇだろ?昨日は忙しすぎたんだからよ。それにまだ夢の中にいるんじゃねぇかと思うわ。」
ホント、オレがアーセナルの監督だなんて信じられない。
「まったく。しょうがねぇやろぅだ。…まぁいい。今日はクラブハウスに行って契約書にサインしてもらうぞ。」
「なんで?GMのお前が今ここにいるんだからここでサインしてもいいんじゃねぇか?」
「なんにもわかってないな。監督でも選手でも契約時にはアーセナルフットボールクラブの経費を取り仕切る取り仕切る取締役も同席すんだよ。」
「っていうことは昨日もいたクリスさんか?」
「それは会長だ。会長が経費を取り仕切るところもあるがうちではマイケルが取り仕切ってる。」
「そっか。……ってかオレ昨日の会談でランチくってから何も食ってないんだけど。」
「…ビザの確認のあとから爆睡していたからな。運ぶのが大変だった。」
「しょーがねぇだろ?時差ぼけもあったんだからな?」
「わかってるよ。まぁ取り合えず朝飯くってから行動にうつるぞ。」
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「ん~。うんっまい!」
メニューはトーストとスクランブルエッグにサラダ。
「これ誰が作ったんだ?」
「…オレだ。」
「マジかよ。料理できたのかよ。」
「当たり前だ。高校出てすぐこっちにきたんだからな。」
それもそうか。かれこれ7年一人暮らししてんだもんな。
「ところで今年の今シーズンの主戦力は来シーズンも残ってくれそうなのか?」
「あぁ。一通り契約更新は終わらせている。まぁお前が就任すると聞いて考えを変えるやつもいるかもな。それにテオが退任すると発表してからずっと更新を渋ってるやつが一人いる。」
「だれだ?」
「フォト・フォームマンだ。」
「おいおい。そいつは一大事じゃねぇか。ただでさえ右サイドバックは人材なんだっつーのに。もうシーズンも終わっちまうぞ?」
フォト・フォームマンというのはアーセナル不動の生え抜き右サイドバックで今シーズンで5年目の23歳だ。
最近はイングランド代表のレギュラーにも定着しつつあり、シーズン後のオリンピックにもイギリス代表として出場が決まっている。クラブのアイドルだ。
「本人曰くテオに誘われてユースに入り20の時にはすでにリーグ戦で二年間の通算で36試合出してもらっていた。今シーズンなんてここまでテオひ全試合フル出場で出さしてもらっているよ。テオを溺愛していただけに他のクラブの移籍も十分考えられる。」
「不味いな。なんとか契約を更新してもらわないと頼れるサイドバックがいないぞ。」
「だがあいつの更新の上でテオの後任は大きなポイントだ。ただでさえテオ以外の人間のもとで働くのを嫌っているあいつにお前で満足してくれるはずがない。」
「オレを呼んだのはお前だろうが。…まぁいいや。契約書にサインしたら一回フォームマンのとこにいってみる。」
「かまわないがヘマはすんなよ。」
「ごちそーさま!」
「じゃあすぐ着替えろ。クラブハウスにいくぞ。」
「うぃーす。」
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そしてクラブハウス
「うわー。でけー。広ーい。サッカーコート何面あんだよ?」
そこでは朝にも関わらずユースチームらしき集団がミニゲームで汗を流していた。
はたまたそのまた向こうのコートでも何やら自主練習に取り組んでいる選手もいる。
海外のクラブではオンオフのメリハリがしっかりついていると聞いていたから自主練とは以外だ。
「おっとここで靴は脱げ。」
「なんで?」
「アーセナルのクラブハウスは土足厳禁だぞ。」
「外国人で土足で家の中生活するんじゃないのか?」
「最近はスリッパにはきかえる家も増えているぞ。まぁアーセンがきたときからアーセナルはこれらしいけどな。」
「日本の文化を取り入れたってことかな。」
「そういうことだろ。」
そして奥に歩いていくと会議室に明かりが灯っていた。
「ここだ。緊張感持って入れよ。」
「OK」
ガチャ
「おお。やっときたか。ケイタ。そしてシンゴ。昨日はどうも。」
「こちらこそどうも。ではいきなり本題に入りましょうか。」
啓多がマイケルさんの隣に座り切り出す。
オレは大理石のテーブルをはさんで二人に向かい合う形になるように座る。
「まぁ慌てないでおくれ。今書類を渡す。」
そうしてオレの前に一枚の書類がおかれた。
「ふむ。どれどれ。契約期間は2年。監督としてはずいぶん短いですね。」
「ああ。お前はまだ未知数な部分が多いからな。短めだ。」
「お前から呼んどいて未知数かよ!」
「まぁ落ち着けって契約年数より今日は金銭面での折り合いをつけよう。」
「そうとも、シンゴの言う通りだ。この金銭面で折り合いがつかず破談になったケースはいくらでもある。」
「まぁ普通は合意してから会談があるんだが上層部の人達はすっかり合意していると思ってたらしく昨日はすでにもうお前を仲間だと思っていたがな。」
「えっ?オレってまだ合意してないの?」
「当たり前だろ?この交渉で万が一オレたちと金銭面での折り合いがつかないとなれば交渉は破談。お前は帰国。」
「ええっ!なにそれ!じゃあオレは年俸は素直に受け入れるしかないってことか!?」
「まぁ。そういうこった。」
「いきなり金の亡者たちに騙された気がする。」
こういう無知な人が簡単に騙される悪い世界なんだ。
「とはいえオレたちも鬼じゃない。むしろこうして引き受ける前提で交渉のテーブルについてくれたことは有難い限りだ。ちゃんとした年俸は提示する。」
「で、いくらなんだ?」
「日本円で3億だ。」
ズシャアァァァン!!!!
ソファーごとひっくり返ってしまった。
「さ、ささ3億!?」
「大丈夫かシンゴ!?三億じゃ少ないのか?」
「いやいやバイト生活を三年間続けてきたおれにとって三億は雲の上の数字だ。バイトの時の年収は週6働いて200万だったから150倍だ。」
「こ、これは夢か!?」
「ちなみにテオは6億5000万だった。」
じゃあ約半額ってところか。もっと低くてもいいくらいだ。
「新悟。どうだ?満足か?」
「あ、ああ。喜んで引き受けさせてもらうよ。」
じゃあここにサインを。とマイケルさんが書類の右はじを指す。
そこにサインペンできちんと名前を書き入れる。
「よし、これで本格的に交渉は成立だ。よろしくな新悟。」
「ああ。よろしく。」
「シンゴ。会見は明後日ここのミックスゾーンで行う。なにを話すか考えておいてくれよ。」
「ああ。わかりました。」
「じゃあいくぞ新悟。じゃあありがとうマイケル。」
こうしてオレたちはクラブハウスを後にした。
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車内にて
「なぁ。今からフォームマンの家によればいいのか?」
啓多が聞いてくる。
「ああ。頼むわ。」
「もしかしたら切れられるかもしれないぞ?」
「それでもいいさ。結果は0か100か。契約更新してくれるかしてくれないかだから。」
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「ついたぞ。」
「ここか。」
啓多がインターフォンを押すと中からフォームマンが出てきた。
「やぁフォト。契約更新の件は検討してくれたかい?」
「おお。ケイタか。考えているけどやっぱりテオがいないチームにはいたくないんだ。…こちらは?」
フォームマンがオレを指差す。
「ああ。こいつに直接聞いてくれ。」
「ああ。オレはオウリ シンゴ。一応英語はできる。以後お見知りおきを。」
アーセナルの新監督だということはまだ明かさない。
「ケイタの日本の友達か?」
「そういわれればそうだけどついさっきに仕事仲間になった。」
「じゃあアーセナルで働くのかい?」
「そうだよ。」
「栄養士とか?」
「いや違う。来シーズンから欠ける職があるだろ?」
「そんなのあったか?」
「すぐわかるはずだよ。」
「……わからないな。」
「君とも直接話すことが増えるだろう。」
「…まさか。監督か?」
ここから交渉がスタートする。
「よくわかったね。さすがだよ。」
「からかうのはやめてくれ。次の監督はロベルト・ピスタじゃないのか?」
「それは噂だ。君にとっては残念かもしれないけど彼は本当にアーセナルの監督なんだ。」
「おいおいマジかよケイタ?この人オレと同じくらいの年だろ?オウリ シンゴだっけか?そんな人聞いたこともない。」
「監督経験は皆無だよ。選手としても大学までサッカーをやったのちやめた。」
「そんなやつがアーセナルの監督なんてできるわけがないだろ?」
「しかしさっき契約書にサインはいしたよ。」
「あんた何考えてんだよ!?ようするにただの一般人だろ?一ヶ月もたないぞ?」
フォームマンに焦りの色がみえ始める。
「まぁ監督という立場上選手全員の運命も背負わせてもらうことになる。だからこうして君に契約更新のお願いにきた。」
「あいにくオレにはスペインのトップクラブからのオファーがとどいている。そこにいかせてもらうよ。今あんたを見て決めた。」
ここまでは想定内だ。
オレを嫌い出ていこうとする。それは想定ズミだ。
「君をみて確信した。ボクのチームに君は必要だ。バルサにはいかせない。」
ケイタは黙って見守っている。
「アンタのチームにいることはできない。出ていくよオレは。」
「イングランド代表の選手の大半はプレミアリーグでプレーしている。海外に飛べばイングランドの監督の前でプレーする機会は減ってしまうよ?」
ここで代表の話題にうつす。
フォームマンはありとあらゆる代表戦への出場を望んでいる。
その証拠にクラブの試合があった次の日のオリンピックの代表戦に監督に無理を言って出場しようとしたという過去がある。
「……」
「国内での試合ともなれば君はスペインから移動しなければならない。それは不利になってしまうのではないかな?」
「…くっ。」
バタン
フォームマンはドアを閉めてしまった。
「よし。帰るか敬多。」
「いいのか?まだ終わってなさそうだったが。」
「いいさ、あとはあいつ自身で決断させれば。」
それはきっとオレたちにとって望ましい答えだろう。
どうだったでしょうか。
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