【飴】コラボ作品 グリモア~each of destiny~ 作:HAJACANDAM
鳥のさえずりが聞こえ、ベッドから起きる。聞こえた音によって、頭は冴え、脳は次第に覚醒していく。
だが、少年には一つ不思議なことがあった。
(体がダルい……)
そう、体が何故か鈍っていて、風邪にかかっているかのように視界がぼんやりとしている。だが風邪では無い感覚、もう少し違う何か……
「ん?」
突然のインターホンの音に体を傾ける。時間は朝の六時だ。こんな時間に来客など、常識的にはありえない。それに、体がダルいし、少し気分が悪くなってきた。
「はー……い?」
掠れ掠れの声を吐き出し、イライラしながらドアの前へと向かう。今日は平日で、学校にも休むことを言わないといけないのに、非常に面倒くさい。
「どなた……ですか?」
「えっと……えっ!?」
目の前には黒いスーツをきた男の人たちがいて、正直びっくりした。黒スーツの人たちも驚いているようだ。当たり前だろう。
びっくりした拍子だろうか。身体の力が抜けて、次第に視線が下がり、意識が遠のいた瞬間、僕は地面に屈服した。
「…………ん?」
あれからどれくらいの時間が経っただろうか。意識が戻った時にはもうそこにいた。目の前には純白の天井と、視線の淵で浮いている兎のぬいぐるみ。そして、僕の顔をマジマジと見つめるピンク色の髪の毛をした少女がいた。
「き、気がつきましたか!?」
「き、君! 大丈夫か!?」
二人(?)が僕の起床に気づくと、直ぐに声をかけてきた。どうやら兎のぬいぐるみは言葉を話すようだ。噂の【霧の魔物】と言うものか?
「ここは……どこですか?」
僕はオドオドしながら聞いた。もしこの二人が悪意で僕をこのような所に眠らせたならば、普通は聞けるものでは無いが、どうやらそんな感じはしない。
よく周りを見渡してみると、何処かの教室のようで僕が寝ているベッドの横には他にもベッドがあり、目線の奥には職員室にあるような机、棚が存在していて、その中には難しそうな薬品が入っていて、直ぐに保健室だと理解する。
「ここは、魔法学園。【私立グリモワール魔法学園】だ」
「え? は? 魔法学園?」
聞いたことの無い名前に、思わずおうむ返しをしてしまう。兎のぬいぐるみは、「最初は誰でもその反応だ」と言い、大した説明も無い中、兎のぬいぐるみは話を続けようとする。
「俺は兎ノ助。隣のこいつは購買部で一店構えてる桃世ももだ。そして君! ここにいる理由はわかるな?」
「……わかりません」
「へ?」
僕の一言で、兎ノ助と桃世さんは拍子抜けしたような表情になる。
「うーん……まぁ説明しよう。君は【魔法使いに覚醒した】」
「え? 魔法……使い?」
魔法使い。それは、魔法と言う不思議な力を駆使して、噂の【霧の魔物】と戦う人類の兵。誰でもなる機会があるらしく、魔法使いになった場合は、それを【覚醒】と呼ぶらしい。
「そうだ。まぁ、信じれないとは思うが、正真正銘、君の身体は魔法使いの身体だ」
「そうなん……ですね」
「どうした?」
「いえ、朝から体がダルかったので……原因がわかってよかったと言うだけです」
巷で聞く【覚醒】は、身体の中にある魔法のエンジン【魔力】の放出制御が出来ず、そのまま魔力が抜けて行き、次第に動けなくなるのが普通なのだが、稀に魔法を放出してしまうこともあるらしい。
「とりあえず、君の名は?」
「柊……劉兎です」
「うん、間違い無いようだ」
僕の事が書かれているだろう。その書類を兎ノ助はマジマジと見ると、首を縦に振り、僕の方へと向いた。
「よろしくっ! 劉兎!」
「は、はい」
そしてそのまま、満面の笑みを浮かべながら握手を求める兎ノ助。少々戸惑いながらも、僕は握手を返した。
「よし、なら今からは学園の案内だ。ちょうどいい。もも、頼む」
「はい!」
兎ノ助の視線が変わり、先ほどまで空気だった桃世さんに向く。桃世さんは「ほらきた!」と言わんばかりのいい返事を目線に返した。
「歩けるか?」
「……ええ」
「では、行きましょう!」
兎ノ助が心配するが、身体のダルさは無くなっていて、スムーズにベッドから降りることができた。そんなことはつゆ知らず、桃世さんはめちゃめちゃ張り切っていて、少し微笑ましい。
保健室を直ぐに出て、僕は驚愕した。
その廊下の長さに。
「こっちから行きましょう! 劉兎先輩!」
「はい……よろしくお願いします。桃世さん……え? 先輩?」
律儀に言葉を返したが、少し疑問に思った。【先輩】という言葉に____
「え? だって先輩は17歳ですよね?」
「え、そうだけど?」
「ここは、転校してくるのが普通なので、年功序列なんですよ」
「え? そうなんだ……」
ここで一つの疑問が浮かぶ。
この子何歳?
「あ、私は因みに15歳です」
「そうなんだ……まぁ、改めてよろしく?」
「ふふっ……なんで疑問系なんですか」
そりゃあそうだ。いきなり年功序列って言われても、結局のところ直ぐ変えるのは難しい。
なんだかんだで、普通に話せるようにはなった。そんな間でも、どんどん案内は続いていく。だが、そこで少し気になることがあった。
「ここが風紀委員室です」
「風紀委員?」
驚いた。ここには風紀委員があるのか……
前の学校は風紀委員などはなく、あるものと言ったら生徒会と、美化委員くらいのものだった。そのため、風紀委員ってのは新鮮だ。
暇があったら、少し覗いてみようかな。
そう思った刹那。僕のその思いは打ち砕かれる。
「ちょっとそこ! 近づきすぎです!」
「あ、氷川さん……」
「は?」
今なんて言った? 近づきすぎ? 何が?
「あなた達! 必要が無いときは離れてください! しかも、風紀委員室の目の前なんて……不純です!」
「……誰この人」
「なっ!? ……って見ない顔ですね」
前言撤回。絶対風紀委員室なんか覗かない。絶対に!
「新しく入った転校生ですね? ならば丁度いいです。私は氷川紗妃。あなたの名前を教えてください」
「……柊 劉兎です」
「柊さんですね。この学園の風紀について色々と教えたいので、お時間ありますか?」
「いえ、多分無いです。今丁度学園内を案内してもらってますので、また後日」
「あ……はい」
多分無いですっていうのは嘘だ。実際はあと少し案内して貰えば終わる。時間などたっぷりある。じゃあ何故逃げたのか、理由は簡単だ。【過激すぎる】からだ。
本来、男女が必要が無いときに近づいてて不純なら、この学園は男女隔離などをしているはずだ。それをしていないのを見ると、あの人が大げさすぎるだけだということが悠々に推測できる。
「……それでここが最後。生徒会室です」
「生徒会……」
そんなことを考えているうちに着いた生徒会室。ただならぬ雰囲気が漂うそのドア。その向こうにどんな光景が広がっているのかは気になるが、今日はまだ色々とあるみたいだから、深追いはできない。
「では、次は兎ノ助さんからあるので、こちらに」
「あぁうん、ありがとう」
「い、いえっ!」
桃世さんは、バイトの時間ということで走って去っていった。て言うか、この学園、バイト良いんだね。
そして目の前にあるドアには、【生徒指導室】と書かれていて、本来は生徒の指導の部屋らしいが、転校生が来ると、ここで手続きをするらしい。
「失礼します」
「よぉ! どうだった? 学園は!」
陽気な声で話しかけてくる兎ノ助さん。部屋を見渡すが、兎ノ助さん以外は教師はいないようだ。面接のようなものを考えていた僕にとっては、完全に拍子抜けだった。
「〜で、お前の寮はこの部屋だ」
「……男子寮の最上階ですか」
「あぁ、まぁ、行ってみたほうが早いから行くぞ? 外出許可は取ってあるしな!」
「は、はぁ」
一瞬兎ノ助さんが何を言っているかよくわからなかったが、質問する前に兎ノ助さんは動き出し、僕を寮の方向へと連れて行く。
数分歩いたところで、寮の場所へと着く。そこには大きな建物が二つ。その間には広場のような物がある、俗に言う【学生寮】が存在していた。
「こっちが男子寮で、あっちが女子寮だ。間違っても女子寮に入ろうなんて思うなよ?」
「思いませんよ……」
何故か声のトーンが上がる兎ノ助さんに疑問を持ちながら、寮の部屋へと向かう僕達。最上階まできて、部屋の鍵で部屋を開けるが、そこにはいつ手配したかわからない宅配のダンボールがあって、奥の部屋にはベッドや机などが常備されていた。
「へぇ……ここが僕の部屋かぁ」
「そうだ! ここがお前の部屋だ! 物壊すなよ!?」
「壊しませんよ……僕をなんだと思ってるんですか。兎ノ助さんは」
「少し前に転校してきたやつが部屋のものを壊したからな……進路指導係として、忠告だ」
「進路指導係だったんですね……」
この兎ノ助さんが、進路指導係? 結構驚いた。
「あとな……劉兎。どう思った? この学園」
「え? どうって……」
普通なら、ここで何も浮かばないのだが、一つだけ、僕にはあった。
「男子って……定時制なんですか?」
「おおっ! 良いとこに気づいたな! だが、男子は定時制じゃ無い。【数が少ないんだ】」
「数が少ない?」
僕の質問を待ってましたと言わんばかりの顔をする兎ノ助さん。最早進路指導係の顔じゃない
「そう! この学園は男女比が2:8なんだ! どうだ! 驚いただろ!」
「え? そうなんですね」
「反応うっす!」
「はぁ……」
荷物がやっと片付き、一息つく。ふと見た机の上には、一枚の紙が置いてあって、そこには大きく「私立グリモワール魔法学園へようこそ!」と書かれていて、可愛らしいスタンプなども押されている。
そして、その下には明日の予定が書いてあって、その下には、本人が使える魔法表が付いている。
「明日は……生徒会に挨拶と? 執行部室でデバイスとクラスの振り分けかぁ……」
そして、魔法表に目がいくが、僕はそれを見て驚愕した。
「魔力量……測定不可能?! 使える魔法は回復魔法だけだと?!」
そう、魔力量は測定不可能で、使える魔法は回復魔法だけ。要するに、殆ど無能だ。
「……マジかぁ。武器とか無いのかな?」
改めてダンボールの中を探ってみるが、そこには見慣れないテニスラケットのグリップ程度の白い筒があった。
「……なんだろうコレ」
よく見ても、よく見ないでもただの筒。僕はそれに疑問を持ちながらも、とりあえずは、片付けを終わらすことを優先にした。
片付け終わるときには、その筒のことなど忘れていた。
そして、人生の中で1番ドタバタした日は終わった。
どうもー! 誤字王の白黒キャンディです!
どうですか皆さん、失笑しましたか?
てな訳で、次の僕以外の作品にもご期待ください!