「オーダー66を遂行せよ」
この日、共和国に激震が走った。パルパティーン最高議長、いやダースシディアス卿とクローン軍団の製造者であるカミーノアンの陰謀によってジェダイ・オーダーは壊滅してしまった。彼の師、メイス・ウィンドゥもまた既にアナキン・スカイウォーカーの裏切りに合い命を落としていた。そんな中、一人の若きジェダイ・ナイトはこの危機から脱しようと奮闘していた。
アドルは若きジェダイ・ナイトであり、評議会の指令を受けとある惑星の救援に向かっていた。現場にいるクローンと軍議を済ませいざ攻撃を仕掛けようとしたその矢先、クローンの持つブラスターは敵ではなくアドルに向けられていたのだ。幸い感知能力に長けたアドルは危機一髪のところでクローンの変化に気付きその場の離脱に成功した。だが状況を把握するために彼の師や他のジェダイと連絡を取ろうにも通信妨害をされているためか誰とも連絡が取れずにいた…今の彼には彼の作ったドロイドの“ウィル”しか居なかった…
「マスターウィンドゥとも連絡がつかないなんて…。それにこのフォースの乱れ…まさか…いや、あの人に限って滅多なことがあるはずがない。とにかくジェダイ聖堂に向かわなくては…。」
ジェダイは時に潜入調査を行うように隠密術にも長けている。しかし、クローンはそうしたジェダイの能力を良く知っており、何より“数”が多い。人海戦術にモノを言わせた搜索の網から逃れる術はなかった。
「いたぞ!ジェダイだ!応援を呼べ!!今度は逃すな!」
「見つかったか…ウィル!急いでファイターを発進させろ!!」
「(機械音)」
(しかし、こうも簡単にクローンに裏切られるとは…。先行きが危ぶまれるな…グリーヴァス討伐に向かったマスターオビワンや他の皆は無事だろうか…)
……
…
全てのジェダイを殺戮するためパルパティーン最高議長は入念な準備をしていた。多くの歴戦のジェダイは彼の陰謀に、凶弾に為す術なく倒れていった。それはアドルのいる惑星においても同じであり、数え切れない程のタイファイターがアドルの前に待ち受け、後方にはスターデストロイヤーも控えていた。ここからは絶対に逃がさないという意思表示にも見える。
「…敵が多すぎる。私一人ではどうにもならん。ここは逃げるしか手はないな…。後方にシールドを集中させろ。ここから離脱する!!ハイパースペースに入るための準備を急げ!」
あと少しでハイパースペースに入れる!…と思った時シールドの上からタイファイターの攻撃を受けた。しかも運悪くハイパードライブへの何らかの影響が出てしまった。
「(機械音)!」
「敵の攻撃が当たったか…何!?ハイパードライブに異常発生だと!?︎…とにかく何処でもいいからワープする!!」
アドルは強引にワープを試みた。しかし…
「な、何!?空間が歪ん…」
果たして彼は無事にジェダイ聖堂のあるコルサントへ辿り着けるのだろうか…。
◆
〜揚州盧江群舒県〜
ある女性がいた。彼女の名は周瑜、字は公瑾といい一族から三公(司徒・司空・大尉)も輩出した揚州の名門の生まれである。父親は揚州で名の知られた役人であったが、彼女は兵法にも大きな関心を寄せていた。いずれくるであろう戦乱の世に備えて…。
彼女には悩みがあった。それは自身の今後のことである。周囲からも騒がれるように彼女には名門の名に恥じない才があった。彼女自身もそれは自覚していた。ただ未だ士官していない身で今後の身の振り方に結論を出せずにいたのだ。
「(私もそろそろ今後のことに結論を出さなくてはいけない時期…。宮仕えは今の漢の状況を見るにお世辞にも良いとは言えない…。遠くない未来に漢は崩壊するとみて間違いないでしょうから…。となると自ら立ち上がるか、主君を抱くかの二択かしら…。でも私自身、主君を支える臣下となるほうが性に合っているということは重々自覚している…。よし!当面は私が仕えるに値する主君を探すことにしましょう!!そうと決まったらお父様にも相談し…!?)」
ふと夜空を見上げると一筋の光がみえた。そしてその光は周瑜宅からそう遠くない山の向こうへと落ちていった。
「あの光は…何かの前兆!?天が私に何かを伝えようとしている?…それとも何かが天から落ちてきた?いや…考えても分かる筈ないでしょうね…日が出てから光の落ちた周辺を探すことにしましょう。」
……
…
同時刻…とある山の中で一人の青年と一体のドロイドが意識を取り戻した。
「痛たた…一体どうなったんだ!?ウィル!無事か!?」
「(機械音)…」
「良かった…って文句を言うな!あの状況で他に取れる手段があったとでもいうのか!?」
「(機械音)!」
「わかった!後で埃やらなんやらは綺麗にするとも。それよりも現状把握だ。周りの様子をみるに何処かの惑星に墜落したみたいだが私の記憶にはない惑星だ…まずは大気の状態確認だ。ウィル!この惑星の大気は私が過ごせるような環境か?」
「(機械音)」
「問題なしか…むしろコルサントよりも良い空気のようだ。…次はこの惑星の座標を確認しよう。コルサントからどのくらい離れているのだろうか…せめて通信が出来る範囲ならば有難いのだが…。」
ハイパードライブは言うまでもないが非常に繊細なシステムである。異常があるなか無理矢理飛んで目的地に着くことはまず出来ない。無情にもファイターの通信システムには何の反応も現れなかった…。
「座標不明か…。何か影響があるとは踏んでいたが、ここまでとは…。逃げ切れたのはいいがいきなり遭難とは笑えない冗談だ…。」
仲間の裏切りにあった挙句に何処かわからない場所に遭難してしまう…常人なら絶望しあるいは発狂していたかもしれない。しかし、流石そこはジェダイである。彼は次に何をすべきかを考え始めていた。
「クローンの裏切りにあの周到さ…恐らくマスターの言っていたシスが動き出したのだろう…クローンが寝返ったとなるとジェダイの状況は非常に良くない。きっと多くのジェダイがクローンの攻撃で命を…。いや、意識をしっかり持て!こんな姿を見られたらまたマスターに折檻されてしまうな…。…当面はこの惑星で身を潜めつつ、なんとか通信出来る環境を整えてマスターたちに連絡を取ることを目標とするか…。となると拠点や食料が必要だ。」
「(機械音)」
「すぐ近くに集落があるみたいだ。この環境なら有人惑星だろうと踏んでいたが、少し安心したよ。とりあえず今夜はここで過ごそう。明朝に集落へ向けて出発だ。ウィルは朝になったらファイターを何処かに隠しつつファイターを頼む。」
異常事態に精神と体力が疲れ果てていたのだろう。何処ともわからない地でアドルの意識は段々と沈んでいった…
……
…
朝日が木々の間から差し込む朝、アドルはフォースに動きを感じ目を覚ました。
「(む、何か生命反応が近づいているな…)ウィル!起きろ!近くの茂みに隠れていろ。私がいいというまで出てくるなよ…。」
「(機械音)」
「大丈夫だ。手荒なマネはしない。俺はジェダイナイトだ。ただかなり辺境の惑星みたいだからな…共和国に属していないことは当然として、ジェダイという存在すら知らない恐れもある。用心するにこしたことはない。」
アドルはウィルに声をかけ人の気配がする方角へと足を進めた。暫くすると木々の向こうに人影が見えた。それは美しい若い女性であった。アドルがつい見とれてしまうほどに…。その彼女は何かを探すかのように周辺に注意を払いながらこちらに向かっていた。しかし、彼女の持つ雰囲気からも腰に持つ武器からもただの民でないことは明確であった。対応を間違ってはアドルの今後に大きく影響する…彼は心を決めて話しかけることにした。
「確かこの辺りに落ちたはず…やはりアレは夢だったのかもしれない。天から何かが落ちてくることなど起こり得ないことよね…。」
「あのーすいません。」
「!?!?誰ですか!?出て来なさい!!」
「私は別に怪しい者では…。」
「こんな朝早くにこの山中にいる者が怪しくない訳ないでしょう!!問答無用!!この周公瑾が相手になります!」
アドルの思っていた以上に彼女は大きな警戒心を持っていた。このままでは共和国の守護神たるジェダイが賊扱いされてしまう。彼は慌てて彼女の説得に取り掛かった。
「ま、待ってください!…こほん。私はつい昨晩この辺りで遭難してしまっただけなんです!落ち着いてください!」
「遭難ですか?この大して深くない山中でですか?やはり…この者はあやし…」
「私はアドル・カナリスと申すものです。見目麗しい女性に疑われることは心苦しい…どうかとりあえず私の話を聞いて下さいませんか…?」
「…いいでしょう。ただし怪しい動きをとったら…その時は覚悟してください。」
何とか話を聞いて貰える状況となったのでアドルは改めて丁寧な自己紹介を行なった。自分の名前やジェダイのことを分かりやすく説明した。
「…にわかには信じがたい話ですね…ですが貴方の真っ直ぐな目と紳士的な対応からしても清廉な人物であるだろうことは推測出来ます。私は周瑜、字を公瑾と言います、先程の賊扱いは大変失礼致しました。」
「いえ。元はといえば人気のないこのような場所でいきなり美しい女性に話しかけてしまった私に落ち度があります。こちらこそ失礼致しました。」
「う、美し…!?…コホン。そ、それよりアドル殿は変わった名をお持ちなのですね。音の響きもそうですが、字(あざな)の文化もないとは思いもしませんでした。」
それはアドルも同様であった。かなりの辺境の惑星に来てしまっただろうことは想定していたが、こうした遣り取りの中で改めて実感していた。しかし、その辺境の地で初めて出会った人間が非常に聡い女性であったことは不幸中の幸いであった。…若くて綺麗な女性であったからなおのことである。
「それで…アドル殿はこの揚州の地で拠点と職をお探しなのですね?」
「はい…かなり帰還することに時間がかかりそうなので当面の生活をするために何処か拠点と職を探そうと山を下ろうと思っていた矢先周瑜さんに出会ったのです。会ったばかりの女性にこのようなことを頼むのは気がひけるのですが…もし宜しければこの近くの街へ案内して頂けませんか?」
「それは勿論かまいませんが…そういえばアドル殿は軍人のような役職に就いていたのですよね?」
「そうですね…凡そそのような感じです。それが何か不味いのでしょうか…?」
周瑜はアドルと話をするにつれて彼に興味が湧いていった。彼の人柄だけでなく、軍人をやっていたという経歴とその実力に…。
「いえそうではありませんが…分かりました。ですが、宜しければ街の案内だけでなく職の紹介もさせてくれませんか?」
「職の紹介ですか!?しかし…そこまでお世話してもらう訳には…。」
「遠慮しないでください、先程の無礼の埋め合わせぐらいに思ってください…。しかし、いきなり見知らぬ御仁を推挙する訳にはいきません。アドル殿…軍人ということは多少なりとも武術の心得はあるのですよね?」
「はい。剣術と素手による戦闘は多少の覚えがありますが…」
「では私にその腕前を披露して下さい。私から一本取ることが出来たら職を紹介する…ということでどうでしょう?」
アドルは少し逡巡した。しかしこの聡い女性の紹介ということに魅力を感じていた。彼は周瑜の話に乗ることにした。
……
…
「では私の投げるこの石が地面に着きましたら試合開始ということで。行きますよ…えい!」
石は周瑜の手を離れ宙に浮かんだ。そしてすぐに重力に引っ張られ地に落ちた。
「「はじめ!!!!」」
周瑜は白虎九尾という鞭を武器として用いていた。対してアドルは徒手空拳であった。ライトセイバーを試合とはいえ周瑜に向けることは躊躇われたのだった。
「(先手必勝…それっ!!)」
空気を割く鋭い音ともに鞭がアドルに迫る…!しかし…アドルは余裕を持って躱していた。フォースを自在に扱うアドルにとってこの程度の攻撃ならば予測し、簡単に避けることが出来るのだ。ブラスターの攻撃に晒されることの多かった経験も活きていた。
「な、何故当たらない!?私の調子が悪い?…いやむしろ調子は良い方。それを簡単に避けるなんて余程目が良いのでしょうか。それならば…!」
周瑜は鞭を操り地面を叩いた。乾いた粒の小さい砂は一気に巻き起こり、辺りは砂埃で見えなくなった。
「(これならば視界も悪く、私の鞭の動きも見切れないでしょう。無論それは私も同じ、しかし攻撃範囲の広い鞭ならばアドル殿に攻撃を当てることも可能なはず!)」
しかし、視界の悪い中彼は一歩、また一歩と近づいていく。フォースを用いる者にとっては目に見えるものが全てではないのだ。フォースを知らない彼女にはそれを理解することは難しいが…。
「(あ、当たらない!?マズイ!このままだと素手の攻撃範囲に…!)」
徒手空拳だからといって甘くみてはいけない。彼はあのメイス・ウインドゥの弟子なのだ。素手でドロイドを軽々倒す師の教えを受けたアドルは彼程ではないものの、十分常人を超えていた。そしてアドルはついに攻撃を仕掛けた。鞭を操る彼女の腕をとり…投げた!所謂"柔道"の技である。
「痛っ!」
「だ、大丈夫ですか?周瑜さん!」
「まさか素手でいなされてしまうなんて…」
「これは師に、武器を持たぬ時でも敵と渡り合えるようにと教わった技の一つです。…師は並み居る軍勢を相手に出来る程の力を持っていましたが」
「…貴方の師は人間なのですか…。まあそれは置いておいて先程の件はお任せください。これ程の武術の腕ならば安心です。まずは私の住む街まで一緒に来ていただけますか?」
「周瑜さん。ありがとうございます。是非お願いします。」
この日が若きジェダイと楊州の才女周公瑾の出会いだった。彼らの出会いがこの三国の乱世にどんな影響を与えるのか、この時知る者は誰も居なかった。
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<人物紹介>
アドル・カナリス
若きジェダイ・ナイト。師はメイス・ウィンドゥ。主に用いる型はソーレス、ただ短い時間ならばジュヨーも使うことが出来る。不断の努力とメイス・ウィンドゥの指導によりライトセイバー、フォース共に一級品。ハイポリの戦いではグリーヴァス将軍との戦いに参加し、辛くも生還を果たした。ただスタミナに難があり、長時間の戦闘やミッションには不向き。ジオノーシスの戦いに生き残るものの、後半はほとんど役に立たなくなるほどにダウンしてしまった。
性格は誠実で穏やかな人柄であり、オビ=ワン・ケノービとは特に仲が良く最も尊敬するジェダイの一人として挙げている。また柔軟な思考の持ち主で時にはジェダイの枠には囚われない行動を起こすこともあり、規律を重んじる師から苦言を呈されることも。逆にアソーカ・タノの一件では師の行動・言動を諌めており、メイス・ウィンドゥもその指摘を受け入れ反省したとも言われている。
機械弄りが好きで自作のC1シリーズのドロイド"ウィル"をお供にしている。しかし、乗り物酔いしやすい体質も影響してか飛行技術はお世辞にも上手いとは言えない。
故郷の惑星の大幅な人口減という理由から例外的に結婚を認められているものの、「まだまだ精神的に甘い」と自覚しており未だ独身の身である。