三國志と名もなきジェダイ   作:レッドスター53

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2話 馬泥棒とジェダイ

〜アドル サイド〜

ここが周瑜さんの住む街か…やはり文化レベルはかなり低い惑星のようだ。ただそこに生きる人々の活力は私の知る人々と遜色ないな…うん?何やら騒がしいような…。

 

「大変だ!馬泥棒が出たぞ!早く取り返さなくては…。」

 

「でも少なく見積もっても300人はいたぞ…返り討ちに合うのが関の山だ。」

 

「じゃあ泣き寝入りということですか…全くいつからこの世はこんなに乱れてしまったのでしょうか…。」

 

どうやら無法者に街の誰かが馬を盗まれたようだ。どこにでもそういった輩はいるのが現実か…。

 

「アドル殿少し失礼。張世平殿、一体この騒ぎはどうしたのです?何があったのですか?」

 

「これは周瑜様!大変見苦しいところをお見せしまして申し訳ございません。実は…私と蘇双の馬500頭が賊に奪われてしまいまして…その賊もかなりの規模ということで取り返そうにも取り返せない状態で…。」

 

「賊だと!?周家の治めるこの街で不法行為を行う輩がいるとは…許せん!!張世平殿、その賊とやらは何処へ行ったのですか!?」

 

…!!お淑やかな周瑜殿の表情が変わった。纏った覇気も中々なものだ…アミダラ議員に少し似ているな。それに今の会話を聞くに彼女はこの街の有力者のようだ。

 

「お怒りは最もですが周瑜様お待ちください!先程も申し上げたように今回の賊はかなりの規模です。いかに周瑜様と言えども…かなりの危険がつきまといます!せめて!お父上の周異様にもご連絡を…」

 

「張世平殿。ご忠告は感謝します。しかし、たかが賊の300人。私の麾下50人で打ち払ってみせましょう。ご心配なく、馬は1頭も欠けさせずに取り返してご覧にいれます。誰か!私の馬を連れ、麾下をすぐ街の入口に集めさせなさい!アドル殿…という訳です。暫し所用が出来てしまいました。先程のお話は私が帰還してからでも宜しいですか?」

 

私が周瑜殿を頼っているのだからそれについて異存はない。…が。

 

「ええそれは勿論構いません…ですがこの一件、私も助太刀致します。」

 

「アドル殿!?これはあくまで我が一族の領内で起こった問題で貴方にまで力を貸して頂く訳には…。」

 

「お気になさらず。仕事の斡旋をして頂くちょっとしたお礼みたいなものです。足でまといにはなりませんので宜しくお願いします。」

 

「…はぁ。仕方ありませんね。元より貴方の武術の腕前は心配していません。すいませんが宜しくお願いします。…もう1頭馬を連れてきなさい!」

 

見知らぬ土地の出来事であったとしても、共和国に属していない惑星でのことだとしても、目の前の困っている御仁を見捨ておくことは出来ない。ジェダイとして私に出来ることをしなくては…!

 

 

~舒県から90里のとある平地~

「…斥候の情報によるとここから3里程の場所に賊どもは陣を敷いているようです。丁度その近くに兵を伏するに適した場所があるので、手勢を二手に分けて一方の兵を伏兵として追い込みます。夜明けとともに攻めましょう…アドル殿何かご意見はありますか?」

 

流石地元の有力者。街付近の地理はしっかり把握していらっしゃる。しかし、この感じ…少し離れたところに賊の仲間かもしれん集団がいるな…。

 

「…作戦には非の打ち所がないように思います。ですが、今すぐ攻めるべきだと進言します。」

 

余所者の私が周瑜殿に物申すと周瑜殿の麾下の方々がざわつき始めた。…無理もないか。

 

「静まれ!…アドル殿は夜襲をするべきだとお考えなのですか?夜襲は確かに効果的ですが、今回は馬を取り返すことが第一目的です。夜襲を行うと馬の回収に手こずることになりませんか?」

 

「確かに馬の回収には日が出てからのほうが良いでしょう。…しかし、ここから更に20里程の所に別の賊の集団の気配があります。おそらく、馬を奪った賊の仲間でしょう。合流されると厄介なことになります。だからこそ今攻めるべきだと考えたのです。」

 

「!…それは本当ですか!?いつの間に斥候を放っていたのですか?」

 

「斥候を放った訳ではないのですが…私には感じるのです。」

 

「周瑜様!このような妄言を吐く人間の言うことなど信じてはなりませんぞ!大体こやつは何者なのですか!…もしやコイツも賊の仲間で我々を嵌めようとしているのではないですか!?」

 

「控えなさい!…この方の素性は私も全てを知っている訳ではない。だが、彼は信用に値する人間だと私は判断している。アドル殿が嘘をつく…ましてや賊の仲間ということはありえない!…ですが何故そのような判断が出来たのかお教え願いますか?」

 

ジェダイの存在さえ認知している方々なら何も言わずとも納得してくれるのだが今は…。

 

「勿論です…と言いたいところですが、この点については些か説明に手間が掛かります故この場を凌いだ後であればご説明させて頂きます。」

 

「この!言わせておけばコイツ…!!」

 

「止めよといったであろう!私の顔に泥を塗るつもりか!…失礼しました。馬を回収したあとに是非お願いします。では皆支度をしなさい!すぐに出立します!伏兵部隊は私が指揮します。副長は本隊を率いて逃げてくる賊の退治を。アドル殿も本隊のほうで応戦して下さい。」

 

「「承知いたしました」」

~アドル サイド終了~

 

……

 

「(周瑜殿は指揮官としてかなりの才を持っていそうだ。判断の早さ、実行力、統率力…それこそ裏切る前のクローン兵たちを指揮したら凄まじい軍勢になったであろうな)」

 

アドルはふとクローン兵とともに戦った頃のことを思い出していた。特に彼が印象に残っている部隊はジェダイ将軍アナキン・スカイウォーカーとその直属の部下のクローン・トルーパー・キャプテンのレックスのことだった。彼らの部隊は数多くの任務をこなした一流のチームで二人は固い絆で結ばれていたのだ。アナキンやアソーカに振り回され苦労することも多かったようだが。

 

「(アナキンは無事なのだろうか…レックスはやはり裏切ってしまったのだろうか。…いかん、いかんこんな感傷に浸っている場合ではなかった。そろそろ周瑜殿からの合図があるはず。むっ!)」

 

「周瑜様からの合図だ!皆、進め!!」

 

周瑜軍は賊を逃がさないように前後で賊たちを挟みながらただ突っ込んだ。相手は練度の低い賊である。人数が多くても正規の騎馬隊に奇襲されればあっという間に崩れてしまう。ほとんどの賊が馬に乗ることすら叶わずに逃げ惑った。後は賊を逃がさず討ち取り、馬を回収するだけであった。

 

「(このくらいの相手ならばライトセイバーでないこの慣れない鉄の武器でもなんとかなるか…うん?あれは…賊の頭か?)」

 

逃げ惑う賊の中にただ一人重装備に身を固めた偉丈夫がいた。賊の頭である。その賊の頭が狙いを定め、槍を投げつけようとしている先には…。

 

「(周瑜殿!?夜目が利かずまだ気づいていないのか!?いかん!このままでは奴の格好の的になってしまう…そうはさせない!!)周瑜殿!右に避けて屈んでください!!」

 

「アドル殿!?わかった!」

 

アドルは手に持つ槍を賊に投げつけ、何とか賊の投げた槍を撃ち落とすことに成功した。しかし傍目にはアドルは丸腰となってしまった。賊の頭は思惑を外された怒りから顔を真っ赤にし、自身の邪魔だてした丸腰のアドルを次のターゲットにして襲いかかってきた。

 

「助かりました、アドル殿!今援護に向かいます!!それまでなんとか逃げてください!!」

 

「(周瑜殿もあの賊も私が丸腰だと思っているな…素手で攻めてもいいがこの未知の世界何があるかわからない…使うか!)」

 

アドルは懐から“筒”を取り出した。

 

「何だ!その短い筒は!そんなチンケなもので俺を倒そうというのか!!いい度胸じゃねぇか、ええ!てめぇは俺様がぶち殺してやるよ!」

 

「(あんなモノではいくら賊といっても…)アドル殿!!」

 

その時、賊とアドルの間に光が走った。

 

「な、何!?ぐわぁぁ!!!!」

 

奇妙な音と共に表れた青い光は賊の首と胴体を真っ二つにした。一瞬の出来事で見ていた周瑜は愚か、打ち取られた賊の頭さえ何が起こったのか分からなかった。ただでさえ乱れていた賊の集団は賊の頭が討たれたことが止めとなり壊滅。周瑜たちは賊の8割近くを討ち取る戦果を挙げたのであった。馬も戦いに巻き込まれ数頭怪我を負ったものの、500頭全てを救出することに成功した。周瑜の麾下にも死者はなく数人が軽傷を負っただけで済んだ。

 

こうしてアドルの漢における初の戦闘は幕を下ろしたのだった。

 

……

 

「本当にありがとうございました、周瑜様。周瑜様ご自身が指揮されるのできっと賊は討伐されるだろうとは思っていましたが、まさか馬も全て取り返していただけるとは…。」

 

「張世平殿、礼は無用です。我が一族の治める地域での問題なのですから当然のことをしたまでです。それよりもこのアドル殿の活躍のおかげです。彼が居なければ馬も全て取り返せていたかどうか…何より私の危機も救って頂きましたから。」

 

「なんと!そのようなことが…アドル様…と仰っていましたね。本当にありがとうございました。この張世平、この度の恩は決して忘れません。」

 

「困っている方がいれば助ける、当然のことをしたまでです。そのように大袈裟に言われてしまうと困ってしまいます。…それよりこの地域ではこうした事態は良く起こるのですか?」

 

「…このところ漢全体が乱れ賊が増えているのが現状です。おまけに最近は黄巾賊という厄介な賊の集団も出はじめていると聞きます。村だけでなく役所まで襲っているそうです。」

 

「黄巾賊という賊のことは私も耳にしたことがあります。これから漢はどのようになると思いますか?」

 

「これが容易いことではないのです、周瑜様。賊と言ってももとは民なのです。太平道というものを信仰している民による反乱なのです。漢の王朝がこのまま何の対策も講じないと鎮めることは出来ないでしょう。」

 

周瑜もそれは感じていた。今こそ漢は一つにまとまりこの事態に対処しなくてはならないが、宦官の専横が酷く政府は機能不全に陥っているのである。黄巾賊や賊が無くならない限り、張世平や蘇双といった商人たちは賊から積み荷を守るための傭兵を雇わなくてはならなくなっているのだ。

 

「さぁ、固っ苦しい話はおしまいにして宴会にしましょう!今日は私と蘇双の奢りです、周瑜様だけでなく麾下の皆様もご参加ください。勿論、アドル様も是非。」

 

……

 

「ここに居たのですか、アドル殿。まだまだ宴会は盛り上がっていますよ。」

 

「いえ、少し風に当たろうと思いまして。周瑜さん、今日はお疲れ様でした。私が言うのも何ですが、素晴らしい指揮でしたよ。」

 

「アドル殿の助力あってのことです……あの…。」

 

「私のことが聞きたいのですね……少し長い話になりますが宜しいですか?」

 

アドルは全てを話そうと考えた。彼女にここでの生活を助けて貰う負い目からではなく、今回の件を通して周公瑾という女性が信じるに値する人間だと感じたからである。そして彼はジェダイのこと、共和国のこと、何故自分がここにいるのか、敵の位置の把握するために用いたフォースのこと、青い光の筒…ライトセイバーのこと等を周瑜に話して聞かせた。

 

「…一度に信じられないことを沢山聞いて頭が一杯です。貴方はほぼ別世界からやってきたようなものだったのですね…。アドル殿が嘘をついているなんて思っていませんが中々信じられないです…。」

 

アドルは苦笑した。もし自分が周瑜の立場なら同じように感じると思ったからだ。

 

「確かに…私が周瑜殿の立場であったら同じ気持ちになると思います。…ですが全て本当のことなのです。」

 

「どうも私は頭が固いみたいです…でも本当のことだと分かっているので安心して下さい。…ところで先程言っていた“ふぉーす”のことですが実際に見せていただけませんか?」

 

「そうですね、見た方が早いですね。…では向こうに見えるあの石を宙に浮かせてご覧にいれましょう。……はっ!」

 

アドルが石のほうに手を翳し集中すると…なんと!石が独りでに浮かび上がっているではないか。

 

「あ、アドル殿これがフォースなのですか!?妖術の類ではなく…?」

 

「周瑜殿。フォースはまやかしや妖術の類ではありませんよ。フォースは銀河の万物を満たし、我々ジェダイの源ともいうべきものです。“フォースと共に在れ”という言葉にもそれは表れています。そしてフォースはこのように物を触れずに動かすだけでなく、予知や認識能力の拡大、身体能力の強化、精神や心の操作、癒やしといった様々な事に応用が出来ます。しかし、激しい怒りや憎しみに囚われてしまうと暗黒面に陥ってしまうため厳しい訓練に耐えた者しか使えませんし、私も含めジェダイは皆常にそうならないようにフォースを操っています。」

 

周瑜は言葉が出なかった。今日のアドルのしたことだけでも驚いたのに、それがまだ力のほんの一端だったとは…。この漢においても気を使い並み居る男を打ち倒す名高き姫武将を何人か知っているが、彼女らでもジェダイ…アドルに敵わないのではないかと感じた。ふとその時彼女の頭にある考えが過ぎった。

 

「(漢の乱れ、私の悩み、この出会い…もしかしたら天が彼を私に導いたのだろうか、いやそうに違いない!今日の戦いでも主君の片鱗が垣間見えたし、何より実際彼にはジェダイとして軍を率いた実績がある!アドル殿ならば主君として仕えるにピッタリの人間ではないか!…ただ彼の国も乱れ、彼自身も今は自分のことで手一杯なのかもしれない…でも言わずにいるより言ってしまったほうがいいでしょう!)あ、あのアドル殿!!!」

 

「わっ!いきなり大きな声を出してどうしたのですか?」

 

「私の…主君になってくれませんか!?」

 

 

 

 

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