三國志と名もなきジェダイ   作:レッドスター53

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3話 断金之交

 

夜明け前の暗い空の下、アドルは悩んでいた。無論、周瑜からの申し入れのことである。元々この惑星の人間ではないからとか面倒事に巻き込まれたくないから…といった理由で悩んでいるのではなかった。

 

~アドル サイド~

そもそも私はシスやクローンから追われている身。いくら辺境の惑星にいるからといってその私がこの惑星の、この国に深く関わっていいのだろうか…マスター…私はどうすれば…。

 

((アドル…アドル…))

 

「!!この声は…マスター!マスターウインドゥなのですか!?」

 

私は慌てて後ろを振り返ってみると…ボンヤリとした人影が浮かんでいた。こ、この御姿は忘れる訳がない…私の敬愛する師だ!しかし…。

 

「まさか本当にマスターウインドゥ、貴方にこんなところでお会い出来るとは…でもその御姿は一体…。」

 

『…これは霊体化…肉体的な死を遂げたジェダイの精神が全時空のフォースの一部にして全体となったのだ。私はダースベイダー…アナキン・スカイウォーカーとシスに敗れてしまった…そして共和国も…。』

 

私は師であるメイス・ウインドゥから衝撃の事実を知らされた。師の死だけでなく友であったアナキンの裏切り…多くのジェダイの死…私は目の前が真っ暗になったような錯覚に陥った。何とか私が意識を保てたのはマスターヨーダとオビワンの生存の知らせだった。彼らがシスの暗殺に失敗し、暫く潜伏するという知らせも受けた。

 

「…そうですか…私が居ない間にそのような事態に…マスター、これから私はどうすれば良いのですか…?」

 

『私はお前に自分の行動を人に全て委ねろと教えたのか?甘ったれるな!!お前はもうパダワンではないのだぞ!…』

 

久しぶりにマスターから叱責された。昔はあれほど嫌がっていたこの叱責が今は少し嬉しかった。

 

「で、ですが…。」

 

『…今の状況でお前一人がどんな行動をとったとしてもシスは倒せん。幸いシスや帝国の目が届かない辺境の地にいるのだ。何をすべきかではなく、何をしたいかを考えろ。…私の弟子、ジェダイ・ナイトのアドル・カナリスはこうした状況下でへこたれるタマじゃないはずだ。何処に身を置こうがジェダイであることに変わりはない…“フォースと共に在れ”…』

 

私のしたいこと…か。

 

……

 

日が出てから私は周瑜殿のいる邸宅へと向かった。昨日霊体とはいえマスターと会うことが出来て本当に良かった。もう私は決めた!

 

「あ、アドル殿!昨晩は良く眠れましたか?」

 

「周瑜殿、昨晩はわざわざ私の寝床を用意してくださりありがとうございました。…実は先程、フォースを通じて師と連絡が取れまして…当分の間、我々ジェダイは身を潜めることになりました。」

 

私は師から聞いたことを簡単に周瑜殿に説明し聞かせた。時間が経つにつれ周瑜殿の顔は色を失っていった…

 

「そんな状況下にアドル殿が置かれているとは…知らなかったとはいえ申し訳ございませんでした!正直に申しますと昨日の馬泥棒の一件から勝手にアドル殿を主君に抱くことを考え浮かれていました…この話は無かったことに…」

 

…もう少しオブラートに包んだ表現をするべきだったかな。やはり私は女性の扱いが全然ダメだな…。

 

「…私も師から凶報を聞いた直後は何もやる気が起きないほど落ち込んでいました。ですが師の助言を聞き、改めて今後自分が何をしたいのかを考えてみました…周瑜殿!私で良ければ昨日の申し入れ受けさせて頂いても宜しいですか?」

 

「…えっ!?で、ですが…。」

 

「私はジェダイとして…共和国のため民主主義のため…人々の平和と安寧のため力を尽くしてきました。確かにその共和国は帝国によって崩壊してしまうでしょう…ですが!その信念や守りたいものは場所が違っても変わらないと私は気付いたのです。昨日の一件や張世平殿の話を聞き、救わなくてはならない人や国が目の前にあるではないか…と。私は一人のジェダイとして一人の人間として立ち上がらなくてはならないと感じたのです。だからこそ是非周瑜殿のお力になりたいのです。」

~アドル サイド終了~

 

~周瑜 サイド~

穏やかな表情ではあるが力強いアドル殿の眼が私の顔を射抜いた。私は人前だというのに頬が涙で濡れていくのを感じた。あぁ、この人に仕えるために私はこの日まで生きてきたのだと…。女性社会と言われるこの漢においてこんな立派で強い男性を主君として仰ぐことが出来るなんて…私は暫く涙が止まらなかった。

 

「今より私周公瑾はアドル・カナリス様の臣下となります。私の真名“冥琳”を受け取って下さい。」

 

「私は軍を率いたことこそありますがそれはあくまで銀河元老院の指示あってのこと。主君として何かを為したことはありませんし、この地のことにも疎い…だからこそ周…「冥琳です。」…冥琳の助けが必要です。名目上は私と貴方の関係は主君と臣下になりますが、是非この世に平和と安寧を取り戻すための仲間として接して欲しい。」

 

この方は…本当に私の欲しいと思った言葉をかけてくださるのですね…。

 

「もったいないお言葉です。私は何かとてつもないものを得たという気がします。ですが…その口調は直して頂けると。仲間とはいえ私は臣下なのですからそのような言葉遣いは無用です。」

 

「性分のせいか、すぐには難しそうですが…善処します。…ではまず冥琳、この漢についてもっと詳しい話を聞かせて頂いても良いですか?」

 

…私はすっかりアドル様がこの地に来て日が浅かったことを忘れていた。私は改めて異国からやってきたジェダイの騎士…アドル様に漢の歴史について話して聞かせた。初代皇帝高祖が興した前漢・後漢合わせて400年の歴史のこと、外戚や宦官に権力が集中し乱れてきた政治。それが地方の役人にまで影響しその尻拭いをさせられ苦しむ民のこと、近年現れた黄巾賊のこと…。

~周瑜 サイド終了~

 

アドルは腕を組みながら黙って聞いていた。彼は銀河共和国が1000年に渡る平和の時代を謳歌するにつれて銀河各地を統治する官僚機構が肥大化し、元老院の汚職が頻発するようになったことと重ねて考えを巡らせていた。そうした事態をうまく利用し元老院最高議長に就任したのがパルパティーンであることは言うまでもない。自身で焚きつけた共和国に対する不満分子を口実に軍備拡張を推し進めクローン戦争の開始とそれに伴うジェダイの抹殺という巨大で邪悪な陰謀にアドルも巻き込まれたのだから…。

 

暫く考えたアドルは漢を打倒し新たな国を興すしかないのではないかと結論づけた。例え皇帝がまともな統治者だったとしても権威の失墜した漢では国民の怒りは静まらないであろう。そうなると新たな国を興すための同志、その基盤となる土地、漢討伐・群雄との戦いで必要な物資…多くのモノが必要になる。ヒト・モノ・カネそして情報は欠かすことの出来ないものだ。

 

しかし、新しい国を興すということは戦争や殺戮といった行為を避けて通ることは難しいということに他ならない。戦争は人民の命を奪い、人民の血が流れる以外にも多くの“負”を生み出してしまう。実際に戦争による副作用は銀河共和国においても大きく出てしまった。クローン戦争終盤にはジェダイを“自分の住む地域へ戦いを持ち込む連中”と非難する人や“正義を振りかざし、人を殺めるジェダイは分離主義者と変わらないではないか”と考える人も増えたのだ。ジェダイの中にすら評議会に不信感を抱くようになった者がいたのだから当然の帰結なのかもしれない。アソーカ・タノがそうであったように…。

 

だからこそ漢での戦いも慎重に考え行動することが求められる。

 

「今後は賊討伐などで名を挙げ漢から官位と寄って立つ地を得て、それと同時に優れた仲間集めを重点的にするべきでしょうね。叛乱が増えればそれだけ鎮圧のために出動する軍隊が力を持つようになる。だからこそ、自分たちの軍事力強化が必要不可欠です。無用な戦いや殺戮は避ける必要がありますが、話し合いなどで全ては解決しないでしょう…。平和と安寧をもたらすために軍事力や軍事行為が必要とは…漢にしても共和国にしても皮肉なものだ…。」

 

「私も同意見です、アドル様。街で義勇兵を募り、私の麾下を核とした義勇軍として立ち上がりましょう。当面の資金や兵糧についてはお父様にも相談してみます。」

 

「あっ、その前に私の仲間を紹介させてもらっても良いですか?」

 

「勿論です…ですがアドル様のお仲間…ですか?」

 

C1シリーズのドロイドのウィルを紹介された冥琳の驚きは大層なものであった。ウィルとファイターは冥琳の口利きでひと目の付かない場所に移すことになり、アドルたちが寄って立つ地を得るまではそこに留まることになった。

 

……

 

そうして二人は早速行動を行なった。その過程でアドルは冥琳の父周異とも挨拶を交わした。アドルは周異と意気投合することとなり、酒の席では『娘を頼む。』とまで言われ冥琳は顔を真っ赤にして慌てたとか。

 

そして冥琳がアドルの臣下となってから数日が経過した。

 

周異の伝で右中郎将の朱儁に黄巾賊討伐のための義勇軍としての参戦が認められ出立することとなった。アドルと冥琳が街の外に出ると麾下を含めた義勇兵1000人が集まっていた。名門周一族の評判と広く呼び掛けを行なった周異の尽力の賜物であった。そしてそこには200頭の馬を連れた張世平と蘇双の姿があった。

 

「周瑜様、アドル様。義勇軍として黄巾賊討伐のために立ち上がるとお聞きしました。この馬はお二人の決起を祝うものです。受け取ってください。」

 

「これはありがたい。張世平殿と蘇双殿、心から感謝します。貴方がた商人が安心して商売が出来るよう我らも尽力致す。」

 

アドルは周囲を見渡した。馬討伐の折ひと悶着のあった冥琳の麾下…彼らとはこの数日である程度の和解していた。彼らのアドルへの視線は以前の負の感情の篭ったモノではなくなっていた。本当の信頼は今後勝ち取っていくことだろう。また呼び掛けに応じて集まった義勇兵…彼らは眼の中に何処か不安が見て取れる。最低限度の訓練はしたものの、今後の更なる訓練と実践で軍としての質を上げる必要があるだろう。

 

そして横に並んでいる冥琳、彼女との出会いがアドルの新たな人生をスタートさせることになったのだ。彼女の軍師としての力、内政を行う文官としての力など…彼女の存在は既にアドルにとってなくてはならない存在と言える。それは冥琳にとっても同じこと。ようやく巡り合えた理想的な主君、彼の下でこそ彼女の真価が発揮されることは間違いない。後にこの二人の関係は断金之交とも言われることとなる…。

 

「これより出立する。我らは世の平和と安寧のために闘う。諸君の命はこの私アドル・カナリスが預かろう。共に戦い、共に生き抜こう。共に未来の平和を見届けようではないか!」

 

街の人々や周異や張世平、蘇双の声に送られ街を出た。冥琳は先頭を行くアドルの横に着いた。草原に風が立つ。

 

彼らの新しい生は今まさに始まった。世の平和と安寧のため…彼らは立ち上がったのだ。

 

 

 

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<人物紹介>

周瑜 公瑾 真名は冥琳 (真・恋姫†無双より)

 

揚州盧江群舒県出身の揚州の名門の生まれである。父の周異譲りの文官としての能力だけでなく、軍師としての才能にも恵まれた才女。容姿にも恵まれ舒県では知らない者のほうが少ない程の知名度と人気を誇る。アドルという彼女の理想の主君を仰ぎ、この乱世を生き抜くことになる。

史実では病死で早死しているが、この周瑜は健康体という設定。そのため身を粉にして働くこととなった。基本的には真・恋姫†無双で描写されているキャラと変わらないが、オリ主と組ませるために孫策との関わりは無し。

 

 

ウィル (スターウォーズ反乱者たちより)

 

C1シリーズのアストロメク・ドロイドでアドルが自身で組み立てたドロイドである。モデルは“スターウォーズ反乱者たち”のチョッパー。親しみやすく、特に生みの親のアドルとは仲が良い。専らアドルの手伝いをしていて漢への遭難後はファイターの修理に勤しんでいる。

 

 

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