三國志と名もなきジェダイ   作:レッドスター53

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5話 司馬仲達との出会い

~アドル サイド~

私たちは時折賊退治をしながら司馬仲達の情報を集めるため汝南郡に兵を放った。そして数日後、遂に司馬仲達の情報を得た兵が戻ってきた。

 

「なるほど…ここから30里程先の街で目撃情報があったと…」

 

「はっ!」

 

その後も司馬仲達に関する情報が次々と入ってきた。冥琳の言っていたとおり未だに誰にも士官せずに県の役人として細々とした仕事をやっているとのことだ。大きな仕事を任せようにも本人はまるでやる気がないようで、県令も司馬仲達に強く物を言えないことも相まって今の地位に落ち着いているようだ。中々腰の重い人物のようだ…さてどうしたものか…

 

「アドル様、司馬仲達の所在が判明したとお聞きしましたが…」

 

おや、冥琳に愛紗、星まで来ているとは。…一人で考えていても埒が明かないし、ここは彼女らの意見も聞いてみることにしよう。

 

「うむ…司馬仲達についての情報は少しずつ集まってきているのだが…どうすれば彼に士官してもらえるのか考えていたところでね。三人は何か名案はあるかな?」

 

「我が主よ、私は貴方の有り様をそのまま見せれば良いと思いますぞ。そして我らに語ってくださった志を司馬仲達にも聞かせればきっと臣下になってくれる、私はそう確信しております。」

 

「私も星と同じ意見です。司馬仲達という男が真の賢者であるならば、ご主人様の力になってくれるでしょう。」

 

「お二人に言われてしまいましたが…アドル様。私は貴方ならば必ず司馬仲達を臣下に…仲間に出来ると信じているからこそ紹介したのですよ?それとも私たちの言葉が信じられませんか?」

 

ここまで信頼されているとは流石に私は思わなかった…それもこのような美しく、強く、賢い三人の英傑たちに。ここまで期待されては気合を入れなくてはな!

 

「三人の意見はわかった。では早速明日にでも司馬仲達の下へ行ってみようと思う。こういうことは早いに越したことはないからね。」

 

「「「では私もお供します。」」」

 

申し出は嬉しいが一度に軍の幹部が4人も抜けてしまうのは不味いだろう。ここは公平にくじで決めて、一人には軍を任せることにしよう。む、何やら三人とも気合が入っているな…何故だろう…手汗が止まらない…

 

……

 

…結果的に明日は冥琳と愛紗を伴うことになった。星は少し拗ねていたが…無事に司馬仲達の件に肩が付いたら酒でも奢るとしよう…

~アドル サイド終了~

 

 

 

________________________________

司馬仲達は優秀だ。100人の役人や知識人に聞いてもほぼ全員がそれを肯定するだろう。司馬の八達の名に恥じない才と知識を持ち、そして何より努力をしている。彼は常日頃“才に溺れず、己を磨き続ける”を脳裏に刻み、それを実践している。いずれは母、司馬防のような政治家として国を良くするために自らの才を振るいたい…そう願っていた。しかし、彼は政治家としての一歩を踏み出したある日、絶望に落ちることになる。

「腐っている」…それが初めに感じたことであった。栄華を誇った漢の世は堕落し、役人は私腹を肥やすことばかりに腐心し民を蔑ろにしている。そんな人間たちと司馬仲達が上手くやれるであろうか…いや出来ない。能力もない者が地位にしがみつき賄賂を送る、凡愚を嫌う彼はそうした実態が許せなかった。絶望した彼は漢という国に見切りをつけ、政治との関わりを絶ち片田舎で細々とした生活をするという選択をとってしまった。

その後も士官の話は来るものの、その度に居留守を使ったり、あるいは相手を論破して嘲笑ったり…「知識があってもそれを役立てようとしないのは無能な奴よりもタチが悪い」そう評されても仕方がなかった。母や兄弟、そして普段は全く頭が上がらない妻が何とかしようと説得するも彼は首を縦に振ろうとはしなかった。今日も司馬仲達は代わり映えのしない日々を過ごしていた…

 

「ふう…今日も凡愚どもの相手は疲れたな。全く…片田舎の役人と言えど、何故あの程度のことも出来ないのやら…理解に苦しむわ。」

 

「旦那様…」

 

「春華か…何か私に言いたいことがあるのか?」

 

張春華、それが彼の妻の名前である。幼少の頃から聡明で人並み以上の知識も持っている女性だ。司馬仲達とは結婚してまだ数年しか経っていないが、夫婦としての相性は良く互いに敬意を払うまさに理想的な関係であった。それだけに彼女は今の夫の状況を心苦しく思っており、なんとかしたいと考えていた。

 

「いえ…食事の準備が済みましてのでお呼びしようと思いまして。」

 

「わかった。すぐに行く。少し待っていてくれないか?」

 

この代わり映えのしない司馬仲達と張春華の生活はある男の訪問で大きく変わることとなるのであった…

 

………

……

 

~司馬懿 サイド~

またつまらぬ役所仕事をしなくてはいけないのか…自分で選んだ道とは言えこうも退屈だと気が滅入る。…まあいい。そろそろ役所に向かうとするか…むっ?

 

「失礼。此方に司馬懿殿がお住まいと聞いたのだが間違いないでしょうか?」

 

自宅を出てすぐにある男に話しかけられた。眼鏡をかけたやや色黒の女と長い黒髪の女を伴っている。男と黒髪は身のこなし方をみるに武人だな…眼鏡の女は軍師といったところか。なるほど…誰かは分からぬが、また性懲りもなく私に士官の話を持ってきたのだな…ふん!さっさとお引き取り願うことにするか…

 

「誰から聞いたのか存じ上げないが、ここに司馬懿などという人物はいな…」

 

「旦那様?嘘は宜しくありませんよ…?」

 

「しゅ、春華!居たのか…」

 

春華に見つかってしまったか…私はこの妻を…誰にも言えないし、言わないが大切に思っている。しかし…彼女にあの目で見つめられると私には何も言えなくなってしまうのだ…

 

「う、うむ。嘘は良くないな。…お客人、失礼した。私が貴殿らの探す司馬仲達だ。」

 

「貴様!ご主人様にいけしゃあしゃあと嘘を言ったのか!許せn…」

 

「愛紗、私は気にしていませんよ。改めまして司馬懿殿、私は義勇軍の長をしておりますアドル・カナリスと申します。こちらが私の臣下の周公瑾、同じくこちらは関雲長です。宜しくお願い致す。貴殿のお噂はかねがねお聞きしています。」

 

黒髪の女は気性が荒いようだが、男のほうは中々懐が深そうだ。それにしても三公も輩出した名門周家のご息女がこのような変わった名前の男の臣下とはな…少しだけ興味が湧いた。もう少し話を聞いてやるか…

 

「こんなところで話も何だ、是非我が家で話をお聞きしよう。」

 

「そのお言葉に甘えさせて頂きます。」

 

……

 

三人を客間に案内した。今この部屋には私と客人の三人、それから…何故か春華もいる。ま、まぁそれは置いておいて本題に入るか。

 

「さて…今日は何のご用で私の下へいらしたのかな?」

 

「名高き司馬家の俊英、司馬懿殿にお聞きしたいことがあって本日は参上致しました。」

 

「ほぉ?義勇軍の長ともあろう方が一介の小役人たる私に何を聞きたいのか?」

 

敢えて少し皮肉を利かせてみたが…やはり黒髪の女は相当頭にきているな。主人の手前、必死に気持ちを抑えているのがバレバレだ。周家の娘は…おや此方も額に青筋が見える。余程この男に入れこんでいるのだな。さて…何と答える?

 

「貴殿は…今の漢の世をどう思う?」

 

「何?」

 

予想外の問いかけであった。どうせ士官の話を切り出すのだろうと高を括っていた…ふん。そちらがその気なら私も言いたい放題言ってやろうではないか!

 

「今の漢は…腐っている。そう遠くない未来に崩壊するだろう。」

 

「「「!!!」」」

 

「才もない愚か者どもが官位に固執し官中は賄賂まみれよ!才なき者どもが上に立つ国の末路など知れたこと!みよ、この国を!民が疲弊している一方で一部の輩が贅の限りを尽くしている!その結果が黄巾賊の出現ではないか。宦官どもが…愚かな役人どもが居なくならない限り!」

 

私としたことがつい熱が入り過ぎてしまったようだ。ふっ、珍しく春華も驚いた顔をしているな。反逆の言と取られても仕方のないことを言ったのだから当然か…

 

「なるほど…司馬懿殿は今の世を憂いていると…では貴殿はこの漢を変えるためにはどうする必要があるとお考えか?」

 

「ふん!当然、全てを革める必要があるであろうな。文字通り“全て”な。…だが愚か者とはいえ宦官どもはそれなりの兵力も権力も持っている。少数の才あるものが動こうとも事態は簡単には変えられないのもまた事実だ。」

 

「…つまり貴殿は“諦めた”のでございますな。」

 

「!!!」

 

この男…!私が唯一引け目としていることをこうもあっさり見抜くとは。だがこの程度で我を失う程この司馬仲達は甘くないぞ…

 

「そのような言葉で私を怒らせようと挑発しても無駄だ。私は出来もしないことを言わないだけのこと。」

 

「私たちはその“出来もしないこと”を為すために日々戦っています。私たちの展望をお話しましょう。」

 

私は暫くの間この男…アドルの言う言葉に耳を傾けた。彼らの大義、黄巾賊討伐のことから天下統一後の改革のこと…

全てを聞き、私は正直感銘を受けた。民が政治に参加するという民主主義なる未知のことを聞いたからでもあるが…何より私が一時思い描いた戦略に似ている部分があったことに驚いた。まさかこの世に私と似たことを考える者がいるとは…この男戦うだけでなく、施政者としての才もあるようだ。だが…

 

「なるほど、ただの絵空事ではないようだ。…で?私を臣下にでもしたいと?」

 

「今の私たちには司馬懿殿のような優秀な人材が…仲間が必要です。我らの大義を果たすため力を貸してくれないだろうか?」

 

やはりそうきたか…それにしても臣下ではなく仲間ときたか…存外甘い男なのかもしれんな。少し、ほんの少し心惹かれたがやはり…

 

「お断り致す。」

 

「き、貴様!」

 

「………。」

 

「私はそのような博打をうつ性分ではないのでな…用が済んだのならばお引き取り願おう。」

 

「…そうですか。では今日のところはお暇しましょう。司馬懿殿,今日は貴重なお時間を割いていただき忝ない。…冥琳、愛紗、戻りますよ。」

 

……

 

二人の女は最後まで此方を睨んでいたな…ふっ、これで良いのだ…漢を見限り…国を変えることから目を背けた、“諦めた”私には片田舎の小役人がお似合いだ…

 

「旦那様…後悔しているのではありませんか?アドル殿の誘いを断ったことを…」

 

「後悔か…そんなことが出来る資格が私に果たしてあるのだろうか…」

 

「………。」

 

春華にも心配をかけるとは…夫としても失格だな…うん?

 

((バチーーーーン!!))

 

ほ、頬が熱い…!一体何が!?…そうか!春華に私はビンタされたのだな。しかし、何故…?

 

「旦那様、すっかり腑抜けてしまったのですね。漢という国に失望して半ば隠居のようなことをしていることはいいでしょう。士官を迫る方を不快な思いにさせ追い払うのもいいでしょう。…ですが!ご自分の気持ちにまで嘘をつかれるのですか!?それでは…生きながらに死んでいるのと同じではないですか?貴方は何のために日々才を磨いているのですか?」

 

春華がここまで冷静さを欠いて話すとは…。春華の言うとおり…私は腑抜けてしまったのかもしれないな…。ここまで恥を晒すといっそ清々しい感じがするな…。私にも今一度あの男のような情熱をもって立ち上がれるだろうか?

 

「春華…私に出来るだろうか?こんな醜態を晒した私に…」

 

「旦那様、考えるより行動をするべきだと私は思いますよ?貴方にはそのような暗い顔は似合いません。以前のように相手を見下すかの如く高らかに笑っているお姿がお似合いです。」

 

「…そうだな。小役人、司馬仲達は今日でしまいだ!春華を泣かせてしまったことだしな。」

 

「…!!こ、これは目に埃が入って…!旦那様…意地悪でございます…。」

 

「フハハハハハハァ!私は司馬仲達!司馬が八達の一人!私に出来ないことなどない!!春華よ!暫し外出する!役所には休みの連絡を頼む。」

 

「はぁ…わかりました。後のことはお任せ下さい。」

 

アドル殿…貴殿の力にこの私がなってやろうではないか!首を洗って待っていろ。

~司馬懿 サイド終了~

 

………

……

 

「ご主人様!あのような無礼な対応を許してよいのですか!?」

 

「…愛紗はやや過激な発言が目立ちますが、概ね私も同感です。アドル様があそこまで懐を開いたにも関わらずあの対応…少し頭にきました。」

 

「ふふふ。二人はそう思うのか。私としてはかなり好感触であったよ。それに何より彼が噂の通りの賢者であると改めて実感出来た。」

 

「それは…フォースによる洞察ですか?」

 

「フォースを使うまでもないよ。まっ、あくまで私の勘だけどね。」

 

しかめっ面の冥琳と愛紗とは対照的に何処か晴れ晴れとした表情のアドルは自陣へ戻るべく、足を進めていた。そこへ…

 

「あ、アドル殿!」

 

息を切らした男…司馬懿がやってきた。その様子に女性陣は目を丸くして驚いていた。アドルはいつもと変わらない様子であったが。

 

「おや、司馬懿殿どうされたのですか?」

 

「まずは先程の無礼の数々申し訳なかった。八つ当たりのようなマネをしてしまったのは私が未熟故…。そして先程の申し入れだがまだ変更は可能であろうか?」

 

「ふふ、そのことはあまりお気になさらず。私の申し入れについても無論だ。」

 

「ご考慮感謝する。…では、私を…この司馬仲達を貴殿の臣下に加えてくれ!私は真名を持たぬ身、是非仲達とお呼びしてくだされ。」

 

アドルたちが初めて会った時の司馬懿とは明らかに違っていた。何処かやる気がなく、投げやりになっていたあの時の司馬懿ではなかった。今の彼には熱意が、オーラがあった。司馬仲達という英傑が今ここに羽化したのである。

 

「此方こそ改めて宜しく頼む、仲達。私たちは仲間だ。公の場でなければ貴殿のいつもの口調で話してくれ、貴殿の今の口調は…何処か違和感があってね。」

 

「むぅ…私的には完璧な口調のつもりであったが…承知した。他の者がいる前ではケジメのため敬語で話させて頂く。」

 

二人は固い握手を交わした。アドルを支える有能な人材がまたここに加わった。

 

「フハハハハハァ!アドル殿!私が加わったからには大船に乗ったつもりでいるがいい!」

 

「こ、こら仲達殿!いくら御主人様が許したとはいえそのような口の利き方!」

 

「(ふふふ、アドル様も同性の仲間が出来て嬉しそう。仲達殿をご紹介した介がありました…。彼の加入でより一層アドル軍は強くなるでしょう。私ももっと精進しなくてはね!)」

 

仲間も少しずつ増え、賊討伐の噂が流れ一部地域ではアドルたちの名が知られるようになった。アドル軍は舒県を出立したときの総勢1000人から倍の2000人近くまで勢力を拡大していた。

 

いよいよ朱儁の居る穎川郡で黄巾賊との戦いが始まる。アドルたちの戦乱の世での戦いはまだ始まったばかりだ…

 

 

 

_______________________________________

<人物紹介>

司馬懿 仲達 真名はなし (真・三國無双シリーズより)

 

河内郡温県孝敬里出身の司馬防の次男である。秀才揃いの八兄弟で司馬の八達と賛美される中でも特に優れた人物である。張春華という女性と結婚している既婚者で、専ら彼が尻に敷かれているそうだが夫婦関係も非常に良好。

 

漢と今の上層部の腐り方に嫌気がさし、片田舎で細々と暮らしていたがアドルとの出会いが彼を変えた。“才に溺れず、己を磨き続ける”それが彼のモットーであり、その才をアドルのため、大義のため、天下のため、民のために駆使すると決意したのであった。

 

 




無双シリーズの司馬懿さんが好きなので主人公陣営に引き込みました。
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