ラフコフのせいで(おかげで)一目惚れ   作:ランたまご

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第8話

「綺麗なところですね!」

 

46層についてシリカちゃんが発した言葉はまずそれだった。

その言葉通り、あたり一面お花畑、なかなかファンシーな階層だ。

多分女の子は大好き。

そしてアインクラッド随一のデートコースとしても名高い場所でもある。

 

「天気良好、デートコース、そして隣にはシリカちゃん。これ以上のことはないね、断言してもいい。ってことでキリト少し消えててくんない?」

「お前さあ、俺のことなんだと思ってるの?」

「今現在はただのおじゃま虫だ。」

「一瞬の迷いもない答をありがとうよ。」

「わかったんなら少し離れろよ。」

「いや無理だ。アスナにセルキの監視を頼まれてるからな。」

「監視なら離れてもできるだろ!ってか信用ねえな!」

「いや離れてたらいざって時止められなさそうだし。」

 

誠に遺憾である。多分襲ったりしない、嫌われたら敵わん。

 

「お二人とも、どうしたんですか?」

「ああ、悪い。ほら、行くぞ。」

「あいよ。丁度いいしシリカちゃんのレベリングしながらいくか?」

「珍しく良い提案だな。」

「えっ、でも私のレベルじゃ厳しいですよ。」

「大丈夫、ヤバかったら何があっても助けるから。命を賭してでも。」

「その気持ちは嬉しいですけど、アインクラッドでそんなこと言っちゃダメです!」

「う…ごめん。とにかくそのくらいの気持ちでいるってことだから。」

「まあせルキの言ってることは極端だけど、大丈夫。俺らがこの階層にいるくらいの敵に負けるわけ無いから。」

「そうですよね、ならレベリング手伝ってください!お願いします!」

「任しとけ。」

──────────────────────

「た、助けてくださいー!」

「よっしゃああああ!任せろおおお!」

「いや!セルキさん!見ないで!」

「無理!」

「いやああああ!でも…助けて…やっぱり見ないでください!」

 

状況を説明しよう、シリカちゃんが触手に辱められてる。

もうちょっと詳しく言うと触手を持った植物モンスターに捕まえられて振り回されてる感じだ。逆さになったりしてるせいでスカートがめくれかけてる。

スカートを渡した俺、ぐっじょぶ、スカート装備をとっておいた俺、ぐっじょぶ。植物モンスターもこの時だけはぐっじょぶ。

 

「シリカ!HP大丈夫か!ソイツすっごい弱いから落ち着けば倒せる!」

「はいい!キリトさん、どうすればいいですか?」

「とりあえず手を放そう、剣取らないとどうにもならないよ。セルキは俺が押さえつけとくから。」

「お、お願いします!」

 

「き、キリト!親友として頼む!拘束をとけ!」

「スマン、それは無理だ!」

「ちっくしょおおお!!!」

 

俺の魂の叫びと植物モンスターの断末魔の叫びが汚いユニゾンを奏でた。

──────────────────────

「セルキさん、酷いです…」

「弁明のしようもない。」

 

ホントにトランス状態だったとしか思えない。

 

「今回は許しますけど、次からはちゃんと助けてください。キリトさん、ありがとうございました!」

「ああ、倒せてよかったよ。」

 

いい笑顔を向けられやがって、今回は俺が悪いんだけど。

 

そうこうしてるうちに花があるという丘を登りきり、目的地に着いた。花というか蕾があるな。

 

「これが、プネウマの花ですか。」

「ああ。触ってみて。」

「はい。」

 

「おお…」

 

すごい、シリカが触れた途端花が咲いた。

 

「その雫をピナに。」

「はい。」

 

雫がピナの思い出アイテムに垂らされる。

一瞬のラグがあり、だんだん思い出アイテムの形が変わり始める。

3秒ほどでドラゴンのちっちゃいヤツみたいなのが生まれた。これがピナ、シリカの相棒か。

 

「ピナ!」

 

シリカの目が潤んでる。

女の子は泣かすなって言うし、悲しんで泣くのを見るのは大嫌いだが、嬉し泣きを見るのはいいものかもしれない。

 

…少し物音がするな。

 

「キリト。」

「全く、無粋な奴らだよ。」

 

「無粋とは失礼ね。なに、シリカに誘われでもしたの?もしかして貧相な子にしか興味持てない人たちなの?」

 

「うるせえババア。」

 

貧相とかいうな!

これから大っきくなるんだよ!むしろ小さくてもかわいいからいいんだよ!

 

「ロゼリアさん…」

「シリカ、花使っちゃったのね。まあいいわ。アナタを拘束してそのトカゲを殺せばまた手に入るし。」

「そんなこと、させません!」

「威勢がいいけどね、私より弱いアナタに何ができるの?それに、こっちには数がいるし。3人ぽっちじゃ変わらないわよ。」

 

その言葉通り、ワラワラと出てくる。殆どオレンジプレーヤーだな。

 

「こんなに…!」

「アハハ!数で劣ってたら勝てないわよね!死にたくなかったら大人しくトカゲを寄越しなさい!」

「うるせえって言ってんだろ、耳障りだ。」

「何よ、反抗しようっての?何もしなかったら逃がしてあげたのに。」

「随分甘いな。そんなことしたらブラックリストだぜ。ぬくぬく生きてきた証拠か。」

「なら殺してやるわよ!お前たち、行きなさい!」

「15人ってとこか?少ねえな。」

 

黒い奴らは30匹は出てくるって言うぞ、寒い地方出身だからあんま見たことないけど。

 

「何を粋がってんだよ!オラァ!」

「黙れやクソモブ。」

 

テンプレ通りに特攻してきた能無しを斬り倒す。

ソードスキルなんて要るか。

 

「へっ、マグレだろ!」

「早く逃げたほうがいいんじゃねえの!?」

 

両手剣とダガーを持った2人が同時にくる、ホントにテンプレだな。

 

「よっと。」

 

少し先行してきた1人を蹴り飛ばしもう1人は剣の腹を叩きつける。

 

「得物の重さが全く違うし一緒に来るなんて無理があるだろ。もう少し勉強しろよ。安心しろよ、監獄送りで止めてやる。」

 

「この…!もういいわ!全員で行きな!」

 

『『『おうよ!』』』

 

「少しは手応え見せろよ!」

 

変なハゲを体術スキルで殴り倒す、ダサいピアス野郎の顎を打ち砕く、いかにもモブ顔なやつを愛剣で突く。

 

「クソが!」

 

いい加減飽きてきたところに1人仲間を踏み越えて俺に剣を届かせた。

 

「オラァ!どうだ!」

「仲間を足蹴にするってのは関心しねえな!それに、この程度のレアリティの武器でどんな傷をつけられると思ってたんだ?」

「ハァ!?」

 

技術に免じて払腰をかけるだけで許してやる。

 

「あと2人か?来いや!」

「く…」

「…や、やってられるか!逃げるぞ!」

 

「残念、行き止まりだよ。俺も依頼があるもんでな、逃がせないんだ。さ、監獄行きだ。」

 

キリト、ナイスだ。

 

「お前も意地悪いよな。どんだけ斬られてもどうせ自動回復でHP戻っただろ。」

「なに、ぶちのめしたくなったからな。」

 

「なによそれ…チートじゃない…」

「ここが現実なら15人に囲まれちゃボッコボコだろうな。」

 

俺だって現実にいた頃は喧嘩はしたけどタイマンが基本だ。リンチされそうならすぐ逃げた。

 

「でも、ここはゲームの中なんだよ。いくら現実っぽく見えてもな。だからレベル差が理不尽な力量を作ることもある。」

「なによ…何者なのよ!アンタ!」

「知りたいなら名乗らせてもらおう。先日から攻略組参加、セルキ。今後とも宜しくはしたくないね。二度と見たくない。」

「こ、攻略組…」

「さあ、黒鉄宮に行ってもらおうか。お仲間はもう行ったみたいだぞ。あと、殺すなんてのはな、自分自身が殺しあって始めて使えよ。そんな軽い言葉じゃねえ。」

「くそっ!くっそお!みてな!必ずアンタを…」

「じゃあなクソビッチ。」

 

最後の言葉は聞こえなかったけれど反省しないやつだな。なんとなくわかる。

 

「おつかれ。」

「キリトもな。シリカちゃん、大丈夫だった?」

「は、はい!やっぱりセルキさんすごく強いですね!かっこよかったです!」

「え?」

「え?かっこよかったですよ?」

「よ、」

「よ?」

「よっしゃあああ!カッコイイって!カッコイイって!これだけで戦った甲斐あったわ!」

 

階層中に再び俺の魂の叫びが響いた。全く内容は違うけどな。




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