京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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久しぶりの投稿で、すいません!
なかなかネタが思いつきませんでした!


僕と水泳とお嬢様 ☆

「居心地悪いなぁ……」

 

僕、《吉井明久(よしいあきひさ)》は居心地が悪かった

 

僕が居るのは、《聖エトワール女学院》

 

そう女学院だ

 

あ、言っておくけど、僕は男だからね?

 

誰だ! 今、犯罪者って言った奴!?

 

僕がここに居るのは、ワケがある

 

それは、今から約三ヶ月前の夏休みの時のことだった

 

明久sideEND

 

第三者side

 

うるさいくらいにセミが鳴き、太陽光がジリジリと肌を焼く

 

8月に入ったが残暑が厳しく、連日猛暑日を記録している

 

そんな街中を、同じジャージを着た十人くらいの男女の一団が歩いていた

 

全員が着ているジャージは同じで、胸元には〈文月〉の文字が刺繍されている

 

その先頭に居るのは、二人の茶髪の男子だった

 

片方は三年生と分かった

 

名前は古畑海(ふるはたかい)

 

水泳部の部長で、水泳部全員がイケメンの称号を送る数少ない人物である

 

なんでも、文月学園でも女子の人気は高く、何回も告白されるが本人は困ったように笑うだけで、それがまた、人気に拍車を掛けるのである

 

「今日も猛暑日らしいけど、明久は大丈夫かい?」

 

その海が隣に居る男子、吉井明久に声を掛けた

 

「はい! もう絶好調ですよ! なんなら、このまま焼き肉屋に行ってもいいくらいに!」

 

声を掛けられた明久は、右拳を握りながらサムズアップした

 

それを見た海は、笑みを浮かべて

 

「はは、そりゃ結構。その様子なら、全国大会でもいい記録を残せそうだね」

 

「気が早いですよ、海先輩。まずは今日の試合を勝たないと」

 

今日は彼らにとっては大事な日だった

 

地区大会を制しての都大会

 

彼らはその試合会場に向かっていた

 

「相変わらず、肝が据わってるのに謙虚っていうか。大物だよ、明久は」

 

明久の様子に海が苦笑していると、明久は憮然とした表情で

 

「僕が緊張しない奴だって、知ってるでしょう?」

 

「はははっ、そういえばそうだったね」

 

この都大会を制すれば、彼らは冬の選手権に出ずに全国大会に出れる

 

そして明久は、この大会のためにトレーニングを重ねてきて、春の地区大会も勝ち抜いたのだ

 

(やれる……気分はいいし、体だって軽い……集中力も保つ自信がある)

 

明久と同じく、大会を勝ち抜いた海を含めた部員達に、海や明久達を応援に来ている部員達と談笑しながら歩いて、明久は自分の調子を再確認した

 

そして、まさしく絶好調ということを確認した明久が拳を握っていると

 

「夏休みが終われば、交換でエトワールに行ってた人達が帰ってくるね」

 

という、海の呟きが聞こえた

 

「ああ、そういえばそうですねぇ……今回は珍しく、希望者が出たんでしたっけ」

 

明久が緊張してないのを確認したからだろう、海が話題を明久に振り、明久もそれに乗った

 

「よその学校でもあるんですかね? 《交換学生制度》って」

 

「さあ……聞いたことないね……そもそも、エトワールみたいな《お隣さん》が居る僕達のほうが珍しいと思うよ」

 

「確かに、そうですね」

 

海の言葉に明久は笑った

 

まず、彼らの通う文月学園と件のエトワールこと《聖エトワール女学院》の関係を説明しよう

 

彼らの通っている文月学園は、少々特殊だが、一応進学校である

 

だが、文月学園のある文月市の隣街に存在するのが、聖エトワール女学院である

 

この聖エトワール女学院、通っているのは所謂お嬢様である

 

財界や政界、さらにはアイドルなどが通っているのである

 

そんなお嬢様学園の存在している隣街だが、正確にはその街全てが学園の土地なのである

 

噂では、私鉄すら引かれているとか

 

「ただまあ、やっぱり向こうの特殊授業には面食らったみたいだね」

 

「あ、やっぱりそうなんですか」

 

海の言葉に明久は納得していた

 

特殊授業というのは、一般的に言う道徳などに当たるらしい

 

らしいというのは、交換で行った生徒も言葉を濁したからである

 

それがどうしてなのかは、明久は知らない

 

すると明久は、何か思い付いたのか視線を海に向けて

 

「海先輩、どうですか? 一回女装して入るってのは」

 

と、問い掛けた

 

すると海は、苦笑して

 

「あのね、明久。それで僕が何回弄られてると思ってるんだい? それに、君こそどうだい?」

 

と、切り返した

 

すると明久は、手をパタパタと振って

 

「やだなぁ、僕も何回弄られてると思ってるんですか?」

 

と言うと、二人して笑いだすが、しばらくして俯くと

 

「もう、やめとこうか……」

 

「そうですね……」

 

とため息を吐いた

 

二人が落ち込んだのにはワケがある

 

それは、5月に行われた文化祭で、二人はそれぞれ

 

海 女装の似合う男子 三年生部門 一位

 

明久 女装の似合う男子 二年生部門 一位

 

という、二人としては屈辱的な結果が出たのだ

 

そして、二人が肩を落として落ち込んでいると

 

「傷つくなら、最初からやらなければいいのに……」

 

と二人の背後に居た現メンバーの紅一点、工藤愛子(くどうあいこ)が溜め息混じりに呟いた

 

すると、二人は愛子に振り向いて

 

「まあ、恒例行事みたいなものだよ」

 

「そうそう」

 

と言った

 

その時、明久の耳に子供の声が聞こえて、明久は視線を道路を挟んで反対側に向けた

 

そこには、ご近所付き合いなのだろう

 

数人の子供と親らしき人達が一緒に歩いていた

 

(さすが、この暑いなか元気だね)

 

その光景を見た明久は、微笑ましく思った

 

すると、後方から激しい音が聞こえてきた

 

視線を後ろに向けると、凄い勢いで車がカーブを曲がってきた所だった

 

(危ないなぁ……あの車)

 

明久はそう思いながら、視線を前に向けた

 

すると、信号が青になったら渡って良いと言われてたのだろう

 

二人の子供が、道路に飛び出していた

 

それを見た瞬間、明久は走り出した

 

「アッキー!?」

 

「明久!?」

 

背後から愛子と海の慌てた声が聞こえてきたが、明久はそのまま走った

 

(ああ、やっぱり今日は絶好調だ……だって、体がこんなにも軽い)

 

明久はそう思いながら走り続け、持っていたボストンバッグを投げ捨てて横断歩道に出た

 

すると、明久の視界に二人の子供の他に二人の美少女の姿があった

 

(女の子!? なんで!?)

 

が改めてよく見ると、その女の子達も子供達を助けようとしているようだった

 

その女の子達はそれぞれ、子供を一人ずつ抱えて立ち上がろうとしたが、車が猛スピードで接近してくるのを見て、少女達は固まった

 

明久はその少女達目掛けて走り、全力で少女達を突き飛ばした

 

突き飛ばしたことで、少女達と子供達は歩道に倒れる形になった

 

それを見た明久も、歩道に向かおうとしたが、視界の端に目前まで迫った車が見えた

 

それを見て、明久は覚悟を決めた

 

その直後、鈍い音が響き、嫌な音と共に明久は道路に打ち付けられた

 

「おい! 学生が弾かれたぞ!」

 

「誰か! 警察と救急車を!」

 

周囲で見ていた人達が喚くなか、海と愛子の二人は呆然とした様子で

 

「あ、明久ーー!」

 

「アッキー!」

 

二人は明久の名前を呼びながら、倒れている明久に駆け寄った

 

その後、明久は呼ばれた救急車によってすぐさま病院に運ばれた

 

だが、この事故により、水泳選手の命とも言える足に、重大な大怪我を負ってしまったのだった……

 

なお、この時の車の運転手は飲酒運転だったようで、運転手は即逮捕された

 

そして、明久の意識が戻らないまま、2ヶ月が過ぎた……

 

季節は変わり、秋のある日だった

 

「う、うぅ……」

 

「明久!?」

 

「アッキー!」

 

明久の呻き声が聞こえると、たまたま見舞いに来ていた海と愛子は明久を呼んだ

 

そして、明久の目がゆっくりと開くと安堵した様子で

 

「明久、僕達がわかるか?」

 

「わかるなら、手を握って」

 

愛子の言葉に従い、明久はぎこちなくだが、手を握った

 

海はそれを見ると、体をドアに向けて

 

「待ってろ。今先生を呼んでくるから!」

 

と言って、部屋から出ていき、それに続くように愛子も

 

「ボクもアッキーのご両親を呼ぶね!」

 

と言って、部屋を飛び出した

 

その後、明久の病室に医師と連絡を取った明久の両親が来た

 

両親からはもみくちゃにされて、医師は診察を終えるとリハビリのことを明久に説明した

 

「うわぁ……細い手……誰の手だよ」

 

明久は自分の手を見て驚いたように言うと、椅子に座っていた海と愛子が

 

「そりゃ2ヶ月近く寝たきりだったんだ。そうなるのも当然だよ」

 

「お医者さんは、動けるようになれるかわからないって言ってたくらいだし」

 

と言った

 

「ふーん……そっか……あ、そういえば、あの女の子達は大丈夫だった?」

 

自分のことを軽く流すと、明久は突き飛ばした少女達のことを聞いた

 

すると、海と愛子はため息を吐いて

 

「自分の事は軽く流して、他の人を気にするんだ……」

 

「まあ、アッキーらしいって言えば、らしいけど……」

 

と呆れてから、海が

 

「明久が歩道に突き飛ばしたから、怪我はほとんど無かったみたいだね」

 

と、教えた

 

すると、明久は安堵した様子で

 

「よかったぁ……あんな美少女たちに怪我があったら、世界的にマイナスでしたよ」

 

と、言った

 

それを聞いた海と愛子は、声を上げて笑うと

 

「本当に、明久は大物だね」

 

「本当。自分のケガのほうが重いのに、相手の心配だなんて」

 

と呆れ半分で言った

 

それを聞いた明久は、フンスと鼻息荒く

 

「ある意味、それが僕だからね」

 

と言った

 

その後、他愛ない会話をしたりリハビリをしながら日は過ぎて約二週間後

 

文月学園 水泳部部室

 

「ヤッホー! 吉井明久、復活!」

 

明久は元気よく、水泳部部室に現れた

 

「明久!? あれ? 退院は月末のはずじゃあ!?」

 

突然現れた明久を見て、海は目を見開いていた

 

「いやぁ、確かにその予定だったんですが、医者曰わく、常人とは思えない回復力で早まりました」

 

海からの問い掛けに、明久は頭を掻きながら返答してから姿勢を正して

 

「というわけで、不肖吉井明久! 今日から復帰します!」

 

と宣言した

 

それを聞いた海は、明久に無理はしないようにと念押ししてから、明久の復帰を喜んだ

 

それから、一週間後

 

「はい、ゴール!」

 

学校の周りを明久が走り、校門前に到着すると愛子は声高に言いながらストップウォッチを止めた

 

そして、表示されてるタイムを見ると

 

「うーん……やっぱり、まだ遅いね……全盛期の二倍強ってところ」

 

と、明久に画面を見せた

 

それを見た明久は、傍らに置いてあったスポーツドリンクを一口含んでから

 

「本当だ……遅いね」

 

と苦笑いした

 

「でも、アッキーは諦めないんでしょ?」

 

「もちろん! 僕の辞書に諦めるって文字は無い!」

 

愛子の言葉に同意してから、明久は呼吸を整えて

 

「それじゃあ、もう一周走ろうかな?」

 

と言って、走ろうとした

 

その直後

 

「おーい! 明久!」

 

校舎の方向から、海が走りながら明久を呼んだ

 

「海先輩、どうしたんですか?」

 

「学園長が呼んでるよ。何でも、お客様だってさ」

 

明久が問い掛けると、海はそう答えた

 

「お客様?」

 

明久は心中で

 

(はて? 来客予定なんて、あったっけ?)

 

と首を傾げた

 

そして、明久と海、ついでに愛子の三人は学園長室へと向かった

 

「失礼します。学園長、吉井明久を連れてきました」

 

海がノックしてからそう言うと、ドアの向こうから

 

『入りな』

 

と催促されたので、ドアを開けて

 

「失礼します」

 

と頭を下げた

 

明久と愛子の二人も、それに続いて入室した

 

中に居たのは、白髪の女性

 

学園長の藤堂カヲルと、見知らぬシスター服を着た美女だった

 

そのシスターは明久を見ると、微笑みながら会釈してきた

 

明久は呆気に取られながらも、軽く会釈した

 

この時は気づかなかったが、この出会いが、明久の運命を決めることになった

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