京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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流行りに乗った


ゴブリンスレイヤー 剣で舞う者 ☆

その世界では、遥か昔から神々がサイコロを振り続けていた

それにより、その世界の住人達の運命を決めていた

この時もまた、ある一つの冒険者達の一党の運命を決めるために、幻想を司る女神が二つのサイコロを振った

結果は、2D12(クリティカル)

それを見た幻想と大地の母たる地母の女神は喜んだ

これで、あの冒険者達の一党を助けられると

既に、一党のリーダーだった青年剣士は最悪の結果になってしまった

だから、全員は無理だが、確実に一人は助かる

女神達は、そう喜んでいた

あの、神々の意思で操れない(変な奴)が来て、ゴブリンを殲滅させるだろう

だが、先に現れた駒を見て、女神達だけでなく、その世界の運用をしていた神々も首を傾げた

何せ、初めて見た駒だったからだ

その世界では、見たことない武器()を二本腰に差した青年

思っていた人物ではなかったが、援軍には変わらない

そう思った幻想の女神は、その青年の行動を決めるためにサイコロを振ろうと、青年の近くに有ったサイコロを取ろうと手を伸ばした

その直後、その青年の駒がサイコロを打ち砕いた

それを見たその世界の神々は、固まった

その行動は、ある冒険者と同じだったからだ

そこに、別の世界を運用する他の神々が集まってきた

その中の一人の女神が、その青年の駒を見て驚いた

何せその青年の駒は、その女神が運用していた世界でその命と引き替えに戦争を終わらせた英雄だったからだ

しかもその青年は、神々に自分の運命を決めさせなかった

何故ならばその戦争を起こしたのは宗教で、その宗教が祀っていた神を憎んでいた

だから、神に反逆する能力が有ると

それを聞いたその世界の神々は、話し合って決めた

その青年に関しては、基本的に不干渉

しかし、物語りにするために障害は用意する。と

そう決めて、見守ることにした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「……む?」

 

ふと目を開ければ、彼はある洞窟に居た

 

「……ここは……いや、そもそも、俺は死んだ筈……」

 

その青年はそう呟きながら、洞窟から出た

回りは森で、人の気配は感じなかった

 

「……どうなっている……」

 

青年はそう言うと、装備を確認した

刀が二本に、手甲と脚甲、胴鎧

そして、腰に少し大きめのポシェット

それは、彼がよく好んでいた装備だった

 

「……とりあえず、歩くか……」

 

剣舞士(ソードダンサー)は、そう言って歩き出した

森から出ると、道があったので道沿いに歩いた

時おり通る荷馬車に道を聞き、目的地も定めずに歩いていた

食料は森で捕まえた動物を焼いて食べた

そんなある日

 

「ん……あれは……」

 

剣舞士の進む先に、黒煙が見えた

 

「確か……この先には、小さな村が有ると聞いたな……」

 

剣舞士はそう言うと、速度を早めた

既に夜になり、少し見辛かったものの、釜戸の煙とは思えなかったのだ

 

「……ゴブリンか」

 

その村は、小鬼

ゴブリンに襲われていた

身長は、約1m弱で緑色の体表の醜い化け物である

それが十数体、村を襲っていたのだ

 

「見逃す道理は無いな」

 

剣舞士はそう呟くと、刀を抜きながら走った

 

「GOB?」

 

「遅い」

 

物音に気付いた見張りらしきゴブリンが振り向いた直後、そのゴブリンは胴体から切られていた

そして、もう一体はそのゴブリンが持っていた槍で頭を貫いた

物言わぬ骸となったゴブリンを見下ろしてから、剣舞士は

 

「無事な者が居るといいが」

 

と言って、村に突入した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……!」

 

その少女は、ある樽の中に居た

水が満たされた樽で、季節柄に少し冷たい

その中に居る理由は、ゴブリンに見つからないために姉に隠れてなさいと言われたからだ

少女はその中で、祈りながら震えていた

家族の無事を祈って

その時、少女が隠れていた樽の蓋が開いた

 

「お姉ちゃん……?」

 

と少女は顔を上げて、目を見開いた

何故ならば、少女をゴブリンが見下ろしていたからだ

 

「ひっ!?」

 

「GOBGOB!!」

 

少女が息を飲んだ直後、その樽は横倒しにされて、少女は水と一緒に樽から吐き出された

 

「あぐっ」

 

地面に倒れた少女は、回りを見た

回りには、数体のゴブリンが下卑た目で少女を見ていた

 

「ひっ……」

 

少女は体を強張らせ、更に周囲を見た

周囲には、知り合いだった村人の遺体が転がっていた

隣の木こりの叔父さん

気のいい農家の叔母さん

そして何より、家族が死んでいた

 

「そんな……」

 

家族の遺体を見た少女は、絶望した

この様子では、生き残りは自分だけだろうと

そして、この後行われるだろう惨事を予想して、少女は涙を流しながら

 

「誰か……助けて……」

 

と呟き、それを嘲笑うかのようにゴブリンが一歩踏み出した

その時、ダンッという音がして、一体のゴブリンが上から降ってきた青年に踏み潰された

その青年

剣舞士は、周囲を見て

 

「こいつらで、最後か」

 

と呟き、今しがた踏み潰したゴブリンの持っていた斧を蹴り上げて、投擲

少女に背後から近付いていたゴブリンの首を飛ばした

そこからは、ものの数十秒と掛からなかった

村を襲撃したゴブリンは、確かに全滅した

 

「すまない……来るのが、遅かったようだ……」

 

剣舞士はそう言って、少女の前で膝を折った

すると少女は、剣舞士を見上げながら

 

「お兄さんは……冒険者、なの?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、剣舞士は

 

「いや……今の俺は、旅人だよ」

 

と答えた

その後剣舞士は、少女に着替えて休むように言った

不安なら、近くに居てやるから。と言って

それを聞いた少女は、水に濡れていた服を着替え、剣舞士の傍で眠った

そして、翌日

剣舞士はゴブリンの遺骸を無造作に積み上げると燃やした

放っておけば、色々と面倒だからだ

そして、村人達は組んだ木台の上に一人ずつ丁寧に並べて

 

「お別れを」

 

と少女に言った

すると少女は、近くで摘んできたのだろう

小さな花を、一本ずつ村人の上に置いていった

そして、最後に家族の遺体に

 

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……私、生きるね……」

 

と泣きながら言った

その後、少女が離れたのを確認してから、剣舞士は火を放った

遺体が燃え尽きたのを確認すると、剣舞士と少女は近くの村に向かった

その村には、少女の知り合いが居るとのことだった

それを聞いた剣舞士は、その村に少女を預けることにした

そして、数日後にその村に到着

少女を預けると、剣舞士はまた旅立とうとした

すると、少女が

 

「お兄さん! 元気でねぇ!!」

 

と手を振りながら、剣舞士を見送った

その数日後に、剣舞士はある出会いをする

ゴブリンを殺す者

ゴブリンスレイヤーに


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