京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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アマカノ・少年と少女達

「相変わらず、凄い雪……」

 

と言ったのは、雪道を一人歩く少年

吉井明久である

彼が居るのは、東北の山間部の町

夜間瀬(やませ)町である

豪雪地帯であり、道の傍らに積んである雪は二階にまで迫っている

 

「さて、こっちだったな……」

 

そう呟くと、明久は記憶の通りに道を歩いた

今明久は、ある場所に向かっていた

そこら、これから通うことになる学校の寮にして親戚が営む旅館

山ノ内荘(やまのうちそう)である

 

「変わらないなあ……」

 

明久はそう言いながら、旅館を見上げた

小さい頃の記憶となんら変わらない旅館に、明久は思わず微笑んだ

なぜ、その旅館に来たのか

旅行ではなく、今度から住むからだ

住む理由は、一つ

明久は、転校したのだ

前に居た学園は、成績最優先という風潮の場所で、成績平均の明久は、何度か高成績生徒が問題を起こしたのを見て、教師に直談判した

だが、全て無視された

その後、その高成績生徒に嵌められて、問題児に仕立てあげられた

それにより、前の学園での明久の居場所は無くなったに等しい状況になった

極僅かの友人達は、明久を信じて傍に居てくれた

しかし明久は、その友人達に迷惑を掛けられないと、何も言わずに転校することを決めた

携帯も一度解約し、新しいのを用意した

 

「……ここから、新しくスタートだ」

 

明久がそう言った時、玄関が開き

 

「買い物に行ってくるわねー」

 

と中から、一人の少女が出てきた

その少女は、両側に一房ずつ長く伸ばしているが、全体的に短く切った髪に虹彩異色眼(オッドアイ)が特徴の美少女だった

 

「あれ? 君は……?」

 

その美少女は明久に気付き、そう問い掛けてきた

すると、明久は

 

「え、えっと……僕は今日からここでお世話になります、吉井明久です」

 

と自己紹介した

すると美少女は、指を鳴らして

 

「ああ、おじいちゃん達が言ってた! お孫さん!」

 

と言った

 

「多分、そうです」

 

「そっか……君がそうなんだ」

 

明久が肯定すると、その美少女は明久をジッと見た

そして、ハッとした表情を浮かべて

 

「っと、買い物に行くんだった! じゃあ、また後でね!」

 

と言って、駆けていった

それを見送った明久は

 

「元気な人だなぁ……」

 

と呟いた

そして明久は、ドアを開けて

 

「すいません!」

 

と声を上げた

すると、受付奥のドアが開き

 

「はいはい」

 

と一人の老婆が現れた

明久の母方の祖母だ

祖母は明久を見ると、笑みを浮かべて

 

「あら、明久! 来たのねぇ」

 

と嬉しそうに言った

その間に、明久は靴を脱いでロッカーに入れて

 

「今日からお世話になるね……お爺ちゃんは?」

 

と問い掛けた

すると、祖母は

 

「今は、食材の搬入に行ってるよ……明久の荷物は、既に運んであるよ。明久の部屋は、二階奥の風の間だよ」

 

と教えてくれた

それを聞いた明久は

 

「ありがとう、お婆ちゃん」

 

と言って、部屋に向かった

荷物を開けるためだ

これから住む街で、どんな生活になるのか

それに胸を踊らせながら、部屋に向かったのだった

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