京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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久し振りに、5000字行ったわ……


ドールズフロントライン 鉄血の技師

西暦2044年、世界は第三次世界大戦、北蘭島事件を経て、人類を含めた生物は、大きくその生存圏を減らした。

第三次世界大戦で世界各国は、核ミサイルの応酬となり、広範囲が放射能で汚染。北蘭島事件では崩壊液による未曾有のバイオハザードが起きた。

そのような極限環境下での活動を想定して開発されたのが、自律人形。そして、戦力化したのが戦術人形である。

そんな戦術人形の二大メーカーの片割れ。それが、鉄血工造。東欧に本社がある企業で、整備性と量産性が特徴の戦術人形を開発している。

 

「んっー……はぁ……久しぶりに、外に出た……」

 

と背伸びしているのは、その鉄血工造に所属している研究員。サクヤ・スズミヤ。戦術人形開発部門に所属している天才の一人である。

彼女のチームは新しくハイエンド戦術人形の開発に携わっていたので、研究室に缶詰め状態になっていて、その開発が一段落したので、息抜きも兼ねて敷地内だが外に出たのだ。

 

「ふう……風が気持ちいい……」

 

そよ風をその身に受けながら、サクヤは自販機で飲み物を購入。調度よく日陰になる木陰にあるベンチに座って、飲み物をゆっくりと飲んでいた。

その時だった、サクヤはある音を耳にした。

 

「……この音は……」

 

まさかと思いつつ、サクヤはゆっくりとその音の方向に向かった。進むにつれて、その音。否、泣き声が鮮明に聞こえてくる。

 

「嘘でしょ……!」

 

そしてサクヤは、敷地端のフェンス間際に籠が置いてあるのを見つけた。その置いてある籠の辺りは、錆でフェンスが一部破損していて、近い内に交換する予定の区域だった。

そしてサクヤが見つけたのは、籠に入って泣いている生まれて間もないと思われる赤ちゃんだった。

 

「やっぱり……!」

 

捨て子だった。今のご時世ではある意味、珍しい光景でもなかった。

生存圏が減ったことにより、食べ物の生産量も低下。物価は、絶頂期の倍以上の値段になり、更に起きるテロや内乱等により親を亡くした子供がお金を稼ぐために自分の体を売り、妊娠、産んでも捨てるというのが問題になっていた。

しかし、どうすることも出来ずに今に至る。

一部の国には首都圏以外の街を運営する力がなく、その運営を一部PMC。傭兵が代行している。

そのお蔭と言っていいかは不明だが、一部の街では比較的安く食べ物が買えるようにはなった。しかしそれでも、子供の分まで買えるかは別問題になる。

鉄血工造本社のある街も、鉄血工造傘下の大手PMCが街の運営を代行していて、物資は安定している。

 

「よしよし……大丈夫だよ……」

 

サクヤはその赤ちゃんを抱き上げると、ゆっくりと揺らしながら赤ちゃんに声を掛けた。少しすると、赤ちゃんは泣きやんだ。

泣きやんだのを確認し、サクヤは置いてある籠を見た。そこに、一枚の紙が有ることに気付いた。拾ってみれば、その紙には

 

《ユウトを、お願いします》

 

と書かれてあった。ユウトというのは、赤ちゃんの名前なのだろう。

勝手な、と怒ることは出来る。しかし、やむにやまれぬ事情があったのだろう。サクヤは少し考えてから、頷いた。

それから数分後

 

代理人(エージェント)ちゃん!」

 

「おや、サクヤさん……隠し子で?」

 

「違うから!? 結婚してない私に対する嫌味!?」

 

サクヤが声を掛けたのは、鉄血工造で一番最初に作られたハイエンド人形。代理人である。

常にメイド服を着ていて、何かと面倒見のいい人形である。

なお、サクヤが結婚していない理由だが……察してほしい。

 

「その赤ちゃんは……」

 

「捨て子……あの交換が考えられてたフェンスの所に……」

 

「そうですか……定時巡回の時に異常があったとは聞いてないので、その後ですね……名前は、分かってるので?」

 

「ユウト、だって……」

 

代理人の問い掛けに、サクヤは答えながら紙を見せた。すると代理人は

 

「……勝手……と言うべきでしょうね……」

 

と言いながら、その紙を握り潰した。

その声音には、怒りが感じられる。そして代理人は

 

「それで、どうするのですか?」

 

とサクヤに問い掛けた。抽象的な問い掛けだが、サクヤはその質問の意図を察していた。

孤児院に預けるか否か。

今のご時世、各街に必ずと言っていいほどに孤児院はある。理由は、先に挙げた通りだ。

しかし

 

「私が育てる」

 

サクヤに、その孤児院に預けるという考えはなかった。

その大きな理由は

 

「あの孤児院、いい話は聞かないから……」

 

「確かに……PMCが近く、査察する気でいますが……あの孤児院はきな臭い話を聞きますね……テロ組織と繋がっているとか……」

 

鉄血工造本社近くには、ある大きな孤児院がある。しかし、あまりにもいい話を聞かない孤児院だったのだ。

もし預けて、ある日にテロ組織に使われて死んだ。とでもなれば、悔やんでも悔やみきれない。

 

「だから、私が育てる」

 

とサクヤは、決意に満ちた表情で告げた。

そんなサクヤも、実は孤児院育ちで、過去には小さな子供達の面倒を見たことがある。

その経験から、何とかなると思ったのだ。その決意を受け止めた代理人は頷くが、少しすると何とも言えない表情でサクヤを見た。

 

「代理人ちゃん……言いたいことがあるなら、はっきり言って」

 

「では僭越ながら……女子力どころか、生活力が壊滅的なサクヤさんが、子育てですか」

 

「ごふっ」

 

代理人の口撃、サクヤの精神に500のダメージ! クリティカル!

 

「服は脱ぎっぱなし、料理は作れない……そんな貴女が子育てですか……」

 

「やめて、代理人ちゃん……私の精神的体力(ライフ)はもう0よ……」

 

代理人の容赦ない口撃に、サクヤは早々に白旗を挙げた。研究員としては天才的な頭脳を有するサクヤだが、それは家事能力をどこかに放り投げた(うっちゃった)代償とも言えた。

そんなサクヤに、代理人は深々と溜め息を吐いた。そして、スヤスヤと寝ているユウトを見て

 

「仕方ありませんから……私も見ましょう」

 

と告げて、サクヤからユウトを抱き上げた。その直後、ユウトの目がパチリと開き、代理人は固まった。

 

(どうしましょう、知識としては知っていますが、泣いてしまったら、泣き止んでくれるでしょうか……)

 

と代理人は思考するが、ユウトはジッと代理人を見て

 

「あー……だ……」

 

と代理人のほうに、その小さな手を伸ばしてきた。

 

「えっと……こうでしょうか……」

 

代理人は武装でもあるサブアームも駆使し、ユウトを片手(?)で抱え、空いた手をユウトの小さな手に近づけた。するとユウトは、その小さな手で代理人の手の人差し指を掴んで笑った。

それを見た代理人が固まっていると、サクヤが

 

「気に入られたみたいだね、代理人ちゃん?」

 

と冗談めかした表情で、ウィンクした。

そして、それを聞いた代理人は

 

「……悪くありません」

 

と微笑んだ。

それから時は経ち、ユウトはスクスクと成長した。子育ては、代理人を含めた鉄血のハイエンド人形がサクヤも含めて交替で行い、その影響か、ユウトは何時しかサクヤや代理人達を姉と呼んだ。

そして、17歳。ユウトは鉄血工造で研究員となっていた。

その腕は抜きん出ていて、サクヤと並んで開発部門を代表する研究員になった。

 

「これで……よし……どう、代理人姉さん? サブアームの反応速度(レスポンス)。想定だと二割は上がった筈だよ?」

 

「……ありがとうございます。更に腕を上げましたね、ユウト」

 

「サクヤ姉さんには、まだまだ及ばないよ」

 

代理人が褒めると、ユウトは苦笑いしながら首を振った。それは、ユウトの本心である。

今居るのは調整室の一角で、ユウトは代理人の主武装であるサブアームの改修をしたのだ。

その直後、ドアが勢いよく開き

 

「ユウトー! 見て見て! こんなん出来た!」

 

と入ってきたのは、鉄血のお騒がせハイエンド。建築家(アーキテクト)である。

そんな彼女の手には、二挺の拳銃がある。

 

「アーキテクト姉さん……またそんな物を……って、ハンター姉さんの主武装じゃないですか!? なに勝手に改造してるんですか!?」

 

「ん? 魔改造はロマンだよね!」

 

ユウトはその二挺の拳銃が別のハイエンド人形の主武装と気づくが、アーキテクトは何のその。目をキラキラと輝かせている。

つまり、ロマンを追い求めて暴走したようだ。言ってはなんだが、最早慣れた暴走である。その直後

 

「アーキテクトォォォ!!」

 

「この……ポンコツ上司ィィィ!!」

 

そのアーキテクトに、二人分の足が直撃。

 

「ブベラッ!?」

 

「ごふっ!?」

 

ユウトを盛大に巻き込んで、机の下敷きになった。

 

「貴様! 私の武装を勝手に持ち出して、しかも勝手に改造したな!?」

 

「しかもその前に、ダイナゲートを改造したな!? 怒られるのは、私なんだぞ!?」

 

最初に怒ったのは、一房を残して短く切り揃えられた銀髪が特徴のハイエンド人形。狩人(ハンター)

アーキテクトが改造した拳銃の持ち主だ。

そして二人目は、計量士(ゲーガー)。アーキテクトの部下に当たるハイエンド人形である。

そんなゲーガーの話から察するに、アーキテクトはその前に機動用人形のダイナゲートを勝手に改造したようだ。

 

「だって、魔改造はロマンだよ!? 楽しいじゃん!? それにハンター! 悪いことじゃないよ? ハンターの拳銃は大口径化とロングマガジン化! 更には、銃剣も着けた! どうだ! 火力の向上と近接戦闘に同時に対応させた! ゲーガー。ダイナゲートは、脚部にローラーを追加! 腹部には多目的収容機構の追加! より、広範囲への展開と汎用性を追加だ! どうだ!!」

 

机の下から出てきたアーキテクトは、自信満々に胸を張った。はっきり言って、懲りていない。

そんなアーキテクトの態度に、ハンターとゲーガーは怒り心頭といった様子で一歩踏み出した。

その時、三人は聞き覚えのある展開音が聞こえた。

 

「……三人共、言うことはありませんか?」

 

気付けば、代理人が机の下からユウトを救出。抱き抱えながらスカートの下からサブアームを展開していた。以前までは銃と一体化した物だったが、ユウトが代理人の要望を取り入れてマニュピュレーター式に変更。

その四本のサブアームには、ユウトが専用に開発した近接戦闘用兵装の高周波マチェットが。

 

「さて、困りました……今私には、貴女方を裁く権利がありますね……忘れてませんか? ここは研究区域です……騒音は厳禁です……それなのに、ドアを壊し、机を壊し……何より……ユウトを気絶させましたね?」

 

笑顔を浮かべながら、代理人はゆっくりと三人に迫る。ユウトは起こさないように、優しく両手で抱き抱えている。

この17年、サクヤと並んで一番ユウトの面倒を見た代理人は、見事にブラコンとなっていた。

 

「懺悔は済ませましたか? 祈りは済ませましたか? 遺書は書きましたか? 部屋の隅で両膝を抱えて、ガタガタと震える覚悟はOK?」

 

刃を打ち合わせながら迫る代理人に、三人は体を寄り添わせながらガタガタと震えていた、そこに

 

「はいはい! 皆、そこまで!」

 

と開発部門の責任者になったサクヤが現れた。

 

「まったく……連絡を受けて来てみたら……」

 

サクヤの登場に、震えていた三人は助かったという風に気を抜いた。しかし、忘れてはいないだろうか。

サクヤが、ユウトを引き取り育てると決めた人物だ。

 

「アーキテクト……アーキテクトはまず、勝手に改造した銃とダイナゲートを戻すこと。ゲーガーとハンターは、机や機材を直すこと……処分は、追って伝えます……代理人ちゃん。ユウトを医務室に連れてって、治療をお願い」

 

「分かりました」

 

サクヤの指示を受けて、代理人はユウトを医務室へと運び始めた。

そして、十数分後。

 

「ふむ……これで、大丈夫ですね……」

 

「あたたたた……」

 

代理人により、ユウトは額に出来たたん瘤に治療を施された。

 

「まあ、あの三人はサクヤさんが処分を下している処でしょう……ユウトの研究室も、ハンターとゲーガーが直している筈です……」

 

「うん……ありがとう、代理人姉さん……」

 

代理人の話を聞きながら、ユウトは少しボーっとしていた。

 

「ユウト……?」

 

「代理人姉さん……こんな日が、ずっと続けばいいのにね……」

 

代理人が呼び掛けると、ユウトは窓から遠くを見ながらそう言った。

今の世界情勢を知っているから、不安になったのだ。

すると代理人は、優しくユウトの頭を抱き締めて

 

「その為に、私達が居ます……大丈夫ですよ」

 

と優しく告げた。

だが、更に世界情勢を不安定にさせる事件が、間近に迫っていた……

後に、蝶事件と呼ばれる鉄血工造製戦術人形が暴走する事件が……

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