「あぁ……いい天気だなぁ……」
と呟いたのは、自宅の居間の窓から空を見上げている少年。吉井明久だ。
「……ようやく、平和になったし……僕も普通の学生として過ごせるかな……」
少し前まで、クラスメイトの坂本雄二による試みに付き合わされていたので、少し疲れ気味だった。
「今日は珍しく朝早く起きたし……よし、家を掃除しよう」
明久はそう決めて、掃除機を用意した。その時、ピンポーンと音が鳴り響いた。
「……はて、誰かと遊ぶ約束してたっけ?」
明久は掃除機を部屋の隅に置いてから、玄関に向かい
「はーい、どなたですか?」
とドアを開けた。
すると、目の前には
「やっほ、明久くん」
明久の知り合いの少女、
「明久くん! なんで閉めるの!?」
「いやいやいや! 今、響ちゃん有名人やん!? それに、
余りに驚いたからか、なぜか方言っぽく喋っている明久。響はその華奢な見た目には反して、かなりの力を誇り、明久が両手でドアを引っ張っているのに、片手で耐えている。
「え、未来なら……」
「やっと見つけたよ、明久くん」
「……oh、ジーザス」
その響が示した先には、響の幼馴染みにして明久の知り合いの小日向未来が居た。笑顔なのだが、気迫が凄まじい。
「いきなり居なくなって、皆心配したんだよ?」
「いやあのですね、此方にもやむにやまれぬ事情というものがありまして……って待って、まさか……二人だけじゃない?」
「おう、大正解」
「うむ」
「だな」
「そうね」
「デース!」
「うん」
「お久しぶりです」
「ワア、団体サンダァ……」
明久は響に負けて開けられたドアの向こうには、かつて一緒に行動した少女達(二人は大人の女性)が居た。
「なあ、明久……本当に、いきなり消えやがって……緒川さんや旦那に頼んで探したじゃねぇか」
「本職さんが動いちゃったかぁ……」
「……緒川さん、本気出してたみたいだしね……」
長い赤みの強い髪が特徴の女性、
「……もう、中に入って」
『はーい』
諦めた明久は、全員を中に招き入れた。
そうして、居間に入ると
「改めて……久しぶりだね、皆……」
と明久は、片手を上げて挨拶した。
「本当に久しぶりです、明久さん」
「久しぶりデース!」
「お久しぶりです」
明久が挨拶すると、全員がそれぞれに挨拶してきた。そして明久は、頭をポリポリと掻いてから
「さて……なんで、僕を探したのかな?」
と首を傾げた。
「そりゃ、何も言わないでいきなり居なくなったら、探すに決まってるだろうが」
明久の問い掛けに、銀髪の少女。雪音クリスが腕組みしながら告げ、全員はそれに頷いた。
「いやまあ……あれは、僕の役割が終わったからだと思った訳で……それに、ジャバウォックの力は無くなったし……」
「そんなの、関係ないデース!」
「一緒に行動した仲間なんですから」
明久の話を聞いて、
それに続くように、顔立ちがよく似た二人。
マリア・カデンツァヴナ・イヴとセレナ・カデンツァヴナ・イヴが
「ここに居る全員は、貴方が手を差し伸べてくれたから、助かり、今ここに居るわ」
「ですから、一緒に居たいんです」
と告げた。
それを聞いた明久は、頬をポリポリと掻いた。すると、翼が
「貴方が居なければ、きっと誰か居なくなっていたかもしれない……特に、立花……立花と出会って手を差し伸べてくれなかったら、解決出来なかった事件が幾つもあった……私たちにS2CAという切り札をくれた……手を差し伸べて、繋ぐことを教えてくれたから……」
と優しい表情を浮かべた。
それに続くように、響が
「きっと、明久くんが居なければ、私はもっと長い間一人で居たと思う……下手したら、あの時死んでたかもしれないし……」
と言いながら、明久の手を握った。
「だから、私たちは言いたいの……明久くんに、ありがとうって……そして、一緒に居たいんだ……」
未来がそう言うと、明久は
「そこまで言われたら……もう僕には拒否のしようがないじゃないか……」
と微笑んだ。それを聞いた奏が
「という訳で……ほい」
と何かを机の上に置いた。それには、SONGと書いてある。
「まさか……」
『おう! そのまさかだ!』
『端末越しですが、お久しぶりです。明久さん』
『お久しぶりです』
それは、彼女達が所属する国際的組織。SONGで使われている携帯端末で、三人の声が聞こえてきた。
SONGの司令にして、翼の叔父。
「お久しぶりです」
『おう! 探したぞ! お前だって、俺達の仲間なんだ! 水臭いことは無しだ!』
明久が軽く頭を下げると、端末から弦十郎の元気な声が聞こえてきた。その存在自体が反則気味の人物で、響の今の師匠だ。
『それに明久さん、ご両親は聖遺物に深く携わり、亡くなってしまっています……そのご恩に報いる時ですよ』
敏腕マネージャーにして、現代を生きるNINJA。緒川慎二。彼が言っているのは、明久の両親のことで、明久の両親は昔、今彼女達が使っているある物に深く携わっていた。しかし、ある日に起きた事故で亡くなっている。
今明久は、その両親が遺してくれたお金と自身が働いて得たお金で生活している。
『それに、明久さんは時々ボク達には思いもしないことを思い付いて、驚かせてくれます。それは、とても大事なことです』
最後に、エルフナイン。彼女はある錬金術師が造りだしたホムンクルスで、彼女もある程度はその錬金術の知識を持っていて、何回もその知識で窮地を救ってきた。
誰か一人でも欠けていたら、今の光景は無かっただろう。
「だからさ……一緒に居ようよ……明久くん」
響が差し出してきた手を、ジッと見つめてから明久は
「うん……分かった」
と言いながら、その手を握った。
そして、賑やかな日々が幕を開ける。