京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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ISGEAR

『かんぱーい!!』

 

ある一室に、結構な人数が集まってワイワイと騒いでいた。その中心に居るのは、三人の少年少女だった。そして天井付近には、《銀河、高校受験合格、おめでとう!》と書かれた垂れ幕がある。

 

「いやぁ……本当に良かったね。銀河」

 

「本当よ。合格発表まで、気が気じゃなかったわよ」

 

「二人には、感謝しかねぇよ。本当……」

 

三人の少年少女。上から順に、草薙北斗(くさなぎほくと)、エリス・ウィラメット、出雲銀河(いずもぎんが)の三人は、少し遠い表情をしながら会話していた。

中学三年生の三人は、まさに高校受験の真っ最中の時期だが、北斗とエリスの二人は推薦入学が決まっていて、銀河だけが合格出来るかの瀬戸際だった。

そこを助けたのが、北斗とエリスの二人だった。二人が付きっきりで銀河に勉強を教えたのだ。

 

「いやぁ、北斗君にエリスちゃん。本当、うちのバカ息子のためにありがとうね! おかげで、高校も合格したし」

 

「いってぇ!?」

 

と言いながら銀河の背中をバシバシと叩いたのは、銀河の母親。出雲みどり。銀河の母親であると同時に銀河に少林寺拳法を教えた師匠だ。当然、その力は一般女性を越えている。その証拠に、バシバシと叩いた際に出ている音が北斗とエリスの二人の耳に響いている。

 

「しかし……まさかメテオの中でパーティ出来るなんて……」

 

「良かったんですか、渋谷長官?」

 

北斗が問いかけると、御歳61歳になる男性。渋谷長官こと渋谷忠明(しぶやただあき)

 

「なに、構わんよ。それに、今日はガルファとの終戦五周年記念も兼ねている」

 

と答えた。ガルファとは何か。

それは、今から約五年前に突如として地球に侵攻してきた別の惑星からの侵略者だった。それに対抗するために組織されたのが、特務組織GEARである。

そして、北斗と銀河の二人はそのGEARが有している機動兵器の電童のパイロットとして戦った。エリスは、サポートメンバーだが、何回も勝利に貢献した天才少女だ。

今居るのは、そのGEAR創設の切っ掛けの一つたる宇宙戦闘艦メテオの内部だ。

 

「それに、たまにメテオの接続確認もせんとな」

 

渋谷長官はそう言いながら、今居る司令室の高い場所にある天秤のような大きな機械を見た。

それの名前は、メテオ。宇宙戦闘艦の名前でもあり、その機械。統括AIコンピューターの名前でもある。

 

「長官、確認は終わりました。問題ありません」

 

「おお、すまんな。こんな日にまで確認させて」

 

渋谷に報告しに現れたのは、井上博光(いのうえひろみつ)博士。GEARの主任メカニックである。

 

「しかし、もう五年ですか……時が経つのは早いものですね……」

 

「確かにな……小学生だった三人が、もうすぐで高校生だからな……」

 

そう語る井上と渋谷の目は、三人を優しく見ている。会場となっている司令室内では、様々な人達が陽気に話し合ったり料理を食べている。その中で、三人は仲良く会話している。

 

「やはり、子供というのはこうでなければな」

 

「はい……戦いに巻き込んだのは、我々ですからね……」

 

とそこまで話していた時、突如として司令室内で甲高い警報音が鳴った。

 

「メテオ! 何があったの!?」

 

そう問い掛けたのは、一人の女性だった。名前は、草薙織恵(くさなぎおりえ)。北斗の母親であり、更に言えばGEARの副司令でもある。

 

『本部内にて、原因不明の謎の力場が発生。爆発的な勢いで広がっています』

 

とメテオが答えた直後、その場に居た全員の視界が白一色に染まった。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「……なんで、誰も信じてくれないのかな……」

 

薄暗い部屋で、一人の女性がポツリと呟いた。その女性の姿は、簡単に言うならば、一人不思議の国のアリスと言えるだろう。その女性の名前は、篠ノ之束(しののの束)。今世界規模で有名な女性である。

 

「束樣……」

 

「もう、持たないのに……」

 

束は悲壮感を漂わせながら、あるモニターを見た。そのモニターには、宇宙空間が映されていて、人工衛星が宇宙空間の方に閃光を次々と放っている。その閃光を、一体の奇妙な存在が避けていた。人の体に蚊のような頭をした存在。その全身が機械で出来ていて、全長は優に20mは届くだろう。その存在から放たれた閃光で、一基の人工衛星が破壊された。

 

「束樣、残り8基となりました……」

 

「つっ……」

 

目を閉じた長い銀髪の少女。クロエ・クロニクルの言葉に、束は唇を噛んだ。その時、甲高い警報音が鳴り響いた。

 

「なに!?」

 

「……どうやら、島の近くに突如何かが現れたようです」

 

クロエがそう言うと、モニターの一つにそれが映された。海に浮く、巨大な白いモノだった。

 

「なに、あれ……」

 

これが、一人地球を守っていた天災とその先達達の出逢いとなる。


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