京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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お久しぶりの新作予告です


おバカのアスラクライン

皆さんは、幽霊の存在を信じるだろうか。まあ、大多数の人は信じないと答えるだろう。だけど、僕は信じている。だって……

 

『明久には、アタシが憑いてるものね』

 

その幽霊に、憑かれいてるからに他ならないからだ。僕、吉井明久は、知る人からは幽霊憑き、と呼ばれている。

 

「……ここが、新しい下宿先か」

 

『確か、鳴桜邸って言うのよね。それより明久、知ってる? 桜の木の下には、死体が埋まってるってよく言われるわよ?』

 

「……それを、他ならぬ君が言う? 優子……」

 

僕に憑いてる幽霊の名前は、木下優子。いわゆる、幼馴染みというやつで、今から約三年前から僕に憑いている幽霊だ、

 

「お、なんだ? 優子ちゃんが何か言ってるのか?」

 

「あ、樋口。今日は手伝ってくれて、ありがとうね」

 

一人言に見える僕の言葉に反応したのは、樋口琢磨。幽霊憑きと呼ばれる僕の数少ない友人だ。今は、僕の引っ越しを手伝ってくれている。

 

「しっかし、この建物……鳴桜邸って言うんだっけ? 何かありそうだよなぁ!」

 

そして樋口は、大のオカルトマニア。幽霊からUMAと怪奇現象ならなんでもござれの人物で、だからこそ僕と友達になってくれたとも言える。

 

「それより、早く荷物を運ばないと夕方までに終わらないよ」

 

「おっと、それはまずい」

 

僕の言葉を聞いて、樋口は新しい段ボールを抱えて運び出したが

 

「だけどよ、明久……俺が渡したオカルトの本はどうした!?」

 

「実家に置いてきたよ!」

 

何度でも言おう、樋口は大のオカルトマニアだ。

 

「なにぃ!? 何故だ!?」

 

「どう考えても要らないでしょ!?」

 

「そういやあ、エロ本も見ないな」

 

『それは、私が居るから要らないよねぇ』

 

優子、シャラップ。

 

「だけどさ、お前も災難だよな。実家から追い出されるなんてよ」

 

「樋口、言い方に語弊があるよ」

 

「けど、事実だろ」

 

「むぐ……」

 

僕がこの鳴桜邸に住むことになった理由は、主に二つ。一つ目は、実家からだと少し距離があって通うのに時間が掛かるから。これも重要だが、もう一つの理由の方が本題になる。

実は少し前に、僕の母さんが再婚し、新しい義父さんと義妹が出来た。それは喜ばしいことなんだが、それにより実家たるアパートでは手狭になってしまい、新しい家を探すまでの間、僕が一人暮らしすることになったのだ。

 

「まあ、一人暮らしに憧れてたから大丈夫さ。それも、こんな大きな家だしね」

 

「確かに。二階建ての一軒家だもんな。家賃は、お袋さんが?」

 

「まあ、流石にね。近い内には挨拶に行く予定だよ」

 

僕と樋口は、会話しながら次々と段ボールを運び込んでいく。家具類は一通り揃っているのが、助かった。

一通り運び込んで、少し休んでいると

 

「おーい! 明久ー! 樋口ー!」

 

と外から、元気な声が聞こえてきた。

 

「お、来たか」

 

「だね」

 

僕と樋口は一緒に玄関に行った。すると、門の辺りに一台の軽トラックが停まっていて、ヘアバンドを着けた一人の少女と腰に《大原酒店》という前掛けを着けた大柄な男性が居た。

 

「杏! 恭平さん!」

 

そこに居たのは、僕の数少ない友人の大原杏とそのお父さんの恭平さんだった。杏の実家はお酒屋を経営してて、軽トラックは主に配達に使っている。そして荷台には、一台の自転車が載っている。

 

「明久、お前の自転車だ! それと、これは今日の飯だな。どうせ、引っ越し作業で疲れちまうだろうからな。重箱は明日にでも持ってきてくれればいいさ」

 

「あ、ありがとうございます。桜子さんにもお礼をお願いします」

 

「いいってことよ! 杏、お前も手伝ってやんな! 配達後に迎えにきてやっから」

 

「はーい」

 

恭平さんは自転車を荷台から下ろすと、自転車の荷台に重箱を置いた。そして、杏に僕達の手伝いをするように言ってから、軽トラックに乗って去っていった。どうやら、配達の途中で来てくれたらしい。

さて

 

「樋口、なにしてるのさ」

 

「本当だよ、ドアの陰に隠れてさ」

 

僕と視線の先。ドアの陰に樋口が隠れていた。

 

「明久……よく、あの人と話せるよな……」

 

「恭平さん? 気さくで優しい人だよ?」

 

「いや、俺さ……矢口があの人にボッコボコにされてるの見たんだが……」

 

矢口というのは、中学時代の同級生で、中学では柔道部に所属し、一番体が大きかった男子だ。けどさ……

 

「いやいや、あれは矢口が悪いよ。制服着たまま、お酒を買いに来たんだよ? お店としたら、追い出すのは当たり前じゃんか」

 

まあ、多少やり過ぎとは思ったけど。制服、ビリビリにしちゃったし。なんで、僕が知ってるのかと言えば、僕は中学時から大原酒店でバイトしているからだ。

バイトしている理由は、自分の遊ぶお金位は自分で稼ごうと考えたから。僕の母さんは、僕とバカ兄貴が小さい時から女手一つで僕達を育ててくれた。仕事は看護師で

、何時も忙しそうにしてた。だから僕も、自分に出来ることは自分でするようになっていた。家事もその一つだし、バイトもだ。

しかし、中学生を働かせてくれるところなんて、中々無い。そこに、杏が声を掛けてくれた。どうやら、僕がバイトを探しているのをランニングしていた時に見つけたらしい。

僕の仕事内容は、棚へのお酒の補充や自転車での配達・受注。そして、レジ打ち。

普通だったら、任せないようなことだろうけども、杏の友達だからって任せてもらってる。時給は、一時間990円。

そして杏は、陸上部に所属してて、朗らかな性格で大原酒店の看板娘(本人談)。

 

「今、なんか変なこと考えてない?」

 

「まさか」

 

危なかった。

三人で会話しながら、少しずつ荷開きしていく。うん。一人でやるより、断然早い。

その時、チャイムが鳴った

 

「え、お客?」

 

「あー、新聞の勧誘かな? 明久、断る?」

 

「うん、お願い」

 

「お任せー♪ 出来るだけ、むしってくるねー」

 

杏は朗らかに言いながら、玄関に向かっていった。やはり経営に関わっているからか、杏はやたらと交渉が上手い。新聞の勧誘なんかは、相手から出させるだけ出させて断ることが出来る。そして実を言えば、僕の家もその恩恵を受けていたりする。

 

「何分で帰ってくると思う? 俺は二分」

 

「一分で」

 

と樋口と会話していると、トタトタと帰ってくる足音が聞こえた。はて、いくらなんでも早くない?

と樋口と顔を見合わせていると、杏がひょこりと顔を出して

 

「ねえ、明久……なんか、凄い美人さんが明久に会いたいって」

 

「……はい?」

 

杏の予想外の言葉に、僕は思わず首を傾げた。取り敢えず玄関に行くと、そこにはボブカットの黒髪に赤いフレームの眼鏡。そして、黒のロングコートを着た長身の美人さんが居た。

 

「えっと、僕に用事と聞きましたが……」

 

「ええ……直正さんからこれを渡すように頼まれたのよ」

 

僕の問い掛けに、その美人さんは足下を指差した。そこには、一個のトランクがあった。

いや、それよりも!

 

「バカ兄貴を知ってるんですか!?」

 

「ええ、知ってる……」

 

実はバカ兄貴は、何年か前から実家に帰ってきていない。だから僕は、バカ兄貴。吉井直正を探している。

 

「けど、今は教えられない……知りたかったら、私の所まで来なさいな……じゃあね」

 

「あ、あの!」

 

僕が呼び掛けるが、その女性はそのまま去っていった。

これが、僕の波乱に満ちた一年の幕開けだった。

世界を賭けた、神との戦いの。

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