京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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バカは正義の味方になりたくて

僕は、正義の味方に憧れた。

泣いてる人が居たら、どんな時でも助ける。そんな存在に憧れて、僕は陰ながら努力した。

体を鍛え、必死に勉強もした。ただあまり目立ったらまずいと考えて、普段はバカを装った。

しかし、近所で変な噂が聞こえたり、事件があったら介入していた。

そんな中、気付けば異世界転生していた。

吉井明久から、アキ・カゲノーになった。

この世界には、魔力という力が存在し、それを使う魔剣士が居た。

それは、この世界の僕の姉。クレア・カゲノーもそうだった。

 

「あんた、相変わらず可もなく不可もなくね……本当に鍛練してるの?」

 

「してるよ。ただ、カゲノー家の麒麟児って呼ばれる姉さんには敵わないだけさ」

 

クレアの一撃で軽く押し飛ばされたアキに、クレアは苦言を呈した。

長い黒髪に、赤い目。更には整った容姿のクレアは、カゲノー家内と父親の部下からは麒麟児と呼ばれる程に強かった。カゲノー家の私設騎士団の副団長に迫る程だ。

 

「それじゃあ、私は家に戻るけど、アキは魔力の鍛練をしなさいね」

 

クレアは長い髪を揺らしながら、アキに背を向けてその場を離れた。アキはクレアの気配がかなり離れたのを確認してから

 

「魔力の鍛練は、常にしてるさ……多分、カゲノー家で一番やってるんじゃないかな? でないと、正義の味方にはなれないからね……」

 

アキはそう言って、クレアとの模擬戦で壊れた岩を素手で破砕した。魔剣士はただ大出力の魔力を身に纏い、剣を振る。アキは父親のオヤジ・カゲノーとクレアからそう教わった。

しかし、それはただ力任せに斬ってるだけ。アキはそれをヨシとせず、独自の魔力鍛練をしていた。

更に、ある物を開発した。

 

「さて……盗賊退治と行こうか」

 

つい先日、知り合いの商人から盗賊が出たという話を聞いていたので、アキは開発した物の試験を兼ねて盗賊退治に向かった。

カゲノー男爵領の外れ、その廃村に十数人の盗賊が居た。その傍には、数台の壊れた馬車が転がっている。

 

「ギャハハハハハ! 最後の商人達、たんまり持ってたな!」

 

「だな! それに、最後の顔には笑えるぜ! やめてー、子供だけは助けてってな!」

 

酒を飲みながら、盗賊達は下衆な事を笑っていた。

近くの壊れた建物の一つには、女商人とその子供の遺体が吊るされていた。

会話内容から、女商人の目の前で子供を殺し、その後に吊るしたのだろう。一人が笑いながら、酒を飲んだ。その直後、その盗賊の頭が弾けた。

 

「なっ!?」

 

「なんだ!?」

 

その光景に一人が狼狽えながら、立ち上がった。その瞬間

 

「二人目」

 

と呟きながら、アキが黒い刀で盗賊の首を飛ばした。

 

「なんだ、てめぇ!?」

 

「このガキが!!」

 

アキは今現在、頭の先から脛の半ばまでフード付きの黒いマントを被っている。

 

「さて、汎用性は高いのは確認出来た……」

 

アキはそう言って、生き残りの盗賊を視認した。

実は最初の一撃は、今着ているスライムスーツの一部分を切り離し、弾丸として放ったのだ。

スライムスーツは、その名前の通りに魔物のスライムを基にアキが作った。

数体のスライムの体液に自身の血を混ぜて産み出したのが、このスライムスーツである。アキがスライムスーツを作った切っ掛けは、本当に偶然だがスライムが非常に魔力の伝導率が高いのを知ったからだ。

この世界で一番魔力の伝導率が高いとされるミスリルが、最高質ので伝導率50%程度。つまり、全力で魔力をミスリルに流しても、半分流れれば良い位。

しかし、スライムの体液の伝導率は驚異の99%だったのだ。

それに気付いたアキは、数体のスライムを狩り、その体液に自身の血を混ぜて操り易くし、スライムスーツを開発した。

スライムスーツは、基がスライムな為に様々な形に変形出来て、先ほどのように弾丸のようにしたり、剣のようにして振り回したり

 

「おらっ!」

 

「死ね!」

 

二人の盗賊がアキに剣を繰り出し命中するが、アキは無傷だった。

 

「防御力も高い……いいね、スライムスーツは!」

 

スライムスーツの防御力は非常に高く、剣の直撃を受けても多少の衝撃を感じる程度だった。

ある程度確認が終わったアキは、あっという間に盗賊を殲滅した。そして、遺体を下ろして

 

「……間に合わなくて、ごめんなさい」

 

両手を合わせてから、その遺体を埋めた。

盗賊が集めたお金は、自分の物にして、他に見つけた物をどうしようか考えていた時、ある廃屋から音が聞こえて、盗賊の生き残りが居るのか確認しに向かい、檻を見つけたのだが、その中には腐乱した肉塊を見つけた。

最初は腐乱死体かと思っていたが、よく見ればまだ動いている事に気付き

 

「もしかして……《悪魔憑き》かな」

 

とある存在に行き着いた。

ある日を境に肉体が腐り始め、じきに死ぬという奇病である。聖教会は悪魔憑きを浄化と言って引き取っているが、裏では処刑していると聞く。

 

「この波長……魔力暴走!? 大量の魔力持ちの証拠だけど……治してみよう」

 

魔力暴走

これは、大量の魔力持ちが魔力の制御を失敗した時に起きる現象で、アキは一回起こした事があり、その時は自力で立て直した。

その時の感覚を頼りに、アキは治療を始めた。

それから約三週間後

 

「治せたけど……まさか、こんな金髪美少女エルフだったなんて……」

 

「嘘……あんなに、腐ってたのに……!」

 

アキの目の前に、一人の長い金髪が特徴のエルフの美少女が居た。

これが、後にアルファと呼ばれる少女との出会い。そして、シャドウガーデンの始まりだった。

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