京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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ある方の作品を参考にさせていただきました


ブルーアーカイブ・バカの軌跡

その日、彼。吉井明久は雨の中傘を差して歩いていた。

近所のスーパーへの買い物からの帰り道。

彼は高校三年生になってはいたが、将来へのヴィジョンが見えていなくて、自分が何をしたいのか分からなかったから、高卒で働くか、頑張って大学に行くか迷っていた。

 

「本当、どうしようかな……料理学校に行って、お店で働く……っていうのもあるかもしれないけど……」

 

明久の両親は基本的に放任主義というべきか、何をするのかは好きにしなさい。全力で応援するし、支援もする、というスタンスだから、明久が将来を決めたら応援と支援はしてくれるだろう。

 

「だけど、本当にどうしようかな……」

 

明久は悩みながら、家の近所の公園の前に到着した。その時、その公園の真ん中辺りにあるコンクリート製の大きな滑り台の台の中に、何かを見つけた。

 

「なんだ?」

 

それが気になった明久は、その滑り台に近づき、台の中を見た。そこには、ボロボロの衣服を着た四人の少女達が居た。しかもその少女達の頭の上には、天使のわっかを彷彿させる物。ヘイローがあった。

 

(この子達……キヴォトス人……だ)

 

キヴォトス人というのは、ある場所にある巨大学園都市。キヴォトスに住む人達の総称だ。

そのキヴォトスには様々な人達が住んでおり、その内の特徴の一つに、頭の上にヘイローというのが浮いている。

 

「君たち、こんな所でどうしたの? 家族は?」

 

明久は優しく問い掛けたが、長い紺色の髪と帽子を被った少女。後に、錠前サオリと分かる。が明久を睨み付けながら、三人を庇うように前に出てきた。

その瞳からは、明久に対する……というよりも、大人に対する怒りと拒否、嫌悪感を、明久は感じとった。

そしてよく見れば、全員の全身に痣がある事に気付いた。

それに気付いた明久は、僅かにギリッと歯を噛み鳴らしてから、笑顔を浮かべて

 

「大丈夫だよ……僕から君たちに、酷い事はしない……むしろ、震えてる君たちを助けたいんだ……信じられないかもしれないけど……どうか、今は僕を信じて着いてきてくれないかな?」

 

と優しく声を掛けた。

サオリは一言も喋らず、明久を睨んでいたが、サオリの背後に居た薄い紫の髪の少女、後に秤アツコと分かる、が

 

「サオリ……この人を、信じてみよう……」

 

「姫……! だが……!」

 

アツコの言葉に、サオリが躊躇っているが

 

「この人の目……今まで見てきた大人とは、全然違う……綺麗だから……」

 

とアツコは、明久の目をジッと見ていた。それを聞いたサオリは、暫く俯いてから

 

「分かった……」

 

とそれまで広げていた両手を下ろした。すると、アツコの両側に居た二人の少女、槌永ヒヨリと忌野ミサキはまだ明久を睨んではいるが、警戒は解いた。

それから受け入れられた、と判断した明久は

 

「それじゃあ、着いてきて……この近くに、僕が住んでる家があるから……あ、なるべく密着して、傘に入れるようにね」

 

と四人に言った。

そして四人は滑り台の下から出てきたが、その時になって明久は四人が裸足だと気付いた。

 

「あ、靴履いてないんだ……寒いけど、頑張れる?」

 

今はまだ4月になったばかりなので、季節的にもまだ肌寒く、雨の影響もあってかなり冷え込む。

 

「大丈夫……ここまで、裸足だったから……」

 

サオリはそう言うが、よく見れば四人の爪先は冷えからか真っ赤になっている。それを見た明久は、少し考えて

 

「よし……ちょっと、ここで待ってて、すぐに戻るから」

 

明久はそう言って、一旦帰宅。そして荷物を置いて少し準備してから、急いで戻り

 

「二人ずつ抱えて移動する。一人は背中に……もう一人は前から、僕にくっついて」

 

と四人に指示した。最初は躊躇っている様子だったが、先にアツコが明久の背に上り、次にヒヨリが前から抱きついた。それを見た明久は

 

「ごめん、悪いんだけど、どっちか傘を持っててくれる?」

 

とお願いした。そこからは、明久は走った。

先にアツコとヒヨリを家まで運び

 

「はい、ここにあるタオルで身体を拭いて……ある程度拭いたら、先にこの先の居間に居てね。暖かいよ」

 

と二人の頭を撫でてから、また戻った。そして、サオリとミサキの二人も家まで運んだ。すると、電子音が鳴った。その電子音に四人はビクッと身体を震わせたが、明久は

 

「あ、お風呂が沸いたみたいだね。風邪を引かないように、四人で入ってて。僕はまた買い物に行ってくるから」

 

明久はそう言って、雨合羽を来て、自転車に乗った。そして、近場のスーパーで子供用の服や下着を適当に買ってから、追加の食材を買ってから家に戻った。

やはり、身体が冷えていたからか、四人はお風呂に入っているらしい。

それを確認した明久は、まず脱いであった肌着類は回収。そして、買ってきた服を置いた。

次に台所に立つと

 

「よし……始めるか……!」

 

と気合いを入れた。

その後、四人が裸で出てきて驚いたりしながらも

 

「はい……このご飯を食べて」

 

と机に作った料理を並べた。最初、四人は警戒していた。その様子から明久は

 

「大丈夫……変な薬とかは一切入れてないから……ほらね」

 

と四人の前で、その料理を一口ずつ食べて、薬を入れてない事を証明した。それを見た四人は、椅子に座ってから恐る恐るとそれぞれ料理を口にした。

その瞬間目を見開き、ガツガツと料理を食べ始めた。

それを見た明久は安堵しつつも、居間から一旦出てから更に準備をした。

使ってなかった部屋を簡単に片付けて、そこに予備の布団と毛布を敷いた。

そして洗面所に、買いだめしておいた歯ブラシを置いてから、居間に戻った。

すると四人が、何やら固まっている事に気付いた。

 

「どうしたの?」

 

「ああ、いや……その……」

 

明久が声を掛けると、サオリが指差した机の上に一つの携帯無線機があった。

 

「え、これは……」

 

「それが、気付いたらあって……」

 

とサオリが言った直後、その無線機からノイズが聞こえて

 

『くっくっく……そろそろ、キヴォトスから随分と離れたでしょう』

 

と男の声が聞こえた。のだが、どうにも信用ならないし、人の神経を逆撫でするように明久は感じた。

 

「あんた、誰だ……」

 

『おや……まさか、外部の人間ですか……これは好都合ですねぇ……くっくっく』

 

明久が問い掛けると、何やら楽しいという感じの声が聞こえて

 

『初めまして、外部の方……私は、そうですね……黒服、と名乗っておきましょう……そこに居るだろう四人が居たキヴォトスに居る、悪い大人の一人です』

 

「先に言っておくが、この四人を今すぐ引き渡せ、って言うのなら、全力で拒否するし、命を懸けても阻止するからな」

 

明久が先んじてそう言うと、黒服と名乗った男はくっくっくと笑い

 

『勇敢な方だ……安心してほしい。貴方に、一つ頼みたい事があるのです。彼女達を、暫く預かってほしい』

 

「へ……?」

 

予想外の言葉に、明久は間抜けな声を漏らした。

 

『彼女達は、私の同僚とも言うべき女が管理する学校の生徒なんですが、その女が我々からしても度しがたい実験を計画していましてね……それを阻止する為に、彼女達をキヴォトスの外に逃がしました……ああ、はぐれた一人は、こちらで保護しています』

 

黒服がそう言うと、サオリが明久の手ごと無線機を掴み

 

「アズサは、無事なんだな!?」

 

と怒鳴るように問い掛けた。

 

『ええ、無事です。しかし、今すぐに逃がす事は難しいのです……ですので、こちらで偽名と学籍を用意し、別の学校に入れる事にしました。まあ、対価としては、こちらが割り振る仕事を引き受けてもらいますがね』

 

それはある意味、仕方ないだろう。何事にも、対価は必要である。

だが

 

「もし、その子にも酷い事をしてたら……絶対に、追い詰めるからな」

 

『おやおや、怖い怖い……くっくっく……まあ、暫くは外の世界で過ごして、あの女の警戒が緩むのを待ちなさい……何、時期が来ればキヴォトスに戻れるでしょう……ああ、そうそうこの通信が終わったら、もう無線機は使えませんので……それでは』

 

その通信を最後に、無線機は一切使えなくなった。とりあえずその無線機を、明久は一度机から危険物入れに入れてから

 

「……とりあえず、今日はもう休んで……明日から、色々と考えようか……こっちに来て……歯を磨いて……そして、休もう……疲れてるだろうから」

 

と明久は、四人を洗面所に連れていき、用意した部屋で寝かせた。

こうして、五人の青い記録(ブルーアーカイブ)が始まる。

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