「……んあ……? なに、ここ?」
目覚めた明久は、混乱していた。
ベッドではなく椅子。それも、何やら機械的な椅子だった。
「って寒……え、どうなってるの……」
明久は混乱しなごらも、目の前にあった機器に触った。すると室温と酸素量が表示され
「んん? どうなってるの……あ、これかな?」
と何とか操作して、ジェネレーターを起動させて、生命維持装置を起動した。
「危なかった……何がどうなってるの?」
とりあえず命の危機から脱した明久は、状況の把握を始めた。
「えっと、確か昨日は……バイトから帰ってきて、お風呂に入ってご飯食べて、ゲームして……寝た筈だけど……」
明久は高校卒業後、大学に通いながらバイトしていた。両親の伝で良い条件の物件を見つけて、そこから通学していた。
「しかも、ここ何処……あれ……もしかして……クリシュナのコクピット?」
クリシュナというのは、明久がしていたゲーム。
ステラオンライン、通称
ステラオンラインは自由度の高さが売りで、広い宇宙を舞台に、戦闘艦を駆って傭兵になったり、ジャンク屋を営んだり、通商を担う交易商をしたりと、様々なプレイが出来る。
そのゲームで明久は、スタンダードに傭兵をしていたが、最新のアップデートでプレイヤーが入手出来るようになった最新鋭の船が、型式《ASXー08》クリシュナという訳だ。
「それにしても、何が起きてるんだ……夢にしてはリアル過ぎるし……」
明久は考えながら、機器を操作した。
「あれ、星系マップが無い……え、所持金も無し?」
星系マップというのは、SOLでは必須のアイテムだ。でなければ、広大な宇宙で迷子になる。
ちなみにSOLでのお金は、エネルという単位だ。
日本円にすると、1エネル百円位になる。
続けて明久は、積荷を確認。
食料と水が数日分あり、更に精製されたレアメタルが確認出来た。
「さて、これからどうしよう……夢じゃなさそうだし……」
明久は考えながら、クリシュナの操縦を始めた。
「お、何故か分かる……イケるね」
簡単に操縦出来るのを確認し、明久は改めてどうしようかと考え始めた。
その時だった。警報が鳴り響き
『警告! 所属不明艦にスキャンされています!』
と機械音声が聞こえた。
「しまった……忘れてた」
明久が頭を掻いていると、モニターに
『こんな宙域で、どうしたんだ。兄弟? 金と積荷を置いてけば、命だけは助けてやるぜ?』
とハゲ頭の強面が映り、事実上の降伏勧告をしてきた。
SOLでもプレイヤーのプレイの一つとして用意されていた、宇宙版盗賊。宙賊だ。
勿論プレイヤーがするには、リスクがあり過ぎて、不人気ではあったが、AIで常に無限湧きする敵の一つである。
明久は、レーダーと光学カメラで、宙賊の位置と数を確認。
宙賊は、クリシュナから見たら上方に居て、数は三隻。船は俗に言うキメラ艦と呼ばれる寄せ集めの継ぎ接ぎ艦だ。
「……やるか」
明久は短く呟くと、クリシュナのジェネレーター出力を戦闘域に上げて、戦闘システムを起動させた。
『おい! 聞いてんのか、テメェ!? 金と積荷を置いて』
「行くよ、クリシュナ」
宙賊が再度降伏勧告をしてきたが、明久は完全に無視し、クリシュナを一気に加速させた。
クリシュナはあっという間に宙賊の背後に回り込み、重レーサー砲四門で一隻の宙賊艦のシールドと装甲を容易く貫通し、爆発させた。
『な!? 速すぎる!?』
『ひっ!? い、嫌だ! 死にたく……』
「逃さない」
一隻は反転し、逃げようとしたが、明久はクリシュナを半ばドリフトさせて、その宙賊艦の横を取り、艦首の2門の重散弾砲を発射。
こちらも容易くシールドを失い、蜂の巣になって爆散した。
『テメェ!! よくも!!』
最後に残っていたハゲ頭は、怒り心頭という様子でレーサー砲を撃ったが、その攻擊はクリシュナのシールドに簡単に弾かれた。
『なっ!?』
「終わり」
最後の一隻も、重レーサー砲の一斉射でコクピットを吹き飛ばされ、沈黙した。
「ふう……思ったより、Gが来なかったな……さて、回収するか」
明久はそう呟いて、物資回収用ドローンを数機射出。撃破した宙賊艦から、コンテナやデータの回収を始めた。
そして、十数分後。
「えっと、精製されたレアメタルに食料と水に弾薬。お、星系マップだ」
明久はドローンが回収した目録を確認していて、星系マップを発見。星系マップをクリシュナにインストールし、端末に表示させた。
「えっと……現在宙域は、ターメーン宙域……お、宙賊の拠点もデータにある……買い取ってくれそうなのは……このコロニーだね。行こうかな」
明久はそう言って、クリシュナのジェネレーター出力を巡航モードに設定し、クリシュナを目的のコロニーの方に向けて超光速ドライブを起動させた。
ドォンという重い音が響く。
「おお……まるで、銀河戦争のだ……」
明久は感動を覚えながら、端末で色々と調べた。
そして超光速ドライブが終わると、アニメで見た巨大な建造物。コロニーが見えた。
「えっと……確か、着陸の為の申請を、コロニーの港湾管理局に送るんだったよね……」
明久は通信先一覧から見つけたコロニー港湾管理局に、着陸申請を送信した。
すると、すぐに通信回線が開き
『こちらはターメーンⅢ、プライムコロニー港湾管理局だ。ドッキング申請を受理したが、すまない。そちらの艦名とキャプテン名の部分のデータが破損しているようだ。すまないが、艦名とキャプテン名を教えてくれ』
と聞かれた。
すると明久は、少し迷ってから
「艦名はクリシュナ。キャプテン名はキャプテン・アキだ」
とゲームで使っていた名前を名乗った。
これが、広大な銀河を駆け抜けながら傭兵として名を上げる、キャプテン・アキの第一歩だった。