シンデレラガールズ短編集   作:ですてに

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千早と美優さん。誕生日が同じ二人が同じ男性を好きになってしまいました。

●2/25誕生日の千早と美優さんを絡めたくて書いた短編です。
が、なぜか前後編になってしまうという。

そして誕生日も過ぎていた。ごめんなさ(ry

※なお、Pの設定などは拙作のものをそのまま流用しています。
 別世界軸と脳内変換してください。


同じ誕生日だけど当然性格は違うわけで(前編)

 プロダクションマッチフェスティバル。

 数あるプロダクション同士が所属するアイドル、ユニットのLIVEバトル対決を行い、ファンの声援、投票をより大きく獲得した方が勝つ、コンサート形式のイベント。シンデレラガールズプロジェクトに参加するアイドルやプロダクションの数は多く、その為にこのイベントも定期的に開かれていた。

 

 『フェス』と略されるこのイベントは、毎回一人のアイドルが集中的にピックアップされる。今回の栄えある対象となったのは、橘ありす。

 花の妖精を模した衣装を纏う少女は、1週間程度続くこのお祭り騒ぎの最終日、疲れのピークの中、自らのソロステージを見事に務め上げ、畳張りの楽屋で、家族以外で唯一、個人的に名前を呼ぶ事を許す『プロデューサー』の腕の中で寝息を立てている。

 ファンが名前で呼ぶのは別だと、個人的なものとは違うと彼女は理解しているから、腹を立てたりなどはしないが、彼女は個性的な日本人らしからぬ……自分の名前が嫌いだった期間が長過ぎて、未だ、人から名前で呼ばれるのに少なからぬ嫌悪感が残っている。

 だが、彼女にとってのプロデューサーはどうやら特別で。名前で呼ばれないと、逆に拗ねる様子すら見せる今日この頃。『ありす、本当に頑張ったな』……彼が告げた言葉に、満面の笑顔で彼女は彼の胸に飛び込み、そして、寄りかかる内にあっさり眠りに落ちてしまったのだった。

 

「ほんとは横にさせてやりたいんだけど……」

 

「離してくれませんもんね、ありすちゃん」

 

 衣装のラインは崩さぬように、けれど、彼と自然に寄り添う距離で、三船美優は目を細めて微笑む。ありすと同じプロダクションの彼女は、武道館やドームには届かないものの、全国数都市のソロツアーを組める一人前のアイドルである。ランクにすればDランクアイドル。

 彼女達のプロでは、第1回シンデレラガールに選ばれた十時愛梨がBランク。それに次ぐ稼ぎ頭が、Cランクの渋谷凛、高垣楓……といってもこの二人は武道館ライブがピンで出来る実力であるから、そう考えると、美優の実力も相当なものだと言えるだろう。

 

 ファンの間では、皆を喜ばせるために心を込めて唄う姿などから、密かに『癒しの女神』などと称される美優であるが、本当は人付き合いが苦手だとインタビューなどでも発言しており、笑顔も苦手だったと述懐している。その彼女が、心からの暖かな微笑みを自然に見せるようになったのは───。

 

「私が青羽根さんに心から笑えるように、色鮮やかな日々を、温かさをもらったように。貴方はありすちゃんにも多くの形のない大切なモノをあげているから、だから、彼女も離そうとしないんですよ」

 

 公私は然りと分けているが、実の所、彼と彼女は、男と女であったりする。本当の二人きりならば、彼は美優の腰に手を回して引き寄せているだろうし、美優も彼に寄りかかり、腕に自分の細腕を絡めているはずだから。まぁ、ややこしいのは、彼がこういう特別な態度を取るのは美優だけでなく、それを美優も公認しているという別の事情だが、この物語には直接関係は無いので割愛する。

 

「俺は最低な男だよ、『美優』? ありすはまだその辺りに気づけていないだけだ」

 

「ふふっ。今はさん付けで大丈夫です。私もすぐ戻りますし、少しだけ『謙太』さん成分を補充に来ただけですから。今は『橘さん』を休ませて上げてください」

 

 実質、二人きりの為、少しだけ二人だけの呼び方を交わし、二人はすぐにプロデューサーとアイドルへと戻る。

 

(これ以上増えるのは、正直、勘弁して欲しいのが本音なんですけど、ね)

 

 美優は心でそっと呟く。そうでなくても、彼女とコンビを組む楓だけでも強敵なのだ。アイドルとしても、女性としても。負けられない、ずっと切磋琢磨していくだろう、大切な友人。凛を中心とする高校生組も、年少組─千枝や桃華もあの年ではあり得ない色香を身に着けつつあるから、数年後に二人揃って、彼を篭絡しようとする可能性が高いと、彼女は考えている。

 

 皆、分かりやすいのだ。プロデューサーの特別になりたい。だから、アイドル活動も、自分を磨き上げる事にも全力で取り組んでいる。彼のためにアイドルをしている、となれば本末転倒のはずだが、ただ、この危うい状況が、彼女達を短期間で磨きあげ、彼らのプロダクションを急成長させることに繋がっている。

 

「あ、この声……如月さんがいらっしゃったみたいですね」

 

 楽屋の扉をノックし、声をかけてきた女性の声に、枕となり動けない彼の代わりに美優は手早く扉を開け、来客を迎え入れる。本日のエキシビジョンLIVEバトルで美優が臨時ユニットを組む、765プロダクションの如月千早、その人である。

 

「失礼します、プロデューサー。三船さんもこちらにいらしたんですね」

 

「この通り、動けないもんでな。それと、『元』だぞ、千早」

 

「私にとっては何も変わりませんから」

 

「相変わらずだな。……良かった、千早と美優さんのイメージに合わせて、蒼主体の衣装でデザインしてみたんだが、よく似合っている。二人並ぶと、我ながらいい仕事をしたと思えるよ」

 

 765プロ所属、現アイドル界のトップ2。同じ765の天海春香と並び評される、それが如月千早の立ち位置であった。今回のイベントのエキシビジョンで、プロを超えて夢のユニットを───、そんな名目の元、千早は春香のユニットと戦うことになっていた。

 

「私達をよく知るプロデューサーだからこそです。春香たちが『動』なら、私と三船さんは『静』で勝負する。三船さんの歌に支えられる私の歌は、最高のパフォーマンスを見せられるはずです」

 

「あ、足を引っ張らないように頑張りますね」

 

「何を言うんですか、三船さん。高垣さんの歌唱力に負けず、かつ、自分も生かせる歌声を出せる人が。私はずっと楽しみにしていたんです。リハーサルから心が震えてしまって……!」

 

「は、はい、ありがとうございます」

 

 興奮気味の千早に気圧される美優。優れた歌い手に出会うとこうなるのは変わらないな、と、彼は以前の事務所の担当アイドルを思う。

 

「千早。ありすが起きてしまうよ」

 

「!……も、申し訳ありません、プロデューサー」

 

 そして、彼の声に敏感に反応するのも、彼女は変わっていないのだった。

 

「いや、実の所、トップアイドルの千早にそう言ってもらえると、俺も美優さんも嬉しいんだ。俺は結局、お前を売り出し切れずに、燻らせてしまっていたんだから」

 

 千早をプロデュースしていた当時の彼はせいぜい駆け出しに近い状況だったこともあり、経験不足、営業力不足……いろんな要因があるにせよ、彼女の資質は伸ばせても、相応しい舞台を与えることが出来なかった。その当時の悔いが、新しい事務所に移籍した今の彼を作り、渋谷凛、高垣楓といった、トップを狙えるアイドルを育てる力を身につけたとも言えるのだが。

 

「赤羽根プロデューサーが言っていました。私に関しては、舞台を整えるだけで良かったのだと」

 

 実際のところは、それだけではない。千早が抱えていた家族への葛藤を昇華させるように導いたのは、今のプロデューサーである。それは紛れも無い事実。

 ただ、千早は思っていた。手法の違いなのだと。太陽と月。葛藤を昇華させるのではなく、ありのままを認め、そのまま大きく導こうとしてくれていた、目の前の『元』プロデューサー。もし、あのまま彼が担当のままならば、そんなIFを千早は思ってしまう。自分が尊敬し、信頼する数少ない男性。プロダクションが変わってしまっても、それは彼女の中で変わったりはしていない。

 

「当時は少しは営業力とか身についたつもりなんだが、赤羽根さんにはまだまだ敵わないかな」

 

「ただ、負けるつもりはない」

 

「諦めるつもりもない、ですね」

 

 謙遜してみせる彼に、即心の内を読んでみせる二人。それぐらいには付き合いも長く、ずっと彼を見てきていたから、造作も無いことだった。

 

「そういえば、美優さんから聞いたんだけど。今回のエキシビジョンで勝ったら、一つご褒美が欲しいと聞いた」

 

 照れを隠すように露骨に話をそらす彼に、少し噴き出しながらも、千早は答える。

 

「ああ、同じ誕生日の三船さんと一つずつでお願いします。器が大きいプロデューサーですから、当たり前ですよね? あと、誕生日祝いのお願いはさらに別でお願いします、ふふふっ」

 

「……強かになったなぁ、お前。ただ、打ち上げとかどうするんだよ」

 

「明日は私も三船さんもオフです。二人揃って祝って下さい」

 

「りょーかい。何とかする」

 

 両手を挙げて降参のジェスチャー。彼はこの瞬間仕事の前倒しの為、本日の徹夜が確定したのだが、しゅっちゅうあることなので、気にはしていなかった。

 

「あの、プロデューサーさん。手伝いますからね」

 

 もちろん、美優にはお見通しで。彼女の頭の中では、事務処理がこなせて、かつ、プロデューサーとの徹夜を楽しみにすら出来そうなメンバーのリストアップが始まっていた。彼がやると決めれば、自分に出来る全力でサポートを務める。彼と思いを通じた後の、幸せになる為、幸せを積み重ねていく為の美優の生き方だ。

 

「寮メンバーで事務処理が得意な……う~ん。留美さん、瑞樹さんに、何でも出来る真奈美さんに……」

 

「……プロデューサー、未だに徹夜で何とかする癖抜けてないんですね」

 

 美優の思考に耽る呟きから、千早も彼の考えをすぐに悟ってしまう。

 

「三船さん、私も微力ながら手伝います。プロデューサーの仕事が終わらなければ、私達のご褒美もお預けなわけですから」

 

「いいんですか……!?」

 

 二人の間では勝つのが前提の会話となっているのに、今度は彼が僅かに噴き出す番だった。油断でもなく、慢心でもなく、力を出し切れば結果は出ていると、千早は感じている。美優とて、足を引っ張らないように、というだけで、負けるつもりはさらさら無い。

 

(実際、春香に卯月を中心としたメンバーは強敵だと思うんだが……ただ、それを加味しても、今日の千早と美優は……あぁ、気合が漲っている。かつ、肩の力が入り過ぎていない。こういう時は、普段の数割増しのパフォーマンスが出るもんだ)

 

 彼は気づいていない。千早と美優がこれほど気力を充実させているのは、自分のご褒美だということに。恋する乙女は無敵とは良く言ったもので、実力が均衡している同士の対戦となれば、モチベーションが高い方が有利であるのだから。

 

 LIVEの内容については割愛する。蒼い鳥、眠り姫、そして、高垣楓が飛び入り参加の上、『こいかぜ』の三曲を見事に歌い上げた、彼女達が勝利するという結果に終わった。

 天海春香曰く『ここまで神懸かった千早ちゃんのパフォーマンスは今まで見たことが無い。目と目を遭った瞬間、殺られると思った』とか、彼や美優と同じプロダクションの島村卯月も『あまりに恐ろしいプレッシャーに普通通り出来なかった。微笑んでいるはずの美優さんが口元を歪めている様にしか見えなかった』などの迷言を、仲間に密やかに語っていたとかいないとか。

 そんな二人の衣装に彩られた、色濃さは違えど、同じ蒼い薔薇の造花は───かのプロデューサーが二人に強く望まれ、彼の手で直接飾られたのだという。……飛び入り参加をした楓も、何故か似たような造花をつけていたのは蛇足である。




そして後半はいちゃいちゃ編。週末が終わるまでには・・・・!

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