東方茶月伝   作:甘しろノノん

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零話

いつの間にか寝ていたらしい。

 

あまりに暖かく気持ちの良い日差しなのでもう一眠りしようしたのだが、光を浴びすぎたのか身体がとても熱い。

 

とりあえず自分の身体を見てみよう。そう思い顔を右に向け、仰向けで大の字になっている身体を見るためにそこから下向きへ顔を動かすと、綺麗に赤く塗られた右手が見えた。

 

そして、自分が何故寝ていたのか、何故こんなにも身体が熱いのかをゆっくりと思い出した。

 

 

 

 

「お前は鈍間だな。」

 

これでも自分の中ではかなり急いで耕しているのだ。

 

「しかし、これ以上速くはできません。」

 

そう言うと彼は、

 

「お前が口答えなんて偉くなったもんだなあ。」

 

この言葉が出るといつも身体は宙を舞っていた。逃げないのを知っているのに馬乗りになり、笑顔で殴り続けるがっしりとした身体の彼に俺は恐怖を感じていた。

 

俺は昔の事をよく覚えていない。気がついたら森にいたのだ。言葉が使えて文字が書けるのだが、文字を書けない者が多い村人を見ると、自分は割と良いところで育っていたのかも知れない。それが原因かは分からないが、この村に辿り着くなり散々な扱いを受け、気がついたら俺は働かされる事になっていた。

 

しかし、そんな毎日にもほんの少しだが楽しみがあった。

 

俺が働かされている幅が8丈の汚い四角形の畑しかない家から少し歩いたところに人の気配も無いボロボロの神社にある何処か可愛らしさを感じるお地蔵さんだ。

 

「明日も逃げたら分かってるよな。」

 

彼から解放されても帰る場所が無いのでよくこの神社で寝泊まりしていた。しかし、このお地蔵さんは俺が帰るたびに落書きがされているのだがそれがどうにも可愛く感じられて、いつも拭いている。

「こんばんわ、今日もやられたのか。怒らないなんてほんとに優しい人、いや優しいお地蔵さんなんだな。そんな優しいあなたに俺はこの汚い布で拭く事しかできないけれど、優しい君はそれで許してくれるのかい。」そう言いながら近くの川へ行き、替えのない上の服を水に濡らし落書きを消してやると、なんだが照れてるような気がしていて、それが俺の細やかな楽しみだった。

 

 

 

 

 

 

そんな事が2年程続いたある日、いつものように珍しく彼は家には居なかったので神社へ向かうと男が数人ほど立っていた。いつもはお地蔵さんに落書きをする子どもくらいしか見かけないので珍しい。尤も、夕方まで働かされてるいる俺は子供にも会えないのだが。そんな事を考えながら神社へ近づいていくと、

 

神社としてなんとか形を保っていたそこは見る影もなく、ただの瓦礫と化していた。呆然と立っていると、男達が俺に気がついたのだろう、満面の笑みでこちらへ歩んで行き、俺を吹っ飛ばした。

 

男達の中にいた彼が言う、

 

「村には不必要だからなこの神社も、お前も。」と。

 

そこから先はよく覚えていないが身体が熱かったのだけはハッキリと覚えていた。

 

 

 

 

 

そうして今、日を浴びていた。なんとか身体を起こせないものかと、手は動かなかったのだが、なんとか上体は起こせた。辺りを見回し、そういえばとお地蔵さんが気になり探してみたが、無い。しかし、壊された跡は無い。何処に行ってしまったのか考えていると、力が抜けてきた。折角起こした上体も、再び倒れてしまった。身体はもう動きそうにない、もう限界だと自分も感じていた。身体はまだ熱いが、眠たさが熱さを上回り、眠くなってきた。

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