東方茶月伝   作:甘しろノノん

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歴史に疎いのがバレてしまう。


五話

 

「やっぱり、迷惑だったよな。」

 

彼女はあんなに乱れる程我慢していたのだ。もっと早めに出て行くべきだった。沈んだ気持ちの中、俺は都を目指して歩いていた。

 

「大分歩いたし、少し休憩しよう。」

 

休憩する時には常に魔法の研究をしている。魔法自体が好きなのもあるが、これが彼女との友情の繋がりにも感じているのもあったからだ。彼女には老いが無いのだ、死ぬまでにはもう一度会えるかも知れない。その時には彼女が驚くくらいの魔法使いになって、恩返しもその時しよう。そう思うと大分スッキリした。休憩をやめ、軽くなった足で都へ向かった。

 

 

 

 

 

 

それから二週間が経って、遠くに見た事もない建物が見えた。恐らく、都だ。全く見える気配が無くて、正直方向を間違えたかと思ったが、大丈夫だったみたいだ。安心した俺は近くの平らで何もない土地を見つけた。家を建てるのだ。

 

魔法の練習を毎日やっていたので家を作るのはかなり楽だった。まず木材と縄をしっかりとイメージして大量に作り、あとはそれらを魔力に乗せて組み立てて縄で結べば、終わり。丁度1日で作り終わった。家の中は畳四つと半分だ。余り大きすぎても意味はないのでこれが丁度良い広さと考えたのだ。取り敢えず、夜遅いので都に行くのは明日にして、今日はもう寝よう。家の床に寝転がって寝た。

 

 

 

 

 

真夜中に目が覚めた。何か大きな気配、というより違和感のようなものを感じたからだ。目を開けると、真っ暗だった。夜だからという理由ではないのは明らかで、自分の目の前でさえ暗くて見えなかった。一瞬目を開けてないのではと疑った程だ。

 

兎に角、外へ出てみようと歩いて出たはずだが、外も真っ暗だった。地面の感触からして外なのは明らかだし、いきなり失明したとは考えにくい。どうしようかと悩んでいると、突然暖かい空気が右から流れ込んできた。それはまるで、口の中にいるような感じで、嫌な予感がして勢いよく左へ距離を取った。と、同時にガチンッと歯と歯が重なる音が聞こえた。其処に何かがいる事と、本当に食べられそうになっていた事が分かった。

 

「逃げられた、完璧だと思ったんだけどなあ。」

 

姿は見えないが少女の声がしたので、声をかけてみた。

 

「夜遅くにこんばんわ。妖怪でも何でも、食べる前にはいただきますと言わないと駄目だぞ。食べた後はご馳走様でした、だ。」

 

話している間に俺は周囲に魔力を噴出して、その感触から周りの状態をある程度把握した。大分背の低い少女だが、妖怪だ。油断はできない。

 

「そうなの?じゃあ、いただきます。」

 

そう言うと彼女は此方へ飛び込んできた。それを、避けた。単純な動きなので避けるのに苦労はしなかった。彼女は勢い余ったらしく、地面を何回か跳ねていた。

 

「言ったのになんで食べさせてくれないの?私、お腹が空いてるんだけど。」

 

「俺は食べちゃいけないからね、代わりと言ってはなんだが、柿という木の実をあげるよ。」

 

彼女がこれで退いてくれれば良いのだが。

 

「食べ物くれるの?やったー!貴方は良い人みたいね。」

 

動きと一緒で単純だった。彼女の作ったであろう闇が解かれ、一瞬ぼやけながらも視界がはっきりとして、彼女の姿が見えた。

 

金髪というよりは黄色に近いサラサラとした長めの髪、目は赤色でまるで奥まで入ってしまうように深い、背はかなり低めで下は袴のように折れ曲がっていない布の服で神綺と少し似ているが色は黒、上は胸のあたりまでは黒だが真ん中は赤い紐で結ばれていて、薄い布で大きさが身体と丁度いいくらいの白い服。感想としてはとても可愛らしい。

 

そんな彼女が手を肩の高さで固定して伸ばした状態のまま、嬉しそうに此方へ来た。

 

「闇を解いてくれてありがとう、俺は茶月。君は?」

 

彼女は微笑んで口を開いた。

 

「私はルーミア!闇を操る妖怪よ。早く、食べ物を頂戴!」

 

食料は家の中に取りすぎなくらいあるので大丈夫だろうと思いながら、ルーミアを家の中へ入れた。

 

 

 

 

ルーミアはかなりお腹が空いていたのか、それともかなりの大食いなのか、自分の身体よりも大きい量の木の実を全て食べ尽くしてしまった。

 

「ふーっ、食べた食べた。ご馳走様でした!」

 

我に帰った。取り敢えず、ちゃんと言えたルーミアを褒める事にした。

 

「お、ちゃんと言えたな。偉い偉い。」

 

頭を包み込むように撫でると、ルーミアはウットリとした目をした。

 

「さつきに撫でられると、あったかくて気持ちいいね。」

 

素直に嬉しそうに言ったので、自分の照れが収まるまで暫く撫で続けていた。

 

 

 

撫で終わり、手を離すと悲しそうな顔をするルーミアは、妹が出来たみたいですごく愛おしく思えた。妖怪、というか話せるし人の形をした妖怪なんて初めてだから何を話せばいいか戸惑ったが、木の実のある場所や虫の話など見た目相応の人間と変わらない話をしていた。

 

「ルーミア、君は人間を食べずに暮らすって事は出来ないのかい?」

 

妖怪だって意志を持っていて、そこは人間と変わらないのだ、価値観の違いはあるが。

 

「んー、出来ない事はないのよ。けど、人間って美味しいからお腹空いてると食べたくなっちゃうのよね。」

 

完全に食べないというのは矢張り無理なようだ。妖怪は襲い、恐れられないと生きていけないみたいだ。

 

「人間からしたら食べて欲しくはないのだけど、どうしても食べたくなったら一応食べる前にその人に一言聞いて欲しいな。」

 

ルーミアは暫く唸っていた。

 

「うーん、うん。でも、さつきみたいな人もいるかもしれないもんね。何よりさつきの頼みだもん、ちゃんと聞く!」

 

これで少しでも妖怪に食われる人が減ればいいけれど。取り敢えず聞き分けのいい彼女を褒める事にした。

 

「偉いぞ、ルーミア。ちゃんと聞けたらまた褒めてあげるからな。」

 

褒めながら撫でていると、矢張り撫でられるのが好きなのか、目を細めてウットリとしていた。

 

ルーミアが何処かへ行った後、割と彼女との戦いで疲れたので、もう夜明けに近いがまた寝る事にした。

 

 

昼前に目が覚めると、横にルーミアがいた。何処か行ったのでは無かったのか。ルーミアを起こさないようにゆっくりと家を出て都へ向かった。彼女は妖怪で、しかも人型で話せるところを見ると、かなり強いと考えられるので、恐らく俺が心配するのは余計なお世話だろう。

 

 

 

 

 

 

 

「お騒がせして申し訳ありません、私はしがない旅の者です。この髪は生まれつきで、私は唯の人間です。」

 

都へ着くと、検非違使と呼ばれる方々に、銀髪が怪しすぎると疑われ、捕まった。

 

「そうは言っても、怪しすぎるからな。何をしだすか分からん。」

 

何度も説明しているのだが、一向に疑いは晴れない。もう駄目かと諦めかけていたところに如何にも身分が高そうな人が現れた。

 

「彼はこう言っているのです。放してあげましょう。」

 

すると彼らは畏まった。

 

「これはこれは清行殿、そうは言われますがこのような輩を誰も見た事ないのですよ?」

 

清行、と呼ばれる人と検非違使の人達が話していると突然大きな地響きがした。短い地響きか終わると襖を勢いよく開き、その開けた誰かが大きな声で言った。

 

 

「鬼が、鬼が攻めてきました!!」

 

 

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