東方茶月伝   作:甘しろノノん

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大分短いです。


六話

 

 

皆がバタバタとしている中、清行と呼ばれる人が縄を解いてくれた。

 

「不幸中の幸いでしたね。さあ、貴方も早く逃げて下さい。」

 

身分が高いのに傲慢さを感じさせない人だった。

 

「ありがとうございます、このご恩は決して忘れません。」

 

あまり長い事いるのも危ないので窓から飛び出して、都の外へと走り出した。町中では皆が慌てふためいていた。当然だろう、鬼は聞く話では比べ物にならない力を持つ妖怪と呼ばれている。俺も取り敢えず逃げようと、騒がれている場所とは反対の方へ走り、門を出ようとした。

 

 

 

 

「男のくせに逃げ出す臆病者はあんたかい?」

 

声が聞こえる同時に飛んできた大きな岩が門に挟まり、出られなくなってしまった。飛んできた方から逆の方へ走り出すと何もないところから小さな粒のようなものが集まり、小さな少女となった。

その少女は、とても幼く、薄い茶色の長い髪で後ろで髪を束ねていて、頭の左右からは捻れた角が生えていた。深紅の瞳、少し濃い肌、下は紫の動きやすそうな服に袖のない白の服で腰に鎖を巻いており、その先には瓢箪があった。その角から察するに鬼だ、少女だからと言って油断はできない。

 

「まだ逃げようとするのかい?男らしく戦ったらどうだい。」

 

挑発し続ける彼女。鬼は嘘や曲がった事が嫌いらしいので下手に怒らすのも不味い。

 

「ここまで言い寄られたら、男して下がる訳にはいかないか。一応名乗っておくよ、俺の名前は茶月だ。」

 

「お、やる気出たかい。伊吹萃香だ。私を女だと思って戦うと、痛い目見るから気をつけなよ!」

 

割と本気で死ぬかもしれない。

 

刀を構えすぐにでも魔法を使えるように魔力を身体から出す。彼女が真っ直ぐ突っ込んできた。ルーミアの時とは比べものにならない速さだった。それを避けると、追撃の拳が最初とは逆の拳から襲い掛かってきたが、その腕の横に俺は手を置いて、勢いよく押して避けた。横から触れただけの筈なのに、腕がビリビリとする。

 

「おお、今のを避けるのか。見直したよ少年!」

 

嬉しいそうに笑う彼女は見た目と言動が一致していなかった。

 

「そんな可愛らしい姿で少年なんて言われると、すごく違和感を感じるぞ。」

 

「かわっ!?だ、誰が可愛らしいだ!もう怒ったからな、少年!」

 

怒らせてしまったらしい。反射的に言葉が出てしまったのだ、言ってしまったものはもうしょうがない。戦いに集中しよう。

 

伊吹の素早い連撃を避けているのを、正直自分でも驚いていた。そして、彼女は疲れからか一瞬隙ができたので、俺は其処に斬撃を繰り出した。のたが、その瞬間彼女は口を釣り上げて、待っていたかのように俺の刀に拳を合わせてきた。

 

しまった、釣られた。そう思いながらも最早攻撃を止める事もできないので、押し切るつもりで力一杯刀を振り下ろした。のだが、何だこの拳、硬過ぎて斬れない。本当に押されそうだったので、焦った俺は自分の背中から有りっ丈の魔力を噴射して押し出そうとした。神綺に見られたらなんて効率の悪いんだ、なんて怒られそうだ。焦っていると余計な考えがどんどん湧いてくる。それでも彼女の身体は後ろに下がる事は無かった。化物すぎるだろ、鬼さんよ。暫く鍔迫り合いが続いていた。

 

「凄い凄い!ここまでするなんて、少年は化物なんじゃないか!?」

 

化物はお前だ、と喋る余裕も無いのだ。黙っててくれ。魔力をより噴射させていると、突然軽くなった。

 

「あっ、」

 

俺が押し切った訳ではない、けれど伊吹が勝った訳でもない、刀が折れたのた。大量に噴射していた魔力を急に全部止められる訳もなく、そのまま彼女に飛び込んだ。彼女も急に空を切ったから力を抜いていたのだろう、されるがままに一緒に倒れこんだ。このままでは彼女が地面に引きづられてしまう、反射的に折れた刀を捨て、彼女を抱いて自分が下になるような体勢にした。鬼であっても女の子なのだ、歌聖が言っていた様に優しくしないと。そして俺はそのまま凄まじい勢いで地面に引きずられ、門に挟まれていた岩に頭から激突して気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬気を失っていたらしく、気がついたら私は彼の腕の中にいた。恥ずかしくなって顔を上げて後ろを見ると、飛ばされた方向からして、どうやら私は彼に押し負けたみたいだ。

 

「鬼の私が人間に負けるなんてなあ…。凄いな、少年!」

 

と、声をかけてたがよく見ると彼は頭から血を流して気を失っていた。勝ったのに情けないなあと思いながら彼を見ていたら、ある事が疑問に浮かんだ。私が押し負けたのに何故彼が下敷きになっているのか、普通は逆になる筈なのだ。つまり、彼は私が庇って引きずられたのだ。そう思ったら身体が熱くなって、勢いよく彼から離れた。遠くからジッと見ていたら段々と彼がカッコよく見えてきた。綺麗な銀髪で肌も白く、鬼の男には決していない感じの男だ。時間を忘れた様に彼を見て、私の本来の目的を思い出した。最近毒を混ぜたりと嘘をつく人間が多いので、直接懲らしめにきたんだった。けど、やっぱり人間にも良い奴がいるのだ。

 

「茶月、って言ったっけ。鬼である私を女性として扱ってくれてありがとう。私が勝負に負けたこと、確かに覚えたよ。今日はあんたに免じて引いてあげる。」

 

私は塵になり逆方向で暴れている彼女のところへ行った。

 

 

 

 

 

 

「オラオラァ!もっと骨のある奴はいないのかい!?」

 

陰陽師と呼ばれる彼等は彼女、勇儀にどんどん殴り飛ばされていく。案の定正面の門は半壊状態だった。彼女の前で密になった。

 

「勇儀、帰るよ。私は負けた。」

 

「えっ!?嘘だろ!?」

 

彼女は信じられないという顔をしていた、私も信じられない。

 

「私が嘘をつく訳がないでしょ。私に勝った彼に免じて、今回は撤退するよ。」

 

まだまだ暴れ足りないであろう彼女には辛いだろうが、もう言ってしまった事だ。残った人間達に都全体に届く程の大きな声で言った。

 

「おい、人間達!銀髪の茶月という名の男が私と一対一の勝負に勝った!彼に免じて私たち鬼は撤退する!彼に感謝するんだな!」

 

それは鬼達にも届き、皆帰って行く。

 

 

 

 

茶月、あんたとはまた会える気がする。もし会えたら、私を惚れさせた責任はとってもらうよ。鬼の長、酒呑童子である私の。

 

 

 

 

 




萃香は長生きしているけど負けた事が無い分、かなり衝撃的であった事が吊り橋効果的な感じで一気に惚れたと思ってて下さい。
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