キリトとサチがスリーピングナイツに加入してから数日後、俺たちは何故かまた35層にある迷いの森に訪れていた。
今となってはそれほど危険な場所ではないものの、皆一度はここで命の危険に晒されていると言っても過言ではない場所である。つまり、正直に言ってしまえば本当はこんな所来たくねえんだよ!
と思っているのは俺だけではないらしく、キリトを始めユウキやラン、サチに何故か今日もパーティに参加しているアスナもどこか険しい顔をしている。
ここ最近、アスナはほぼ毎日のように俺たちと一緒に行動している。本人は他のギルドとの交流が目的だと言っていたが、俺は一応血盟騎士団の団長であるヒースクリフに連絡を取ってみた。すると・・・。
「恋する乙女は強いと言うわけだな・・・」
などと明らかにキャラじゃない事を真顔で言われてしまった。どうやらヒースクリフでもアスナの暴走はどうにもできないらしい。
今も、アスナとサチによってキリトが板挾み状態になっていて見ていて可哀想になってくる。
ん?なんでそんな余裕なのかって?いやいや、俺だって全然余裕なんかねえよ!?なぜなら・・・俺も絶賛板挾み中だからな!!
右腕にはユウキが、左腕にはランが自分の腕を絡めてガッチリとホールドしている。
なぜこうなったし・・・。
遡ること数時間前、俺たちは買い出しのために最前線である48層まで来ていた。転移門から出ると、なにやら騒々しかったので近くにいたプレイヤーに聞いてみると、なんでも敵討ちを頼んでいる男がいるらしい。
俺はさっそくその男に話を聞きに行ったんだ。後ろではまたかという顔をされたけど気にしない♪気にしない♪イエイ!
で、事情を聞いてみるとどうやら集団PKにあったとのこと。内心では女に誑かされたお前らも悪いと思いつつも、流石に死人が出ているのなら見過ごす訳にはいかない。他の皆んなもオレンジギルド”タイタンズハンド”の討伐に賛成してくれた。
そう、ここまでは良かったんだよ・・・。
なにがどうなってかは分からないが、その後道中で情報を集めながら移動していたら、サチが段差に引っかかってキリトにもたれかかってしまい・・・。それを見たアスナが対抗心を燃やしてワザとキリトの方に倒れ・・・。その時は俺も何やってんだかと苦笑いしていたのだが、次第にヒートアップして行った2人は遂にキリトの取り合いに発展。
更にはその様子を何故か羨ましそうに眺めていたユウキとランが俺の腕に抱きついてきて取り合い・・・にはならなかったが、何というか・・・周りの視線が凄く痛い・・・。男共の視線が物凄く痛い。けどな?お前ら自分が同じ状況になった時のことを考えてみろ。今まで女の子と碌に話したこともない若い男が美少女2人に抱きつかれてるんだぞ?そりゃあ嬉しいさ!けどな!?それ以上に緊張するんだよ!キリトはコミュ障だし俺に至っては今まで話したことのある女なんて研究所の・・・・・っと、危ない危ない。今のは聞かなかったことにしてくれ。多分、いずれ話す機会があるだろうからな・・・。
つまりだ、今の状況は嬉しいがそれ以上に色々とヤバい!特に腕に感じる感触が・・・あ〜いかんいかん!そろそろ良いよね?
「あ〜なんだ、その・・・ずっと放置してたわけなんだが、なんで腕にくっついてるんでしょう?」
「あら、嫌だった?」
「嫌じゃないがなにかあった時困るだろ・・・」
「今の僕たちなら大丈夫じゃないかな?それに、なんかこうしてると安心そるし〜」
「ちょ!?スリスリするな!?」
「あ!ユウキばっかりズルい!」
「ランまで!?」
両脇からスリスリしてくる姉妹に俺はなんとも言えない気持ちになっていると、何処からか声が聞こえたような気がした。
「みんな静かに!」
俺の指示に、今までふざけていたアスナやサチもキリトから離れて周囲を警戒し始める。うん、流石だ。
ーーーぁ
ーーーーーーハァ!
ーーーーーーーーーうぅ、このままじゃ。
集中していくと、だんだん声がハッキリと聞こえてきた。俺たちは頷き合うと、声のした方へ走り出す。
しばらくすると、木を背にしてこの森最強クラスのモンスター、ドランクエイプの群れに囲まれている少女を見つけた。
敵の数はなんと12体。この数を相手に凌げていたという事はなかなか見所のあるプレイヤーかもしれない。
「俺とキリトとアスナで斬りこむ!その間にランたちは回り込んでプレイヤーを保護して盾役になってくれ!」
「「「「「了解!」」」」」
まずは俺は通常のダッシュからの突き。キリトが片手剣ソードスキル・レイジスパイクを、アスナは細剣ソードスキル・リニアーをそれぞれ放ち、ドランクエイプをそれぞれ一体ずつポリゴン片へと変える。それによって他のドランクエイプのタゲがこちらに向いた瞬間にラン達が少女を救出した。
え?なんで俺はソードスキル使わなかったのかって?だって槍には単発の突進系ソードスキルないんだもん!?
その後はまあ、前回と同じで一応ユウキとランが少女とサチを守るように立ち、俺たち3人が瞬殺していった。
「ふぅ・・・お疲れ〜」
「お疲れアスナ」
「お疲れ〜っと、キミ大丈夫だったか?」
「あ・・・は、はい!助けて頂いて、ありがとうございます!」
俺が声をかけると、少女はピョコンッと立ち上がり深々と頭を下げてくる。なんか子猫みたいだな。
「いや、気にしなくて良いよ。前にも似たようなことがあったしね。けど、キミ1人でこの森に?」
「あ・・・それが、最初はパーティを組んでいたんですけど・・・。その内の1人のロザリアさんって女の人と喧嘩してしまって・・・」
少女の口から出た名前に俺たちは顔を見合わせた。ロザリア・・・。俺たちが探しているタイタンズハンドのリーダーの名前だ。
「そっか・・・。キミ、名前は?」
「あ、私シリカって言います!それでこっちの子は友達のピナです」
「きゅるっ!」
「シリカちゃんにピナか。俺はミハヤだ。とりあえず、俺たちと一緒にこの森を抜けよう」
俺は安心させるようにシリカの頭を撫でると、シリカは気持ちよさそうに目を細めた。
「「むむむ」」
なんか後ろから殺気が伝わって来るけど気にしない・・・気にしない。
30分後、俺たちは迷いの森を抜けると食事をするためにシリカがオススメだという店に向かっていた。だが、途中で・・・。
「あらシリカじゃない。へ〜、1人で森を抜けられたんだ?」
「ろ、ロザリアさん・・・」
なるほど、けの女がロザリアか。後ろの3人は仲間か?いや、今回の標的の可能性もあるか・・・。
「あんたがロザリアさんか。シリカきら少しだけど話は聞いたよ。槍使いだからって後ろで突っ立ってたんだって?」
「あん?誰よあんた。あんたもその子にたらし込まれた口?良いわよねぇちっちゃくて可愛らしい奴は」
「確かにあんたみたいなオバさんは化粧で無理にでも色気を出さないと男なんて釣れないわな」
「オバッ!?・・・ふん!所詮ガキには大人の魅力が分からないのよ!」
「わからなくて良いよ。うちにはあんたの1万倍可愛らしい美少女姉妹に純朴美少女にSAOトップクラスの美人まで揃ってるをだ。それに、年上は趣味じゃない」
「こ・・・この!・・・まぁいいわ。覚えておきなさいガキ共!」
ロザリアは眉間に皺をよせながらズカズカと消えていった。
「あ〜少し言い過ぎたか?」
頭を掻きながら後ろを振り返ると、何故かキリトが苦笑いしていて・・・ユウキとランが顔を真っ赤にして俯いていた。
「ユウキさん?ランさん?」
「よかっわねユウキ。ラン」
アスナがそんな事を言うと、ユウキとランはコクリと頷く。なにが良かったんだろうか?
「この天然タラシが・・・」
おい!?お前にだけは言われたくないぞキリト!
「と、とりあえず!今後の方針を決めよう!悪いんだけど、シリカも付いてきてくれないか?キミにも少なからず関係することなんだ」
「わ、わかりました・・・」
一先ず、俺たちは店に行くのを諦め近くの宿に集まるのだった。
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「さて、なにから話したものか・・・」
宿に移動した俺たちは、シリカにどう説明するべきかと悩んだ。
「まず、落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
「は、はい!」
「あのロザリアって女は、オレンジギルド、”タイタンズハンド”のリーダーなんだ」
「え?で、でも・・・ロザリアさんはグリーンで」
「オレンジギルドと言っても、全員がオレンジなわけじゃない。グリーンのメンバーが獲物を見繕い、仲間がいる場所まで誘導。近づいてきたところを囲んでアイテムやお金を奪ったり、最悪殺してしまう・・・」
キリトの説明に、シリカは顔を青くしてしまう。
「そ、そんな・・・殺人なんて」
「で、ここからが本題だ。俺たちはある人の依頼で奴らタイタンズハンドを追っていたんだが、その途中で君に出会った。そして、君はあの女とパーティを組んでいたと言う。・・・つまり、今回の奴らの標的の中に君も混ざっているんだ」
自分が殺されそうになっていたことが分かったためか、シリカは小刻みに震えてしまっていた。そんな彼女をサチが優しく抱きしめる。
「そう怖がらなくていい。さっきも言ったが、俺たちはあいつらのギルドを潰すためにやってきた。まぁ、牢獄に送るだけだけどね。だから、それまでの間は俺たちが君を守る。なにがあろうと手出しはさせない」
俺の言葉にキリトを始めとした全員が力強く頷いた。それで少しは安心したのか、シリカはようやく体の力を抜く。
「一先ずは、明日からシリカを加えてフィールドに出よう。そうだな・・・俺、ユウキ、ランのパーティと、キリト、アスナ、サチ、シリカのパーティに別れようか。で、ロザリアたちが現れたら結晶使って牢獄に放り込む」
全員が頷くのを見て、今日の所は解散となった。
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次の日、俺たちは40層のフィールドに出て狩りをしていた。シリカは少しレベルが足りなかったので、ユウキたちが前線の武器や防具をプレゼントして底上げ。シリカの戦い方は言葉に小柄な体型を活かした俊敏な立ち回りによる敵の撹乱が向いていた。
2時間ほど狩りをして、シリカのレベルが42に上がった頃・・・。
「そろそろかな」
「ああ」
「「そこに隠れてる奴ら・・・出てこいよ」」
俺たちが気配のする方に声をかけると、廃屋の陰からロザリアを始めとした20人以上の男たちがぞろぞろと現れた。
「へ〜。あたしの隠蔽を見破るなんてなかなか高い索敵スキルね。実力を見誤っていたかしら?」
「そうかもな。タイタンズハンドのリーダーさん?」
「ちっ!なんだい、バレてたのか」
「あんたら、少し前にシルバーフラグスってギルドを襲っただろう。唯一生き延びたリーダーの男はな。毎日朝から晩まで敵討ちをしてくれる人間を探し回ってたんだ。だが、あの男はあんたらを殺してくれとは言わなかった」
「あんたらを牢獄に入れてくれと俺たちに頼んで来たんだ・・・。お前に
あの男の気持ちが分かるか!?」
あの時の光景を思い出した俺たちは、徐々に語気を荒げながら問い詰めていく。
「わからないわよそんなの。マジになっちゃって馬鹿みたい。だいたい、この世界で死んだら本当に死ぬって証拠もないのになにムキになってんのさ。それと・・・今は人の心配をしている場合?」
ロザリアが指を鳴らすと、周りにいた男たちが取り囲むように動き出した。
「前の10人は俺が、後ろの10人はキリトが、アスナたちは方円陣を組んでシリカを守ってやってくれ。キリト・・・殺すなよ?」
「わかってる」
その言葉を合図に、俺とキリトは地を蹴った。キリトが持ち前のシステム外スキル・武器破壊などで敵を倒していくのに対し、俺は槍の穂先は使わないように腹の部分で敵をなぎ払っていく。どうしても穂先の部分は威力が入りすぎるから間違って殺してしまう可能性がある。
奥ではロザリアが俺の戦い方を見て驚愕していた。
「ロザリアさんさぁ・・・槍は重装備だと思ってるんでしょ」
「な、なんだいいきなり・・・」
「確かに、槍の最大の強みは盾でガードして隙をついて攻撃することなんだろうけど、俺にとってはそうじゃないんだよ。俺にとっての槍は速さ重視の連撃にある。筋力値を上げ、可能な限りハイスペックな細長く軽い槍を使うことで・・・俺の槍術は再現される!」
俺は穂先とは逆側を使って神速とも呼べる3連突きを放ち目の前の男を吹き飛ばす。更に、後ろから回り込んできた相手には槍を脇て固定して右足を軸に回転。その勢いで殴り飛ばす。更に挟み討ちしてきた2人にはまず片方に槍で足払いをかけて転ばせ、回転の勢いを殺さないままもう1人に向けて槍を握る力を緩めて突き出すことによって射出する。
そんな感じで、俺は瞬く間に10人の男を追い込んで見せた。全員、HPはレッドにまで落ちており、その顔には死への恐怖が色濃く写っている。
キリトの方も終わったようで、アスナたちが手分けしながら男たちを一箇所に集めていた。
「さて、残りはロザリアさん。あんただけた。大人しく牢獄に入るのなら、乱暴なことはしないよ?」
「くっ・・・!」
ロザリアは懐から転移結晶を取り出し逃げようとするが、俺たちがそれを許すはずもなく・・・。
「がぁ!?」
「大人しくしてれば良いものを」
転移結晶を握っていた左腕には、俺の槍が突き刺さっていた。
「こ・・・の!」
俺はロザリアに近づくと、肩を押さえているロザリアを押し倒し肩に刺さった槍に力を加える。
「あ、あぐぁ!?」
「どうする?このままだと貫通ダメージでHPが0になっちゃうよ?あぁ、あんたは本当に死ぬとは思ってないんだっけ?なら、良かったね?これで現実に帰れるよ?」
「ひっ・・・!」
殺気を込めながら追い詰めていくと、ロザリアは徐々に減っていくHPも相まって予想以上に恐怖心を煽られたのか、白目を向いて気絶してしまった。
「・・・ふん」
俺はつまらなそうに槍を抜くと、ロザリアの首根っこを掴んでキリトたちの元へ引きずって行く。
「俺、初めてお前のことを怖いと思ったよ」
「た、確かに・・・」
あ〜ちょっと今回は本性出しすぎたかもしれないな・・・自重しないと。
「悪い悪い。それより、さっさとこいつら牢獄に入れちゃおう」
「だね!僕この人たちの顔二度と見たくないよ」
「そうね・・・。早く放り込んでしまいましょう」
こうして、タイタンズハンドとの戦いは幕を閉じるのであった。
その後、街に戻った俺たちは攻略に戻ることをシリカに伝えると、
「あ、あの!ご迷惑でなければ、私も皆さんのギルドに入れていただけないでしょうか!?」
と、嬉しい誤算が待っていた。俺も最初は誘おうかと思っていたが、シリカの性格上あまり戦闘は好きじゃないと思って諦めかけていたのである。俺たちは快くシリカを迎え入れ、マスコット的存在を手に入れるのであった。
はい、どうでしたでしょうか?
戦闘描写難しいですね(^^;;
次回も頑張って書きます!