雪ノ下家長男の青春ラブコメもまちがっている   作:拳骨揚げ

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 雪乃さんと比企谷君の登場



 そして月乃君のシスコンっぷりが見れます。
                       
 
 そしてなんとUAが1000を超えてました。ありがとうございます。


 タイトル変えました。


②比企谷八幡と雪ノ下雪乃は相いれない

 時は過ぎある日の放課後。あの親睦会の後からやけに僕に話しかけてきて、今日も一緒に帰ろうと言ってきた宮城さんに断りを入れ、僕は職員室に向かっていた。

 職員室のドアを開け、中に入る。そして目当ての人物を見つけた。

 

「平塚先生」

「おお、雪ノ下弟か」

 

 平塚静教諭。長い黒髪に綺麗な顔立ち。女性として素敵なプロポーション。性格もとてもカッコイイし優しい。でもカッコよすぎるのがたまに傷。絶賛婚活中。

 

「どうしたんですか? いきなり呼び出すなんて」

「いや、少し頼みたいことがあってな?」

「頼みですか? まあ、僕でよければいくらでもしますけど」

 

 なぜなら平塚先生は陽姉ちゃんもお世話になったと聞いているのだ。そんな先生の頼みを断るなんて、間接的に陽姉ちゃんの頼みを断るのと同義。そんなことこの僕ができるわけない。

 

「そうか、それはありがとう」

 

 そういって微笑む姿は、どう見ても誰もが見蕩れる美人さん。なんで結婚できないの?

 

「これを見てくれ」

 

 平塚先生が渡してきたのは一枚のレポート。題名は「高校生活を振り返って」。進学早々にあるよくあるものだ。たしか僕ら一年生は「高校生活への意気込み」だったっけ。

 そのレポートを受け取り読んでみる。「青春とは嘘であり、悪である」から始まり、「リア充爆発しろ」で〆られていた。

 

「犯行声明?」

「やはりお前もそう思うか?」

 

 大きなため息をついて平塚先生が頭を抱える。

 

「大丈夫ですか? 息抜き程度なら付き合いますよ?」

 

 心配になってそういうと、先生は柔らかい笑みを浮かべた。

 

「やはり、お前は陽乃の弟とは思えないな。その気遣いはあいつには出来ないものだ」

 

 それは違う。だって僕のこれは陽姉ちゃんから学んだものだ。でも、わざわざそれを言う必要はないだろう。これは僕の大事な思い出でもあるのだから。

 

「それで? 頼みというのはなんですか?」

「今日お前たちの部活に依頼を連れていくから、雪ノ下に事前報告しておいてくれ」

 

 ああ、部活の伝達事項をしてくれということだったのか。そんなことはお安い御用だ。

 

「わかりました。依頼を連れてくると伝えます」

 

 それを聞いて、平塚先生はニヤリと笑った。

 

「キミは理解が早くて助かるよ」

「ありがとうございます。でも、陽姉ちゃんほどじゃないですよ」

「いやいや、謙遜するな。たしかに陽乃も凄かったが、キミも相当だよ」

 

 その言葉に照れてしまってうまく笑えているか分からなかった。

 

× × ×

 

 職員室から出て特別棟の方へと向かう。

 この総武高校の校舎は少し歪な形をしている。

 空から見下ろせばちょうど漢字の口の形に似ている。その下にちょろりと視聴覚室の部分を足してあげれば俯瞰図の完成だ。これは去年、この学校の文化祭の時に校舎を徘徊していた時に気付いたことだ。

 そして今は特別棟への道を進んでいる。その足取りは誰がどう見ても軽く、少しだけ足早になってしまっている。それはいつしか早歩きになり、小走りへと変わっていった。いや、それは走るというよりスキップと言ったほうがいいかもしれない。それぐらいに、僕はこれから行く場所が待ち遠しかったのだ。

 そしてやっとついた目的地。職員室から数分だったのだろうけど、僕としては長い長い時間だった。扉の前で息を整え、身だしなみをチェック。―――うん、問題なし。

 扉をトントントンと三回ノックすると、中から「どうぞ」と綺麗な声が返って来た。扉を開けて中に入る。そこには一人の少女が本を読んでいた。僕はこの女の子を知っている。

 なぜなら、彼女は―――

 

「雪姉ちゃん」

 

 僕の姉なのだから。

 

「あら月乃。遅かったわね」

 

 微笑みをたたえてそう聞いてくるその姿は、相も変わらず綺麗で周辺の風景すらその影響を受けるかのようにキラキラと輝いて見える。それほどまでに、雪姉ちゃんは美しい。足早に近づき横にある椅子に座る。そして寄りかかるように寄り添う。

 

「月乃、暑苦しいわ。少し離れて」

「やだ~」

 

 それを聞いて少しだけため息をついて、雪姉ちゃんは僕の頭を撫でてくれた。その気持ちよさに目を閉じる。

 雪姉ちゃんの匂い、雪姉ちゃんの温かさ。これに勝るものはこの世には無い。そうやって、少しばかり堪能してから僕は頼まれごとを思い出した。

 

「そういえば、雪姉ちゃん。平塚先生が依頼を連れてくるんだって」

「平塚先生が? 一体何かしら?」

「たぶん、誰かを連れてくるんじゃないかな。依頼を連れていくっていう言い方は変だし」

「そうね。その方が自然ね」

「どんな人だろうね?」

「さあ、ただ、平塚先生に目をつけられるような人なら決して善い人ではないでしょうね」

「その言い方だと、まるで平塚先生が善い人ではないみたいだよ?」

 

 こんな何気ない会話が幸せ。なぜなら雪姉ちゃんは高校進学と同時に一人暮らしを始めてしまったからだ。まだ、中学生だった僕は実家から中学に通ってしまっていたため会える回数は格段に減ってしまった。でもこの春から僕も雪姉ちゃんと暮らすことができた。母さんを説得するのには少しだけ苦労したけど、陽姉ちゃんのおかげで了承を取れた。

 すると突然、ガラリと部屋の戸を開けた。ビックリしたけど、そそくさと雪姉ちゃんから一定の距離を作る。入って来たのは平塚先生。と、なんか目がどんより腐っている男子生徒。―――風邪なのかな?

 

「平塚先生、入るときはノックをと、お願いしたはずですが。月乃がビックリしてしまったじゃないですか」

 

 雪姉ちゃんの忠告にしかし平塚先生はまったく反省の色を見せない。

 

「ノックをしてもキミは返事をしたためしがないじゃないか。それに、見るかぎり弟の方は動揺していないようだが?」

「返事をする間もなく先生が入ってくるんですよ。それと月乃は立ち直りが早いんです」

 

 実際そうなんだよね。先生はノックをしてもこちらの返事も聞かずに開けてしまう。まあ、ノックをすること自体が珍しいのだ。

 そして、僕は雪姉ちゃんと陽姉ちゃん以外の人かいる中ではさすがに甘えたりはしない。自分自身のためというのもあるが、それを見られる姉ちゃんたちに悪いからだ。

 

「それで、そのぬぼーっとした人は?」

 雪姉ちゃんが男子生徒を見てそう評した。……ぬぼーっ。なるほど、たしかにぬぼーっとしている。なんかポケモンにこんな感じのがいた気がする。なんだっけ? あ、○オーだ。

 

「彼は比企谷。入部希望者だ」

 

 平塚先生に言われて彼は小さく会釈をした。でも、さっきからどこか引っ掛かる。この人、どこかで会わなかったかな?

 

「二年F組の比企谷八幡です。おい、入部ってなんだよ」

「キミには舐め腐ったレポートのペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口応えは一切認めない」

 

 職権乱用ってこういうことは言うんだな。初めて見た。……でも―――レポート。そうか、あの時見せられたレポートの書き手がこの人なのか。なるほど、たしかにあんな犯罪者まがいのものを書きそうな人だ。

 

「お断りします。そこの男の下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

 

 その言葉が聞こえた瞬間僕は思いっきり比企谷先輩を睨んでしまった。先輩はビクッとして二、三歩後退する。

 

「安心したまえ、雪ノ下、それに弟のほうも。この男は目と根性が腐っているだけあってリスク・リターンの計算と自己保身に関してはなかなかのものだ。刑事罰に問われるような真似は決してしない。彼の小悪党ぶりは信用していい」

「いや、ただ常識的な判断ができるって言ってほしいんですけど」

 

 平塚先生の言葉を訂正しようとする先輩だが、僕としてはそれだけで警戒レベルをゼロにできるほど安心できた。

 

「小悪党……。なるほど」

 

「聞いていない上に納得しちゃったし、そっちは完全に警戒解いてるし」

 

 そんな先輩の小悪党ぶりが雪姉ちゃんを納得させたのか、雪姉ちゃんは結局先生からの依頼を承った。その返事に満足そうに頷いた平塚先生はそのままさっさと帰ってしまった。ぽつんと立たさせている比企谷先輩と、もはや先輩をいないものとして文庫本に目を落とした雪姉ちゃん。

 僕はとりあえず教室の後ろから椅子を持ってきて、先輩の近くに置く。そして僕の行動に戸惑ってる先輩に小さく笑う。

 

「立ったままじゃなんなので、座ってください」

 

「お、おお。悪いな」

 

 若干しどろもどろに返答して座る先輩。

 

 僕も自分の席へと戻る。そして雪姉ちゃんをチラリと見るが、まったく話を切り出そうとしない。その空気が嫌なのか、比企谷先輩は少し挙動不審だ。どうやら自分で話しかけるということは難しいらしい。仕方ない、ここは僕から話しかけよう。

 

「あの、平塚先生からどこまで聞いてますか?」

 

 ようやく話が進むことにほっとしたのか、比企谷先輩は目線を合わせないまま応えた。

 

「いや、わけわからん説明しかなかったからな。そもそもここ何部なんだ?」

 

 それを聞いて、雪姉ちゃんが心底めんどくさそうに本を閉じた。その所作の一部一部からは明確な敵意が見て取れる。

 

「……そうね、ではゲームをしましょう」

「ゲーム?」

「そう。ここが何部か当てるゲーム。さて、ここは何部でしょう?」

 

 ああ、そういうこと。ならば、当分僕の出番はないかな。それならばと、僕は鞄からハーモニカを取り出す。

 

「姉さん、なにかリクエストある?」

「月乃の好きなものでいいわ」

 

 そう言われて、僕は静かで緩やかな曲を奏でる。先輩の集中を阻害することなく、それでいて雪姉ちゃんがリラックスできる曲。

 

「いくつか、質問していいか?」

「どうぞ」

「ここには他に部員はいるのか?」

「いないわ」

 

 ……。

 

 しばしの熟考の後、先輩は答を出す。

 

「文芸部か?」

 

 それを聞いて僕は奏でる。

 

 

 

 ―――テレッテレッほわゎゎゎゎ~~~ん。

 

 

 

「なぜ、ボッシュート。てかハーモニカでできるもんなの?」

「つまりハズレよ。それと月乃、演奏を途中で中断してはダメよ」

「は~い」

 

 そう言われ、僕は中断していた曲をまた最初から吹き始める。

 

「では最大のヒント。私たちがここでこうしているのがここの活動内容よ」

 

 そう言われても、先輩はどうやら答を導き出せなかったようだ。降参するように両手を上げる。

 

「降参だ。さっぱりわからん」

 

 まあ、今のヒントでわかるのなら結構大したものだと言える。すると、雪姉ちゃんは唐突に話を変えた。

 

「比企谷君。女子と会話したのは何年ぶり?」

 

 あ、年単位なのは確定なんだ。それに比企谷先輩を見るに図星らしいし。先輩の目がさっきより二割増しで腐っている気がする。過去に何があったんだろう?

 

「持つ者が持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、モテない男子には女子との会話を。困っている人に救いの手を差し伸べる、それがこの部の活動よ」

 

 雪姉ちゃんは立ち上がり、比企谷先輩を見下ろすようにして言う。

 

「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」

 

 それは、まったく歓迎していない歓迎の言葉だった。

 




 次回、まだ由比ヶ浜さん出てきません。
 

 それと次回辺りで月乃君のプロフィールでも載せようかなと思ったり思わなかったりしてます。

 ではでは、第二話読んでいただきたいありがとうございます。

 三話もいつ更新できるかわかりませんが、また読んでいただけたら幸いです。
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