モモンガ様のお兄様   作:丸猫

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誤字指摘、ありがとうございました。

段々、どこで切っていいのか分からなくなってきた。

2/26 話の内容や流れを変更したり、加筆をしました 。


初めまして、ご挨拶を(変更、修正済み)

 

モモンガはナザリック地下大墳墓の入り口にて、空鼠を待った。その横にはもちろんアルベドも立っている。

アルベドはその時、激しい動揺に襲われていた。

モモンガに兄がいた。その事実を知った時、アルベドはその兄をモモンガと同じような強者であると想像した。

が、それはモモンガからの言葉であっさりと覆される。

モモンガ曰く、兄である彼は、けっして強くはない、学者肌のエルフである、少々子供っぽい、優しく温和な性格である、好奇心が強くその場で見当違いな行動をとることがある。

正直な話からすれば、モモンガとはあまりにも違いすぎるその人物像に戸惑いしか覚えなかった。

唯一の共通点は優しい性格しかなかったが、それでもモモンガが大事にしているらしい兄だ。且つ、自分の義兄になる存在だ。

(出来るだけ、出来るだけ好印象になるように!)

そんな密かに気合を入れていたアルベドのことになど気づいておらず、モモンガは草原の彼方に目を凝らしている。

「・・・・あ。」

そして、草原の向こうから三つ、何かの影を見つけた。

近づいて来るうちに、それが見上げるような大きさの狼とセバス、そして和装の女性であることが分かった。

そして、狼の背に乗った人物が手を振る。

「モモンガァ!」

その声は、聴きなじんだ兄の声だった。それに、モモンガも思わず叫びかえした。

「兄さん!」

その声が響いた瞬間、空鼠はヴォルフの背中を蹴り、彼らよりも前に降り立った。

「あ、旦那!?」

「マスター!?」

「空鼠様!?」

レゴラスやセバスの言葉など無視し、空鼠はモモンガを目指して一直線に走る。流石、レベルに後押しされているせいかその速さは見事と言って良い。

そして、ナザリックの敷地内に入った時、彼は止まろうとしたがそんな速さに慣れていない彼がそんなこと出来るわけもなく。

速度を殺し切れずに盛大に転がった。

「に、兄さん!?」

ゴロゴロと転がっていった空鼠の元にモモンガは駆け寄る。アルベドはあまりにも予想外の行動に固まってしまった。

「兄さん、大丈夫ですか?」

モモンガが空鼠を抱き起せば、彼はどこでぶつけたのか額を赤くして微笑んだ。そして、モモンガに抱き付いた。

「モモンガ、よかった。また、会えた。」

自分に抱き付いてくる温かい存在に、モモンガは思わず力を抜き、その体を抱きしめた。

その体は温かく、自分とは違い生きているのだと安堵する。その温かさに、どうしようもなく安心した。

ここにいる、たった一人の家族であるこの人は、自分の腕の中にいる。今まで肩にのしかかっていた負荷が消えていく様な感覚さえした。

空鼠は子どもの頃に戻ったような気分で、モモンガを抱きしめた。

「・・・・・兄さん、少し苦しいです。」

抱きしめられている状況に気恥ずかしさを感じ始めたモモンガに、空鼠はからかう様な声音を出した。向かい合わせでケラケラと笑いあう

「もう少しいいじゃないですか、久しぶりの再会・・・・・・」

「主?先ほど、けっして離れないようにと言い含めたわよね?」

年甲斐もなく二人がじゃれ合っていると、非情にもドスの効いた声が背後から掛けられる。

それに空鼠は体をびくりと震わせた。

その言葉にモモンガが後ろを振り返ると、笑ってはいるものの明らかに怒髪天を衝いている鈴鹿御前が立っていた。

「モモンガ様、後ろの我らの主をお渡しできませんでしょうか?」

声は、限りなく優しい。けれど、弟であったモモンガは知っている。その声は、完璧に怒っている声だった。

モモンガはともかく立ち上がり、鈴鹿御前に向き合う。空鼠はモモンガの後ろでこっそりと鈴鹿御前を伺っている。

「鈴鹿、ごめんなさい!モモンガに会えて嬉しくて、つい。」

「鈴鹿御前、兄の行動については許してやったらどうだ?」

追いついたセバスたちはその場をどう抑えていいかもわからずに、後ろに立っている。レゴラスとヴォルフはというと鈴鹿御前の反応は予想通りだったのか、暢気に会話をしている。

「わあ、鈴鹿姉さま、激おこぷんぷん丸?」

「いや、ありゃあカム着火インフェルノだな。」

そこで我に返ったアルベドがモモンガと鈴鹿御前の間に割って入る。

「貴様!!モモンガ様にその態度は何!?」

「アルベド殿かしら?」

アルベドの方を見た鈴鹿御前は微笑んでいた。そして、深々とお辞儀をした。

瞳孔はいつの間にか縦に裂け、まるで獣のようになっていた。

「いえ、私はモモンガ様に無礼を働く気などは。唯、少しだけ我らの主に話があるだけですよ。」

叩きつける様な怒気にアルベドも変わらないほどの殺気を放つ。

そして、そこで自分よりも強者であるアルベドの殺気に空鼠が体を震わせた。それに気づいたモモンガが静止の言葉を放つ。

「アルベド、鈴鹿御前、落ち着け!兄さんが怯えている。」

意図的に作られた低い声に、二人の怒気と殺気が落ち着く。視線を向けられたモモンガは内心でため息を吐く。

「アルベド、鈴鹿御前の態度は自らの主人を思うからこそだ。私も不快に思っていない。落ち着け。」

「・・・・モモンガ様が、そうおっしゃるなら。」

そして、空鼠は覚悟を決めたのか、鈴鹿御前の前に歩いて行く。

自分よりも低い鈴鹿御前の前に立ち、項垂れる様はなかなかに情けない。

「・・・・・鈴鹿、ごめんなさい。」

その時、後ろからやってきたヴォルフが鼻先で鈴鹿御前の背中を突く。アルベドに警戒する様な目で睨まれても、ヴォルフとレゴラスはけろりとしていた。

「鈴鹿、落ち着けよ。」

「ヴォルフ、黙って・・・・・」

「そうだよ、大体、こうなる可能性があることは分かってたでしょ?本当に、こうなることを防ぎたかったなら、ヴォルフの背にマスターをくくりつけるかしておくべきだったんじゃないの?」

レゴラスの言葉に鈴鹿御前は黙った。

「まあ、そんなにカリカリすんなよ。甘やかすのも、お前の仕事だろう?」

ヴォルフは、まるでからかう様な仕草で目を細めた。それに鈴鹿御前は大きくため息を吐いた。

そして、鈴鹿御前は大きくため息を吐き、空鼠にデコピンをする。

「あだっ!」

赤くなった額をさらに赤くし、空鼠はそこを撫でた。

「・・・・・今回は、気持ちも分からなくないからこれで許すわ。」

「はい。」

鈴鹿御前の怒りが収まったのを見たモモンガは兄をアルベドに紹介することにした。

「・・・・アルベド、先ほど話したが私の兄の空鼠だ。」

「あははははは、御見苦しい所を見せてすみません。空鼠と言います。」

「は、はい。私は守護者統括のアルベドと申します。」

好印象になるように、なんて考えは目の前で起こったことに頭の隅に飛んで行ってしまっていた。空鼠はというと、今までのことなどなかったかのようにおっとりと笑った。

やけに腰の低いエルフ、それがアルベドの第一印象だった。

「わあ、美人さんですね。アルベドってことは、タブラさんの?」

「はい、そうです。」

「ああ、やっぱり。一度画像だけは見たことがあったんですが、実物はもっと美人ですね。」

空鼠はそう言って、こちらの肩の力が抜ける様な、柔らかな笑みを浮かべた。その笑みに、アルベドは庇護欲とも慕わしさとも言えない感情が浮かび上がる。恋心とは違う、穏やかで暖かな感情だった。

(うううううう!何、この感情は!?これが、母性?まあ、少々弱々しい方だし。でも、なかなかの好印象!アルベド、このままの印象をキープよ!嫌われるようなことになれば、モモンガ様と結ばれることも出来なくなる。このまま好みなんか聞いて、確実に仲良くなれば。あああああ!でも、仲良くなりすぎてモモンガ様に誤解されたら!?)

「な、なんかアルベドさんの目が怖いんですが。」

「・・・・気にしなくていいですから、兄さん。さあ、他の守護者にも紹介しなくてはならないので、来てください。」

 

 

玉座の間に集まった守護者たちの間には、動揺が広がっていた。

モモンガに、兄がいる。

それも、モモンガと同じアンデットではなく自分たちよりもずっと弱いエルフの男。

デミウルゴスは、セバスとアルベドに視線をやった。いち早く先に、その兄という存在に会っているはずの二人だ。

が、セバスは何故か疲労の色が濃く、アルベドに至っては何かに思考を巡らしているらしかった。

「先ほど、通達したばかりだが彼は私の兄である、空鼠という。分かっているだろうが、この人はお前たちや私たちに比べれば非常に弱い。そう言った面で、保護ということもあるが。協力関係を築くことになった。」

モモンガはそう言って隣のエルフの男、空鼠を指した。

空鼠は今の状況に戸惑っているのか、不安げな顔で守護者たちを見ている。

それにデミウルゴスは、何とも言えない気分になる。

腰まである金の髪、閉じられているせいで瞳の色は分からなかった。アルベドほどではないが、整った顔立ちは、優しげでどこか品を感じる。

至高の御方、その総括であるモモンガの兄、というには余りにも平凡であり、弱弱しかった。

そして、デミウルゴスには気になって仕方がないことがあった。

それは、何故か空鼠の腕の中にアウラたちよりも幼いエルフの少年が眠りこけていたことだった。その後ろに立った鬼人の女の腕には、黒い子犬が収まっている。その女自身も、何故か目が死んでいる。

(なぜ、この場で眠りこけている?この玉座の間で。というか、他の部屋で眠らせておけば。)

「ええっと、紹介に預からせていただきました。モモンガの兄の空鼠と言います。後ろの鬼人が鈴鹿御前、抱っこされてるのが人狼のヴォルフ。あ、この子はレゴラスです。眠りへの耐性がないんですが、そう言えば今、夜なんですよねえ。」

ちっちゃい子なら、眠たくなりますよね。

のんびりとした声に、守護者全員が似たようなことを考えた。

そこじゃない、確かに気になっていたところだけれど。そこじゃないんだ。

脱力したくなる様な、のんびりとした態度にデミウルゴスは悶々とした。

 

 

(ええっと、なんて言えばいいんですかね。)

(兄さん、頑張って!ここで、出来るだけ好印象にしたんです!)

伝言でのやり取りで、モモンガは慌てた様子で空鼠に言い含める。

モモンガは最初から空鼠に支配者としての態度など期待してはいなかった。マイペース、且つのんびりしすぎた性格の彼にそんな態度など期待することが無駄だ。

だからこそ、今のところ守護者たちが自分に対してどれだけの忠誠を捧げてくるのかも分からない中、空鼠のことがどんな影響を与えるか未知数だった。

というか、長年付き合ったモモンガも、目の前の兄に振り回されることも少なくない。

(守護者たちの忠誠心が、不変であるとは限らないんだ。もしかしたら、俺の兄ってだけじゃあ害される危険性だってあるんだ。)

(・・・・モモンガは、彼らのことを疑ってるのかい?)

(兄さんの所とは違って、俺もナザリックのNPCの性格を全て網羅しているわけじゃない。不安要素が多すぎる。)

空鼠はそれの少しの間、考える様な仕草をした。そして、また守護者たちに向き合った。

「おそらく、これから共に行動していく中で、私からお願いがあります。もし、私が危険な目にあったなら、見捨てて逃げてください。」

それに、モモンガから驚愕したような雰囲気が伝わってくる。それは、守護者からも同様だった。精神の沈静化が終わったモモンガが、未だに動揺の残る声を出す。

「兄さん、何故、そんなことを。」

「いえ、モモンガ、君はたぶん私の護衛を強固にするでしょう?何だかんだで、私は弱いですから。だから、多分、私がそう言った危険な状況になるって、色々詰んだ時なんですよねえ。」

その声は、平坦で相も変わらずのんびりとした口調だった。

「私は、強くありません。頭もいいほうじゃない。このナザリックにとっては、けっして有益ではありません。それに比べたら、ここにいる人たちはギルドの彼らが作った守護者です。あの人たちが、自分の美しい、強い、素敵だと感じたものを目一杯詰め込んだ彼らを取る方がいいじゃないですか。ねえモモンガ、私はね、お前の足を引っ張ることだけは死んでも嫌なんですよ。」

モモンガは茫然としたまま、その言葉を聞く。そして、それは守護者たちも同じだった。が、それを聞いた鈴鹿御前だけはそれを平然とした様子で聞いている。

「まあ、それにあの人たちがお前に残した子たちです。きっと、お前を一人にはしない。守ってくれる、寄り添ってくれる、傍に居てくれる、一緒に喜んで悲しんでくれる。だから、きっと、死ぬときだって安心できる。」

だから、きっと大丈夫でしょう。

そう言った、空鼠はやはり笑っていた。穏やかで、優しげな、モモンガの好きな笑みだった。

 

 

ニコニコと笑う空鼠にモモンガは言葉を失っていた。

そこに、頭の中に鈴鹿御前の声が響く。

(・・・・主。)

(あ、鈴鹿、どうしたんですか?)

(私は、あんたがそういた意図でさっきのことを言ったのか分かる。だけどな、弟君の前でそれを堂々と言うな。もしも、自分を見捨てろとモモンガの旦那に言われたら。どんな気分か分かるだろう。)

その忠告に、空鼠は隣りに立っているモモンガの方をばつの悪い顔で見る。

鈴鹿御前の言葉に、自分がモモンガにとても酷いことを言ったと自覚した。

「・・・・モモンガ、すいません。感情的になって勝手なことを言って。あ、守護者の皆さんも、突然変なことを言っちゃって。でも、まあ、言いたいことは、単にナザリックとかモモンガのことを最優先にして、私を二の次にしてって意味ですから。軽く、心にとめていてくださいね?」

そう言った後に、モモンガから怒気が伝わってくる。そして、空鼠の肩が揺れたことから、どうやらお叱りを受けていらしかった。

「はあ、兄さん、ありがとう。これにて、解散とする。皆は、ここで鈴鹿御前たちと連絡体制などについての相談をしてくれ。私たちは、これから別室で方針について決めることとする。」

「畏まりました。」

その言葉と同時に、モモンガは空鼠を連れて転移した。

 

 

 

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