ユー・アンドウ   作:催促音速ハムスター

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始めましてから始まるRPGです。地球の美しさに引かれて始めました。
主人公は我らが安藤。
エルダーを倒し、ルーサーを倒し、ダブルもアプレンティスもふるぼっこして深遠なる闇まで封印するというまさに最強な安藤。
そんな安藤になってしまった、元ただのプレイヤーが頑張るお話です。


ずっとこの日を待ち望んでいた

 ファンタシースターオンライン2──通称PSO2はESCAによって俺たちのパソコンにプリインストールされているオンラインアクションRPGだった。

 だった、というのは恐らく俺だけにとっての事である。

 他の人たちから見れば、まだゲームだっていうイメージだろうし、逆にアークスたちから見たとすれば、これは紛れもない現実なのだと言うだろう。

 そして俺も、そのうちそんな風に思う日がきっと来る。

 それは明日か明後日か、あるいはもっと先の未来なのかもしれないし過去なのかもしれない。

 それは誰にも分からないし、俺にも分からん。

 

 ただひとつ、そのときの俺が分かっていたのは──PSO2の大型アップデート『Reborn:EP4』をインストールすると、なぜか俺自身が、『ユー・アンドウ』という伝説のアークスになっているということだけだった。

 

 

 

 《ずっとこの日を待ち望んでいた》

 

 

 

「オラクル──それは、惑星間を自由に旅する巨大な船団です。その誕生と共に、外宇宙への進出が可能となり、新たな歴史は始まりました。そして今や、我々の活動範囲は数多の銀河に渡ります。ナベリウス、アムドゥスキア、リリーパ。現在判明している、生命体の存在する惑星はこの三つです。

 

 そして、ヒューマン、ニューマン、キャスト、そしてデューマン。これら四種族により構成される組織──アークスの任務はただひとつ。この宇宙に蔓延るダーカーを殲滅することです」

 

「はい、そこまで。では次──」

 

 教科書の一文を読み終え、着席する。

 今日が学園生活最後の座学なんだなと思うと、少し感慨深いものがあったりするものだが、生憎と俺はわくわくしていた。

 卒業したら何をする?

 就活?進学?あるいはどっちも失敗してニート?

 いやいや、そんな平和なモンじゃない。地球の歴史上の戦争すべてを足したって及ばないくらいのモンだろうよ。

 

「ダーカーのタイプで現在判明しているのは──」

 

 ちなみに俺の席は窓際だ。こういうの、主人公特権ってやつなら窓の外の景色でも眺めるんだろうけど、しかし残念なことに、窓の外は宇宙だ。どこを見ても果てしない宇宙。じゃあここは何処かって話になるんだけど……

 

 カーンカーンカーンカーン。

 

「そこまで。それでは諸君、いよいよ明日は諸君らの初の実戦──実地訓練だ。訓練だからといって気を抜かないように。その時は死が待っていると思え。以上だ」

 

 何が、『死が待っていると思え、キリッ』だ。

 これがギャグじゃないんだから余計寒いぜ。やべえ思わずブルッと来た。

 

「アンドウさん、震えているけど大丈夫?」

 

 唐突に女の子に話しかけられたからさらにブルッと来た。やっぱりこの体になっても慣れないモンは慣れないな。

 

「ああ、大丈夫だ問題ない。私はこうしてフォトンを高めているのだからな」

 

 言い訳に無理がありすぎるが問題はない。超万能ワード『フォトンくん』が全てを解決してくれる。

 

「そ、そうなの。ならいいけど……実地訓練はパーティーが違うけど、お互い頑張ろうね!アンドウさん!」

 

「ああ、そうだな。お互い頑張ろう」

 

 俺はヒラヒラと手を振って颯爽とその場を立ち去った。

 後ろから溜め息のようなものが聞こえた。

 やべ、俺何か対応間違ったか?

 まあいいや。さっさとマイルームに帰って寝よっと。

 

 

 

 俺はマイルームに戻るとすぐに制服を脱ぎ捨てる。部屋の鍵はそのままだが、許可した者以外は入れないようになっているため問題ないだろう。流石フォトンくんマジパネェ。

 

「ぬわああああん疲れたあああああ!」

 

 学校では絶対に言わないような言葉を吐き出た俺は、そのままベッドに身を投げて脱力する。

 

「慣れないキャラ!慣れない仕草!そして慣れない一人称『私』!

 ああもういっその事、らん豚みたいに『出荷よー』と『そんなー』の2語会話だけにしとけば良かったァ!SGNMァ!」

 

 ある日唐突に始まってしまった謎の入学式での黒歴史を思い出し自爆する。ID真っ赤wwwざまぁwww……ざまぁ……

 

「はぁ」

 

 一通り悶え苦しんだところで俺は冷静になる。

 ふとなんとなくベッドの側に設置しておいた鏡を見てみたところ、そこには下着姿で顔を赤らめた黒髪の美少女ヒューマンがいた。

 

「うっわ何この子かわいい。俺のオフスティアカリバーがPSEバーストしちゃう」

 

 めちゃしこ。

 

「って俺じゃねえか!」

 

 即萎え。

 

「……このやり取りもそろそろ飽きた感がある」

 

 俺はいそいそと学校指定のアークスジャージーに着替えた。ピンクではなく黒だ。シャワーを浴びようかとは思ったが、面倒なのでやめた。

 無論、体の汚れはフォトンで浄化できるので問題ない。

 さすフォ。

 

「どうせ起きててもビジフォン戦士しかやることないし、明日に備えて今日はもう寝よう」

 

 俺はそのまま仰向けなり、静かに目を閉じる。

 心地の良いフォトンが俺に安らぎを与え、眠りへと誘うのだ。

 ……中々寝付けない。

 そうだ、俺ではない私──ユー・アンドウの事を考えてみよう。

 

 かつて宇宙を救ったと言われる大英雄であり、アークス内部でも二人しか存在しないと言われているガーディアンでもある。その名はユー・アンドウ。生きる伝説だ。

 しかしその多くは謎に包まれており、プレイヤーはおろか運営でさえも存在を把握しきれていない。まさしく謎の人物である。という設定の重要NPCであったユー・アンドウ。

 

 これがEP4の話。

 

 そして現在、アークス候補生であるユー・アンドウ。

 おそらく明日、実地訓練に降り立つ惑星ナベリウスにて何かが起こり、そしてアンドウが英雄となるための大いなる一歩を踏み出すのだろう。

 

 ……くくくくっ……やっべ、オラワクワクしてきたぞ!

 

 いかんいかん、眠らなければ。

 

 躍動するフォトンの励起をなんとか抑えつつ、俺は一心に眠るのを頑張った。

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