週一ペースであげますのでよろしくお願いします。
あと、ちょいちょいライダーネタはさみますw
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小さな劇場のロビーには多くの観客が詰め掛けており、制服の上から法被を着た真心は頭を下げ、人の足を踏まないように恐る恐る歩きながら、和人と予約していた真ん中の席へと座った。
ホッと一息ついて、ビニール袋から二リットルの水とのど飴を和人へ渡した。
「いやぁレジが毎度混雑してて大変だよ」
「ありがと、やっぱライブの時は混むな」
二人とも学校にいる時は真面目で大人しいが、普段出さない高い声でエールを送る。
「あぁ早く始まんないかなぁ」真心は言った。
「俺は早く海未ちゃんに会いたい」和人は興奮しながら言った。
「にしても、一回ことりちゃん抜けそうになったのを穂乃果ちゃんが説得して、講堂ライブをやりきったのはすごいよなぁ」
和人は大袈裟に頷きながら互いにμ’sについて熱く語っていると、開始のアナウンスが流れ会場は暗闇に染まると共に熱い歓声が響き、待ってましたと言わんばかりに立ち上がった。
「μ’sミュージックスタート!」
カラフルな掛け声と黄色い歓声と共に、オレンジの光がステージへ差し込んだ。
各メンバーのイメージカラーの光が九人の少女達を照らし、明日へ駆け出していく様に両腕を回した。
二人と観客達は導かれるように、サイリウムを裏打ちし、一つになった。
「皆さん、今日はありがとうございました!」
続いて八人も挨拶を終えると、真心は「穂乃果ちゃーんッ!」と叫び、真心の方へ手を振ってくれたものだから真心のテンションは有頂天に達していた。
九人が去り、会場が明るくなると共に観客達は帰りの準備を始めた。
「なぁ和人、帰り下のゲーセンのプライズに海未ちゃんの新しいタペとかあるからとってこうよ」
「まじかよ!行こう行こう」
二人は法被とサイリウムをカバンの中にしまい、ゴミを持ってゴミ箱の前にいるスタッフに渡し、足早にエスカレーターでゲーセンへと向かった。
「穂乃果ちゃんがまさか僕の方を見て手を振ってくれるとは」
「まさかぁ、俺Wonderful Rushの時海未ちゃんから投げキッス貰ったぜ」
「それ俺たちにだろ」
互いにライブの感想を喋りながら目的の物を取るべくμ’sのタペストリーがあるUFOキャッチャーへたどり着く。
和人は財布から五百円玉を取り出し、投入口へ入れた途端、太眉が吊りあがり真剣勝負をする侍の様な顔つきへと変わった。
真心は次に狙う獲物の為に財布を確認していると、小銭が無いことに気が付く。
「ちょっと両替してくる」
「分かった」と和人が低い声で返事をし、真心は両替機へと向かった。
両替機へ着き、きっと青春が聞こえるを口ずさみながら千円札を入れ、下から百円玉がカラカラと音を立てながら出てきた。
それを取り出し財布へ入れていると、「あれぇ?もしかして天城真心くんじゃありませんかぁ?」低い声を掛けられ後ろを振り向くと、真心の身体はピタリと止まり、冷や汗が床に垂れ息が荒くなっていた。
襟首を掴みながら両替機へ叩きつける。
「良輔くん・・・」
真心の目は怯え、顔は真っ青になっていた。
「よぉ、三年ぶりだな」
真心の奥深くに沈めておいた記憶が呼び覚まされた。自分の記憶から抹消してしまいたい記憶。
中二の頃の出来事だった。クラスのリーダー格であった良輔は格下の相手を暴力と口撃で屈服させるのが大好きで、笑ってその場をやりきっていた真心は恰好の獲物だった。
それがエスカレートしていきリンチや金品と私物の強奪、終いには自殺教唆までしてきた。
狭い世界で自分達が優位な人間であることを証明する為に真心を生贄にし、それに同調し始めるクラスメイトも現れ、手がつけられないほどの問題児であった良輔へ教師陣も手が出せなかった。
だが救いもあった。
休み時間いつものように口撃を受けていると「もう良いじゃないか良輔!」甘い顔つきをした柊綾人がいきなり叫び、それに同調するかの様に女子達も「辞めなよ」「真心くん嫌がってるじゃない」良輔達は文句を言いつつ、面白くなくなりその場を立ち去った。
真心は物好きな人がいたもんだといぶかしんでいたが、助けられていくうちに心の支えとなっていった。
そんなある日の昼休み、良輔達から屋上へと呼び出され、明日まで五十万を用意しないとお前の家族を全員殺すと脅され、真心の精神は限界に達していた。
「真心さん、ここ読んでみて」
「聞いてるんですか?」
教師から強く言われた真心は、しどろもどろしながら返事をし、立ち上がり音読を始めたが言葉がつまり喋れなかった。
クラスメイトからクスクスと笑い声が湧き、後ろから良輔達は野次を飛ばし始めた。
「早く読めよ!」
「こんなのも読めねぇとかバッカじゃねぇの?」
その瞬間、真心の心を縛り付けていた鎖が外れ、気づいた時には椅子を良輔の方向へ投げつけた。
机とぶつかり合う音が教室の空気を冷たくし、それを破るように発狂した真心は頭に青筋を浮かべ、良輔の方へ向おうとしたとき「駄目だよ!真心くん!」綾人が肩に手を乗せて止めたが、真心はその腕を振り払った。
取り巻き達はここぞとばかり煽り始め、良輔はブレザーを脱ぎ捨て、ファイティングポーズを構えた。
真心は野獣の様に唸っていると取り巻きの一人が真心を羽交い締めにした。
それを必死に振りほどこうとしていると、良輔はボディブローをかまし、それを決める度に取り巻きは盛り上がった。
良輔はトドメを刺そうと渾身の右ストレートを胸へめがけると、真心は今までのされてきた事をぶちまけるように胃から込み上げてきた血を良輔へ吐き出し、そのままぐったりしてしまった。
教室は血の匂いと悲鳴によって包まれ、良輔は顔やワイシャツにかけられた血を拭うのに必死だった。
その後、生活指導部の教師がやってきて事態は収束し、良輔は取り巻きと共に少年院へ送られる事が決まり、真心は一命を取りとめたものの、残りの中学生活を病院で過ごすこととなった。
「とりあえず付いてこい、逃げようとしたら俺の仲間が容赦しねぇぞ」
「良輔さんこいつも良いカモそうなんで連れてきました」ぞろぞろと十人の群れをなしてやってくると、顔に青アザを作った和人を連れて現れた。
「和人っ!」和人は面目ない表情で真心を見た。
「ほぉ・・・お前友達居たのか、またお財布くんが増えちゃったよ」良輔につられるように取り巻きも笑い出した。
こうして二人はなすすべも無く、スクールアイドル劇場の裏路地へと連れて行かれた。
「まず有り金全部とスマホだせや」取り巻きの一人がせかすと、二人はそれらを差し出す。他の取り巻きも金目の物が無いかスクールバックを漁り始めた。
「なんだこれ?」嘲笑いながら二人が自作したμ’sの法被を雑巾を掴むように持ち上げる。
「もういいだろ!有り金も全部やったぞ!」和人は激昂したが、それを一蹴するかのように良輔は腹に蹴りを入れ「おデブちゃんよぉ、言葉には気をつけろ」
「俺はデブじゃねぇよ・・・」
「黙ってろ!」取り巻きの一人が殴りかかる。
良輔はオーバーに指パッチンをして「そうだ、今後逆らったりしたらオメェらのの大事なものぶっ壊してくってのはどうかな?」
取り巻きはこことぞばかり盛り上がり、良輔が取り巻きの一人へナイフとライターオイルを出すように指示をした。
「良輔くん!お金なら幾らでも払うから・・・それだけは止めて!」取り巻きへ両腕を掴まれ、真心は半泣きになりながら必死に叫んだ。
「ダチってのは互いの苦しみを分かち合うもんじゃねぇか、だから一人がミスをすればっと、ここまで言えば馬鹿なテメェでもわかるよな?」
良輔は躊躇無く切り裂き、その音が二人の耳へ垂れ流され、真心はこれが悪い夢であってほしいと目を閉じた。
切り裂いた法被を地べたへ投げ捨て、オイルを撒き、ライターを投げ入れると共にオイルとポリエステルが燃える匂いが二人の鼻をついた。
「じゃあな、二人共またよろしくねぇ」
「俺たちからから逃げられると思うなよ」
取り巻きは乱暴に両腕を離し去っていった。
「くそっ!くそっ!あいつら俺の大切なもんを・・・」和人は拳を握り地面を何度も殴りつけた。
互いに泣きあった。真心はまた何も出来なかった自分が悔しくてたまらなかった。
和人を家の近くまで送ったあと空は真っ赤に燃えており、真心は今もなお涙が止まらなかった。
「帰りたくないなぁ・・・」
真心は唯一の親である母へまた心配をかけたくなかった。
入院した時もそうだった。「こんなことなら学校へ行かなくたってよかったのに!」そう涙ぐみながら訴えられたのを思い出していた。
重い足取りで自宅であるマンションの鍵を開け「ただいま」と言うが反応が無く、リビングへ向かうと机の上に母のメモが置いてあった。
(冷蔵庫にある餃子焼いて食べてね)
「あぁそうか・・・母さん今日夜勤だったけ」
真心は嬉しかったが、あんな事があったのでとても食べられる気分にはなれなかった。
自分の部屋のドアを開け制服のままベットへ飛び込んだ。
「僕に力があったらあんな奴ら・・・畜生・・・」
自分の部屋のポスターとフィギュアを見つめながらボソリと呟いた。
中一の頃交通事故で亡くなってしまった父親は特撮が大好きでその血筋で真心にとっても、幼い頃からヒーローが身近な存在だった。
和人と知り合ったのも高校で熱く語っていたのを聞き、話しかけたのがきっかけだった。
真心はこれ以上大切な人たちが傷つくのを見たくは無かった。
真心はそんな弱い自分とは決別して必死に足掻き、反旗を翻してやろうと企んだ。
「でも怖いなぁ・・・」
そう思い立った時真心は父親と遊んでいる日々を思い出した。雑誌についてくるヒーローのペーパークラフトを共に創り、それを身体につけてごっこ遊びをしている時の自分は誰よりも強くなれた気がした事を。
真心はスクッとベットから飛び出し、机の上にあるパソコンに食いついて、気がついたら特撮のコスプレを注文していた。
数日後、学校が終わり、そそくさと自分の部屋へ向かっていると身に覚えのある女子が歩いてきた。
あのショートのボブとすらっとした体型はわすれもしない、柑咲花霞だ。
「あれ?もしかして花霞(かすみ)?」
「あ!久しぶり!」
「元気そうだね、その・・・音ノ木坂はどう?」
「うん、楽しいよ」花霞は昔のようにはつらつと喋べるなと安心していたが、真心は入院中の出来事を思い出して罪悪感に駆られていた。
倒れてすぐにお見舞いに来てくれたのだが「なんで今更慰めに来るんだよ!」そう言うと真心はクラスメイトの励ましの色紙と花束を投げつけ、追い返してしまった。
幼馴染みである花霞とは幼稚園の頃からの仲で、小学生の頃までよく遊んでいたが、中学になるにつれ遊ぶ回数も減り、苛められている時もそこで何もせずにヘラヘラしている自分を軽蔑していると分かっていた。
本当は自分が悪いのにと何度も後悔してきた。
「あれ?もしかして真心くんだよね?」
この声も身に覚えがある。花霞の後ろから歩いてきたのは綾人だ。
真心は久しぶりと返すと、綾人もにっこりと右手を挙げた。中学の時と比べると少しだけ大人びていて、更に落ち着きさが増していた。
「綾人くん!丁度良いところに!」
花霞はいきなり綾人の腕に抱きつき「実は私たちつきあってるの」と綾人は少し照れていた。
「へぇ、結構長いの?」
「うん、付き合ってもうかれこれ二年目かな」 花霞はさっきと比べると楽しそうにしゃべり、真心はうなづく。
「綾人ったら凄いんだから!この前、モデルのコンテストでグランプリ取ったんだから!」
「凄いじゃん!」
「そんな、大した事じゃないよ」綾人は謙遜しながら言った。
綾人は幼稚園の頃から子役をやっていた。
その甘い顔で女子生徒だけではなく、お母さんたちからも絶大な人気を誇っており、モテていなかった時期は無いと自負しても良いレベルだ。・
その後他愛もない話をしたあと、花霞と綾人は手を繋ぎながら制服デートをしに街へと繰り出して行った。
真心は少しだけ寂しかった。幼い頃は男の子と遊んでいても見分けがつかなく、余り異性としても見ていなかったのにいつの間にか大きくなってたんだと感傷に浸りながら歩き始めた。
自分の部屋へと戻ると、大きなダンボールが机の上に上がっていた。
「さぁ、やりますか」
封を切り、梱包材を破り捨て、衣装を取り出した。
黒いマフラーをなびかせ、ドラゴンをモチーフにしたマスクを装着し、颯爽と現れ良輔たちを叩きのめしている姿を想像していた。
鏡の前に立って変身ポーズをしたり、エアファイトをし始めた。
「でも夏だから暑いし、息苦しい」マスクを外しの部屋のクーラーをつけると同時にパソコンをつけSNSを開いた。
そこには真心や和人と同様の被害にあってる人が書き込みをしていて、特にμ’sのファンがつけ狙われている事が多い事を目にする。
「やっぱあいつが絡んでいたか・・・」BEASTとという不良を集めた組織を良輔が編成し、敵対しているグループを徹底的にぶちのめすことで噂になっていた。
それで武器を仕入れたり、遊ぶ金欲しさにオタク狩りをしている書き込みもちょくちょくと目にする。
「待ってくれよな皆、こんなこと許されて良いわけが無い」真心の心は燃えに燃えていた。
PCパーツのショップが雑多に並ぶ通りから少し離れた裏路地から大声が聞こえた。
「オラっ!さっさと金出せよ!」
「すいません・・・持って無いです」
「ボソボソ言ってるからわかんねぇよ!カマかてめぇは!」黒の服で統一した青年がアニメグッズの紙袋を片手に持ちながら三人に絡まれていた。
「貴様ら!そこまでだ!」
不良たちは声のする方向をむくと目が点になったあと、すぐ吹き出した。 「なんだお前!」
「俺の名は・・・仮面ライバーだ!」