玄関を抜け一番奥へと進むと右の方へ階段があり、地下へ続く方と上へ続く方があった。 微かではあったが人の声や音が聞こえてきた。誰かいると確信した真心は深呼吸をし、下の方から調べようと意気込んだ。
「誰だテメェ?」
真心はびっくりして声がした方へ振り向くと、パーカーとダブダブのスボンの格好をした、いかつい不良が立っており訝しげに真心を見た。
不良はしばらくしたあと、はっとした表情をし「あぁ、おまえか仮面ライバーって奴は」
そう言うと不良は階段を上がり、「ついてこい」と言ってきた。真心はそれに従いついていくことにした。
(ここまで来たんだ・・・背に腹は変えられない)
四階まで上がり右へずっと歩いて行くと、ドアと見張りが見え不良と真心はは部屋へと入っていった。入った瞬間、LEDの明かりが部屋を照らした。床は傷だらけで、目の前の窓ガラスは廃ビルとは思えないくらい綺麗だった。
辺りを見回すと、さっき声を掛けられた不良と同じ格好をした連中が三十人が壁によりかかっており、中心には真っ赤なスカジャンを羽織った、金髪の男がソファに座っていた。
「兄貴、連れてきました。こいつでよろしいですかい?」
「ああそうだ、こいつが仮面ライバーだ。早速だここへ何をしに来た?」
真心はいきなり自分のことを前もって知っていたことに少し驚いた。言葉を詰まらせながら、
「ま、麻薬の密売を辞めさせにここへ来た。俺の知り合いが迷惑してるんだ」真心はSNSで懇願された娘を知り合いとし、面と向かって言った。
兄貴と周りの不良達は一斉に笑い始め、スカジャンの内ポケットからスマホを取り出し、あの娘のプロフ画面を見せた。
「バーカ、お前をはめる為になりすましたんだよ」 「騙したな!」
「まぁ、そう怒るなって。こいつら倒したら辞めてやるよ」 隊長は後ろにいた左腕に蜘蛛の刺青を入れた五人を真心のとこへ行ってこいと指示を出す。
五人とも筋骨隆々で中には肉付きが良くプロレスラー並みの体格を備えた大男も居た。まるでその様はコロッセオで奴隷と猛獣を戦わせるようなものだった。
真心はこのままじゃ殺されると思い、踵を返し逃げ出したい一心だったが、助走をつけ肉付きが良い奴の腹へ模造刀で一撃を浴びせるも、トランポリンの様に勢い良く跳ね武器が弾き飛ばされる。
大男は不敵な笑みを浮かべ、顔面へ右ストレートを浴びせ真心は勢い良く地面へと倒れこむ。その衝撃でマスクの目は欠け、口の中は血の味で広がっていた。
「口ほどにもねぇな仮面ライバーさんってやつはよぉ」
大男はそう言うと下衆な笑い声が部屋を包み、五人は攻撃の手を緩めることは無かった。倒れこんだ真心を無理矢理立たせ、ボクサー顔負けのジャブを何度も叩き込む。ふらついているのに構わず、大男は資材が置いてあるとこをめがけてジャイアントスイングで投げ飛ばす。段ボールはぐしゃりと潰れ、パイプや空き瓶などのゴミが地面へ散らばった。
真心は空き瓶を大男へ投げつけ、大男はそれをキャッチしたと同時に握り潰し、不良たちの歓声が上がった。
真心は余りの馬鹿力に言葉を失っていた。
「そろそろ飽きたから殺すわ」大男はそう言うと割れた空き瓶を持って近づいてくる。
真心は眼を閉じた。サクリと音が聞こえたが痛みを感じ無かった。おそるおそる眼を開けると大男の腹から剣飛び出ていた。血と混ざりあって艶めき、顔は青白くなっていた。
それを引き抜くと大男は倒れ、パーカーを着たメンバーが日本刀を血払いし立っていた。不良たちは何が起きたか分からず、その場の空気が凍りつく。
「て、てめぇらやっちまえ!囲めぇ!」兄貴は不良たちへ命じると一斉に囲んだ。
「今度は多勢に無勢ですか・・・少しは骨がありそうですね」おしとやかな声でパーカーを天高く脱ぎ捨てると、黒いスーツを身にまとい、藍色のロングヘアの少女が仮装用の黒いアイマスクをつけて立っていた。
不良の一人が鉄パイプを少女の後頭部を目掛けて振りかざした。彼女はそうくるのを分かっていたかのように身体を捻った。男は鉄パイプごと叩き斬られパイプが落ちたと同時に彼女は不良の群れの中へ突とっ込み、バッタバッタとなぎ払う。
「隙だらけです」彼女は喉元へ刀を突き刺し、背後からやって来た奴をスーツの内側からマカロフを取り出し、不良へ二発撃ちこんだ。
不良たちは余りの強さにたじろいでいると、突然出入り口のドアが蝶番ごと吹き飛れる。
「もうお兄さん弱すぎにゃ〜もうちょっと強い人居ないの?」オレンジのショートヘアーの少女が見張りを引きずりながら表れた。「お、そこにいるムキムキのお兄さん強そうだにゃ」先ほど真心へジャブを浴びせた奴へ指を指す。
「ガキが・・・冗談は大人になってから言えよ」
少女は助走をつけ、そいつの首を目掛けて後ろ回し蹴りをお見舞いし、首が折れる生々しい音が響いた。
「キャットは子供じゃないー!って勢い余ってやっちゃたにゃ」舌を出してお茶目に決めていると、不良の一人がナイフで不意打ちをかけようとすると、乾いた火薬の音と同時にナイフが弾かれた。
「キャットちゃんうしろ!」
「ありがと!ソレイユちゃん」キャットはそう言うとオレンジのレザージャケットの懐から投げナイフで、不良の額へ投げつけた。
ソレイユは二人の少女をM92Fでカバーしつつ、向かってくる敵を豪快なサマーソルトで対処していた。
一人がソレイユをトカレフでギャングショットしようとしていた。それに反応したソレイユは近くの奴のふくらはぎを蹴り、首根っこを掴むとそいつを盾代わりにし、銃弾が盾にした奴へ撃ち込まれる。
下にいた不良たちも銃声と悲鳴に気がつき、密輸で手に入れた銃をぶら下げて階段を駆け上がっていた。先陣を切っていた不良が通路の角に差し掛かったとき大きい爆発とともに壁一面に鉛玉と肉片がめり込んでいた。
不良たちの阿鼻叫喚を破るように火薬の破裂音が連続で響いた。
生き残った不良たちは持っていたAKやMAC10で応戦をし始めた。 が、鳴り止まない銃声が戦意を削ぎほとんどが撃てなかった。リロードしようにも焦って入らなかったり、コッキングハンドル引かずに撃とうとしている者も居た。
そこへ、不良たちの左側から窓が割れる音がした。その方向へ振り向くと、アイスブルーの瞳と金色のポニーテールをなびかせながら窓を蹴破ってきた少女が現れた。
彼女は腰だめでACRを放ち、不良たちは反応できず半数がやられた。いきなり現れれた少女に戸惑いながらも、三人程突っ込んでいった。
彼女は片膝を立て着地したあと、太もものホルスターからUSPを引き抜き躊躇なくトリガーを引いた。頭を狙っている為、抵抗せずに不良たちはバタバタと倒れたが、一人運良く当たらずAKのストックで殴りかかった。
彼女はひらりとかわし、腕を右脚で蹴り上げて虚空へ回ったAKを奪った。コッキングハンドルを引いたあと「こういう風に使うの♫」と発砲し、不良は崩れ落ちた。
一息ついたあとAKを投げ捨てた。右耳についている無線で、
「こちらペイル。聴こえるヴィオレッタ?」
「聴こえるで、今ウチも片付けたとこや。しっかしこいつら弱いなー」
「そりゃ銃を扱ったことも無い連中が粋がった結果よ」
「すぐそこにいるから合流しよか。退路は確保出来たし例の仮面ライバーさんを待つだけやな」
「そうね」そう言うと彼女は歩いて行った。
愕然とした。BEASTの特攻隊長を務めてから敵組織を続々と打ち負かし、憧れの良輔さんからも認められたのに。自分より小さくて、たった数人の少女達から特攻部隊を撃滅させられたのだから。
「さて特攻隊長さん。知ってる事を全部吐いて貰いますよ」
三人から銃と刀を突きつけられ、一歩後ろに下がると倒れている真心に脚をつまずかせ、尻餅をつく。
真心を渾身の力で抱きかかえ左腕でホールドし、悪趣味な輝きを放った金ピカのデザートイーグルを真心の喉元へ当て、
「て、テメェらァ!武器を捨てろ!さもないとこいつが死ぬぞ!」
真心はかつて無い恐怖に襲われ、死を覚悟した。
ソレイユとキャットはマガジンを抜き、スライドを引いて薬室から弾を抜き脚で銃を蹴り飛ばした。ダーシーは刀を鞘に収め、マカロフの入ったホルスターと一緒に床に置いた。
隊長はこんなにもあっさりと言うことを聴き、逆に不気味だったが、それでも安堵した。気のせいだろうか、目の前の窓ガラスに風穴が空いたと思ったら、意識はすでに闇の中だった。
拳銃をポロリと落とし、眉間に風穴が空き後頭部から血と脳漿があふれだした。真心は撃たれた隊長を見て気絶してしまった。
「リトルちゃんナイスショット」
「ありがと。みんな怪我は無い?」無線で甘く脳がとろけそうな声で答えた。
三人はこのビル真正面から一キロ離れた、別のビルから狙撃したリトルへ無事を伝える。
「あーあせっかく聞き出そうと思ってたのになー」
「しょうがないよキャットちゃん。こういうときは人質の救出が最優先だもん」
「それでもここに御客リストがあっただけでも良しとしましょう」
ダーシーは隊長のポケットからスマホを取り出し、弄りながら答えたあと、三人は真心を担ぎ上げ、ペイルとヴィオレッタと合流し、このビルから脱出した。