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トレーラーは廃工場から十キロ離れた病院へと運ばれた。真心とローズは病院の中に入っていた。ローズは治療室へ入り、真心は近くのソファへ腰を下ろし、花霞の無事をただひたすら祈った。
時刻が午前一時を指した時ローズが出てきて、真心は立ち上がった。
「花霞は助かるの?」
「一命はとりとめたけど、この先意識を取り戻すかどうかは分からない。正直助かったのも奇跡といってもいいぐらいだわ」
「そんな・・・じゃあ一生このままってこと!」
ローズはうなづいた。
真心は全身から力が抜けていく感覚がした。両膝をついた途端涙が止まらず、真心はローズの白衣を掴んだ。
「頼む花霞を助けてよ!何か他に方法は!」
「あるならとっくにやってるわよ!」ローズは激昂したがすぐにハッとし「とにかく今は経過を見守るしかないわ。まず側にいてあげて」
ローズはそう言うと治療室の扉を開けると呼吸器をつけた花霞が仰向けになっていた。
真心は側に行くと花霞の手を包み込むように握った。
「ねぇローズさん。俺戦うよ」
「それ本気で言ってるの?」
「あぁ、そうだよ!花霞の仇を取りたいんだよ!」
「あなた手も足も出なかったじゃない。無謀よ」
ローズは落ち着きながら言った。
「戦う意志があるんだったら良いものがあるよ」
ソレイユが出入り口の側で立っていた。
良輔と綾人は襲撃された後、BEASTの千葉支部のアジトである倉庫へと逃げ伸びていた。
昔物流を請け負っていた会社が倒産し、彼等は不法占拠していた。良輔は彼女たちのことが頭から離れず不安を募らせ荒れていた。
「クソっ!またあいつらか!」
良輔は足元にあった鉄缶を蹴り上げ、綾人はただ黙りながら壁の方を見つめ、部下たちはこの二人がここまでなるのを始めてみてうろたえていた。
「してやられたわねお二人さん」
紫音がボディラインが強調され、胸元が大きく開いたライダーススーツを着こなしながらやってきた。部下たちは深々と頭を下げ始め、良輔は片目を吊り上げながら紫音の方を向いた。
「うるせぇ!それよりあれの準備は出来てるんだろうな!」
「はいはいそんな怒らないで。例の業者に頼んでおいた奴も手に入れておいたわ」
紫音は右手に持っていたアタッシュケースを差し出すと、良輔は取り上げるように受け取った。中にはアンプルとガンタイプの注射器が入っていた。
「よしこいつをあれに混ぜ合わせれば・・・」
良輔は部下を五人呼び出し、実験室と書かれたドアを開け混ぜ合わせる準備を始めた。
「良輔君クレイジーマグナムを作る気だね。あれ打つと力が沸いてくるらしいけど」
「前にどうしても勝てない敵対グループを壊滅させるときに部下の一人がそれを使ったらしいじゃない。十人無惨に殺した挙句味方にも手を出したって聞いたわ」
「そのあと良輔君自ら葬ったって聞いたけど、まさかまた作り出すなんてね」
紫音はうなづいた。
「あいつも勝てないと思ったらどんなことをしても勝とうとする所は相変わらずね」
真心はソレイユと共に地下の階へと降りていった。三十秒間エレベーターに乗っていると目の前に巨大な鉄扉が飛び込んできた。ソレイユが暗証番号を打ち込むと扉が開き部屋に入る。
真心は言葉を失った。壁一面には大量の銃器や爆発物が掛かっており、中央には巨大な柱のようなものが立っていた。ソレイユが柱に触れると透明な筒が姿を現し、その中にはライダーのマスクなどが置いてあった。
「リトルちゃんが試作で開発した強化外骨格を仮面ライダーみたいにしてみたんだ。 着てみる?」
真心はうなづき、ソレイユにつけ方を教えてもらいながら装着し、ガラスに映った自分を見て真心は驚いた。黒を基調としたフォルムで、カブトムシをモチーフにしていた。目の色は青白く光っていた。
「すごい・・・いつもより力があふれてくる」
「隣にシミュレーションルームがあるからためしに動いてみてごらん」
入ってみると真っ白で殺風景な部屋だった。スピーカーからソレイユの声が聞こえてきた。
「今から鉄球を飛ばすから受け止めてみて」
そう言った途端目の前から鉄球が飛んできた。バスケットボールを受け止める要領で取ると簡単に取れてしまった。持ち上げてみると数百グラムしかないのかと思い壁に向かって投げると大きな音を立て、地面へと落っこちた。
「え?ちょっとこれ何キロあるの?」
「うーん確か五十キロぐらいだったかな。普通に持つとフラフラしちゃうね」
真心はこのスーツに驚いているのもつかの間、また真正面から飛んできた鉄球が胸に当り倒れてしまった。
「ちょっと大丈夫!」
「痛てて・・・ちょっと痛むけど大丈夫!」真心はガッツポーズをして無事を伝えた。
その後回避の練習をした後二人は花霞のいる病室へと戻った。
夜が明け、高速道路にはソレイユ達を乗せたトレーラーが走っていた。
彼女達はトレーラーの中でバイクにまたがり、出撃の頃合いを待っていた。
目の前のスピーカーからにこの声がした。
「良い?そろそろ行くわよ!」
メンバー達は返事をし、背後の扉が開くと徐々に発進していき、道路へと出て時速130kmの速さで走行している。真心はバイクの背後に掴まりながら良輔をどう倒すか夢想していた。
(もう終わりにしようか良輔・・・)
気がつくと目の前にはBEASTが不法占拠している倉庫へとたどり着き、メンバー達はバイクから降りるとクリアリングをした。
倉庫の中へ入ると突然明かりが灯るとBEASTのメンバー達の遺体があちこちに転がっていた。
「おい女共! ぶっ殺してやる!」
メンバー達は声のした方へ向くと、こめかみの血管は浮かび上がり、筋肉が盛り上がった良輔が佇んでいた。
良輔は飛び上がりこちらへ着地し、ソレイユ達へ襲いかかる。
真心はすかさずソレイユ達をかばうと、5メートル先へ吹き飛ばされてしまい、ソレイユ達は助けに行こうとすると、倒れていたメンバー達と良輔が襲い掛かってきて応戦をし始めた。
「真心ぉ・・・お前も殺してやる」
良輔は真心へ何発も殴り、ガードをし始めた。
(なんてパワーだ・・・耐えきれない)
「真心!守ってるだけじゃ勝てませんよ!」
ダーシーが喝を入れ、膝へマカロフを放ち隙を作ると真心はすかさず顎へパンチをするが、よろめくだけでほとんど効き目が無かった。
「弱い!所詮そんなもんか」
良輔が高らかに笑うと突然頭が弾け飛び、良輔の脳漿が辺り一面に飛び散った。
スピーカーのから綾人の声が聞こえてきた。
「やれやれ薬を打ちすぎるとさぞかし面白い事になると思ったんだけど、まさかここまでやるなんて」
「綾人!」
「その声は真心くんか。なかなか面白い格好してるねぇ」
「お前の目的は何なんだ。こんな事をして何がしたい」
「人が苦しむ様を見たいだけさ。僕にとって人を痛ぶる事はゲームと一緒なのさ」
真心は唖然とした。
「だから君たちが邪魔だからここで死んでもらうね」
綾人はそう言うと、紫苑が出てきた。
「あんたは?」
紫苑はSVDで真心の肩を撃ってきたが、少し痛む程度だった。
「へぇ、見た目通り頑丈なんだね」
「待ってろ綾人すぐにそっちに行ってお前をぶっ飛ばす!」
「真心君!私も一緒に行くよ」
ソレイユとダーシーは真心と共に急ぎ、他のメンバー達はその場に残り紫苑とBEAST達と戦った。
三人はは綾人の方へ向かった。
先程フェイからの無線で居場所が分かり、走っていると他のBEAST達もやってきて、真心達へ容赦なく襲いかかる。
そこへ悠々と綾人もやってきた。
「さぁ真心君きみの悲鳴を聴かせてくれ!」
綾人はそう言うと左腕に注射器を刺し、先程の良輔の様に姿を変えた。
真心は身構えると背後からBEASTのメンバーへ羽交い締めをされ、身動きが出来なくなった。・
もがき続けていると綾人は一方的に殴り続け、十発殴ぐったと同時にマスクの目玉が欠け、目が光を失っていた。
ついにはぐったりと倒れ込んでしまい、綾人は痛ぶるのに飽き今度はソレイユ達の方へ向かおうとした時、真心は立ち上がった。
「待てよ・・・」
「まだ僕の攻めが欲しいなんて、真心くんは欲しがりだね」
全身へ痛みが駆け巡り真心の脚はガクガクだった。いっそ殺せとも思ったがこいつを今ここで倒さなければまた被害者が出る。真心の強い思いが身体を動かした。
綾人は拳を振りかざすと真心は左手でそれを受け止め、何発もボディーブローをかました。
「調子に乗るなぁ!」
綾人はそう言うと、左手に持ったナイフを真の胸に突き刺しエグろうとし始め視界が段々とボヤけ始めたが、渾身の頭突きを綾人へ浴びせると二人とも倒れた。
真心は最後の力を振り絞り、転がっていた拳銃を掴み立ち上がると綾人の近くまで行き、頭へ突きつけた。
トリガーを引こうとした瞬間、目の前が真っ暗になり真心は動かなくなってしまった。
真心が目を覚ます頃には病院のベッドだった。すぐそばには涙を流した母親が居て、抱きつかれた。
暫くして落ち着いた後、真心は母親へあの事件の事を聞くと、
「あの子達は死んだわ」
そう言われ、真心はホッとしたが何かスッキリしなかった。
その後音ノ木坂は廃校は免れ、μ‘sの人気も徐々に戻ってきている事を知り、花霞は目を覚ましこの事件は一段落ついた。
真心は二ヶ月入院した後、学校へ復帰しその日の放課後職員室へと足を運んだ。
真心は松葉杖をつきおぼついた足取りで向かい、進路相談の用紙には「スクールカウンセラー」と大きな文字で書かれていた。