Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 命を燃やす少年   作:文房具

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第1話 誕生! 魔法少女

イリヤはリビングから自分の部屋に戻って来ていた。

 

イリヤのベッドの上には黒い髪をツインテールにし、上半身を十字架のデザインがされた赤い服に黒いミニスカートに黒のニーソックスを穿いた高校生くらいの女の人が座っている。そして、その近くには、両サイドに鳥のような羽が生え、穴の空いた円の中に星が入っているものが浮いている。

 

どうしてそんな奇妙なものと女の人がここにいるのかを説明すると、ことは数分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの貴女! 魔法少女になりませんか! 楽しいですよ魔法少女! 悪い奴等を魔法をやっつけたり、空飛んだり、恋の魔法だってできちゃいますよ!」

 

イリヤが今日の昼頃に届けられた『魔法少女マジカル☆ブシドームサシ』を1クールを一気に見てお風呂に入っていた時だった。

 

突如マジカルルビーことルビーが空の彼方から現れ、魔法少女にならないかとイリヤ勧誘してきた。

 

もちろんイリヤは話についていけずそれを拒否。なんとかして追い返そうとするも、いつの間にかマスター認証が完了してしまい、さらにはルビーの元マスターである凛に、強制的にサーヴァントにさせられてしまい現在に至る。

 

リビングに行っていたのは、その時に起こった騒ぎを家の人たちに悟られないようにするためだ。

 

「どう?上手く誤魔化せた?」

「うん、何とか……それで、一体アレは何なの? 瞬間移動したり、ビーム出したり……とても普通じゃなかったけど……」

「うん、そうね。貴女には色々説明しておく必要があるわよね。実は私ね、魔術師なの?」

 

さも当然のように言われて顔を引きつらせるイリヤ。

 

「魔術師? それって魔法使いみたいな……? じゃあ凛さんも私みたいな格好を―――?」

「あんな恥ずかしくて自殺したくなるような格好をするような人と思わないで欲しいわね。こう見えて私、時計塔じゃ主席候補なんだから!」

「私もさっきまでその恥ずかしくて自殺したくなるような格好をしていたのですが……」

「大丈夫ですよイリヤさん。凛さんはともかく、イリヤさんは似合っていましたから」

 

ルビーがそう言った時、凛さんが一瞬ルビーを怖い目で睨む。よほど鬱憤が溜まっているのだろう。

 

イリヤはそこには突っ込まない方がいいと判断する。

 

「で、ここからが本題。私達は時計塔からの指示でこの街にこのカードを回収しに来たの」

 

そう言って凛さんが弓矢を引こうとしている兵士が描かれているカードを取り出して私に見せる。

 

「これはアーチャー。極めて高度な魔術理論で編み上げられた特別な力を持つカードなのよ。それも悪用すれば街一つを一瞬で破壊できるほどのね」

 

その言葉にイリヤは唾を飲みこむ。現実味はわかないが、そのシンケンか語り口調に自然と体が硬くなる。

 

「で、私はその危険なカードを回収するために来たけど、さすがに生身だけじゃ厳しいと言うので、借りられたのが……」

 

周囲を浮遊しているルビーを凜は右手で鷲掴みにする。ルビーの素材はなんなのか、ゴムの様につぶれたり戻ったりしている。

 

「このバカステッキってわけ!」

 

「最高位の魔術礼装をバカステッキ呼ばわりとは失礼ですね~! そんなんだから反逆されるんですよ! 私にだってマスターを選ぶ権利があるんですから!」

 

摑まれた状態でだったルビーだが、暴れることで凛の手から離れる。

 

「本当は無関係の人を巻き込みたくないんだけど……バカステッキがこの通りの性格だから。せめて説得が済むまでの間、私のカード回収を手伝ってもらうことになるから覚悟しておくように」

 

「え……えっと……それって拒否権は―――」

「そんなものないわ。恨むならバカステッキのルビーを恨みなさい」

 

こうして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、魔法少女になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、すぐに魔法少女の出番が来るわけではなかった。

 

次の日、イリヤはいつものように学校に向かっていた。ルビーはカバンの中だ。

 

通学路を歩いていると、一人の男の子が歩いているのが目に入った。

 

「あ……」

 

その人物は、天空寺 拓斗その人だ。

 

「拓斗君、おはよっ!」

 

イリヤは後ろから笑顔で拓斗君に声をかける。すると、それに気付いた拓斗君が振り向く。

 

「イリヤか。おはよう」

 

そうして互いに挨拶を済ませ、イリヤと拓斗は並んで通学路を歩く。

 

それだけで、イリヤの心臓のギアは一段階速くなる。それはいりやが拓斗に恋心を抱いているからだ。

 

その恋心が芽生え始めたのはおよそ2カ月前、つまり、拓斗が一度死んだあたりだった。眼魔に殺されて蘇るという超常的な経験によって、その年には似合わない落ち着いた空気を纏い始めた拓斗に惹かれたのだ。

 

「今日は少し遅いんだねっ。いつもは私より早いのに」

「うん。昨日は少し夜更かししちゃってさ」

「あ~そうなんだ」

 

たわいもない会話でもイリヤの心は弾む。

 

「今日の私の星座がね、一位だったの。これって今日私にいいことが起こるって意味だよね?」

「そうだね。そうポジティブに考えてれば、幸運の方からイリヤによってくるんじゃないかな?」

 

そんなこと華はしながら送る日常の一コマ。まるで昨日のことが夢だったかのようだ。少なくともイリヤの頭の中からは魔法の事はほとんど抜け落ちていた。

 

しかし、昨晩の出来事は全て夢ではない。イリヤがルビーと契約していた時も拓斗は眼魔と戦っていたのだから。

 

そしてその非日常は、すぐにイリヤにも襲い掛かることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になり、イリヤは帰ろうと下駄箱のフタを開ける。その中にはイリヤの靴があった。それは足りまえだが、もう一つ身に覚えのないものがある。靴の上に置かれたものだ。

 

イリヤはそれを手に取ってみてみる。するとそれは、手紙であることが分かった。

 

「お~っと! これはまさしくアレですね! ラブな奴なんじゃないですか!?」

 

鞄の中に入っていたルビーが飛び出してきてこの手紙をラブレターだと騒ぎ立てる。

 

それに乗せられて、イリヤの心中も大混乱に陥る。

 

(お、落ち着くのよイリヤスフィール! こういう時こそ落ち着いて対処することが大事だわ! もしこれが拓斗君からだったら……いや、でも、もしもかの人だったら私はどうすれば……ッ)

 

イリヤは震える手で封筒を開ける。

 

そこには、

 

[今夜の0時、高等部の校庭に来るべし。来なかったらこr―――迎えに行きます]

 

と記されていた。

 

イリヤとルビーは理解する。この手紙はラブレターなどではなかったという事を。

「……帰りましょうか、イリヤさん」

「……そうだね」

 

この手紙は凜からの指令所だったという事にしょんぼりしながらイリヤとルビーは自宅に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拓斗の家は大天空寺というお寺である。

 

この寺は10年前に亡くなった拓斗の父である『天空寺 龍』が残した物であり、拓斗はこの寺の跡取りになっている。

 

ここには住職代理として『山ノ内 御成』や、ほか数人の修行僧も一緒に生活している。

 

拓斗は主に地下にある龍の部屋だったものを使っている。この部屋も普通ではなく、部屋の中に大きな石碑『モノリス』がある。それにはゴーストの紋章と同じ目玉の模様がある。

 

拓斗が物心が浮いてからずっと気になっていたこの紋章。2カ月前、つまり一度死ぬことによって、ようやく理解することが出来てきた。

 

拓斗は御成に再三聞かされてきたことがある。龍が『ゴーストハンター』という特殊なことをしていた、という事だ。

 

拓斗は父親の事を覚えていない。写真で顔が分かる程度だ。

 

だからこそ知りたい。ゴースト、ゴーストハンター、モノリスの紋章、あまりにも似ているこれらを調べれば、父の事を少しでも知ることが出来るかもしれない。

 

改めてそう決意する拓斗。

 

「まあ、そう思うのは勝手だけどさ~。アイコン集めも早くした方がいいんじゃないか?」

 

そんな拓斗の思考を呼んだかのように、今拓斗が直面している問題を口にするユルセン。

 

そう、もう一つ拓斗には大きな問題がいる。

 

それは、アイコンを15個集めなければいけないという事だ。

 

「そうだな。もう、残り3分の一を切っているぞ」

 

ユルセンの言葉に同調するのは、派手な恰好をしている老人だ。

 

この老人は仙人を名乗っている。拓斗を一時的によみがえらせた張本人で、何時の間にはここに住み着いてしまっている。住み着いていると言っても、ユルセンと同じように普通の人には見えないため、御成には知られていない。

 

「だって、アイコンがどこにいるかわかんないんだもん。おっちゃんも分かんないんでしょ?」

「俺も神様じゃないからな、そこまでは分からん」

「ホントか、それ?」

 

おっちゃんというのは、拓斗の仙人の呼び方だ。

 

拓斗は、おっちゃんの力で一時的にこの世に留まっていることが出来ている。しかしそれは99日が限界であり、その間に英雄の力を宿したアイコンと呼ばれるものを15個集めなければいけない。そうしなければ消滅してしまうのだ。

 

それにもかかわらず、今手元にあるのは、たったの3つ。この世に居れるのは、残り30日ちょっとしかないため、この数字は絶望的と言える。

 

「だが……」

「だが?」

 

おっちゃんが言葉を濁す。

 

「……ま、何とかなるだろ」

「ならないかもしれないんだよなぁ」

 

相も変わらず能天気はおっちゃんに頭を抱える拓斗。そんな時、ユルセンが拓斗の頭をはたく。

 

「拓斗、眼魔だぞ」

「眼魔は分かるのに、アイコンは分かんないんだよな」

 

そう言って拓斗は立ち上がる。

 

「いってらっしゃ~い」

 

おっちゃんの声に背中を押されて、拓斗は夜の街に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は、拓斗の学校である穂群原学園の近くだった。

 

不気味な目玉模様から、たくさんの眼魔コマンドが溢れてくる。拓斗にとってはもはや見慣れた光景だ。

 

《アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!》

 

「変身!!」

 

《カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

拓斗は素早くゴーストへ変身する。

 

「こいッ! ガンガンセイバー!!」

 

ゴーストはそう言って胸の前に手をかざす。するとバックルから、大きな両刃の剣が現れた。

 

「さっさと終わらせて帰ろうか」

「油断するなよ」

 

ユルセンは白い煙とともに姿を消した。

 

ゴーストはガンガンセイバーを使って次々と眼魔コマンドを切り倒していく。2か月間戦い続けた拓斗に対して、この程度のヤツはもはや敵ではない。

 

眼魔コマンドはゴーストを囲んで攻撃しようとするが、ゴーストはふわりと浮かび上がりまさしく幽霊の様に相手を翻弄している。

 

「じゃ、一気に終わらせるか」

 

ゴーストは地上に降りて印を結ぶ。すると、後ろに紋章が浮かび上がる。その紋章のエネルギーが右足に集まったところで、ベルトのレバーをもう一度引き、押し込む。

 

《ダイカイガン! オレ! オメガドライブ!》

 

拓斗は空中へと飛び上がり、飛び蹴りを放つ。

 

「はあああああ!!!」

 

眼魔に蹴りが直撃し、爆発を起こした。

 

「ふう」

 

周囲を確認して変身を解き、一息つく拓斗。

 

すると、どこからともなくユルセンが現れる。

 

「おーい、拓斗。なんか校庭に人がいるぞ?」

「こんな時間に?」

 

ユルセンがその短い腕を使って校庭を指さす。拓斗の身長では、学校をかこっているフェンスの向こうは見ることが出来ない。

 

拓斗は一度死んだ身だ。その体は非常にあいまいなもので、拓斗の意志によって他人には見えなくなったり、物を透過できるようになったりする。

 

その能力を使って、フェンスをすり抜ける。そして工程に向かって障害物を気にせず走り始める。

 

そして、校庭まであと少しというところで、とてつもない光が校庭からあふれる。

 

その近くには黒髪のツインテールの女の人が立っている。

 

「ユルセン、眼魔?」

「いや、違うっぽいな」

 

明らかに普通ではない光景に、一瞬、眼魔かと思った拓斗だったが、ユルセンに否定されることで安堵し、ゆっくりと近づく。一般人には今の拓斗は見えないからだ。

 

次第に光が収まり、その中心にいる人物が見えてくる。そこにいたのは、

 

「……イリヤ?」

「不思議なこともあるもんだな~」

「不思議の塊が何を言うか」

 

光の中から現れた少女、それはアニメの魔法少女が頭に羽の髪飾り、ピンクと白をメインカラーにした衣装を身に纏い、先端に鳥のような羽と星が付いたいかにもって感じのステッキを持ったイリヤだった。

 

「でも、流石にこれはなぁ」

 

まんま魔法少女風のコスプレをしたイリヤに呆然とそうつぶやく拓斗だった。

 

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