Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 命を燃やす少年 作:文房具
目の前には、ザ・魔法少女といった格好をしているイリヤがいる。拓斗も、これはイリヤの趣味なのか、はたまた眼魔ではない別の厄介事なのかを測りかねている。
拓斗が首をひねっていると、イリヤの持っているステッキのルビーが、一体どんな軟質素材で出来ているのかと問いたくなるような柔軟さで拓斗の方を向いた。
気づかれるはずがないと思っていた拓斗は、突然の明らかに見えている者の挙動に後ずさる。
「おやおや~、そこにいるのはどなたでしょうねェ」
ルビーの声に、イリヤと、ツインテールの女性――凜も拓斗の方に目を向ける。
「あ、あれっ!? た、拓斗君!? どうしてここに!?」
「ま、待ちなさい! そこに誰かいるの!?」
(イリヤには見えてるのに隣の女の人には見えてない? どうなってるんだ?)
そう思いながらも、とりあえず霊体化を解く拓斗。
「え!? 何こいつ!? 急に現れたけど!?」
ようやく拓斗の姿を捉えた凜は、驚きに声を張り上げる。
「……こんばんは、イリヤ……と……」
「あ、遠坂 凜よ」
「凜さん。こんな時間に何してるんですか? コスプレまでして」
「ち、違うの! これはコスプレなんかじゃなくて、その……仕方がなかったというか、騙されたというか……」
顔を赤くしてもじもじするイリヤ。好きな人に見られる格好としては少々レベルが高かったらしい。
「君こそ、こんな時間に何してるのかな? 子供には遅い時間よね」
「まあ、そうですね。時間を取るのも面倒なんで、ズバッと本当のことを言いましょうか」
「助かるわ」
拓斗と凜はお互いに今の自分に起こっていることを説明する。その途中で、消えたり、ゴーストへ変身したりして、信憑性を高めることも忘れない。
「信じられないわ……生き返るなんて……そんなの魔法の域じゃない。しかも過去の英雄の力を自在に使えるなんて……」
凜は拓斗の説明ですっかり考え込んでしまう。
イリヤは茫然としている。自分の好きな人が一度死んでいると言われれはそうなるのも無理はない。
「拓斗君は、そんなこと私に行っても大丈夫なの?」
「うん」
「なんで? 私、みんなに言っちゃうかもしれないよ?」
「こんな話、信じる方がどうかしてるよ。こんな話を信じるのは自分もそれなりに不思議なことに巻き込まれてる人だけでしょ? 僕たちは、人には言えない秘密を持ってるんだ。なんか、運命みたいだね」
「う、運命!?」
拓斗の『運命』という言葉に過剰に反応するイリヤ。
「同じ学校の同じクラスの男女2人が、不思議なことに巻き込まれるなんてなかなかないよ? 運命じゃない?」
「運命……運命……そうかもしれないねっ!」
「運命と言えば、このままアイコンを回収できなければ、僕は30日後には消滅するんだけどね」
軽い調子で言う拓斗に、笑っていたイリヤは一転暗い顔になる。
「だ、大丈夫だよっ! 私とルビーも手伝うから!」
それでもイリヤは笑って拓斗に告げる。
「ありがとう。でも、アイコンがどこにあるかわかんないし……」
「調べられますよ? このルビーちゃんを舐めないでください!」
「「え?」」
「このルビーちゃんの
後光が差している(比喩ではなく本当に)ルビー。
「はいはい、とりあえず今は目の前のカード回収に専念して頂戴。アンタも手伝いなさいよ?」
「はい?」
指さしてくる凜に首を傾げる拓斗。
「当たり前でしょ。このバカステッキは私の物なんだから。その力を使うんなら私の仕事を手伝うのは当たり前でしょ。話を聞くと素人って訳でもないらしいし」
「何を言ってるんでしょうね~この年増は。今の持ち主はイリヤさんであって、貧乳年増ではないんですよ~だ」
「こ、このバカステッキ……ッ!!!」
凜は真っ赤になって、今にも爆発しそうな勢いでキレている。
「いいですよ。手伝います。イリヤがこんななので」
「え? 待って、拓斗君、どういう事?」
「あーそうね、確かに」
「凜さん!?」
拓斗と凜は互いに頷き合う。イリヤがおっちょこちょいだという認識は共通の様だ。
「それじゃ貴方と私は協力関係ってことね、よろしく。手柄は私のものだけど」
「いえいえ、僕の報酬は自分の命ですから」
騒ぐイリヤを無視して握手を交わす2人。
「じゃ、話もまとまったところでそろそろ始めましょうか。カードがあるのはこの校庭のほぼ中央、そこを中心に歪みが観測されてるわ」
「中央?何もないけど……」
「ええ、ここにはないわ。だって、カードは鏡面界っていう平行世界の中にあるから。じゃあルビー、始めてちょうだい」
「はいは~い!半径2m反射路形成!境界回廊一部反転しま~す!」
「うわっ!!」
ルビーのその掛け声と共にイリヤを中心に巨大な魔法陣が足元に出現する。
魔法陣の模様はだんだんと複雑になっていく。
「何々!? 一体何が起きてるの!?」
「カードのある世界に飛ぶのよ。さっき言った鏡面界ってところにね」
「飛ぶ!? どういう事!?」
イリヤのその叫びと共に、3人はカードがある世界の鏡面界に飛んだ。
しかしそこは、飛ぶ前の高等部の校庭と何ら変わらないように見える。違うところと言えば、空が多面体のドームでおおわれているところだ。
そしてそれ以外の変化が起こった。黒い歪みのようなものが出てきて、そこから長い髪に目玉が付いたマスクで両目を隠している女性がぬるりと出てきたのだ。
「ひゃあっ!? 何か出た!? 何なんですかあれ!?」
「早速ライダーのお出ましのようね。イリヤ、拓斗、構えて! 来るわよ!」
「もしかしてあれと戦うんですか!? 戦うなんて聞いてないですよ!!」
「あれ? 私、言わなかったっけ? カードはあいつを倒さないと手に入らないのよ?」
そもそも、落ちているカードを回収するだけだったら拓斗に協力を申し込む理由なんてない。そんなことをしても探す手間が少しなくなるだけだ。その時点で拓斗は闘うことになると予測していたため、焦らずに済んでいる。
「聞いてないよ!!!」
「おっと」
黒い歪みから現れた女性――ライダーの黒化英霊が、鎖につながれた獲物を拓斗たちに向かって投げつけてくる。
拓斗とイリヤは左右に分かれて、凜はジャンプすることでその攻撃を避ける。そして凛は、赤い宝石をライダーめがけて投げつける。それは爆ぜ、周囲を炎を発生させた。しかし、ライダーは何事もないように平然としている。
「やっぱり爆炎弾三連程度じゃ効かないか……結構高い宝石だったのにな」
「効かないって……じゃあどうすればいいんですか!?」
「あんた達に任せるわ!」
「え~!? 小学生に丸投げするんですか~!?」
「大丈夫! 魔術が効かなくても純粋な魔力の塊なら利くはずだから! 頑張って!」
そう言うと凛は、校庭から少し離れた茂みのほうに走って行った。
「あれ? 俺の攻撃は聞くのか?」
自分の攻撃は純粋な魔力というものではないため、少し心配になる拓斗。
「やってみるしかないな」
《アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!》
「変身!!」
《カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》
拓斗はゴーストへ変身し、かぶっているフードを脱ぐ。そしてガンガンセイバーを構えてゆっくりと間合いを測る。
そんなゴーストの姿に警戒したのか一瞬動きを止めるライダーだったが、すぐに規制を上げて突進する。
「グッ!!」
「――――!!!」
ライダーとゴースト、2人の武器がぶつかり合う。ゴーストは、眼魔コマンドとは段違いの攻撃の重さに苦悶の声を漏らす。
ゴーストは一旦空中へ浮遊する。しかしライダーは、武器を投げてゴーストへの攻撃を緩めない。
「はぁあああああああああああああああああああああっ!」
ゴーストはそれを弾き飛ばし、再び接敵。剣劇を繰り返す。
「すごい……互角に戦ってる……」
ルビーを両手で持って戦いの様子を見ていたイリヤはポツリと漏らす。
それにルビーが答える。
「確かに、イリヤさんと同い年とは思えはいですね~。でも、そこまで甘くはないと思いますよ?」
その言葉通りにゴーストは段々ライダーの攻撃を捌けなくなっていく。そして、胸に火花が散り、吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
ゴーストは転がりながらもすぐさま体勢を立て直すが、そのままではジリ貧になることは明らかだ。
(まずいな、隙がなくてゴーストチェンジできない。ムサシになりたいんだけど……あ、そうだ)
「イリヤ! 援護を!」
「え、援護!? ど、どうすればいいの、ルビー!?」
「そうですね~とりあえず、イリヤさんが思う一番強い攻撃を思い浮かべて、私を振ってください」
「一番強い攻撃……分かった!!」
イリヤは深呼吸し、気合と共にステッキを振る。
「てやああああああああ!!!」
ステッキから巨大な魔力法が発射される。それはゴーストへ意識を向けていたライダーに直撃する。かなりの威力だったようで、地面が大きくえぐれ、土埃が舞う。
「やったかな!?」
「あ、それはフラグですよイリヤさん」
土埃が晴れると五体満足なライダーが姿を見せる。しかも、完璧に標的をイリヤに移している。
「うわぁああ!! こっちにくる!!」
「ナイス!! 十分だ、イリヤ」
ゴーストドライバーに入っているアイコンを取り換えて、レバーを引いて押し込む。
《カイガン! ムサシ! 決闘! ズバッと! 超剣豪!》
ゴーストの着ていた黒いパーカーが消え去り、代わりに現れた赤いパーカーを羽織る。
ムサシ魂になったゴーストはイリヤの前に回り込み、二刀流にしたガンガンセイバーで攻撃を受け止め、さらに先ほどまでは出来なかった反撃をする。
何度も切られたライダーは大きく飛んで距離を離すが、そこをイリヤの魔力弾が襲う。
それによって身動きが封じられていたライダーだったが、すぐに残像を残すような動きで魔力弾を避ける。
「じゃあ、今度はこっちだ」
《カイガン! エジソン! エレキ! ヒラメキ! 発明王!》
今度は、黄色都銀で出来たパーカーを羽織り、エジソン魂へと変化する。ガンガンセイバーをガンモードにし、ライダーが投げてきた鎖に向かって引き金を引く。
放たれた電撃は、鎖を伝い、ライダーの体をしびれさせる。効果は抜群、ライダーは地面に倒れる。
「イリヤ、集中攻撃だ!!」
「うん!!」
ゴーストの電撃、イリヤの魔力砲がライダーに直撃する。ライダーは抵抗していないため、地面をゴロゴロと転がる。
「よし、そろそろ……ッ!!」
ゴーストがベルトのレバーに手をかけた時、違和感を感じた。
倒れていたライダーが起き上がっていたのだ。それだけではなく、長い髪が生きているかのようにうごめき、マスクの目が光っている。
その眼を中心に赤い血の様な色の魔法陣が出来上がっていく。
「マズい! あいつ宝具を使う気よ! イリヤ! 拓斗! 逃げて!」
凛はライダーから発生する魔力に顔を青くして叫ぶ。それに対して拓斗は胸の前で印を結ぶことで答える。
後ろに紋章が浮かび上がり、それはエジソンの力により電気エネルギーへと変換されて右足に充填される。
「命……燃やすぜ!!」
《ダイカイガン! エジソン! オメガドライブ!》
ゴーストが必殺技を繰り出そうとした瞬間、その横を誰かが駆け抜ける。
それは、拓斗やイリヤと同じくらい歳ぐらいの少女だ。服装は、人前で着るようなものではない、イリヤとはまた違ったタイプの魔法少女といったものを着ている。手にはルビーに似たステッキまで持っている。
「クラスカード、ランサー、
手に持っているステッキにカードを近づける。すると、ステッキは赤い槍の形に変化し、少女はさらに加速してライダーの目の前に踏み込む。
「
少女は槍でライダーの胸を刺し貫いた。
刺し貫かれたライダーは、数秒痙攣した後カードに変化し、少女はそれを地面に落ちる前に手に取る。
「クラスカード、ライダー。回収完了」
振り吹いたその少女は無表情だった。しかしそれは一瞬の事で、ゴーストの姿を捉えた瞬間、その顔は歪み今にも泣きだしそうになる。
このとき、この少女以外の3人は皆同じことを考えていた。
すなわち、
「「「この子、誰?」」」
こうして、魔法少女とゴーストは出会ったのだった。
現在所持しているアイコン
ゴースト
・ムサシ
・エジソン
・???