Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 命を燃やす少年   作:文房具

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第3話 転入! 完璧な転校生

ゴーストは変身を解かず、今颯爽とライダーを串刺しにした少女を見ている。ガンガンセイバーガンモードも即座に撃てるように引き金に指を駆ける。さすがに銃口を向けてはいないが。

 

ゴーストが警戒したままでいることで、イリヤと凜もアクションをおこせずにいた。すると当然、場が静まりかえっている。すると突然、後ろからいかにも高飛車なお嬢様がするような高笑いが聞こえてきた。

 

「オーッホッホッホッホッホッホ!」

 

そこには青いドレスを着た金髪の縦ロールの女性がこちらに近付いてきていた。

 

「ルヴィア! あんた生きてたの!? ていうか何なのこの子達!?」

「オーッホッホッホッホ! この子達が私のカード回収のお手伝いをして下さってる方ですわ。貴女のほうこそ生きていましたのね」

 

即座に襲われる心配はないと判断したゴーストは変身を解く。それと同時に、地面が震えるように激しく揺れ始めた。

 

「境面界が閉じようとしてますね~。脱出するので集まってください」

 

ルビーに呼ばれ凜と拓斗はイリヤの近くに寄る。

 

「サファイア」

「はい、美遊様」

 

ランサーを倒した少女――美遊に声をかけられ、サファイアと呼ばれたステッキは美遊を中心に魔法陣を展開させる。

 

「半径6mで反射路形成。通常界へ戻ります」

 

美遊は全員一緒に元の世界に送り返そうとしているようで、それに見合った大きな魔法陣を作り出す。それを見てルヴィアは少し顔をしかめたが、特に何も言うことなく腕を組んだ。

 

サファイアの掛け声共に、拓斗たちは崩れゆく鏡面界から元の世界にジャンプした。

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界で最初に拓斗の目に飛び込んできたのは、ルヴィアの高笑いする姿であった。そして次に、前から何者かに体当たりされる

 

「オーッホッホッホッホッホ! どうやらこの勝負、私の勝ちのようですわね遠坂 凛! この調子でクラスカードは私が回収して差し上げますわ! オーッホッホッホッホッホ! って、美遊? な、何をやってますの?」

 

体当たりの主は美遊だった。そこまでの勢いはなかったが、しがみつかれる腕の力は本物で、拓斗の力でも引き離せそうになかった。

 

「あ、え、えっと」

「はわわわわわわわ……っ!!」

 

イリヤも拓斗も困惑するばかりで何もできないでいる。しかし、拓斗が困惑しているのは、ただ単に初対面の女の子が抱きついてきたからだけではない。

 

「……良かった……また会えて……」

 

美遊の意味不明な言葉に困惑しているのだ。拓斗の記憶にはこの少女は存在しないのだ。

 

とりあえず拓斗は美遊の肩に手を置き、引き離そうとする。とてつもない力だったにもかかわらず、拓斗が力を入れた途端、美遊も力を抜いてなされるがままになった。

 

話せそうだと判断した拓斗は問いかける。

 

「えっと、俺、君とどこかで会ったことあるっけ? だとしたらごめん、覚えてなくて」

 

その言葉に美遊はほんの少しの間うつむいていたが、すぐに顔を上げた。その顔は最初に見せていた無表情に近くなっている。

 

「ごめんなさい、突然変なことしてしまって。謝ります。知り合いに似ていたので」

 

そう言って、拓斗から一歩下がる美遊。

 

「あ、いや、大丈夫」

 

拓斗と美遊、2人で別の空気を作っているとそこに名移入してくる娘がいた。

 

「ほらっ!! 拓実君!!」

 

イリヤである。拓実の腕を引いてなるべく美遊から遠ざけようとしている。

 

(ぷぷぷ。修羅場ですね~。見知らぬ少女が突然抱きついてくるなんてベタな展開ですが、実際に起こるとこんなに面白いものだとは!! そしてイリヤさん!! そんな反応をしては周りに拓斗さんが好きだと公言しているようなものですよ~。案の定、凜さんもルヴィアさんもニヤニヤしてますし。これは今後からかいがいがいりますね~録画しなければ!!)

 

ルビーは最高にこの状況を楽しんでいた。今後のイリヤをどういじってやろうか、そのことに機能の9割を割くダメステッキである。

 

そうこうしているうちに、ルヴィアは美遊を引き連れてその場から消えて行った。

 

「ったく、ルヴィアはカード回収を何だと思ってるのよ……まあ何にしても今日はお疲れ様、助かったわ。拓斗は予想以上よ。すごいわね。プクク」

「まあ、2カ月も戦い続けてたら多少は。ってか、なんで笑ってるんですか?」

「べ~つに~」

 

拓斗は不審に思って後ろにいるイリヤの方を見る。しかし、イリヤはイリヤでルビーと話をしているため、拓斗が声を掛けて反応できる状況ではない。その話が、ルビーによる悪意100%のからかいだから余計にそうだ。

 

「あの子、私と拓斗君と同い年くらいだったけど、どうしてルヴィアさんと一緒にいるんだろう?」

ようやく復活したイリヤは疑問を漏らす。

 

「ああ……それは明日になれば分かるんじゃないか?」

「え?どうして?」

 

それに対して拓斗は軽く告げる。

 

「だって、うこういうことが起こった次の日には決まってあの子が転校してくるものでしょ?」

「えー……それは漫画とかの話じゃ……?」

「冗談、冗談。そんなわけないよな。流石に」

 

3人は笑い合って校庭を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の学校で、

 

「え~それでは今日からこのクラスの仲間になる転校生達を紹介します」

「美遊・エーデルフェルトです」

 

((フラグだったか……))

 

拓斗とイリヤは同じことを考えていた。

 

ああいう事があった次の日には、大概転校生として転入してくる。そのテンプレを完全に抑えて転校してきた美遊。

 

美遊は、藤村先生(あだ名はタイガー)に指定された席である、イリヤの後ろの席に着席する。

 

美遊が席に着くと、HRが始められ、それが終わるとクラスメート達が一斉に美遊の席を取り囲み質問を始めた。

 

拓斗とイリヤはそれを黒板の近くで見ていたが、ルビーに聞きたいことがあったことを思い出した拓斗は、イリヤに頼んで、ルビーと一緒に屋上に行くことにした。

 

美遊が、質問に答えながらも拓斗たちが教室を出るところを見ていたことに気付く人物はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拓斗君、ルビーに話って?」

 

好きな人と屋上に二人っきりというシチュレーションに少しドキドキしているイリヤ。もちろん拓斗はルビーに話があるのであって、決して告白のようなものではないのが分かっていても、こればっかりは仕方がない。

 

「アイコンだよ、アイコン」

「アイコン……ですか」

 

イリヤに話したつもりが他の人物の声がしたため、拓斗はあたりを見回す。すると、美遊のステッキであるサファイアが現れる。

 

「あらサファイアちゃん、来ていたんですね」

「はい、お二人の話し声が聞こえていたので。改めまして、サファイアです、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」

 

ルビーと全く違うその態度に、驚くイリヤ。むしろ、仕えるものとしてはこれが普通の態度である。

 

「よろしく。っと、じゃあこいつも紹介しないとな。ユルセン!!」

「ほいほ~い。俺様はユルセンだ。よろしくな」

 

白い煙とともに姿を現すユルセン。昨日は先に帰ってしまっていた白状ものだ。ちなみに、ルビーがかけた魔法によってイリヤにも姿が見えている。

 

「……ちょっとかわいいかも」

「何!? 俺様がかわいい? かっこいいの間違いじゃムグムグ」

「はいはい、話が進まないからな。で、俺が聞きたいのは2つあって、まずはクラスカードについてなんだけど」

「そうですね、貴方達には色々説明しないといけませんね。ではまず、クラスカードから説明致します」

 

クラスカードとは英霊の力が宿されたカードで、イリヤ達はそのカードによってそのカードの英霊のスキルや、武器である宝具を使うことができる。

 

しかし、カードを回収するためには、昨日の様に鏡面界にいる英霊を倒さなければならない。

 

そしてクラスカードは、全部で七枚存在している。現時点ではクラスカードは3枚回収されているから、残りは4枚という訳だ。

 

「は~なるほどね~」

 

拓斗は昨日聞けなかったことを効けたため、フムフムと頷いている。

 

「それで2つ目なんだけど、アイコンを探してくれるってことなんだけど、この話はどうなったの?」

「あ……」

 

イリヤは思い出したようにルビーを見る。今の今まで、拓斗が死んでいるという事を忘れていたのだ。

 

「あーそのことですか。大丈夫ですよ。もう2つ見つけています」

「2つ!?」

 

ルビーの仕事の速さに、普段では考えられないような大声を出す拓斗。

 

「はい。昨日見せてくださったアイコンのデータを分析して、それに限りなく近いエネルギーをすでに2つ感知してます。というか、校内にありますよ?」

「……ユルセン」

「し、仕方ないだろ! それは俺様の管轄外なんだ!」

 

拓斗は、今の今まで何も言ってこなかったユルセンにジト目をむける。ユルセンは眼魔の位置を感知できるだけなので、アイコンを探せないのは仕方のないことだ。

 

「サファイア、あまり外に出ないで」

 

そうしていると屋上のドアが開き、サファイアの主である美遊が姿を見せる。

 

「申し訳ありません美遊様。皆様に挨拶をと思いまして」

「挨拶はいいけど、勝手にいかれると困る。今後は気を付けて」

「はい、すみませんでした美遊様」

「うん。それはそうと……」

 

美遊は視線を拓斗に移す。

 

「私にもアイコン集めを手伝わせてほしい」

 

その言葉に、イリヤと拓斗は驚愕する。美遊にはおろか、サファイアにもアイコンの事は話していないからだ。

 

「なんでアイコンの事を?」

「……前に、あなたと同じベルトをした人に会ったことがあるから」

「それが昨日、俺と見間違えた人?」

 

美遊は無言で頷く。

 

「その人、今は?」

 

その問いには美遊は、首を横にすることで答える。つまり、そういう事だろう。

 

「だから私にも協力させてほしい。ダメ?」

「いや、ありがたい。リミットが近くてね、俺ももう半分あきらめてたんだ。人出は多い方が早く集まるだろうし。イリヤ、いい?」

「え、あ、う、うん。いいよ」

 

空気になっていたせいで少しいじけていたイリヤは、突然話を振られて慌てて答える。

 

「それじゃあ、その時になったら呼んで。戻るよサファイア」

「はい美遊様。ではイリヤさん、拓斗さん、また」

「うん。それじゃあ」

 

そう言って美遊とサファイアは屋上を後にした。あとにはイリヤとルビーと拓斗が残っている。

 

「同じクラスなんだし。一緒に戻ればよかったのに」

「なんですかね~とっつきにくいと言いますか」

「そのうち仲良くなるしかないな」

 

拓斗たちも屋上のドアに向かう。すると唐突にイリヤが、

 

「そうだね……所で拓斗君」

「ん?」

「あの子と会ったこと、本当にないの?」

「俺は覚えてないし、向こうも間違いだって言ったんだからないんだろ」

「うーん……」

 

納得できていない様子のイリヤ。

 

「どっちみち、これ以上は調べられないからな」

「……そう、だね」

 

そう言いつつ、つかの間の日常へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の日常は前日までの日常とは違っていた。

 

何が言いたいかというと、美遊という存在が日常では考えられないほどの完璧超人だったのだ。

 

数学を小学生とは思えない方法で解いたり、自由スケッチではピカソのような絵をかいたり、ハンバーグを作る調理実習ではフルコースを作ってみたいといった具合だ。

 

おまけに体育の授業。

 

その日は50m短距離走のタイム測定の日だったのだが、イリヤと走った美遊は6.9秒というタイムを叩きだす始末だ。

 

いったいどんな超人だと言わざるを得ない。

 

そんな波乱万丈な学校も終わりを告げ、下校の時刻となった。

 

現在、拓斗、イリヤそして美遊という3人で下校している。

 

今後の活動方針を固めるためだ。

 

「それじゃあ、アイコン集めは早速明日から。クラスカードの回収はアイコン集めより優先ってことで」

「そうですね~。私としては、凜さんの命令なんて無視してもいいんですけれど、それはそれで何をしてくるかわかりませんからね~」

 

拓斗とルビーに美遊が賛同する。

 

「そもそもクラスカードは鏡面界にあるから、人的被害は出にくい」

「それに比べて、アイコンには拓斗さんの命がかかっています。本来ならばそちらを優先するべきなのですが……」

「凜さんとルヴィアさんが……ね」

 

サファイアとイリヤはやれやれとため息をつく。凜とルヴィアの敵対心のせいで、いろいろと面倒くさくなっている。凜の方はそこまででもないのだが、ルヴィアが煽るせいで、結果的に喧嘩になってしまうのだ。

 

「じゃあ、明日からよろしくね」

「はいは~い。このルビーちゃんにドンと任せてください」

 

拓斗は分かれ道で手を振って別れる。会話を回していた拓斗がいなくなってしまい、イリヤと美遊の間に沈黙が訪れる。

 

しばらく歩いて美遊の方から口を開いた。

 

「貴女は何でカード回収をしているの?」

 

2人は立ち止まって向かい合う。

 

「それは、成り行き上というか……しかたなくというか……騙されたというか……」

「そう……じゃあどうして貴女は戦うの?」

 

美遊の突き刺すような目を向けられるイリヤだったが、イリヤはそれに気付いていない。

 

「貴女は巻き込まれただけなんでしょ?貴女には戦う理由も、その義務もないんでしょ?なのにどうして戦うの?」

 

美遊は本気で問いかけていた。戦いの厳しさをイリヤよりも知っているから。

 

「実を言うとね、昔からこういうのにちょっとだけ憧れてたんだ。ほら、魔法を使って光線出したり、敵と戦ったりするのってアニメやゲームみたいじゃない? そういうのにちょっとわくわくするというか、せっかくだからこのカード回収のゲームも楽しんじゃおうかな、って思って」

 

それに対してのイリヤの答えがこれだ。むしろ子どもとしては、このくらいの考えは普通である。不思議な力を手に入れて、わくわくしない子供はいないだろう。

 

しかし、この答えは美遊は深く失望させた。

 

「アイコンは? 拓斗の命が係ってるアイコン集めもそんな気持ちでするの?」

「え、い、いや……それはもちろん真剣にするけど……」

 

美遊の本気を感じ取ったイリヤ。しかし、もう遅い。

 

「もういいよ。貴女にとってこれはゲームと同じ遊びなのね。私はそんな人を仲間なんて思いたくない」

 

淡々とした口調で言うと、美遊は踵を返す。

 

「あ、あの……美遊さん?」

「貴女は戦わなくていい。そんな気持ちの人がいても、みんなの迷惑になるだけ。あなたは闘わなくていい。私と拓斗が闘うから」

 

そう言い残すと、美遊はイリヤを置いて行ってしまった。

 

その言葉は、イリヤの心に大きな爪痕を残すのだった。

 

 




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