IS 選択を間違えた生徒   作:meruto

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過去編 憎悪萌芽

これは遠き日の夢。どれほど願っても戻ってこない。もう二度と…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリちゃん。一緒にかえろう?」

 

 

 

授業が終わり楓が一緒に帰ろうと誘ってきた。こうやって授業が終わったら一緒に帰るのが私と楓の日常の一つだった。

 

「まってて。先生に頼まれたことが今終わるからその報告した後、帰るよ。」

「うん。わかったよ。」

 

私と楓は幼馴染だ。家も近所で小学生の頃からずっと二人でならんでいた。何をするにしても楓がいつも近くにいた。そして一緒に笑ったり泣いたり、時にはぶつかり合った。だけどその日々が充実していた。楽しかった。

 

 

 

 

「IS学園?」

 

「そう。あたしの進路。そこにいけば、将来ママに楽させることができるから。」

 

家までの帰路。私たちは進路について語り合っていた。楓はIS学園に行くらしい。彼女の家庭は母子家庭で母親は日夜休みなしで働いている。

 

楓はそんな母が好きで、尊敬していた。いつか恩返しをすると言っていた彼女のことがまぶしく見えた。私は楓のように夢みたいな盛大な理想は持っていない。うらやましくもあり、そんなふうになりたいと思っていた。

 

 

「キリちゃんはどうするの?」

「私は……。まだ、決めてない。」

 

「え~。早くしないと間に合わなくなるよ?先生とかに小言ばかり言われちゃうぞ~。」

 

「楓じゃないんだから。でもそのうち決めるよ。」

 

「ちょっとどういう意味よ?あたしじゃないんだからって。そんなこと言うキリちゃんにはおしおきだー!」

 

「え?ちょ、んははっ、やめ…!くすぐった…!あはは!」

 

 

 

これからもこんなふうに、楓と一緒に過ごして友達でいる。私はそれでよかった。それ以外のものは何も望まなかった。それほどまでに、この日常は大切だった。

 

 

 

今日は楓が勉強に付き合ってほしいとのことで朝早く学校に来た。

 

隣の教室を通りがかると誰かいた。

 

 

 

 

 

 

確か、あの子っていつもいじめられてて…………。物とか隠されたりされるから早めに来てるのかな?そう思っていたけどあの様子は違う。

 

彼女の机には教科書や参考書が置かれている。彼女自身も机に向かって何かを書き取っている。

 

受験勉強をしてるのだろう。邪魔してはいけないと思い、私は自分の教室にいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、頑張ってね。」

『ありがとキリちゃん。いままで付き合わせちゃったけど、あたし合格するから。』

「そう。吉報を待ってるから。」

 

 

今日がIS学園の受験日だった。なので私は楓に電話をして励みの一つを送った。

今日まで楓はしっかり勉強してきた。私も心配はしてなかった。

 

 

まあ、自分のことが終わっていない身で、他人の心配はできないのは確かだから。

 

 

正直、私もIS学園にしようか迷っていた。IS学園は全寮制だから楓と会える日が限られる。楓からも、IS学園を受けないの?と言われた。

 

でもそうなったら楓と同じ日の受験は受けずに二度目の募集の時に受験をしようと考えていた。それなら楓が受かる確率が少しでも上がると思ったから。

 

 

 

楓が受かったら、私もIS学園に行こう。そうしてこの先も楓と一緒にいて、そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそれは、永遠にかなわない幻想となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の受験合格発表から三日経った。

 

 

 

楓は不合格だった。その日楓が深く沈んでいたから、私は話しかけることができなかった。誰だって一人にしてほしいことはある。慰めて楓が惨めに思うかもしれないと思って、そっとしておいた。だけどその翌日。さらに追い打ちをかける出来事があった。

 

 

楓の母が死んだ。詳しいことは知らないが、おそらく働きづめで限界だったのだろう。

 

 

その日以来、楓は学校に来なくなった。楓を引き取った親戚の家にも行った。けど出てこない。無理もないと思ってしまった。立て続けにこんな辛いことがあってしまっては塞ぎ込む。明るい楓でも仕方ないと思ってしまった。

 

 

 

学校帰り。私は楓の家の前に来た。楓と楓の母の二人が住んでいた家だ。遊び行った時は快くもてなしてくれた。とても明るくて、楓が明るかったのはこの人ゆずりなのだと思ったほどだ。

 

 

 

見ると戸が開いている。朝通りがかったけど開いてはいなかった…………。

 

 

 

まさか、楓がいる?私は直感的にいるのではと思った。

もしそうなら、私がそばにいなくちゃ。そんな使命感に駆られ、私は家に入った。

 

 

楓の部屋は2階。そこにいるはず。私は部屋に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓は居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは変わり果てた姿の楓だったモノだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、楓……?な、なんで………!?ああ、いや………!いやああああああ!!!!!」

 

 

 

 

私は泣きながら括りつけられたロープをほどき楓を降ろした。

 

 

「楓!!!楓!!!いやだ!!死なないで!!!楓!!!!」

いくら呼びかけても楓は目を開けない。応えてくれない。いつもみたいにキリちゃんと呼んでくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

楓はもう、戻ってこない。わかってしまった。母が死んだことを苦にして楓も後を追ったのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして……こんなことに………。」

 

 

 

私は楓の家から出て当てもなくさまよっていた。ずっと頭の中で繰り返していた。

なんで?どうして?当然その答えなどでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと前を見ると、隣のクラスのいじめられているあの子が横断歩道にいた。何か悲しそうな顔をしている。なにかあったのかと思う前に、一つ思い出した。

 

 

 

 

 

 

あの女もIS学園を受験していた。あの女の結果は合格。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……。」

 

 

楓じゃなくて、あの女が合格した?

 

 

 

「なんで…。」

 

 

楓があんな目にあわなければいけないのか?

 

 

 

「なんで……!」

 

 

楓が死ななければならなかった?

 

 

 

「なんで…!」

 

 

楓が死んで、おまえがここに居るのか!

 

 

 

 

 

信号は赤。私は無言で彼女の背後に立ち、車が横断歩道に10数メートル近づいた瞬間……。

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

彼女の背中を押した。

 

 

 

 

「……………………。」

 

 

彼女は車にはねられ血を流して倒れていた。車の運転手はあわてて彼女に近寄って声をかけるが反応がない。

 

人を殺すに等しい所業をしたというのに何も感じない。自分がどれほど恐ろしいことをしてしまったと感じると思ったがそう言った罪悪感は何も感じられない。

おまえが悪いんだ。おまえが。おまえさえいなければあんなことにはならなかった。

 

そんなことを思いながら、私はその場から離れていった。

 

 

 

 

翌日。あの女は学校には来ていない。まぁ当然だろうと思った。事故にあって昨日今日で来られるはずがない。ざまぁみろと言う者。目障りな奴が消えてくれたと言う者。大半が彼女に対して辛辣な言葉を言っていた。

 

 

 

でも、これでは足りない。あの事故ごときで死んでもらっては困る。楓を死なせた原因を作ったあの女。鬼咲よみ。こいつだけは許さない。逃がすものか。徹底的に追い詰めて絶望させたあと、死なせてやる。絶対に。

 

 

 

 

 

鬼咲よみ。私から楓を奪った罪。

 

 

 

 

死を持って

 

 

 

 

 

 

贖え。

 

 

 




黒谷楓(くろたにかえで)
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