IS 選択を間違えた生徒   作:meruto

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今は授業中だった。副担任の山田先生が授業内容を説明していて、私はその要点をノートに記していた. 授業内容はやはり難しく、なかなかついて行きづらい進行速度だった。

 

山田先生が説明を終えてわからない生徒がいるか確認すると、織斑くんが全部わからないと言った。織斑くんは参考書を間違えて捨ててしまったらしく事前に読めなかったらしい。織斑先生が再発行するとのことで授業は再開された。

 

授業はが終わり、私はさっきの授業内容の確認をしていた。

「へー。字、きれいなんだな。」

 

急に声をかけられてビクッと体が反応する。見てみると織斑くんがいた。

「あ、あの……?」

「ああ、ごめんごめん。それにしてもすごいよな。みんな授業にしっかりついていけてるのに、おれときたらなぁ…」

「えっと……。な、何か…用ですか?」

「そうだった。さっきの授業でわからなかったとこがあるんだけど教えてくれないかな?」

「わ、私が…ですか…?でも……私の…ほかにも頭の…いい人はいますよ……?そういう人に、頼んだほうが……」

「でも、きみはおれより頭いいでしょ?頼むよ。」

 

こうしつこく頼まれて断ったら何をされるかわからない。それに相手が男性だったので怖かった。中学校以来、私は男性恐怖症になり顔すらまともに見れなくなって、触られたら乱暴されるところを思い出して嘔吐してしまうぐらいだった。今でも男性に対する恐怖は消えておらず、織斑君の顔を見れずにいた。

 

私はこれ以上関わってほしくないため、早く済ませて私から離れてもらおうと織斑君の頼みを引き受けた。

 

「わ、わかり…ました…。私が…できる範囲なら、いい…ですよ………」

「ほんとか!たすかったー」

 

 

 

織斑くんがわからなかった部分はノートを使って補足した。彼が近くに寄ってきたのでどんどん気分が悪くなりノートを貸して私は教室から出ていきそのままトイレの個室に向かった。

 

「はぁ…はぁ…。うっ、うえええええ!!おえええ!!!っあ、はぁ、はぁ…げほっ、ごほっ」

数分でも我慢が出来なかった。教えてもらうためとはいえ身体を少しづつ近づかせるたびにフラッシュバックしてきて息苦しくなり、吐き気がする。私はまだ残っているものも吐き出し、少し休んだ後水を飲んで教室に戻った。

 

授業が始まる前に、織斑先生が来週行われるクラス対抗戦で出場する人間を決めると言い出した。推薦や立候補で選ぶと言われ、誰かいないかと言うと織斑くんがまわりの人たちに推薦された。他に誰かいなかったので織斑くんが代表になるかと思ったが、そこに同じクラスのセシリア・オルコットさんが異議を申し立て、彼女は立候補という形になった。これでこの話は終わるかと思っていた………。

 

 

 

 

 

 

「鬼咲よみさんを推薦します」

「え……?」

 

早乙女さんが急に私を推薦してきた。

 

「あたしも推薦しまーす。」

それに便乗して石田さんも私を推薦した。私は石田さんの方に振り向くと彼女は笑っていた。無邪気なように見えてあざわらうかのように………。

 

「ちょっと待ってください……!私は……代表なんてやれません……!!」

「織斑は推薦されてやらないっつってもやらせて鬼咲だけは許すつもりっすか?織斑先生。」

抗議しようとするも、笹川さんが横槍を入れてくる。でも彼女の言い分はもっともだった。でも私に代表なんて務まるわけない。何とか説得しないと。

「せ、先生…。私は代表なんて……」

「笹川の言う通りだ。お前だけ特別扱いするわけにはいかん」

「そ、そんな……どうして……私が…。」

取りつく島もなかった。あの織斑先生だ。意見を変えることはしないだろう。でも、あとで何とか話をつけてみることにする。

 

「1週間後に、推薦された者たちで代表を決める試合をしてもらう。時間は放課後、場所は第3アリーナだ。各員はそれぞれ用意をしておくように。では授業を再開する。」

 

 

 

 

授業が終わり、私は職員室に行き織斑先生と話をする。

「私は…推薦されても立候補はしてません。だから、代表を決める戦いに出たく…ありません。」

「さっきも言ったはずだ。お前だけ特別扱いするわけにはいかん。」

けど、私が出たところで負けるし勝てるわけない。何度そう言っても聞き入れてくれない。

「いい加減にしろ。推薦された以上おまえは代表を決める試合に出る義務がある。笹川が言った通りおまえだけやらせんわけにはいかん。」

っ!結局教師なんてあてにならない…!どこに行っても変わらなかった。

「私は!私は笹川さんたちに…!っ!?」

『先公共にチクったらどうなるかわかってるんだろうな?』

私は言いかけた言葉を飲み込んだ。今ここで言ったら彼女たちに何をされるか、想像するだけで寒気がする。

 

「笹川たちが、どうかしたのか?」

「い、いえ……。なんでも…ああ、あ、ありません……!」

私は駆け足で職員室を出た。今の会話を聞かれたらと思うと、…いやだ、想像したくない。急いで寮に戻らないと。廊下を走り、校舎を出ようとする。

 

 

 

 

「どこ行くんだ?おい。」

「っ!?さ、笹川…さん……!?」

 

最悪だった。よりにもよってこの人に見つかった。怖くて体が動かない。彼女に見られてるだけで震えがとまならない。

 

「職員室に行ってたらしいじゃんか。そこで何してたんだ?」

「え…あ…その……わ、私は……」

「へー。さっきのあたしの態度が余程気に入らなかったみたいだ、なぁ!!」

「がっ!?っ、げほっ!、ごほっ!う、ああ…あぐ…」

笹川さんの膝が私の腹にめり込んでいた。胃の中の空気が押し出される感覚が襲ってくる。それだけじゃ終わらず、今度は胸ぐらをつかまれて顔を殴られる。その衝撃で歯が折れた。

 

 

「がはっ!!うう…ぐ…」

「おまえ、織斑か山田にチクっただろ。だから職員室に行ったんだよなぁ。」

「い、言っでま…せん。本当です……。」

「じゃあ何しに行ってたんだ?言ってみろよ。」

「だ、代表を決める試合に出たくないと…言っただけです…」

「そんなに試合に出たくないのか?せっかく早乙女と美夏が推薦したっていうのに、あいつらの気持ちを無碍にするっていうのか?」

 

なんて自分勝手な話だと思った。私はそんなこと頼んでないし、早乙女さんたちが私に期待なんてしてるわけない。そんなのわかりきった話なのに。笹川さんは彼女たちをだしにして私に暴力を振りたいだけなのだろう。

 

「そんなわけ……ない…!あなたたちは、私を陥れて…楽しんでいる……!それに、早乙女さんたちの気持ちなんて、私には関係ない!」

「うるせーよ!!このクズが!!」

「うぁっ!!」

笹川さんが胸ぐらを離して思いきり殴り、私は勢いよく吹き飛んだ。

 

「っぐぅ…げほっ、げほっ、…どう…して、はーっ、はーっ…どうして……こんな…ことするん、ですか…?どう…して私、ばかりにひどいこと…するん、です…か?あの時の…ことを、まだ怒ってるんですか?それとも、私が…知ら、ないうちに…なにか……したん…ですか?」

 

「ぺっ、そんなの自分で考えろ。」

 

笹川さんは私に唾を吐きつけて踵を返した。その場に残された私は涙が出そうになっていた。

 

「っ。痛い…。なんで、私が……。っぅぅ…ぅっ…」

ダメだ。ここで泣いたら誰か来てまた私を貶す。もうたくさんなのにこれ以上責められるのは嫌だ。早く自分の部屋に行かないと。幸い、私の部屋は一人部屋なので誰も来ない。そこにいれば誰にも干渉されない。

 

 

泣くのならそこで泣けばいい。そう思い、涙をこらえながら部屋に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのクズ、あたしに口答えしてきやがった。たださえあいつの顔見てるだけでイラつくってのに、それに加えて反抗してくるなんてな…。

 

「ずいぶん派手にやったじゃない。」

「ああ?見てたのか?」

 

早乙女が来て、自分は一部始終を見ていたと言わんばかりのことをぬかした。こいつ自身何を考えているかわからない奴だが美夏が世話になったらしく雑には扱わなかった。だけどこいつが担任の奴らにチクるってんなら話は別になる。

 

「床とあなたに血が付いているからどれほどのものか想像するのはたやすい。別に先生たちには言わないし、後片付けぐらいならしてあげるからさっさと行ったら?」

 

「むかつく言い方だが後始末するのは確かに面倒だ。やっといてくれ。」

 

あたしは早乙女をその場に残して寮に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笹川朱音。○○県○○市在住。幼いころから父に虐待を受けて育ってきた。9歳の時母が家を出てその一年後、彼女も家を出る。その後は劣悪な環境に身をおいて過ごしてきた。利権、暴力、金銭で正義が決まるような場所で生きていくために犯罪を犯すことをいとわず、自分を害する人間は徹底的に叩きのめしてきた。結果、誰にも屈しない力を手に入れてかつていた場所に戻ってきた。当時13歳だった。

 

だが、朱音の父親はすでに死んでいた。彼女が出て行って2年後のことだった。父親が死んでも母親は迎えに来るどころか新しい家庭を持っていた。

結果、彼女は天涯孤独になってそのまま中学に入った。そこで石田美夏と知り合い、IS学園に進学してきた。

 

 

 

これが、私が調べ上げて想像した朱音の過去。この経歴から見て彼女は闇を抱えている。だから鬼咲よみにあれほどの暴力を振ることができる。そう見てもいいぐらいだった。

 

「……………ふふ…。」

 

私は床についた血を拭き、落ちていた歯を蹴飛ばした。

 

 

歯はそのまま端のほうまで転がっていった。

 

 

 

 

 

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