IS 選択を間違えた生徒   作:meruto

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救済編 生徒

私は飛び降りる前に、一人の生徒の顔が浮かんだ。

 

織斑一夏くん。

このIS学園で唯一の男子生徒。私とのかかわりはノートを貸した人というだけだった。だけどなぜか顔が浮かぶ。

 

 

あの時謝りに行けなかったからかな?まぁいっか。そのことも含めて私が死んで彼に謝れば。私は考えるのをやめて、飛び降りようとした時だった。

 

 

「鬼咲さん!!!」

 

大声がして振り向いてみると、織斑くんがいた。息も絶え絶えでかなり疲れてる。いったいどうしたんだろう。私の謝罪を聞きに来てくれたのかな?

 

「織斑くん……。」

「何やってるんだよ!!そんなところにいたら危ない。早く戻ってくるんだ!!」

 

「戻る?なぜ?」

「だって、そんなところにいたら、そのまま落ちて…!とにかく危険だから戻れ!!」

「戻ったら死ねないでしょ?それと織斑くん。この間は突き飛ばしたりしてごめんなさい。無視したりしてごめんなさい。勉強教えてる途中、

急に出て行ってごめんなさい。」

 

「えっ?まさかそれを気にしてこんなことしてるのか?だったらそんなことしなくていい!!おれは怒ってないから!早くそこから離れろ!!!」

 

よかった………。織斑くんが許してくれた……。簡単に楽になれる方法が見つかった。初めて人に許された。こんなにいい日は生きててなかった。織斑くんにも謝れたし、もう未練はない……。

 

「さようなら……。織斑くん………。」

「鬼咲さん!!!!!!」

私は、そのまま身投げした。

 

 

 

 

ああ。今日はなんていい日なんだろう。今日まで味わった地獄の日々が、こうするだけで終わるなんて嘘みたい。私はそのまま静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………痛みが来ない。いくら即死するぐらい高さでも、痛みは来るかと思っていたけど一瞬だけなので覚悟はしていた。

 

恐る恐る目を開くと。

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ。」

「織斑くん………。」

 

理解できなかった。ISを纏った織斑くんが、私を抱きかかえていた。そのまま下にゆっくり降下していき、ISを解除した。

 

「…………………。」

「あの……。」

「どうしてあんなことしたんだ!!!!」

 

しばらく黙り込んだ後、織斑くんが泣きそうな顔で怒鳴ってきた。私はなぜそんな顔をしているのか、理解できなかった。なぜ私を止めたのか、理解できなかった。

 

 

私はある一つのことを考えた。

 

「織斑くんが、私を殺してくれるんだ。」

「えっ?何を……?」

「だから私を死なせなかったんでしょ?だったら早く殺してよ。さっきのISの剣で私を切り捨ててよ。ねぇ、ねぇ。」

 

織斑くんの肩を揺らしてねだる私。その様子を織斑くんは愕然と見ていた。

 

「斬りたくないなら私の首を思いきり絞めて?苦しいのはちょっと嫌だけど、少しの間なら我慢できるよ?」

「鬼咲さん………………。」

 

早く私を殺して?早く私を。早く早く早く早く………………。

 

「首の絞め方が分からないの?簡単だよ?親指をのどに思いきり食い込ませて力いっぱい絞めれば、私は…っ!?」

「…………もういい。何も言わなくていいんだ。」

「っ?」

 

 

 

 

 

私は、織斑くんに抱きしめられていた。

 

違うの………。しめるのは身体じゃなくて首……。首を絞めなきゃ死ねないでしょ…?

「織斑…くん?これじゃあ、私死ねないよ?」

 

「言うな。」

 

「私を殺すんでしょ……?早くしてよ……。お願いだから……!」

 

「言うな。」

 

「お願いだから私を殺して!!!!!もういやなの!!!!誰かにいじめられたくない!!!!!!これ以上つらい思いをしたくない!!!!!死んで楽になりたい!!!!!!

だから……!っひぐっ…!お願いだからぁ…!!うぁぁ…!お願いだよぉ……!!

うううううううわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

「っ!……もういいんだ。おれが君のことを守る。もう二度と、誰も君に傷つけさせない。」

 

安心、恐怖、困惑、苦しみ、願い、何もかもわからない。いろいろな感情が混ざって、すべてを

吐き出したい気持ちになって泣いた。

 

 

 

後で私を殴っても構わない。でも、今だけはあなたの胸で泣かせてください。

 

 

 

 

 

 

 

数分ぐらい泣いて、私は泣き疲れて眠ってしまった。織斑くんは私を部屋まで運んでくれて

就寝時間まで傍に居てくれたという。

 

織斑くんに部屋まで運んでくれたとき、眠ってはいたけど不思議と心が安らいでた。

 

暖かい。安心する。優しい。怖くない。苦痛じゃない。心地がいい。こんなことは今までなかった。これは私がずっと欲しかったものなのかもしれない。

 

 

 

 

後日、織斑くんが先生に言って、私は学校を休ませてもらった。

放課後になったら、織斑くんはもう一度来る。そこで話を聞いてもらうことになってる。

 

 

 

 

だけど話せるか心配だった。未だにあの恐怖が私に刻まれているような気がして…。

本当に生きてる価値があるのか。私が死ぬことをみんな望んでいるんじゃないかと思ってしまうぐらいだった。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!いや…いや…。誰か…!」

苦しい…。昨日の言葉が頭の中で響く。呼吸が不安定になり、めまいもする。

 

この苦しみを取り去るには………。

 

 

「鬼咲さん!」

誰?声が聞こえる…?聞き覚えのある声……。この声って………。

「織…む、ら……くん?」

「だいじょぶか!何かあったのか?」

 

唯一見える左目で、かすみながらも織斑くんの姿が見えた。そっか…。確か授業が終わったら来るって……。もう授業終わったんだ……。

 

「ううん…。大丈夫……。ちょっと、めまいがしてきただけだから。」

「めまいって…。具合が悪いのか?」

「これは、事故の後遺症……。この右目もそう………。」

「事故…。…ごめん、いやなこと言って……。」

「大丈夫…。それ、よりも……ううっ…。」

説明しなくちゃ……。せっかく織斑くんがわざわざ来てくれて、話を聞いてくれるんだから。体を起こそうとするが、バランスを崩して倒れこみそうになる。だけど織斑くんが抱きとめてくれた。今思ったが不思議と嫌悪感がない。男性にこんなことをされてるのに全然平気。むしろ心が温まる…。さっきまでの苦しみが和らいでいく…。

 

「今はいいよ。ゆっくり休めば。無理はしないでくれ。」

「ん…。ごめんなさい。私がこんな風なばかりに、大事な時間を使ってまで……。」

「誰も君を責めたりしてない。謝らなくてもいいんだ。」

 

この人なら、信じられるかもしれない。私にとって加害者でも傍観者でもない人。

私の……

 

「信頼して…いいんだよね?」

「ああ。おれを信じてくれ。」

 

信頼できる人……………。

 

 

 

 

めまいも収まり、私はすべてを話した。過去に自分がいじめられ続けたこと。他人を無意識に傷つけてたこと。そのせいで事故に遭い後遺症まで残ったこと。IS学園に通い始めていじめられ続けていたことをすべてを話した。

 

「そんなことが……。ずっと一人で抱えていたのか……。」

「痛くて…。つらくて…。怖くて…。苦しかった…。誰も助けてくれなくて、悲しかった……。今でもあの三人が、怖く見える……。っ…!」

ここでのいじめの犯人も打ち明けた。早乙女さんの言葉が、頭から離れず震えていると、織斑くんが抱きしめる。

 

「もう大丈夫だ。千冬姉や山田先生に言えば、あいつらは鬼咲さんに手を出せなくなる。あんな風になるまで追い詰めたんだ。この学校にはいられないよ。もう誰も、鬼咲さんを傷つける奴なんていないよ。」

 

この言葉をかけられるだけでも、私にとっては救いだった。そのせいで涙が止まらない。

 

「っ…織斑くん……。っ、ひぐっ…うぅ…、ぐすっ…。」

「鬼咲さん!?あっ!ごめん!!急にこんなことして。男の人が苦手だったんだよね!?」

織斑くんは慌てて私から離れようとするも、私は織斑くんを離さなかった。

 

「お願い…。もうしばらく、こう居させて………。私は一人じゃないって、思わせて…。」

「鬼咲さん……。」

 

他人の優しさというものを初めて味わった。この優しさが、他人から与えられるのは苦痛ばかりじゃないということを教えてくれる。

 

 

私はもう一度それを、確かめるように抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

翌日。私は学校に登校して、織斑くんと一緒に今までのいじめをすべて先生に話した。

先生も最初は信じられない様子だったけど、織斑くんが一緒に説明してくれたおかげで先生に伝わり、放課後三人を呼び出して事情を聴くこととなった。

 

だけど、あの三人の前で話すことなどできるかわからなかった。

どうしても、早乙女さんたちにに会いたくなければこなくてもいい。と、織斑先生は言ってくれたけど、私も行かないと証人はいないことになる。

 

そこで、織斑くんが一緒にいっていいかと聞いてきた。だけど織斑くんは当事者ではないので難しいと先生は言っていたが、私はお願いした。当然、織斑くんが良ければだが。

 

結果、織斑くんも一緒に来てくれることになった。

 

 

 

放課後になり、先生たちと生徒指導室で待っていると、あの三人が来た。

 

「っ…。」

「大丈夫。」

 

顔を伏せると、織斑くんが私の手を握ってくれた。

 

 

「先生方。お話というのは?」

「まず座れ。話はそこからだ。」

 

三人とも椅子に座り、私を一瞥する。

 

笹川さんは舌打ちをして織斑先生を見た。石田さんは私を一瞬睨みつけて向き直した。

早乙女さんはそのまま先生の方を見た。

 

「あなたたちはなぜここに呼ばれたかわかりますか?」

「わかりかねます。」

「あたしもー。」

「別に。」

山田先生が険しい顔で彼女たちに問いただしました。それに対して三人ともしらを切るような態度をとった。

 

今回の件で、山田先生は悲しんでいました。それで、私に何度も謝ってきました。気づいてあげられなくてごめんなさい、と何度も…。私は、今からでも対応してくれるだけでありがたいという旨を山田先生に伝えました。

 

 

「おまえら……!」

「やるか?男でも楽に潰してやるよ。」

 

彼女達の態度に織斑くんが腹を立てて声を荒げる。笹川さんは織斑くんをあおり、腕を鳴らしている。

 

「やめろおまえら。席に付け。」

「こいつが先に突っかかて来たんだからこいつだけを注意しろよ無能教師。」

「おまえ!!いいかげんにっ!」

「やめろと言っている。それと笹川。お前の態度も注意するに値するものだったから私は注意したまでだ。」

「ちっ、ああ言えばこう言いやがって……。」

 

織斑先生は二人を止めて、席に座らせました。

 

「本題に戻る。お前たちをここに呼んだのは、ここにいる鬼咲をお前たちがいじめてるということを聞いたからだ。」

 

「私たちが?いったい誰がそんなことを言ったんですか?」

「目撃した一部の生徒と、本人からだ。」

 

「そうなの?鬼咲さん?」

 

早乙女さんが冷たい目をしながら私に聞いてくる。その目に私はひるむがはっきり言った。

 

「はい……。今までのことは全部言いました。」

 

「ちょっといい?何なの?今までのことって。そもそも証拠なんてどこにもないじゃない。」

石田さんは証拠はないと言った。確かにこの場には明確な証拠はまだ出していなかった。

 

「石田。おまえは○月△日に、織斑から鬼咲のノートを預かったな?」

「それがどうかした?」

 

「そのノートがこれだが、なぜこうなってるかわかるか?」

織斑先生が私のボロボロノートを取り出した。これは石田さんが私に渡したもの。先生に証拠品として預けていた。

 

「……あたしがもらった時にはそんな風になってたけど?」

「嘘をつくな!おれがお前に渡したときはそんな風になってなかったぞ!」

「だそうだが、どうなんだ?」

 

石田さんは観念したのか、投げやりな感じで白状した。

「ちっ。そうだよ。あたしがこいつのノートをそんな風にしてやったのよ。」

「認めるんだな?おまえがやったということを。なら、ノートを渡す前に数人の生徒とおまえで鬼咲に暴言や暴力をしたということもおまえが主犯だな?」

 

「それもそう。あいつら、織斑がかわいそうとか何とか言ってたけど、自分が嫉妬して悔しかっただけ。それをあたしが利用したのよ。ああいう馬鹿は単純で扱いやすいわ。」

 

 

「最後に聞く。なぜ鬼咲をいじめた。」

「理由なんて特にないわよ。最初は朱音の服を汚したっていう理由からだけど、いつの間にかそんなのも消えて、理由なしにやってただけ。」

 

理由はない……。

私があそこまでされた理由はない、と石田さんは言った。

 

どうして、こんな気持ちになるんだろう。怒っているわけでもないし、悲しいわけでもない。ただ、空虚な思いが私の中に広がっていく……。私が憎かったわけではなく、理由もなく私をいじめていたという石田さん。それに対して、織斑くんは彼女に声を荒げた。

 

「ふざけるな!!鬼咲さんをあれだけいじめておいて、その上理由がないだと?おまえ、彼女が今までどれだけ苦しんだかわかってるのか!?」

 

「わからないわよ。いちいちいじめる相手の気持ちなんて考えないってば。それに昨日今日でいまさら気づいた部外者が、いちいち騒いで見苦しいことこの上ないわね。」

 

石田さんが反論しても、織斑くんは席から立ち上がらず彼女をにらみつけた。

織斑先生はそれを一瞥し、笹川さんに質問した。

 

「笹川。おまえは鬼咲に日常的に暴力を振るっていたと聞いたが、本当か?」

「……そうだよ。たまにこいつが身体に傷を作っていたのはあたしがやったからだ。」

 

笹川さんは弁明もせず、私に対して暴力をしたことを認めた。ごまかしたり、白を切ることもなく、ただ、事実をだけを話した。

 

「鬼咲さんに、何か言うことがあると私は思いますが。」

「はあ?言うことなんてあたしは何もねぇよ。」

「あなたは……!鬼咲さんにあれだけの暴力を振るっておいて、ケガまでさせて、謝ろうという気持ちさえないんですか?」

笹川さんは山田先生に食って掛かってる。山田先生も説得をする。

山田先生はおそらく笹川さんに謝らせようとしている。たしかに、ひどい暴力を毎日のように振るわれて、痛くて怖かった。

だけど今はもう、謝られるより私へのいじめがなくなればそれでいいと思っている。

 

「いいんです山田先生。もう、いいんです。」

「でも、それじゃあ、あんまりじゃないですか………。今まで受けたことが、何もなかったようになるみたいで……。」

「何もなくていいんです。これからが無いだけでも、私は十分ですから。」

「鬼咲さん……。わかりました。あなたの意思を尊重します。あなたがそれでいいというなら、私は何も言いません。」

 

山田先生はわかってくれた。先生が私の話を聞いてくれた。こんなこと今までにはなく、私はうれしかった。

 

 

 

「早乙女。おまえは屋上で鬼咲に自殺させようとしたと聞いたが。これに関してはどういうことだ?」

 

織斑先生が早乙女さんに聞いた。二人に聞いた時よりも強めの口調で聞いたが早乙女さんは表情を変えずに答えた。

 

「断定するんですね。それこそ証拠がないのでは?」

「鬼咲に聞いて、織斑はお前の姿を屋上で見て、階段でもすれ違ったとも聞いている。なら、おまえは屋上でいったい何をしていたんだ?」

 

「何もしてませんよ。屋上に行ったのも単なる気分ですし。先客がいたのであいさつして下に行っただけですよ。そもそも私はいじめなどに全く関与していません。決定的な証拠でもあるんですか?」

 

 

 

確かに早乙女さんだけ証拠らしいものが一つもない。私が言えばいいかもしれないけど、早乙女さんが私をずっと見ている。織斑先生と話している時もこちらを見ていた。

 

 

 

「関与してない?自分だけそうやって少しでも罪から逃れようっての?そんなことさせるわけないでしょ。」

 

「何が言いたいの?」

 

「忘れてるつもりなら言ってあげるわよ。」

 

石田さんが早乙女さんを睨みつけながら言った。石田さんはまだ何か話していないことがあるようだが、それはいったい何なのか私にはわからない。

 

「こいつのノートを織斑から預かって渡せって言ったのは、早乙女よ。」

「……………。」

 

「どういうことだ?」

「なぜかは知らないけど早乙女は鬼咲を目の敵にしてて、あたしや朱音を利用して鬼咲をいじめるように仕向けたのよ。この女がしらばっくれたことで今わかったことだけどね。」

 

どうして、早乙女さんが私を……?私は少なくとも早乙女さんには何もしていないはず…………。いや、やっぱりどこかで私が知らないうちに………。

 

 

「そんな話はあなたがねつ造したものと憶測にすぎない。私はいじめに加担などしていないし、鬼咲さんのノートのことも一切関わってない。」

 

「そうか。そこまで白を切るなら、おまえの言う決定的な証拠を見せてやろう。おまえが自白するつもりなら出さなかったものだが、仕方あるまい。山田先生。」

 

「はい。」

 

 

山田先生は机に置いてあったPCを起動させた。映し出された映像には早乙女さんと私がいた。場所は屋上だったのでいつのものかすぐにわかった。

 

 

私が、死のうとした日だ…………。

 

映像には早乙女さんが私に何かを言っている様子が淡々と流されていく。音声はないけど私には言われたことがわかっていた。いまでも恐ろしく思えてくるほどに………。

 

早乙女さんは去っていき、私はそこで崩れ落ちていた。先生たちは映像を切って、早乙女さんのほうに向く。

 

「先ほどのノートのことではないが、この日、鬼咲は屋上から飛び降りた。その時は織斑が止めたが、もしいなければ鬼咲もこうしてここにいなかった。話は全て聞いた。聞いたうえで言うぞ。早乙女、おまえは鬼咲を死に追いやろうとしたのだぞ。それは殺そうとしたも同然だ。」

 

「……………………………………。」

 

「鬼咲がお前に何かしたというのか?たとえそうだとしても、そんなことは許されない。覚えておけ。」

 

「………………………だまれ。」

 

「何?」

 

「何も事情を知らずに好き勝手能書きをを垂れる馬鹿どもが。私はその女が許せないんだよ。」

 

今までにない口調と表情で早乙女さんは先生に反論した。なにより、彼女が私を許せないと言ったことに、私は驚いた。

 

「許されることではなくても、私はそいつが憎い。今でも死んでしまえばいいと望んでいる。この場で殺してやりたいと思っている。おまえさえいなければ、あんなことにはならなかった。」

 

「あんなこと?いったい、何の話をしている。」

 

「それすらも知らずにのうのうとしていた無能共に説明してあげる義理はない。どのみち、退学は免れないのなら………。」

 

早乙女さんは、紙とペンをだし、文字を書いた。そこには………………。

 

「退学…届。」

 

「私はあなたの人生を奪えなかった。でもこれであなたは満足なんでしょう?こうやってまた、他人の人生を奪えて。これでもうここにはあなたに仇なす人間は消えるのだから。」

 

「…………………………。」

 

私は、人を傷つけてしまう………。早乙女さんも、私が傷つけてしまった人のひとりだった。私をいじめていた理由は、誰かのためだったのだろう。私はそんなふうにはできない。まわりには誰もいないから。私は、やはりもう………。

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな!!!」

 

織斑くんが立ち上がって早乙女さんを怒鳴った。

 

 

「誰かのためだろうと、なんだろうと、鬼咲さんを自殺させるまでいじめたおまえが何言ってんだ!!いますぐ鬼咲さんに謝れ!!」

 

「織斑くん……。」

 

「なぜあなたが彼女にここまで肩入れするか理解しがたい。女であることを使って焚き付けたの?そうまでして陥れたかったの?」

 

「やめろ二人とも。早乙女。その退学届を受理するのは時間がかかる。よってお前たちの処分は追って伝える。もう戻れ。」

 

そう言われた3人は部屋から出て行った。でも私は、心が晴れやかにはならなかった。あの3人はおそらく退学になるであろう。だけど、さっき言われたことがずっと心に残ってる。私は…………………。

 

 

 

「私は、ここにいていいのかな。早乙女さんの言った通り、私は彼女たちの未来をつぶしてしまった。それが私をいじめ続けていた人でも……。私もやっぱりここにいちゃいけないのかもしれない。だから先生。私も………。」

 

「鬼咲。」

 

織斑先生が私の言葉を遮る。先生を見るとその顔はいつものようなとげとげしい表情ではなく、とても穏やかだった。

 

「おまえはもう、一人で抱え込み考えるような立場ではないはずだと私は思っている。同じクラスの生徒に聞いてもいいし、私たち教師をあてにしても構わない。だが、本当にやりたいことを決めるのはおまえ自身だ。それを忘れないでくれ。」

 

「先生………。」

 

「…………それと、今までおまえの苦しみを理解できずに申し訳なかった。おまえがそんなにも思いつめていたこと…。気づけなかったで済まされる問題ではなかった。そのことを謝罪する…………。」

 

「わたしもです…………。鬼咲さん、ごめんなさい…………。」

 

「だ、大丈夫ですから。先生方、どうか顔をあげてください。」

 

二人とも頭を下げて謝ってきた。私は戸惑いながらも顔を上げるよう説得する。

その後私たちは寮へ戻った。

 

 

 

 

 

部屋には織斑くんと私だけ。

 

「織斑くん。私は、どうしたらいいと思う……?私は今まで必要とされなかった人で、どこにも居場所なんてなかった……。最初は、ここへ来てもやっぱりそうだと思ってた。けど、いまはわからないの。先生たちはああ言ってたけど、私は…一体………。」

 

 

私自身が迷っていたのかもしれない。ここに居てもいいのか。あるいはここは私がいていい場所ではないとこか。

 

結局のところ、私は誰かに答えを求めることしかできない。こんな私に、私自身に嫌気がさしてくる。信頼できるこの人に、迷惑をかけたくないのに…。

 

 

 

 

 

 

「おれは居てほしいと思ってる。」

 

 

「え?」

 

「おれは鬼咲さん、いや、よみさんがここに居てほしいと思ってるよ。他の人たちがどう言おうが、おれは居てほしいと思ってる。」

 

 

「………………。」

 

「でも、それを決めるのはさっき千冬姉が言った通り、自分自身が決めることだ。よみさん。改めて聞くけど、君はどうしたいんだ?」

 

「私は……。」

 

 

 

もう、答えは決まった。

 

 

「ここに……居たい。許されることなら、居ていいのなら、私はここで織斑くんと一緒にいたいよ…。もっと、あなたと色々なことを話してみたい……。楽しいと思えることを探したい…。だから……だから私は……!」

 

私は想いを話した。

 

 

これが私の答え。新しい選択の一つ。

 

 

それを織斑くんのおかげで見つけられた。

 

 

「そっか。けど、また泣いてるじゃないか。もう泣かなくてもいいのに。」

 

「グスッ…ごめんなさい…。だって………。ううん、ありがとう。織斑くん。」

 

 

 

こんな私を、助けてくれて………………。

 

 

 

 

 

 

 

結局あの三人は退学して、他に私をいじめていた人もその例外ではないように学園を去っていった。それ以来、私に対するいじめはほぼ無くなってた。これでもう私は十分だった。

 

痛く、つらく、帰れる場所もなく、助けてくれる人もいなく、何もなかった今までが変わっていった。

 

 

 

あれから1年が経ち、私は変わらずIS学園に通い続けている。

その間、色々なことがあった。2人の転校生が来たり、臨海学校に行ったり、学園祭があったりと、楽しいと思えることがあって私は幸せだった。

 

       

そのことを、あの人に伝えて改めてお礼を言ったけれど、どうしてだかそれ以来よそよそしくなってしまった。何か悩みでもあるのかな?と思ったので、近いうちに相談に乗ってみようかと思う。

 

 

 

ふふ、迷惑じゃなければいいけれど。

そう思いながら教室に入っていき、あの人がいる席に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

私は、この選択をして良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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