蒼の彼方のフォーリズム~虹色のコントレイル~ 作:strike
もう一つの方が終わってないのに何やってんだと言う感じではありますが、唐突に書きたくなってしまったのです……。
こちらの作品はは初の1人称です。
見てておかしい所があれば遠慮無しにご指摘ください!!
よろしくお願いします。
それではお待たせしました。
プロローグのスタートです
視界一面の青―オールブルー―
お父さんが見せてくれたその景色に見惚れ、空を飛ぶ鳥達に憧れるのにそう時間は掛からなかった。
僕がアンチグラビトンシューズ、通称グラシュと出会ったのはそんな時だ。
グラシュとは目には見えない反重力子の薄い膜、『メンブレン』を発生させて体に纏う事で宙に浮くことができ、移動の原理としてはリニアモーターカーがよく例に挙げられる。
N極・S極の代わりに重力・反重力が使われていると思ってくれればいいと思う。
まぁ、実際には僕も原理についてはよくわかっていないのだけれどね……。
まだ一般化されていないので飛ぶことのできる飛行区域に制限はあるけど、その中なら自由な飛行が可能になる。
それでも、空に憧れを抱いていた僕がその話を聞いた時には大変だったものだ。
憧れの空を自分の力で飛ぶことができる、その事で頭が一杯になり興奮が収まらなかった。
何度も親にグラシュの話をした。
グラシュを開発した人は天才だとか、グラシュを使えば移動手段としてもっと便利になるだとか……。
子供の未成熟な頭で、考えられる限りのグラシュの美点を上げ続け、話し続けた。
大人からしてみれば当たり前でくだらない話だったのだろうけど、僕の両親はそれをニコニコしながら聞いてくれて。
そんな僕は、年齢制限が外れたと同時に父親にねだってグラシュを購入し、その日に講習を受けて早速空を飛んだ。
その時の気持ちは一生忘れることは無いと思う。
自分の体が嘘みたいに軽く感じ、ふわっと浮き上がる。
体験したことの無いような奇妙な感覚と共に足が地面から離れ、気が付けば僕は歩く人達を見下ろしていた。
その時の高さで言えば5m程だったので大したことは無い高度だけれど、僕からしてみれば初めて味わう空に、嬉しさ・楽しさ・感動、色んなプラスの感情が渦巻いて行くのが分かった。
それからというもの、僕は暇があればすぐにグラシュを履いて楽しい気持ちの一心で空を飛び続けた。
自由に空を駆け、飛び回る楽しさを知り、もっともっと飛び回りたい。
僕は空を飛ぶことができるようになって、とても嬉しかったし、楽しかった。
世界中の皆に飛ぶことの素晴らしさを叫んで伝えたいくらい。
それは間違えようの無い事実だ。
でも……、その時点で既に僕は心の何処かで物足りなさを感じていたのかもしれない。
その感情は月日が経つに連れて大きなものになっていった。
飛ぶだけじゃ物足りない、もっともっとこの空を満喫し尽したい。
この時、やっと僕はとても運が良い人間であるのだと理解した。
だって、僕が本気で欲していたものが突然目の前に現れたのだから。
それが、小学校高学年の夏。
僕は出会ってしまった。
綺麗なコントレイルを描き、美しく飛ぶ中性的な顔立ちをした同い年くらいの子供に。
その子は、僕の知らない飛び方をいっぱい知っていた。
見ているだけで心を奪われるような、そんな綺麗な飛び方。
でも、その子の表情は何かを振り切ろうとしているような……とても真剣でとても寂しそうなもので、僕は気が付いたらその子に声を掛けていた。
「君、すごく綺麗に飛ぶんだね!! ねぇ、僕にその飛び方を教えてよ!!」
「……誰? まぁ、別にいいけど……」
そっけなく答えたその子との出会いが、僕、
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「あの~、各務先生?」
「ん? どうした?」
僕の姿をニヤニヤしながら見ているのは久奈浜学院の先生であり、今日から僕の生活等の面倒を見てくれることになった各務葵さん。
……言ってしまえば保護者みたいな人だ。
僕の両親は数年前に事故で他界してしまったため、本州に住む母方の叔母の養子として引き取ってもらったのだが、色々と事情があって1人でこの島、『久奈島』に帰って来た。
久奈島とは日本の南、南洋のさらに南に位置する約30にも及ぶ島々で構成される四島市の中で大きな四島の1つ。
元々は無人島だった島々も今ではグラシュの普及によって簡単に行き来がしやすくなり有人島が増えて、FCが盛んであると有名な市だ。
久々の久奈島の風景や空気はとても懐かしくて少し感動を覚えたのは最近の話。
今は、学校の近くにマンションを借りて1人暮らし中なのだが、1人暮らしでは何かあった時の対処に困るだろうという事で、ここに居る間は遠い親戚にあたる葵さんに面倒を見て貰う事になったのだ。
まぁ、僕の家庭内事情は機会があればまた詳しく説明しようと思うので、今は置いておき、そんなことよりもまず僕は目の前の人に言いたい事がある。
それは……
「何で僕が
「いいじゃないか。 久奈浜学院の制服、似合ってるぞ?」
葵さんは間髪入れずにとてもいい笑顔でそう言って来るが、こっちとしては堪ったものではない。
「似合ってるって、僕は男ですよ!!」
「う~ん。 見た目は完全に女の子に見えるが……希、本当にお前……」
「男です!!」
葵さんが次の言葉を発する前に僕は言葉を遮って強調する。
何度も言うけど、僕は男だ。
確かに僕は他界した両親の言い付けで髪は黒髪のストレートで腰まで伸ばしているし、体格も男性からしてみれば盛ったとしても、華奢としか言いようがない。
顔立ちは中性的な感じで声変わりも未だに…………あれ?なんか目から汗が止めど無く溢れて来る。
……もうやめよう。
言っててすごく悲しい気分になった……。
「それにしても希は昔から変わらないな。 女性から見ても少し羨ましくなる様なその姿は……これで胸がちゃんとあれば……」
「葵さん!!」
「あはは、悪い悪い」
僕がこんなに言っても葵さんはどこ吹く風。
昔ここに住んでいた時に何度か葵さんとはあった事があるのだが、その度に僕をからかっては今みたいに楽しそうに笑うのだ。
こういう時は僕が大抵諦めるしかないのだけれど、今回ばかりはそうはいかない。
なぜなら、今、僕達は久奈浜学院で転入手続きをしており、書類関連はもう提出済み。
つまり、久奈浜学院で過ごすための制服の採寸中だ。
ここで、諦めたら僕の学院生活は……確実に破綻する!!
「悪いと思うなら悪ふざけは終わりにして、ちゃんと男物の制服を用意して下さいよ……」
そう僕が呟いた途端、目の前の葵さんは何故か目を見開いて僕を見つめている。
え? なんか僕おかしなこと言った? いや、言って無い筈。
だって、どう考えても僕の言葉の方が正論だよね?
そんなことを考えていたら、葵さんは僕の予想の遥か斜め上を行く言葉……基、爆弾を落とした。
「お前、聞いてなかったのか? 兵藤 希は女生徒として久奈浜学院に転入するんだぞ?」
「…………え?」
僕が女生徒として転入?
男なのに?
久奈浜学院って女子高だったっけ?
いや。そんなことは決してない。
だって、転校するときに貰ったパンフレットに共学って書いてあったし、何よりさっきグランドで男子生徒が久奈浜のジャージ着て部活してたもん。
「既に学院側には話を通してある。 確かにお前は男だが、お前の……いや、私達の目的を果たすためにはこの方が良いと判断した。 きっとあいつもこの姿の方が印象に残るだろうしな」
「う、嘘……ですよね? 葵さん?」
僕は、心の底から嘘であってくれと神に祈りを捧げながら葵さんの言葉を待つ。
が、発せられた言葉は悪魔の囁きだった。
「悪いな、希。 本当の事だ。 この2年間しっかりやれよ? ああ、それと他の生徒にバレでもしたら大変な事になるから、その点だけは気を付けてくれよ?」
完全に頭が回らない。
だって、何の理由があって僕が女装したまま学校に通わないといけないの?
いや、確かに僕は目的があってここに来たけれど流石にそれとこれとは話が違うと思う。
しかもバレたら、退学どころじゃ済まされないかもしれない。
どうして?
その言葉が頭をぐるぐる回る。
でも、結局僕が女装して学校に通わなければならない事実は確定な訳で……
「ぼ……」
「ぼ?」
僕の呟きにどうしたのかと、顔を覗き込んでくる葵さん。
でも、今の僕にそんなことを気にしている余裕は無かった。
僕が言いたいことはただ一つ。
「僕は男なんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」