蒼の彼方のフォーリズム~虹色のコントレイル~   作:strike

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本日2度目の投稿です!!
先程は言い忘れましたが、2つの小説を書いて行くことになるので、多分こちらの投稿は遅めになってしまうと思います。
なるべく早い更新を心がけますのでどうぞよろしくお願いします。

では、第1話スタートです!!


第1話 君のコーチをすることになった

あの地獄の採寸から数日後、一学期の途中から僕は久奈浜学院の生徒となる。

僕が手続きを終えてから少しの間時間が経ってしまったのには少し事情があり、葵さんの話によると僕の他にも転入生が居るらしいので、その人の準備が整うのを待つ必要があったのだ。

主に葵さんの手間が省けるという理由で。

 

「はぁ……」

 

初登校と言う記念すべき1日を迎えた今、本来ならこれから始まる新しい日々に心躍らせ、期待と不安の入り混じった独特の感情に入り浸るのが普通の転入生だと思う。

だけど、今の僕はそんな感情を持てるはずも無く、むしろ不安と憂鬱さで登校初日から登校拒否にでもなってやろうかと思う程、足取りは重かった。

 

「女の子はすごいなぁ~。 こんな格好で良く人前を歩けるよね。 内腿はスース―するし、少し風が吹いたらスカートの中見えそうになるし……」

 

完全に他人事のように1人で呟く。

多分もう分かってると思うけど、僕は女子用の制服を着て登校している。

しかも、葵さんから受けた指令は相当念入りなもので、色々とこの数日間でやらされた。

慣れない女の子の下着を付けて胸にはパッド何枚も入れて誤魔化し、服の着替え方と女の子特有の作法?みたいなものも教えて貰った。

メイクの仕方は分からなかったからそのまんまだけど。

確かに目的のためだし、事情を聞いて仕方ないとは思ったけど……。

何か大事なものを無くしてしまった気がする……。

 

「はぁぁぁ」

 

というより、僕は男なんだし自己紹介の時点で確実にバレるよ。

確かに女の子っぽいとは言われるけど、絶対に違和感は感じる筈だ。

あれ、これって別の意味で大変じゃない?

男だってバレたら、確実に問題になっちゃう!?

どうしよう!!

やっぱり無理だって、葵さんに言いに行ったほうがいいんじゃ……。

そうだよ。

今日は初日だから職員室に行かなきゃいけないし、そこでちゃんと説明すれば葵さんも分かってくれるはず!!

 

「それじゃ2人とも行くぞ」

「はい!!」

 

と、思っていた時期もありました……。

職員室について早々話を付けようと切り出そうとしたんだけど、そのタイミングでもう1人の転校生である倉科(くらしな)明日香(あすか)さんが現れ、話は中断。

頃合いを見計らって話を聞いてくれるのかと思いきや、倉科さんを連れて教室へ向かう始末。

完全に回避不可能となってしまった。

どうにかしないと、教室に入った時点でバレる!!

何か、何か手立ては……

 

「あの~、あの~!!」

「は、はいっ!!」

「きゃわ!!」

 

急に近くで大きな声を出されて僕が飛び上がって返事をすると声を掛けた人も何故か同じように飛び上がっていた。

その人物をよくよく見てみると、さっきまで葵さんの隣を付いて行っていた倉科さんがいつの間にか僕の隣に移動していたようだった。

 

「ゴ、ゴメンナサイ!! 驚かせてしまったみたいで……」

「いえいえ、こちらこそ急に声を掛けてしまってゴメンナサイです」

 

お互いに一言謝って終わるのかと思いきや、倉科さんは自分が悪いと譲らず、今の原因は完全に僕にあるので僕もまた、自分が悪いと何故かお互いに延々と謝り合うと言った不思議な光景が続いていた。

だが、それは唐突に終わった。

葵さんのストップでは無く、僕のささやかなミスによって。

 

「いやいや、僕がボーっとしてたのが……」

「え?……僕?」

 

……あ、やっちゃったぁぁぁぁぁ!!!!

これ不味いよね!?

完全にバレちゃったんじゃない!?

倉科さん、なんかすっごく不思議そうな顔してるし!!

おかしいよね、女の子が僕なんて!!

ほら!! そんなこと考えてる内に倉科さんの表情が見えなくなっちゃったし、体もプルプル震えてるよ!!

これ女の子の格好して転校しようとしてる僕に怒ってるんだよ!!

マズイって!!

何か言い訳を……

 

「可愛いです!!」

「………………へ?」

 

え~と、倉科さんは今なんて……?

いや、多分僕の聞き間違えだよ。

だって、僕男だよ?

それが女の子にバレないなんてことあるはずが……

 

「とっても可愛いです!! 私、『女の子』が僕って言うの初めて見ました!! それ、可愛いと思います!!」

「え~と。 あ……あり、がと……」

 

バレて無かったよ!!

いや、バレない方が良いに決まってるのは分かってるんだ。

だけど……だけど、僕は男なんだよ~~~!!

女の子1人にすら気づかれない僕って……泣いてもいいのかな……。

 

「私、倉科明日香です。 今日から転入するので友達も少ないし……だ、だから、え、え~と、私と、お友達になってくれたら嬉しいなぁ……なんて」

 

僕がそんなくだらない(僕にとってはとても重要な)事を考えている間に倉科さんは僕に向かって勇気を振り絞るように言葉を発した。

倉科さんは少し恥ずかしそうにしながら僕の方を見て何かを伺うように視線を送って来る。

そんな姿を見て、今まで気が付かなかったけれど僕は純粋にその子を可愛いなって思ってしまった。

綺麗な桃色の髪に、ショートサイドテールと言うのだろうか横に纏めて結んでいる髪が良く似合っている。

それに、誰がどう見てもスタイルは良いし、顔立ちも整っている。

僕はそんな彼女に少しの間見惚れてしまっていた。

 

「あ、あの~?」

 

何時まで経っても僕からの返事が無い所為で倉科さんは不安そうな表情で僕を上目遣いで見上げていた。

うん。 やっぱり可愛い……

って、そうじゃなくて返事しなきゃ!!

 

「ゴメンね。 またボーっとしちゃってた。 むしろこちらからお願いしたいくらいだよ。 僕なんかで良ければお友達になって下さい」

「はあ~っ、良かったぁ。 突然返事が無くなってしまったので、迷惑なのかと……」

「そ、そんな事無いよ!! 僕は兵藤希。 よろしくね倉科さん」

「はい!!」

 

倉科さんはとても元気な声で頷き、笑顔を見せてくれた。

そんな倉科さんと他愛のない話をしながら笑い合っていると僕もいつの間にか穏やかな気分になれて、気が付いたら僕達がこれから通う事になる2年C組の教室の目の前まで辿り着いていた。

…………って、あれ?

辿り、着いた?

着いちゃったよぉぉぉぉぉ!!!

倉科さんと話が弾んで、何も考えてなかったぁぁぁ!!

いや、でも倉科さんにはバレなかったんだし……

いやいやいや、だってクラスの全員に僕の姿を見られるんだよ?

誤魔化せるはずないって!!

どうしよ、どうしよ!?

 

「あの、兵藤さん? なんか顔色が悪いみたいですけど……どこか悪いんですか?」

「い、いえ、ただ、少し不安になっちゃって……」

 

主に、僕の女装がバレないかどうかだけど……。

僕は内心の焦りをあまり表に出さないようにそう答えると、僕の気持ちなんて知る由も無い倉科さんは急に僕の右手を両手で握りしめた。

 

「え? 倉科さん?」

「大丈夫です!! 私も一緒に居ますから。 1人では不安でも2人なら何とかなると思いませんか?」

 

突然の倉科さんの行動に驚いて手を引っ込めそうになったけど、あまりに真剣に心配してくれる倉科さんに悪いとそのままの状態で固まって彼女を見つめる。

すると、倉科さんはとてもいい笑顔を浮かべて僕を励ましてくれた。

それ自体はとても嬉しいんだけど……2人だったら絶対比較されちゃうじゃん!!

片方はとても可愛い転校生で片方は女装男子だよ!?

倉科さんの純粋な好意が、今はとても痛いよ……。

 

「はいはい、全員席に着きな」

「あ……終わった」

「……?」

 

葵さんが扉を開けて生徒たちに声を掛けて行く姿を見て、僕は思わず呟きを漏らした。

それが聞き取れなかったのか、倉科さんは頭に?マークを浮かべているような表情をしていた。

因みに手は既に離してもらっている。

流石に転校初日の挨拶が美少女と手を繋いでなんて、絶対変な噂になるし……。

何より、最悪彼女に迷惑を掛けてしまうかもしれない。

これからの生活を楽しみにしているようなとても期待した瞳を僕の所為で濁らせたくないしね。

なんか倉科さんと話したおかげか、不安はまだ残るけど、覚悟みたいなものは決まったっぽい。

後でそれとなくお礼を言うとしよう。

 

「さて、今日の連絡事項だが、今日からこのクラスに転入生が入ることになった。 2人とも入りなさい」

「「はい!!」」

 

来た……。

もう後には引けないんだ。

後は、今の僕にやれることをやるだけ……!!

 

「今日からこのクラスに入ることになった、倉科明日香と兵藤希だ。皆、よろしく頼む」

「倉科明日香です。 内地の方から来て、まだわからない事も多いですが、ぜひ、色々と教えて下さいね」

 

そう、倉科さんが挨拶をすると拍手と共に少しざわざわとし始めた。

まぁ、無理も無いだろう。

こんな美少女が転校生なんて、僕が向こう側にいても何か話をしてしまうだろう。

さて、今度は僕の番だ。

 

「皆さん、初めまして。 兵藤希です。 僕も倉科さんと同じく内地の方からやってきました。 昔、こちらに住んでいた事もありましたが、幾分前の話ですので分からない事が多いと思います。僕にも色々と教えてくれると嬉しいです。 よろしくお願いします」

 

ど、どうだろう?

……拍手が起こらない。

もしかして失敗したの!?

ほら!! そんなこと考えてる内に皆の表情が見えなくなっちゃったし、体もプルプル震えてるよ!!

きっと女の子の格好して転校しようとしてる僕に怒ってるんだよ!!

って、あれ?

これ何処かで見たような光景……

 

「「「「「ボクっ娘来たぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

って、待てぇぇぇぇ!!!

さっきより悪化してるじゃん!!

何、ボクっ娘って!?

何で知らないジャンルで僕、括られてるの!?

ってか、結局女の子として認めちゃってるし!!

これだけの人がいるのに誰一人疑いの目をしてないよ……。

もう流石に泣いてもいいよね?

男なんだよ?

僕って男なんだよ?

ううっ…………

 

「あ、あの……」

 

僕は決死の想いで誤解を解こうとしたのだが、それは葵さんの言葉によって遮られてしまった。

 

「お前達そこまでにしておけよ? と、そう言えば……村山?」

「申し訳ありませんでしたぁ!!!」

「「「「申し訳ありませんでした!!!」」」」

 

謝るの早くない!?

ただ、名前呼ばれただけだよね?

え?なにこれ?

ほら、隣の倉科さんなんて目を真ん丸に見開いて固まっちゃってるよ?

多分僕も大して変わらないんだろうけど……

 

「分かればいい。 それじゃ、倉科と、兵藤は空いてる席に座ってくれ」

「「は、はい」」

 

先程までの感情は何処へやら……。

目の前の訳の分からない状況のせいで、さっきの悲しみがどっか行っちゃったよ。

葵さんの言葉に僕達はただ頷く事しかできず、少し離れていたが丁度2つだけ空いていた席があったのでそこに腰を下ろした。

 

「よし、ではホームルームはこれで終わる」

 

そう、生徒たちに声を掛けると葵さんは教室を出て行った。

って、いつまで土下座してるの君達……

未だに起き上がらない生徒を見て僕は若干引き気味だった。

そこに、葵さんがひょこっと教室の中に戻って来た。

 

「っと、そうだ晶也。ちょっと」

「はい?」

 

葵さんの呼んだ人の名前を聞いて僕はサッと目を向ける。

すると、晶也と呼ばれた男子生徒は葵さんの元まで行くと何か話を始めた。

そして、何度か難しい表情をして最後にため息を付くと葵さんと別れて、男子生徒は僕の方へ向かって歩き出していた。

……って、僕!?

いやいや、たまたまこっちに向かってるだけで僕に用事なんか……

 

「え~と、兵藤さんだっけ?」

「え? あ、はい」

 

あったみたいです。

 

「兵藤さんは昔ここに住んでいたって言ってたけど、グラシュは使った事、無いんだよね?」

「…………へ?」

「え?」

 

男子学生の言葉に僕は疑問符を浮かべて固まっていると、同様に男子生徒も疑問符を浮かべて固まってしまった。

それから数秒が経ち……

 

「あの……」

「ゴ、ゴメンナサイ!! 少しだけ待っててもらってもいいですか!? 僕、少し用事を思い出しまして!!」

「え、ああ……」

「直ぐに戻ります!!」

 

僕の勢いに少し引き気味になっていた彼を置いて僕は一直線に目的地へと向かった。

 

「どういうことですか!?」

「どういうこと、とは?」

「恍けないで下さい!! あお……各務先生!!」

 

息を切らしながら、職員室にある葵さんの席に行くと僕は息を整える時間すらもったいないとばかりに葵さんに詰め寄った。

しかし、葵さんは相変わらずゆったりとコーヒーを飲み、笑みを浮かべるだけだ。

 

「僕がここに来た理由は晶也にもう一度空を飛んでもらうためだってことは知っているでしょう!?」

「ああ、もちろん」

「だったら、何で僕が飛んだことが無いって事になってるんですか?」

 

葵さんはコーヒーカップを机に置いて座ったまま僕を見上げると、その眼付は急激に別のものになった。

 

「……っ!!」

「あいつ、晶也が今のお前をすぐに受け入れられるとは思えない。 少しづつ触れあい、分かり合い、その上での方が良いと思ったからだ」

「各務……先生」

 

しかし、それは一瞬でいつもよりも儚く、寂しげな瞳に変わってしまっていた。

 

「分からないんだ。 あいつの気持ちが……どう接すればいいのか……無理に引き込めば壊れてしまいそうで」

「だから、まずはクラスメイトとして、という事ですか?」

「……」

 

葵さんはそれ以上何も言わなかったがそういう事なのだろう。

僕と晶也との接点を作り、その先は彼との状況を見つつこちらから動いて行く。

僕がFCの選手だと知れば、距離を取られてしまうかもしれないから……。

全てではなくとも、葵さんの意図を少し汲み取れた僕は先程の非礼を謝って職員室を後にした。

そして、教室に戻ると僕の机の周りには晶也以外にも人が集まっていた。

 

「なる程、じゃあ明日香ちゃんは、すっかりグラシュの虜になっちゃったわけなんだ」

「ええ、そうなんです。 日向さんやみさきちゃんと一緒に昨日から飛ばせてもらって」

 

倉科さんと晶也、他にも2人ほどいるかな?

ってかみんな女の子だし……。

何時の間にモテるようになったんだろうか……。

あ、言っておくけど、う、羨ましくなんてないからね!?

と、そろそろこっちから話しかけないと、きっと待ってたんだもんね。

 

「ごめんなさい。 急に席を外してしまって……」

「ああ、兵藤さん。 用事は大丈夫だったの?」

 

晶也は全然気にしてない雰囲気で気を使って貰ってるのがわかる。

今はそれに甘えることにしよう……。

 

「はい。 大したことでは無かったので……」

「あんなに慌ててたのに大した事無かったの!?」

「え、え~と」

 

僕の言葉に反応したのは、青い髪のロングで頭にカチューシャを付けていたムードメーカーみたいな印象の女の子。

名前がわからずに少し困った様子を見せると、それだけで察してくれたのかそれぞれ自己紹介を始めてくれた。

 

「ああ、自己紹介まだだったね。 私は青柳 窓果。よろしくね」

「俺は、日向 晶也。 よろしくな」

「はい。 よろしくお願いします。 日向さん、青柳さん。あ、後、慌ててたのは僕が忘れてたからで、用事自体は大した事、無かったんですよ」

 

僕は2人の自己紹介を聞いて頷くと、先程の青柳さんの質問に答えた。

すると、青柳さんは人差し指を立てて横に振る。

 

「チッチッチ。 ま・ど・か。 女の子同士なんだし名字で呼ぶのって他人行儀っぽいでしょ? それに敬語は無し。ね?」

「え、え~とでも……まだ会ったばかりなのに慣れ慣れ過ぎないかなと……」

 

女の子同士っ……。

っていうより、女の子の名前呼ぶってそんなのハードル高すぎだよっ!!

 

「そんなぁ~。 私、希ちゃんと仲良くなりたいから名前で呼んで欲しいのにっ……」

「それなら、私も明日香って呼んで下さい!!」

「え、え~っと……」

 

青柳さんは完全にわざとなんだろうけど、涙目で訴えて来るし、倉科さんは倉科さんで期待したキラキラした目で見つめて来るし……。

どうすればいいの!?

この状況!?

……え~い、悩んでいても仕方ない。

僕は男だ!!

女の子の名前を呼ぶくらい、やってやる!!

 

「そ、それなら……まどかさん、あすかさん」

 

そう言って少し2人の表情を伺ってみると、何故か2人とも顔を赤くしてこちらを見ている。

……ホントに何故?

そう思っていると、2人はこそこそし始め、次に顔を僕の方に向けた時には元に戻っていた。

う~ん。なんだったんだろう?

 

「名前で呼んでくれるのは嬉しいんだけど……さんは嬉しくないかなぁ」

「なんか遠い感じです……」

「え~!? そ、そんな事無いよ」

 

これで終わっていたと思っていただけに少し戸惑ってしまう。

だが、2人はしょぼんとした表情で僕を見つめ、更に求めて来た。

これはもう覚悟するしかないのだろう……

そう思って僕は大きく深呼吸をした。

 

「すぅぅぅ、はぁぁぁ。 窓果、明日香。 これからよろしくね」

「「うん!!」」

 

2人は最高の笑顔で頷くと僕に抱き付いてきた。

って……ちょぉぉぉっと待ってぇぇぇぇ!!!!

なんか、腕と、胸の所に柔らかい感触が……

って、感動してる場合じゃないって!!

バレる、これは流石にバレるって!!

 

「わわわわ……」

「あれ~? 希ちゃん、顔赤くない?」

「うふふ。 希ちゃんはやっぱり可愛いです!!」

 

ホントにヤバいよ!!

なんか、一層押し付けられてる感じが……

って、だから!!

2人ともゴメン!!

僕は2人に心の中で謝って、腕の中から抜けるとそっと2人の体を押してその場から離れた。

 

「あ、あれ?」

「居なくなっちゃいました」

「え~と、少し恥ずかしいからそう言うのはやめて欲しいかも……」

 

2人は好意でしてくれたのに傷つけてしまうかもしれないと思いながらも、バレてはここに居ることができないと思い直し2人に向かってそう告げた。

すると、2人は笑顔になって

 

「大丈夫だよ……。やってる内に恥ずかしくなくなるって」

「そうです。そうです。 希ちゃんぎゅ~ってしてるとすっごく安らぐんです!!」

「僕は安らぎグッズじゃないよ!?」

 

そう言って押しせまって来る2人に一種の恐怖を感じながら後退りしていると、2人の首根っこを掴んで引き摺って僕から離してくれる人物が。

 

「日向……君?」

「大丈夫か? ほら完全に怯えてるじゃないか。 転入初日から悪い印象持たれたくないだろ? 離れた離れた」

「「は~い……」」

 

やっと解放された……。

僕が安心してほっと息を吐くと、晶也が僕の方に近づいてきた。

なんか用事あるんだろうか?

 

「ゴメン。 実は兵藤さんに伝えておかなきゃいけない事があるんだ」

「伝えておく事?」

 

さっきの騒ぎですっかり忘れていたけれど、そう言えば職員室に行く前に僕に話しかけていたんだった。

まぁ、話の流れから大体の想像はできる。

 

多分それは、ここで生活をしていくためのスタートライン。

多分それは、これから始まる新しい生活のスタートライン。

そして……多分それは、僕と晶也にとって、FCを始めるための2度目のスタートラインになるんだろう。

 

「俺が今日から……飛行指導員として君のコーチをすることになった」

 

 

 

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