死亡確定のユージオくんになったので取り敢えず剣術を極めてみた   作:鬼城

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遅くなってすみません。
入学式とか色々面倒なことは片付いたので投稿します!!

今回はベルクーリと北の白い竜となっていますがあまり出てきません。というよりほとんど出てきません。
それではどうぞ!


2話 ベルクーリと北の白い竜

あー、暑い。

そんな事を考えながらユージオは斧を振る。もうすぐ正午になるというのに午前中の分の仕事が終わらない。

それでもなんとかヤル気を振り絞り斧を振る。

 

「よんじゅう…はち!…よんじゅう…きゅう!…ごじゅうっ!」

 

50回振り終えたらその場に倒れこむ。

いい具合に影ができていてさらにいい気候だ。なぜ、こんな天気のいい日にみんな働くのか?疑問に思う。そんな馬鹿らしいことを考えながらもユージオは目を瞑った。その様子にキリトは苦笑し声をかける。

 

「おい!寝るなよ?」

「寝ないよ。ただ気持ちがいいなぁって」

「それは…分からんでもない」

「でしょ?それで、どうだった?」

「あぁ、いい音が出てたのは50回中6回だったな」

「…はぁ6回ねぇ」

 

一年経っても斧を幹の中心に当てるのは難しい。それでも一年前に比べて斧の重さは軽くなったように感じているユージオだが…それでも難しいらしい。

 

「まぁ、僕たちが頑張ったところでギガスシダーを倒せるわけないんだけどね」

「そうだなぁ。それに変化が対してないからやりがいもないしな」

「ははっ、やりがいがあったら少しは楽になるのかな」

「そりゃーな。……まてよ?確認する方法があるじゃないか!」

 

いきなり大きな声を上げるキリトにユージオは顔を歪ませる。当のキリトはイタズラを思いついた子供のように愉快に笑って幹の目の前に立つ。その様子からユージオは察したようで立ち上がった。

 

「ステイシアの窓を見る気?」

「まぁな」

「むやみに開くなって言われているのに、キリトはしょうがないなぁ」

「もうむやみにじゃなくてたまにだよ」

 

キリトがそう言うのは既に二ヶ月前にもステイシアの窓ーーステータスのようなものが載っているものを開いたことがあるからである。

この世界では天地の間に存在する遍くものには、動く、動かざるに関わらず、生命を司る創世の神ステイシアによって与えられた《天命》が存在する。虫や草花にはごくわずかの、猫や馬にはそれよりずっと多くの、人には更に多くの命が与えられている。

それらの命はひとしなみに、生まれ出てからある時点までは増加し、頂点を迎え、ついで減少していく。やがて命が尽きたとき、獣や人は呼吸を止め、草木は枯れ、岩は砕ける。

その天命の残量を、神聖文字で記したのが《ステイシアの窓》である。相応の神聖力を持つ者が、印を切り対象を叩くことによって呼び出せる。

そんな超がつくほど便利な物…それこそ《ステイシアの窓》である。もちろん、ギガスシダーの大きさであれば天命値は途轍もなく大きくユージオ達がどれほど頑張っても削れるのはたったの2程度のもの。日によっては2もいかないだろう。

ギガスシダーの天命は20何万ほどあるのだ。その内のたったの2となればギガスシダーを倒すのは難しいと理解していただきたい。

 

「いいか、開くぞ」

 

キリトはそう言うと前に突き出した左手の人差し指と中指をぴんと伸ばし、残りの指を握った。そのまま空中に、這いずる蛇のような形を描く。そして、印を切った指先で、キリトはすかさずギガスシダーの幹を叩いた。

キンという澄んだ音が小さく響く。

と同時に現れたのはステイシアの窓。その薄い紫色に光る四角い窓には、直線と曲線を組み合わせた奇妙な数字が並んでいる。古代の神聖文字であるそれを、数字だけならユージオは読むことができる。

と言っても、転生者であるユージオはその数字を知っていたため他の人と比べて早くに覚えられていたということになる。

そんな神聖文字で書かれてあったギガスシダーの天命値はどれほど前と比べて変わったか。とユージオはその窓を覗く。

 

「23万5542か」

「あー、先々月はいくつだっけ?」

「たしか……23万5590くらい」

 

そのユージオの言葉を聞いてキリトは明らさまに落胆する。次いで、わしゃわしゃと黒い髪に指を立てる。

ユージオは予想できていた。と言わんばかりに落胆するキリトを見つめる。その目はこう言っていた。

ーーざまぁ

と。確かに、ざまぁなのであろう。

ステイシアの窓を勝手に見て落胆したのは勝手なキリトである。天命値がそれほど変わらないということはキリトでも分かっていたはずだ。それを数字で見てしまったらそれが本当のことだと分かってしまう。夢は壊さないでおくべきものだ。

 

「たった、50!二ヶ月こんだけ頑張って、23万なんぼのうちのたった50!これじゃ一生かかっても切り倒せねーよ!」

「いや、キリトが倒せるという夢を現実的に壊したんだよ?」

「え?ユージオそんな夢もってたのか?」

「は?」

「お前、俺がギガスシダーを倒そうと頑張っているたびに夢のないこと言ってたけど、実際は俺と同じで倒そうと頑張ってたんだな!」

「あはは、死ね」

 

なんなんだ、コイツは。

と思いながらも黒い笑顔をキリトに向けるユージオ。

その様子にキリトは「ちょっとー、ユージオくん?本気じゃないよね?」とユージオの右手に握られている斧を見ながら後ずさる。

 

「そんなことしたらいくらキリト様でも死んでしまう」

「知らないの?主人公はこういう時死なないんだよ?」

「主人公?なんの話を……」

「ん?こっちのはなし」

「そ、そうか。話をしよう!きっと分かりあえる!」

「MU☆RI」

 

そして、そのまま斧を振り上げる。

もちろん、キリトに向かって。

その斧を振り下ろすと同時にユージオは斧から手を離し、キリトの脇を狙ってくすぐりを開始する。

途端に沸き起こるのは苦しげな笑い。

 

「うぎゃっ、や、やめ…」

「キリト君はここが弱いのかな?いや、ここかな?」

 

なんてユージオは言いながら取り敢えず色んな所をくすぐりまくる。キリトはこれ程というほどに笑い転げうまく呼吸もできていない。

(しょうがない。これくらいでやめてあげよう)

 

「こらーーっ!また、さぼってるわね!!」

 

丁度、ユージオがくすぐるのをやめた瞬間にそんな声が聞こえた。その声の主は確認するまでもなくアリスだ。

アリスの怒る声に二人は首をすくめてから、おそるおそる振り向く。

少し離れた場所にお昼ご飯が入ってあるのだろう籐籠をもった金髪美少女ことアリスが少し顔を膨らませて立っていた。

 

「や、やぁアリス、今日はずいぶん早いね」

「ぜんぜん早くないわ、いつもの時間よ」

 

ユージオがおそるおそる声を掛けると少し怒った声でそう返してくるアリス。それにあははと苦笑いを浮かべる二人。

 

「そ、そうだ!午前の神聖術の勉強どうだったの?」

「まぁまぁね」

「そうか……。アリスはやっぱり凄いね!ぼくだったらついていけないや」

 

そう、アリスはこの村の中では天才と呼ばれる部類に入る。だからこそ、彼女は神聖術の才能をもっと伸ばすため、シスター・アザリアから個人教授を受けている。

それでも、一日中勉強するわけではなく午後は家の手伝いなどの働きをするのだ。そうでなくては厳しい冬を村人全員が無事に越すのが難しくなる。そして、彼女がここに来た理由も午後の仕事に入るものだった。

 

「そうかしら?ユージオは勉強の方は出来ていた方だと思うわよ?」

「はは、ありがとう」

 

それもこれも前の知識があったお陰だよ!それがなかったら俺は生きていけなかったよ!クソ野郎!などと心で叫びながらユージオはお礼を言う。

 

「さてさて、話は変わるけど仕事は終わったの?」

「あぁ、もちろんだ。な?ユージオ」

「そうだよ。僕たちはそんな不良じゃない」

「へぇ、まぁいいわ。早くお昼にしましょう。今日は暑いから、悪くなっちゃう前に食べないと」

 

そう言いながらアリスは籐籠から次々と料理を出していく。

どうやら今日は、塩漬けの肉と豆の煮込みのパイ詰め、チーズと燻製肉を挟んだ薄切りの黒パン、数種類の干し果物、朝絞ったミルクのようだ。どれも美味しそうなのだが……すべてのものに天命があり数値化されているこの世界では食べ物をあまりゆっくり食べることができない。もちろん、それは夏のみのことだが……。

そして生憎様、今は夏でありしかも料理たちは陽光を浴びている。これにより、天命が一気に奪われていっているのは確実だろう。

天命が尽きた料理はすなわち《傷んだ料理》で、一口でも食べれば、よほど頑強な体をもつものでない限り腹痛などの症状を起こす。所謂あれだ。消費期限が切れた食べ物を口にするようなものだ。

だが、この世界に賞味期限はない。消費期限はあるが賞味期限はない。とても重要なので二回言う。賞味期限は美味しくいただけるまでの期間だ。つまりその期限がないこの世界ではいつまでが美味しくいただけるのかが分からないのだ。天命が尽きてなくても美味しくなかったりしたらそれこそ意味がない。

 

「うわ、ミルクはあと十分、パイもあと十五分しか保たないわ。走ってきたのになぁ……そんなわけだから、ちょっと急ぎ目で食べてね。でもちゃんと噛まないとだめよ」

 

すぐさま料理の天命を確認したアリスの言葉を聞いてユージオとキリトは大きく切ったパイにかぶりついた。

なるほど、アリスも料理の腕は少しずつだが上がってきているようだ。アリスの料理に関しては賞味期限とかは関係ないのだろう。とか変なことを考えながらも口を動かし続けるユージオ。しばらくして何個か料理を食べたあとに一息をつく。

 

「ーーお味はどうだったかしら?」

 

アリスはずっと気になっていたらしく、真剣な顔持ちでユージオとキリトに感想を求める。それにユージオは真面目に答えた。

 

「うん、今日のパイは美味しかった。だいぶ腕を上げてきたね」

「そ、そうかしら。わたしはもう一味足りないような気がしたけど」

 

最近になってだがユージオも褒め上手になったものだ。

アリスも褒められて嬉しいのか顔を赤くしている。だからこそというべきか気づいてない。ユージオはこう言ったのだ、今日のパイは!もではなく()とーー。つまり、前のは美味しくなかったと遠回しに言っているのであるコイツは。

 

「それにしてもーー」

 

そんなユージオの失敗にも気づかずにキリトは呑気にマリゴの実を摘み上げながら言う。

 

「せっかくの旨い弁当なんだから、もっとゆっくり食べたいよなぁ。なんで暑いと弁当がすぐ悪くなっちゃうんだろうなぁ」

「ついに、頭が暑さにおかされたの?夏は暑いんだからすぐに食べ物が腐るのは必然……あぁ、保冷剤とかあったらいいのかな」

「保冷剤?なんだそれ」

「え?あぁ、なんでもない。氷みたいなもののことだよ」

 

一瞬、冷やっとする。

彼らは日本語を話すので時々こういう風に常識語を言ってしまうユージオ。この村に保冷剤をつくれといっても理解できないだろうし第一そんな技術がない。だからこそここでは知られていないのだ。

 

「つまりだ。夏は暑い、冬は寒い。これらの違いは気温だ。つまり、夏でも寒けりゃ食べ物が長持ちするんだ。なら……寒くすれば、この時期だって弁当は長持ちするはずだ」

「じゃあ、あれだよ。氷とかで冷やしたりして籐籠の中の気温を下げればいんじゃないかな」

「それだ!」

「それだ!じゃないわよ。どこに氷があるっていうの?今は夏で氷なんてそうそうないわよ?」

 

アリスに正論を言われてしまいキリトも黙るかと思ったが彼の目にはなんとも言えない光が宿っていた。

こういう目をするキリトはロクでもないことしか考えない。そして、同時に嫌なことがあったことしかないという事実を考える。

 

「はぁ、キリト。今度はなにを考えてるのさ」

 

しばらくの沈黙。

そのあとにキリトは何か思いついたのか瞳を輝かせた。それにユージオは嫌な予感を感じながらキリトの次の言葉を待つ。そして出てきたのは……

 

「なぁ……ずっと昔、ユージオの爺ちゃんにしてもらった話、覚えてるか?」

 

ユージオの祖父からしてもらった話は沢山ある。そのなかで氷と纏わる話は一つだ。その答えにユージオは一瞬でたどり着きため息をつく。

ーーあぁ、嫌な予感が当たった、と。

そして、キリトがその話の題名を言おうと口を開きその口は確かにこう言った。

 

「ベルクーリと北の白い竜」

 

と。




というわけで、読んでくださりありがとうございました。

意外にユージオ君が頭が良くなってるというね。

それでは次回もお願いします!
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