死亡確定のユージオくんになったので取り敢えず剣術を極めてみた 作:鬼城
今回は洞窟に行くまでの話を書きました!
はやく、ユージオくんの戦いがみたいという方すみません!
プロローグをはやく終わらせれるようがんばります!
『ベルクーリと北の白い竜』
それはこのルーリッド村では誰もが聞いたことのあるだろう武勇譚。簡単に言うとベルクーリという剣の使い手が川に流れていた氷を見つけ川沿いを上流へと歩くと巨大な洞窟が口を開けていた。その中で色々な危険を乗り越え一番奥の大広間までたどり着く。そこにいたのは、なんと人界の東西南北を守護すると伝えられる巨大な白竜だった。
大小無数の財宝を守るようにして眠っていた白竜。その財宝の中にベルクーリは一つの美しい長剣を見つけて欲しくなりーーー。その後は察してほしい。
つまり、キリトは氷を取りに行こうと言っているわけだ。しかし、例の洞窟がある場所は人界の終わりたる《果ての山脈》であり、そこに行くのは掟で禁じられている。
「あの話だと、洞窟に入ってすぐのところにでっかいツララが生えていたって言ってたろ?そいつを二、三本折ってくれば、実験にはじゅうぶん間に合うはずだ」
「なるほど……アリスは、言うまでもないか」
アリスもキリトと同じように瞳の奥に光を宿している。これは面白いと感じたかどうかは知らないがアリスもこの意見には賛成なのだろう。そもそも、こうやって二人の相手をするから悪餓鬼とか言われるユージオ。そしてもともと悪餓鬼なキリト。村からは悪餓鬼なのに悪餓鬼で通っていない天才少女アリス。この三人が集まれば悪いことしか起きないのは当たり前である。
だからなのかユージオはもう慣れたというように小さく溜息をついた。
「ーー悪くない考えね」
「ですよねぇ、で?今度はどんな言い訳を?」
「言い訳じゃないわよ。確かに、子供だけで北の峠を越えるのは村の掟で禁じられているわ。でも、よく思い出してちょうだい。掟の正確な文章は、【大人の付き添いなく、子供だけで北の峠を越えて遊びに行ってはならない】ってなってるのよ」
「………」
その言葉にユージオは絶句した。
まさかっ、こいつ掟を全て覚えていらっしゃる!?と、さすがにビックリしすぎてーー。
そして、キリトを見てみるとキリトは、そうなのか?みたいな驚いた顔をしていた。
『掟』ーー正確には《ルーリッド村民規範》は、村長の屋敷に保管されている厚さ2センチほどの古めかしい羊皮紙綴りだ。教会の学校で覚えさせられるその掟は今や日常的に聞く言葉としてユージオの頭に染み付いてしまっている。それほど、この村では掟が大切なのだ。だが、それでも一字一句間違わずに言えるわけではない。しかし、アリスは正確に暗記しているらしい。
(まさか、村の掟の二倍は分厚い帝国基本法も……、アリスのことだから更に倍はある“あれ”も完璧に覚えてそう……)
もちろん、ユージオはだいたいは覚えている。帝国基本法はもちろん更に倍はある《禁忌目録》という央都セントリアに巨塔を構える《公理協会》が定めた絶対の法すらもーー。
ユージオは既に赤ちゃんの時から字が読めていたので、情報収集のために家にあった本を片っ端しから読み、読み、読みまくり覚えてしまったという素晴らしい頭脳の持ち主である。転生様々なユージオ君です。なんて言われても文句は言えまい。
「いいこと?遊びに行ってはならない、これが掟の禁ずるところよ。でも、氷を探しに行くのは遊びじゃないわ。お弁当の天命が長持ちするようになれば、私たちだけじゃなく、麦畑や牧場で働いてる人たちみんなが助かるでしょ?だからこれは、仕事のうちと解釈するべきだわ」
いやー、素晴らしい考えですね☆と言わざるおえないほどの言い訳。このアリスの言葉にキリトも少しの躊躇いがあった目はいまや消え去り腕を組んでうんうんと首を縦にふる。
「うん、そうだな、まったくその通り」
「怒られても僕は知らないからね」
「いんだよ。怒られたらバルボッサのおやっさんがよく言う、命令されたことだけやるのが仕事じゃない、手が空いたら自分でやることを探して働け!という言葉を引き合いに出せばいんだよ」
「あー、確かに」
バルボッサ家は、ルーリッドの村で一番広いムギばたけをもつ富農だ。その現在の家長であるナイグルおじさんはユージオとしては苦手なタイプだった。だからこそキリトの意見には激しく賛成だ。
これで、奴に「ざまぁ」と言えることだろう。
「……でもさ、もう一つあるよ。果ての山脈に行くのは…《禁忌目録》でも禁じられてるだろ?それはどう言い訳するんだよ」
「だから言い訳じゃないってば!」
《禁忌目録》ではその名の通り《してはいけないこと》がひたすら列挙されているものである。《教会への反逆》や《殺人》《窃盗》といった広範な禁忌に始まり、年間に穫れる獣や魚の上限数。学校では必ず禁忌目録を教える、教えないということは認めない。というような細かなものまで…その数は軽く千を越える。
その禁忌目録を破り犯罪を犯す人は殆どと言っていいほどいない。何故だか此処はそういうことをまず考える人がいないのだ。所謂、理想社会である。
まぁ、とにかくそんな禁忌目録に書いてある果ての山脈を越えるなという法はとてつもなく重要なことなのか一番最初の方に書いてあった。《果ての山脈》の向こうに存在するという闇の国ーー神聖語で言うところの《ダークテリトリー》があるかららしいが、ユージオにはなんで行っては行けないのかはよく分からない。たとえダークテリトリーにはゴブリンなどのモンスターがいるとされている。そして、そのモンスターと戦っているのが公理協会の整合騎士様だ。とするならばモンスターは倒せるということだ。ならば倒せばいい。なに、簡単なことである。
とは言っても、禁じられている。それを破ろうなどとユージオは考えたことはない。それに、破ろうとも思わない。
だというのに、今は破る一個手前まで来ていることにユージオは不安を覚えていた。
「じゃあ、なんだっていうのさ」
「本当にユージオは五月蝿いわね。目録にはこう書いてあるのよ。第1章3節11項、『何人たりとも、人界を囲む果ての山脈を越えてはならない』……山を越えるっていうのは、当然『登って越える』ってことだわ。洞窟に入るのは含まれないわよ。だいたいーー」
長い、とにかく長い。
まだまだ、アリスの言い訳ーーもとい論破は続く。
それをユージオはため息をつきたい気分で聞きながらアリスへ心の中での拍手を送る。それほどまでに素晴らしい意見だったと言っておこう。
「分かったって」
「よし!じゃあ、ユージオもオッケーだしたことだし次の休息日は白竜……じゃない、氷の洞窟探しだ!」
「(本音…最後まで隠せよ)」
「なんか言ったか?」
「あはは〜なんにもイッテナイデスヨ?」
「じゃあ、お弁当は保ちのいい材料で作ったほうがいいわね」
キリトはノリノリで楽しみ、アリスもノリノリで意気込む。
それにユージオもノリノリでーーというわけではなく。
一人、懐かしそうに空を見上げた。
◆◇◆◇◇
7の月3回目の休息日。
今日は予定通り氷をとりにいくことになっていた。キリトたちとの待ち合わせより1時間ほど早い時間、ユージオは北のルーリッドの門の周りにある木々を見上げて自分で手間暇かけてつくった木の剣をしっかり握る。その剣は何かを斬れるほどの斬れ味はもちろんない。
その剣を腰に構える。深く息を吸いこみ、剣を鞘から抜くようにイメージする。そしてーーフッと息を吐きそれと同時に剣を抜く。
曰くそれは、抜刀術と呼ばれるもの。
普通は抜刀術は刀でするものである。それをユージオは剣で再現した。その速さは刀でやるものと比べても遜色ない。
そして、その剣は木の幹へと吸い込まれるように軌道をえがきコンッーーという澄んだ音と共に当たる。
もし、これが本物の剣だったらその木は切株となっていたことだろう。これが、ユージオが長年の修行で身につけた力だった。
「ふぅ……まだだな〜」
それでも満足のいっていないユージオはブンブンと剣を振りながらもため息をつく。
(もっと…もっと速く)
そして、剣を次は前に構える。そして、振り下ろそうとした時、後ろから声を掛けられた。
「よっ!ユージオ!」
急に掛けられた声にビックリしてユージオは剣を地面に落とす。
「あっ…」
するとその剣は地面に落ちてすぐすると消えていった。おそらく天命が尽きたのだろう。
振り下ろそうと力を込めていたときに落としたのだ。普通に落とすよりもダメージは大きい。
それに、長年使ってきたのだ。そろそろ天命値がなくなるころだったというのもあるのかもしれない。
「……なんかすまん」
「いいよ。そろそろ新しくしようと思ってたから」
「ほ、ほんとうか?」
「本当だよ。それに剣を練習していてもほとんど意味がないからね。別に怒るほどのことじゃない」
「それもそうか……もし、青薔薇の剣があったらお前にやるよ」
「今日は氷をとりにいくのが目的でしょ?」
「そうだけどさぁ」
『青薔薇の剣』はベルクーリと北の白い竜に出てくる剣だ。
確かにユージオとしては非常に興味のあるものだが、すでに剣士になるという夢は絶たれている。
でも、まぁ、見れるのなら見てみたい。などと考えながら今度はアリスの到着を待つ。
集合時刻はすでに過ぎているのでアリスは遅刻ということになるのだが、女の子だから準備があるのだろうと納得し、ユージオはアリスが来るだろう道の方を見た。
そこには霧があるだけでアリスの姿はやはりまだない。
「それにしても、アリスは遅いな」
「そうだね。まぁアリスのことだから来るとは思うけど…」
「来なかったらシラル水を奢ってもらうさ」
「うーん、それは叶わないと思うけど」
それにしても、いい天気になりそうだな。
とユージオは空を見上げる。
その空は朝でもわかるほどに蒼く澄み渡っていた。とても本当にいい天気。だけどもなんだか胸騒ぎがする天気。
何も起こらなければいいなと考えていたところでユージオの目にアリスの金髪の髪が映る。
「来たみたいだよ。キリト」
「おっ!本当だ」
タッタッタとリズミカルに走ってきたアリスにキリトとユージオは笑って言う。
「「遅い!」」
「あんたたちが早すぎるのよ。まったくいつまでも子供なんだから」
何故か、時間通りにきたユージオとキリトが惨めにみえてくる言葉をアリスは言う。
それにユージオは理不尽だ。と感じながらアリスが渡してきた籐籠を持つ。どうやら、荷物持ちは男の役目らしい。
キリトも水筒を持たされている。
それを確認したアリスは進路方向へと向き直り、腰をかがめて足元から草穂を一本摘み取る。
そして、ビシッと指先を彼方にそびえる岩山に向けて元気よく叫んだ。
「それじゃ……夏の氷を探して、出発!」
それを見てユージオは苦笑する。
ーーどっちが子供だよ、と。
アリスが言ったことを踏まえて。
しかし、そういったアリスも可愛いので仕方がないのかもしれない。やはり可愛いは正義だ。などとバカなことを考えながら軽い足取りで進むアリスの後をユージオもついていった。
それでは次回は洞窟探検だー!
次回もよろしくお願いします!