死亡確定のユージオくんになったので取り敢えず剣術を極めてみた   作:鬼城

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本当に久しぶりの更新です。

皆さんも忘れていらっしゃるかと思いますが、アニメの方も始まるので頑張ってみようと思います。

忙しいので二週間に一回は更新できたらいいなと思ってます。


5話 洞窟にあるもの

入った瞬間に気づいたことがある。

ーー中ってやっぱり暗いよね。

そんな当たり前の事に今気づいたユージオは焦っていた。何故かと言えば、近くには川が通っているのにもかかわらず中は暗くて足下が見えない。お分かりだろうか。そう、川にドボンという未来が予想できてしまうことに。

 

「ねぇ…このまま進まないといけないの?」

 

後ろにいるはずであろう二人に向けてそう声をかける。が、一向に返事は聞こえない。暗闇の中を一人(ボッチ)で歩いている感覚である。

 

「おーい、聞いてる?」

 

そう投げかけてみるもユージオの声に応える者はいない。流石にこれは変だと思って後ろを振り返ってみる。するとどうだろうか。ずっと後ろの方に光源が揺れているのだ。つまり、後ろにはさっきから本当に誰もおらず、後ろと言っても本当にずっと後ろの方で光が揺れているということだ。

 

「あっれぇ?」

 

これにはビックリなユージオ(鈍感)。

すぐさま、二人の方へ走り出し肩で息をしながらもようやく着く。この時に、川にドボンしなかったのは運が良かったとしか言いようがないが。

 

「先行き過ぎよ。光もないのに、どうやって進むつもり?」

「あ、確かに」

 

呆れたように言うアリス。

その正論に、ユージオは恥ずかしそうに、はにかみながらも肩を竦めさせる。その姿はまさに命乞いをしているウサギのよう。

そんなユージオだからこそ、キリトに馬鹿にされることがあるのだろう。

 

「ハッハッハ、まったくユージオは」

「んん?キリトは気付いたのかな?」

「いや、まったく!!!」

 

オイ。

そんな突っ込みを心の中で盛大にしながらも、ユージオはキリトの肩を軽く叩いた。

こいつは何で自信満々にケンカを売ることができるのだろうか。そんな疑問を持った表情でキリトを見ていたユージオにアリスは光る草を持たせる。

 

「ほら、行くわよ」

「え、僕が一番前?」

「当たり前じゃない。なにせ、早く進みたいようだし?」

「いや、さっきのは二人が声をかけてくれないから!」

「掛けようとしたさ。でも、先々行くお前を見てたら…声掛けにくくて」

 

いや、声掛けろよ。

またも心の中でツッコミをするユージオ。

本当にどこまでもキリトはヤンチャらしい。ユージオは溜息をつきながらも、まだ先の見えない暗闇へと歩き始める。

どうせ、アリスの決定は覆らないのだ。一番前を歩くしかない。流石に女の子を先に行かせるわけにもいかないことだ。

それでも、ユージオの胸には不満が残る。

 

「そういえば、洞窟に入ってすぐのところにツララがあるって言ってたけど……ないね?」

 

仕返しだ。と言いたげな皮肉をユージオは背後のキリトに向けて言う。

 

「言ったっけ、そんなこと」

 

当然、惚けるキリト。

 

「自分の言ったことに責任を持ちなよ」

 

苦笑いをしながらもユージオは言う。

ユージオとしては、ツララがあってもなくてもどうでもいいのだ。ただ、キリトの言葉が嘘か真かを言及したいだけなのである。

 

「もう、二人とも煩いわよ。ユージオ、灯を近づけて」

「いいけど…」

 

アリスのおかげか静かになった二人。

ユージオはアリスに灯を近づけると、アリスはその灯に向かって息を吐き出した。冬のように霧になって出て行くその息に感嘆を漏らす。

 

「洞窟の中だから当たり前だけど……やっぱり、気温が下がってるようだね」

「洞窟の中だから当たり前?…ユージオ、洞窟に入ったことあるの?」

 

思わず零したその言葉にマズイと口を閉じるがもう遅い。

やはり、ユージオは馬鹿であるらしい。

アリスの言及にユージオは「あの、えっと…その」と口篭る。そんな彼に流石に怪訝な目を向けるキリト。

 

「いや、これは。そう!本で見たんだよ!!ソルス神の加護が届かないから気温が低いらしいよ!」

 

適当にそんなことを言うユージオ。

それでも、二人の疑いの眼差しは変わらない。

 

「それに、いつどうやって、僕が洞窟に行けたって言うの?」

 

必死な言葉にキリトは確かにと考え始める。が、アリスはそれでも疑問が拭えないようだ。

洞窟について書いてある本なんて村で見たことがなかったからだ。

 

「ま、いいわ。ユージオは博識だもの」

「まぁ、ね」

 

博識と言えるのかは分からないが、確かにこの場においては博識とも呼べるのかもしれない。

ユージオとしては、まだ使っていい言葉とダメな言葉の区別が分かっていない状態である。

 

「じゃあ、はやく進もうぜ。肌寒い理由もわかったことだし」

「そうだね。多分、氷もこの奥にあるはずだ」

 

そうと決まれば、すぐに先頭を歩き始めるユージオにアリスは苦笑して「そうね」と背後を歩く。

後はもう、ひたすら歩くだけだった。

途中、白龍がいたらどうする?だとか、帰りの話だったりとか色々したが、その間に何かあったわけでもない。

平穏そのもので、最初に怖がっていたのが嘘みたいだ。

 

「もうそろそろかな」

 

そう予想を立てた時、ぱりん、という音がユージオの足元から響く。あわてて、光を近づけて思わず声を漏らした。

 

「あ、氷だ」

 

腰を屈めて氷を確かめるアリスとキリト。

光を反射してキラキラと光るソレは確かに氷のようだった。そんな事実に三人は思わず笑みを漏らす。

 

「この先にもっとあるはずだ」

 

ユージオは光を振って周囲を照らすと一気に走り出した。

もちろん、足を滑らせるなどということはない。二人共が付いてきていることを確認しながらユージオはさらに奥へと進む。

 

「あ……なんか、いっぱい光ってる」

 

ユージオの持っている光を反射しているのだろう氷を見つけた瞬間だった。その方向へ向かって進むと突然、岩壁が消え、広い空洞が姿をあらわす。

観光名所にもなり得そうな幻想的な空間。

ほぼ、円型に湾曲する周辺の壁は氷で覆われているようで今もキラキラと光っている。

さっきまでの寒さと比にならない冷気に肩を震わせたユージオは息を吐いた。

 

「……綺麗」

 

ようやく呟いた言葉はそんな単純なものだった。

巨大な池、湖ともとれる床面。その水面はすべてが氷でまさに氷の冷蔵庫である。

何もかもが氷なのだ。ユージオだって、こんな幻想的な空間を生前に見たことがない。

 

「……これだけ氷があったら、村中の食べ物を冷やせるわね」

 

まったくもって、その通りだ。と、ユージオも頷く。

まだ、奥にも続いているらしい洞窟にキリトが行こうというので三人で更に歩く。

もしかしたら、本当に伝説の剣があるかもしれない。そう思うとユージオの足は奥へ奥へと向かう。

もう、誰にもこの三人を止めることはできないだろう。

 

「…なんだよこれ…」

「どうしたの?キリト」

「なんなんだよ、これ!」

 

急に声を上げたキリトにハテナを頭に浮かべる。

隣にいたアリスと顔を見合わせて、すぐにキリトの方へ向かうと其処には黄金に輝く宝物とそれを守るようにある大きな骨。

恐竜の骨みたいだ。なんてユージオは考えながらも、その骨に近づいた。

 

「白竜の……骨?」

 

小さく聴こえたその声に、ユージオはやっと状況を把握する。

白竜なんて、日本でもよくあるお伽話の存在だと心の中では思っていたのだろう。だが、確かに、ユージオの目の前にある骨は竜のようだった。

 

「死んじゃったの…?」

「ああ……。でも、ただ死んだんじゃない」

 

そう、ただ死んだわけではない。

ユージオは骨の中でもっとも迫力のある頭蓋を撫でて、骨の傷を見た。流石にユージオでも気づくその傷は、剣の傷のようだった。

 

「骨に剣の傷が沢山、刻まれてある」

 

ユージオは二人の方に向き直って言う。

竜を殺す。RPGものだと最強として位置づけられる竜種。簡単に出来ることじゃない。

 

「あぁ、だから。この竜を殺したのは人間だ」

 

ひゅっと息を呑むような音とともに、アリスは何かに気づいたのか顔を怖がらせる。

ユージオに至っては、倒した人間凄いな、なんて軽い感想を抱いている。そんな彼の心情を知ることなく、アリスの顔は深刻に影っていった。

 

「……整合騎士…?公理教会の整合騎士が白竜を殺したの?」

 

恐れに満ちたその囁き声に、ユージオは馬鹿な考えを打ち払った。

ここはRPGといったゲームのような世界ではないのだ。プレイヤーではなくNPCといえるAIだけがいる世界。

倒した人間凄いなという考えは馬鹿まる出しである。問題は、なぜ倒され、誰が倒したか。そもそも倒せるほどのプレイヤー(AI)なんて整合騎士ぐらいしかいないのだ。

しかし、善性の象徴であり、人界の守護者である白竜を整合騎士が殺すなんてあり得るのだろうか。

 

「……解らない」

 

キリトの言葉に、同じように頷く。

公理教会を疑ったことなどないが、確かに、日本と比べると統治が完璧すぎる。つまり、なにか裏があってもおかしくはない。

よく考えてみれば、なんで気づかなかったのか解らないぐらいだ。

 

「っ、イタッ」

 

不意に、右眼が疼く。

しかし、それも一瞬のことでユージオは首を傾げた。

 

「もしかしたら……闇の国にもすごい強い騎士がいて、そいつが白竜を殺したのかもしれないし……。でも、そんなことがあったなら、今までに一度くらい闇の軍勢がはてな山脈を越えて来たりしててもおかしくないはずだ。少なくとも、宝を狙ってのことじゃないみたいだけど…」

 

それもそうだ。

意外にも頭が回るキリトに驚きながらも、状況整理を行っていく。

しかし、自分達に出来ることなんて一つもない。とユージオは溜息をこぼした。

 

「それにしても、竜がいるなら、青薔薇の剣もありそうだけど…」

 

キョロキョロと辺りを見渡しながら言う。

そんなユージオに、キリトもつられて辺りを見渡し、宝の山に近づいて行く。

 

「お、あったぞ」

 

そう言いながら、引っ張り出した物は白革の鞘と、白銀の柄を持つ一振りの長剣だった。

柄の各所には精緻な青い薔薇の象嵌が施され、まさに逸品である。

 

「うお……めちゃくちゃ重いな……」

 

よろけながらも剣を引きずるキリト。

やはり、剣を装備するにはそれほどの筋力がいるらしい。この世界でそれが必要かどうかは分からないが。

 

「竜を殺した奴はどうして持って行かなかったのかな…」

 

そう零したキリトにあぁ、確かにと考える。

しかし、ユージオにはその答えが出せないのだろう。永遠と思考がグルグル回るだけである。

その間にも、キリトは青薔薇の剣を持ち上げようと奮闘するも見事に玉砕。

 

「…だめだ!!」

「うーん、そっか。宝物もあるみたいだけど…」

「持って行く気にはなれないわ」

 

まぁ、そうだろう。

ユージオもキリトもアリスの神妙な声に頷く。

 

「予定通り、氷だけ貰っていくことにしよう」

 

それならば、きっと白竜も許してくれるはずだ。

少しだけ目を閉じて、手を合わせたユージオはそそくさと氷を集めて、アリスの持っている籐籠へと入れていく。

何故だか、早く帰りたいという気持ちが強く出てきているのだ。ここにきて、ヘタレ心が発揮されたのだろう。

 

「よし、早く帰ろう。時間も気になることだし」

 

そう言えば、アリスもキリトも氷集めをやめて立ち上がる。

キョロキョロと周りを見渡して。

 

「えっと…帰り道は……」

「「「こっち」」」

 

見事に三人バラバラである。

随分、話し合った結果。ユージオが割った氷があれば当たりという事だったので、それぞれ見て回ることに。

まずは一番近い出入り口から。

 

「俺はあっちだと思うけどなぁ」

 

そう未練がましく零すキリトを無視して、足速に進んでいく。

しかし、何故だか嫌な予感がして立ち止まったユージオは首を傾げた。朝と似たような感覚だ。

 

「どうしたの?ユージオ」

「いや、割れた氷なんてないし。別の道に行って見ない?」

「もうちょっと先だろ……あ、ちょっと、静かに」

 

不意に、キリトが唇に指を当てたのでそれに従って二人は黙る。

静かになったことで、自然の音が洞窟内に響き渡る。そんな中で、確かに風の音が聴こえた。

 

「あっ……風の音?」

 

アリスの呟く声に頷いて、それでも行くのをためらってしまう。

なにせ、嫌な予感はまだ収まっていないのだ。別にユージオは自分の勘が当たる方だとは思っていない。厨二病って訳でもない。

ユージオは思い出す。生前、結衣が「アリスが法を侵しちゃってね。これからが楽しみだ!!きっとユージオ君とキリト君が助けてくれるんだろうなぁ」と言っていたことを。

 

「外が近いんだ」

 

小さく言ったユージオの言葉に、アリスは出口に向かって歩く。

その足取りは軽やかに見えた。

 

「でも、夏の風があんな音出すかなぁ?なんか…冬の木枯らしみたいな…」

 

怪しむように言うキリト。

しかし、外が近いことには変わりない。嫌な予感がするがここは進むしかないのだろう。

 

「出口だ!」

 

杞憂に終わったのか。

ユージオは漏れ入る光に安堵し走り始める。しかし直ぐにそれは絶望を生んだ。

その光はソルス神によるものではなく赤色の地獄の空による光。緑色の草木はどこにもない。あるのは枯れた土地と剥き出しの黒色の岩肌。

よく考えなかったことを後悔した。ユージオは、その広がる知らない世界を青ざめた顔で見る。

アリスの侵した法とは、つまり禁忌目録の《ダークテリトリーへの侵入》であることだと確信した。

 

「ダーク、テリトリー……」

 

掠れきったキリトの声。

早く逃げろと言う脳内に、しかしユージオの身体は言うことを聞かない。

 

「ダメだ。これ以上、進んだら」

 

やっと、出てきた言葉。

そして震える身体に鞭打って、二人の手をユージオはそっと握った。




読んでくださりありがとうございました!


次回は、来週あたりに頑張りたいと思います
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