いつものリアルで彫金を教えてもらういろは、
八幡の代わりにお客さんの対応をする。
いつものように先輩のお店に顔を出して工房に入れてもらう。
あれからスクールの日じゃなくても工房で彫金を教えてもらう事が多く数点の
オリジナルも作ったりして楽しくやってる。
「ねぇ、先輩ちょっとこれ。」
「んっ、どした一色?」
「このワックスってこんな使い方でいいんですか?」
「うん…いいぞ、上手くなったな、一色。丁寧にもってるとこも後々の出来に
かかわるからこの調子でな。」
「はい、です!」
敬礼して「テヘペロ」しながら小首を傾げウインクね!
「はいはい、可愛いいよ~」
「もぉ~ちゃんとリアクションして下さいよぉ~。」
無視して溶接加工してる先輩を横目にブゥーブゥー言いながらワックス仕上げを
してたらお客様が入って来た。
『ちりぃーん』とチャイムがなり入って来たのは女子大生風で長い黒髪とカジュアルなファッション、スタイルも良くパンツが良く似合うとっても綺麗な子だった。
「いらっしゃいませ~!」
あたしがお店に出てお客様の対応をした。先輩の代わりにちょっと店番やったり
したりしてね。
「今日はどんな物をお求めですか~?よかったら試して下さいね!」
元気良く対応して微笑んでみた。
「今日…八幡は居ないの?」
「えっ?八幡って…」
「店長の事よ、アルバイトさん。」
素っ気なく言われてびっくりしたけど、何なのこの子?先輩の事『名前呼び』って。
「あはっ、少しお待ち下さいね。」
工房に入り一生懸命、溶接をしてた先輩に問いただす。
「ちょっと先輩~、今来ているお客様が先輩に用事なんですって。髪が長く
スッゴく可愛い子です!先輩の事、『八幡』って名前呼びですけど、
どうします?追い返しましょうか?」
溶接してた先輩は顔を上げてやっとこっちを見た。
「ん~?お客さんか?今行くから。」
溶接したばかりの品物の出来を確認しながらエプロンを外し店先に先輩は出て行った。
「いらっしゃい、ご用はなんだった…何だ留美か。」
「何だってはないよ、八幡!」
「久々だな今日どした?大学の帰りか?」
「せっかく来て見たら新しいバイトさんなんか入れちゃって景気がいいこと。
私がバイトしたいって言った時には断ったくせにどう言う事よ!」
「バッカ、お前?家遠いだろが。それに受験前だったし…」
「お前じゃない、留美!」
「せ~んぱい?この子とどう言う関係なんですか?何で先輩の事、『八幡』って名前呼び何ですか?何で先輩も『留美』って名前呼び何ですか?」
「ちょっとバイトさん?私が八幡と話てる時に割り込まないでくれる、
大人しく店番でもして頂戴!」
先輩の顔が引き吊り脂汗をかき出だした。
「あの~君達ちょっと俺の話頼むから聞いてくれる?」
「「話って何よ!!」」
………
「まっ、と言うわけだ。」
「先輩がそう言うのなら信じますけど…」
「八幡が言うのなら分かった…」
怒ってる二人をなんとか宥めて先輩が二人の関係を簡単に説明しながら紹介した。
「留美、覚えるだろ?ほらクリパの演劇でお前が主演を演じた時に主催した生徒会長だった『一色いろは』だよ、俺の高校の時の後輩で今はOLやっててウチのスクールに通ってもらってるお客さんだ。」
お客さん…もっと言い方あるんじゃない?
「どうも…」
「一色、留美を覚えてるだろ?ほら、クリパの演劇で主演をやってもらった当時小学生だった鶴見留美だよ。今は大学生になってるが高校の時に俺が家庭教師のバイトで2年位教えた事があったんだよ。ちょくちょくお店に買い物に来てくれるんだ。」
「へ~あの時の留美ちゃんなんだ。久しぶりね~でも先輩?何で家庭教師まで
やったの?もしかして先輩ってロリコン?」
「あのなお前、偶々偶然派遣された家が留美ん家だったんだよ。まあ、
留美は勉強割と出来たから楽だったけど。」
・・・・・・・
「八幡とは私が小学校時代からの幼馴染みで私のお兄さんみたいなものなの、
私がハブられてる時に助けてくれたのも八幡だし高校の時再会した時は
運命を感じたわ。八幡と私は赤い糸で繋がっているんだって。」
「ちょっと、先輩いいかしら?」
「ハァ〜?何言ってんの留美?」
「なに?事実を言ったつもりよ。」
「まあ、小学校時代に知り合ったのは間違いないが家庭教師で行った時は
ろくすっぽ口も利かないし問題集やってるだけで其の内、飽きてマンガ読んでたろ?」
「うっさいわね、八幡も時間まで一緒にマンガ読んでただけじゃない!」
「いつも何処か遊びに連れてけって、しつこかったな。」
「1回しか連れてってくれなかったくせに。」
「バッカ多いくらいだ。」
「全然少ないよ!最近じゃあ忙しいとか言って連絡もくれないし、
来て見れば工房に女の人連れ込んでるしバイトもさせてくれないし、
酷いよ!」
「あのな〜さっきも言ったけど、留美の家は少し遠いし高校時代は無理だったろ?
一色はあくまでアクセスクールのお客さんだぞ?偶に工房で指導する事が
あるが留美が勘ぐる様な仲じゃないよ。」
「だと良いんだけど……。」
何?この浮気現場で言い訳してる旦那さんみたいな先輩は…それに
あたしの事はお客さんって…そりゃあ、何もないですよ今のところ。
でも、もう少し言い方っ言うもんがあるでしょ?ムカつく!
「あらぁ〜せ〜んぱい!ちょっと酷いじゃないですか、
あたしと先輩の仲ってそれだけじゃないですよぉ!」
「高校で一緒に過ごした時間なんてほぼ毎日じゃあないですか、それに責任とってくれたし
イベントの時とか遅くまで一緒だったしディスティニィーランドも一緒に行きましたよ?
デートだって…きゃ、先輩!」
「ちょっと、責任ってなに八幡…。」
「バカか?一色、お前が一年生で生徒会長になったサポートとしての責任で
生徒会関連の用事をもって奉仕部の部室に押しかけて来てただけだろ?雪ノ下や
由比ヶ浜もいたし俺1人だけじゃないぞ!
それにディスティニィーランドもみんなで行ったんだ!」
「でも、デートは行ったんだ…」
「1回しか行ってない!それも学校で作ったミニコミ紙の市場調査でだ!」
「本当なの?」
「嘘言ってどうする。」
「ふ〜ん、今回だけは勘弁したげる。でも、次は無いから。」
「あのね、2人とも何張り合ってんの?頼むから。」
「だって…八幡が留美の事構ってくれないし。」
「だから、作品展の出品で忙しいから遊んでる暇は無いと何度か
言ったろ?偶に店先で話すのはいいがバイトを雇う程、予算はないから
無理だからな。」
「じゃあ、スクールに通えば八幡に会えるんだ。」
「留美は俺に会うために趣味でも無い事が出来るのか?それにお金も
掛かるぞ?」
「パパに頼んでお金も出してもらうから!」
「そんな金で来てもらっても俺はちっとも嬉しくないな。」
「何で・・・私だとそんなに嫌がるの?」
「留美の意思、自分が無いじゃないか。そんなの俺は嫌いだし
嬉しくもない。」
「そんな、八幡に会いたいだけなのに…酷いよ。」
「駄目だ、相手に合わせるだけじゃ直ぐにボロで出るし面白くも無い。
自分の稼いだお金で自分の為になる事をやるんだ。」
「分かったわ…、八幡がそうしろって言うのなら…。」
「おう、機嫌が直ってくれて良かった。」
「良くなった訳じゃあないから…勘違いしないで八幡の嫌がる事を
しないだけだよ。」
「そうか、済まなかった。」
「ねえ、お茶淹れるから飲んでいって留美ちゃん!」
「一色さん、ごめんなさい…ご迷惑かけました。」
「いえいえ、大丈夫だよ。あたしも最近、先輩に会社の愚痴をグタグタとこぼして
叱られたばかりだから何も言えないの。」
「本当だよ、ほら先輩に聞いてみて?」
「あ〜あったなそんな事が。」
「先輩って愛想がないじゃん?だけど、叱ってくれる時はくれるし優しいじゃん!」
「うん…一色さんも?」
「えっ?………そうかもね。」
「負けないよ…」
「じゃあ、お互いにライバルだね、お互いに頑張ろうね!」
「・・・手強いけど負けないから。」
「あたしも負けないよ。」
二人で八幡の背中を見ながら微笑みあった。
レモンティーの香りの中、コツコツと打つ八幡のハンマーの音が心地よかった。
修羅場じゃ~八幡ピンチ!