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そして、次の日、日が出る少し前のある部屋のベッド、
卯月は悪夢にうなされていた。
「う、ああ、なんで、いやだ・・・」
私が膝を抱えて座っていた。
そして、ハブられ、陰口をたたかれていた。
それがわかった瞬間、胸が苦しくなり、息が荒くなった。
苦しかった。
だから、それが夢だと分かると、早く覚めてほしいと、必死に願った。
すると、起きることができた。
でも、すぐに目を開けるのが怖かった。
「おはよう、うーちゃん」
「え?」
弥生の声が目の前で聞こえた。
目を開けると案の定そこには弥生の顔があった。
でもその顔は横からのぞき込むようではなかった。
本当に真正面にあった。
「や、弥生?その、えっと・・・」
卯月は思わずその状況下から逃れようとしたが、弥生の体が邪魔でそうすることはできなかった。
そのため、せめてものと、横を向いた。
「あー、ボクがやろうとしてたんだけど、弥生と長月に止められてね」
また違う声が聞こえた。
卯月はその方を見てみると、そこには金髪の娘と碧髪の娘がニヤニヤしているのが見えた。
「皐月?長月?え、何で?」
「んー、何のことだかわからないけど、おはよ!」
「卯月、今日から相部屋だ。よろしくな」
二人は卯月の驚いた顔を見て、笑いかけた。
卯月はようやく悪夢から解放されたと悟った。
行き違いになっただけで姉妹艦はちゃんといるのだと、それがわかると、いつの間にか涙が流れ出ていた。
「あ、う、うう、よかった、よかった」
「ちょ、卯月!?」
突然泣いてしまった卯月に弥生は表情を変えた。
余りのことに少し慌てていた。
それに皐月は茶々を入れるかのように口をはさんだ。
「あーあ、やっぱり弥生の顔って怒ってるみたいだからなぁ」
「怒ってなんかないよ」
それに即座に弥生はジト目で返した。
初対面の人なら怯むような弥生の表情も皐月は見慣れているのか、軽く笑ってあしらっていた。
「んー、やっぱりボクが弥生の代わりにやった方がよかったかなぁ」
「いや、そう言う事じゃないだろう。大体私がさせない」
笑いながら言った皐月に長月はいたって冷静に返した。
簡単に返された皐月は少し不機嫌そうに呻くと伸びを一つすると、また口を開けた。
「それで、卯月は大丈夫?」
「え、あ、う、うん、嬉しくて、つい涙が出ちゃったぴょん」
涙をぬぐい、笑顔で卯月は笑った。
その笑顔を見た3人はどことなく安心した表情になっていた。
「卯月が元気になって、よかった・・・」
「弥生、心配かけたぴょん。うーちゃんもう大丈夫ぴょん!」
卯月は着任の時のテンションでそう言った。
そしてまた弥生を抱きしめた。
これには弥生は最初同様慌ててはいたが、その表情はどことなく嬉しそうであった。
「ん~、いいなぁ。羨ましいねえ。ね、長月」
皐月はまるでわが子が巣立っていくのを見ている親のような感じで言っていた。
実際には皐月の方が妹であるのだが。
それに長月は部屋の時計を目にして、返答した。
「まあ、それはそうだが、もうそろそろ朝食の時間だぞ?」
「・・・へ?」
~
4人が食堂に来た時にはもう残っている人たちも少なくなっていた。
そして卯月は姉妹艦3人の前ではいつものテンションに戻ることができていたが、流石に他の艦娘の子もいるとなるとそうもいかないようだ。
そのためたちまち卯月は弥生の後ろへと姿を隠してしまった。
「あー、やっぱりまだダメかぁ。まあ、ここの駆逐艦は協調性に欠ける娘ばっかだからなぁ」
「まあ、確かにな」
皐月と長月の二人は弥生の後ろに隠れてしまった卯月を見て、食堂にいるほかの駆逐艦娘を眺めてつぶやいた。
確かに今いる駆逐艦娘たちは全員一人で食事をとっていた。
「卯月は気にしすぎだと思うぞ。うちの駆逐艦娘でテンション高いのは皐月他少数だからな」
「そ、そうぴょん?」
卯月はようやく慣れてきたのか、弥生の背中から顔を見せた。
その視線で他の駆逐艦娘を眺めた。
そして何かに気付いたようで、視線を二人に戻すと弥生の背中から出ていた。
「た、確かにそうぴょん。曙とか不知火とか、島風とか、いい例ぴょん」
「でも喧嘩売ったりとかはしちゃダメ・・・」
元気を取り戻しつつあった卯月に調子に乗らないようにと、弥生はくぎをさした。
っと、その時、後ろからある二人が歩いてきた。
それに卯月は気付くと、せっかく出てきたのに、再び弥生の背中へと隠れてしまった。
「ま、またうーちゃんをいじめに来たぴょん?」
夕立と時雨は卯月の反応に少し困った顔をした。
だが、そのまま無視して通り過ぎることはなく、それどころか卯月の前へと来た。
「そ、その、昨日のことを謝りに来たっぽい・・・」
「僕たちが嫉妬しちゃって、卯月ちゃんが悪いわけじゃないのに、悪く言ってごめんね」
そう言うと、二人は卯月に向かって頭を下げた。
卯月は予想もしていなかったことに唖然としていたが、すぐに理解したようで、隠れるのをやめ、出てきた。
「別にいいぴょん。二人は実はいい人ぴょん。でも、うーちゃんのことは、うーちゃんって呼んでほしいぴょん?」
「助かったっぽい」
「ハハ、呼び方は考えておくよ」
卯月に許してもらえたと分かると、二人はお礼を言うとどこかへと去って行ってしまった。
「へー、どうして許してあげたの?」
皐月は二人が去っていったのを確認し、もう完全に回復した卯月に聞いた。
「だってうーちゃんはすごいぴょん。嫉妬って言うなら仕方ないぴょん。うーちゃんすごいぴょん!」
「うーちゃん、すごい・・・」
卯月が何故か誇らしげに言うと、弥生も同調していた。
それを聞いた皐月と長月は少し困った顔をしたが、楽しそうにしている姉の姿を見ると自然と表情も笑顔へと変わっていった。
が、4人はある事を忘れていた。
「・・・そうだ、朝食」
「あ、忘れてたぴょん。早く行くぴょん!!」
卯月は弥生の手を引き、駆けだした。
弥生はそれに抵抗するもなく、なされるがままについていった。
そんな二人の姉を眺めて皐月はある言葉をこぼした。
「ほんと、かわいいお姉ちゃんたちだよね」
「お前もかわいい」
長月がすかさずツッコんだ。
皐長が最近気に入っている。
おかげでこうなった。
反省はしている、後悔はしていない。
とりあえずハッピーエンドです。