大惨事世界大戦――重航空巡洋艦出撃――   作:Нае

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すみません。投稿間隔があきまくってしまいました。
また,実はまだ境港から出撃するところまで書きためが進んでいません。

活動報告で書いた

(1) 八月末か九月に再開し、
(2) 次の投稿シリーズではなんとかして主人公が出撃するところまで進めたいと思います

のうち、(1)を優先させる形でとりあえず投稿します。

後書きでこの先しばらくの流れを書いておきます。
ネタバレになりますが、出撃のめどが立たないのは嫌だという方は参考にして下さい。



12.敵か味方か?謎の大型艦

「行ってくるわ」

 

 ミンスクたちが到着する少し前、叢雲は執務室を出、艤装をつけて岸壁に向かった。

 

 表向きの目的は護衛の引継ぎだが、実際に優先する目的は未確認の大型艦を叢雲の目で確かめ、監視することにある。

 

 艦隊がミンスクを連れて帰途についた後、提督と叢雲はミンスクと名乗る大型艦について、送られてきた情報をもとに調べたが、やはり艦型・艦名いずれについても該当する艦は見当たらなかった。

 艦名についてはソビエト連邦白ロシア共和国の首都の名称がミンスクであり、抜錨時やその後の叫び声も――名取たちが聞き取れた範囲でではあるが――送られてきた発音をロシア語として解釈すると納得できる意味を持っていた。「ウラー」については駆逐艦の響が同様の叫び声を上げることが知られており、ソ連艦である可能性は高いと思えた。

 

 ただし要港部の資料で調べる限り、ソ連海軍には、過去において同名の駆逐艦こそ存在してはいるものの、帝政ロシア海軍の時代までさかのぼってもそのような名前の大型艦は存在していない。一時期よりも薄くなったとはいえ、鉄のカーテンの向こう側のことであり、さすがに完成した大型水上艦の存在がこちらに漏れてきていないとは考えづらいが、未成艦であれば名前すら知られていないものがあるのかもしれない。未成戦艦に白ロシア共和国の名前を冠したものがあることはわかっているので、類似の命名基準で巡洋艦か空母に同共和国の首都の名前が付けられたとしても不思議ではないが――――

(結局、『確かなことがわからない』ということには変わりがないな)

 

 その後、航行中の名取からと、対馬海峡警備中の神通から連絡があったが、いずれにも決定的な情報は無かった。

 

(神通も『敵の感じはしない』か……)

 帰投予定日の早朝、役職の点でも実質的な機能の点でも要港部の頭脳である提督は静かに考えをまとめようとしていた。

 

(ミンスクと名乗る大型艦は、典型的な艦娘と敵のどちらとも違っている)

(どちらに近いかと言えばそれは艦娘だ)

 

(しかしながら)

(敵の方が未知の部分が多いし、判っている限りでも敵の方が形態のばらつきが大きい)

 

『これまでのどの艦娘にも無かった特徴を持つ、史上初の特異種の艦娘である可能性』

『これまで見たことも聞いたこともないが、人知れず存在していた敵の極端な変異種である可能性』

を比べて、前者が圧倒的に大きいとは言い切れない。

 

 たとえば江戸時代の印度支那では、日本人に出会う可能性よりも、本国は遠いものの海外進出の活発だった英国人に出会う可能性の方が高かった。それと同様のことが今回起きないとは限らない。

 

(もし万が一、敵による前例にないくらい高度な罠、であった場合)

(それだけのことをして敵が狙ってくるのはたかだか要港部一つの壊滅ではないだろう)

 

 アングルドデッキを持った未知の新型艦はのどから手が出るほど欲しかったし、弥生や神通を含めすべての艦娘たちが『感じ』では敵ではないといっているのも通常ならばそれだけで決断してもよいくらいの要素だったが、それでも警戒を完全にゆるめてしまうところまで冷静さを失ってはいなかった。

 

(いずれにせよ、まずは艦も艦娘も監視し、いつでも攻撃できる態勢を取って受け入れる。あとは会って、見て、話をして、それからだ)

 

 

 最終的に、到着後の方針は次のようになった。

 

1.艦隊と交替で叢雲が出港し、入港した軍艦ミンスクの監視と護衛にあたる。

 上陸した艦隊から名取が報告後再び海上に出てこれを補佐。

 

2.上陸した艦娘ミンスクは一度執務室に呼ぶが、おそらく空腹と疲労を訴えるはずなので食堂または大型艦用の寝室に案内。弥生が監視と護衛。

 

 さいわい今回損傷艦が無く、長期入渠は不要なので、全員が順次交替しながら艦・艦娘双方の監視・護衛を行う。

 

(叢雲には当面無休ではたらいてもらうことになるな)

 

「しばらく働きづめになるが、たのむ」

「まあ、いいわ。まかせて」

 

「少しでも異変があったらすぐに知らせてくれ。もしも間に合わないと思ったら、その場の判断で攻撃を加えて――――沈めてもらって構わない」

 南西諸島からはるばる境港まで護送してきた、艦隊の最大戦力になるかもしれない艦の処遇について、提督は一瞬言いよどんだが、叢雲に一任した。要港部内ではもちろん、全ての艦娘の中でもトップクラスとされ、これまでも何度か情報の不足する局面で要港部を危機から逃れさせてきた彼女の直観に頼ることにしたのだ。

 

「分かったわ――――まかせておいて」

 

「それと、米子の出張所に連絡。万一こちらからの通信が途切れた場合は――――

 

 ミンスクが味方になるならば、当面他の鎮守府には隠したいところだが、敵であれば、特に要港部を壊滅させるほどの敵であるならば、早急に他の鎮守府に知らせなければならない。万一の場合に開封すべき書類を作成し、米子にある境港要港部の出張所に送るよう指示を出した。

 

 

 

 艦隊は昼前、予定より少し早く到着した。ミンスクの様子を見た名取たちが、このまま海上で時間をかける方がまずいと判断し、速度を上げたのだ。海上に出た叢雲が近くで、連絡を受けた提督が執務室から見守る中、ミンスクは艦娘たちに続いて上陸、ふらふらとした足どりで要港部の建物に近づいた後、ちょうど執務室からの死角に入ったところで倒れ伏した。

 

 名取からミンスクが倒れたという報告を受けた提督は、以前に作った大型艦用の個室へ運ぶように指示。そこで雷にかつぎこまれたミンスクをはじめて間近で見ることになった。

 

「!!!」

(!!これは!?)

 

 首から上が軍艦の形になった異形の艤装に思わず息をのむ。

 

(よくこれを見て発砲をとどまれたものだ)

 

 自分ならば見た目から間違いなく敵と判断しただろう。

 

(艦娘たちは敵の感じはしないと言っていたが)

 

 提督自身は敵かどうかの感覚は、この距離で敵と相対したことが無いのでわからない、としか言いようがなかった。

 

(「感覚」については艦娘たちに任せるしかない)

 

(会話から情報を得て考えようと思っていたが、いずれにせよこれでは話すことはできないな)

 

 用意しておいた部屋のベッドにミンスクを寝かせると、弥生と職員の一人を残して一旦執務室に集合させる。

 

「まず、ミンスクと名乗る大型艦について、それぞれが見たことを報告してくれ」

 

 名取たちの報告を受け、かたわらに控えていた事務官が模造紙に絵を描いていく。

 

・全長は大和型をも超えており、約270メートル

・艦形は細長い巡洋艦型で、排水量は3~4万トン程度か

・後方から中央まで左に向かって斜めに伸びる巨大な飛行甲板

・搭載機は甲板上に無く、確認できず

・高雄型と比べてもはるかに巨大な艦橋

・砲兵装は8センチ級の連装砲を艦橋の前後に1基ずつ計2基と、短砲身の単装砲を船体各部に計6基

・艦橋に複数の動く網上の電探らしきもの

・前方に巨大な魚雷発射装置状の物体計8個

・各部に噴進弾発射装置らしきもの

 

 艦娘たちの知らない装備については想像で報告するしかなかったが、それに対して提督の質問が飛び、名取または他の艦娘が返答・補足する。事務官の描く絵にもときおり艦娘たちから修正意見が入り、それに応じて訂正されていく。

 大規模鎮守府のように本職の画家が担当しているわけではないものの、報告が一通り終わるころには紙の上にミンスクの詳細な艦型が描き上げられていた。

 

「先ほど見た首から上は実艦の形なのか――――写真を撮っておいてくれ。各部の接写写真も」

 

 

 事務官が撮影に向かうと、提督は次の質問に移った。

 

「各自が思ったこと、感じたことを聞きたい」

 

 この質問に艦娘たちは全員「敵ではないと感じる」とこたえたが、それに対し、あるいはそれゆえに提督が続けた言葉はそれと逆のものだった。

 

「そうか、だが――――」

 

(全員一致か――――これはかえってあやういかもしれない)

 

 全員が味方だと思っている状況は、もしもミンスクが正体を隠した敵であった場合、全員の反応が遅れてやられてしまう、という結果につながりかねない。そう考えた提督は、あえて厳しい表情を崩さずに彼女たちが到着するまで考えていた仮説を伝えた。

 

「――――従って、ミンスクが極めて特異な敵、あるいは敵とも味方とも異なる第三の存在である可能性を否定できない」

 

 

「あの……司令官さん」

 

少し重くなった雰囲気のもとでの沈黙を破ったのは、予想に反して暁型の末娘だった。

 

「ミンスクさんは敵ではないと思うのです。見た目は怖いですけど、おとなしくて、戦いたがっていないのです。私たちが砲を構えたときも反撃してこなかったし、自分から地面に伏せて抵抗しないって言ってたのです!」

 

「それに、えっと、それから、……えっと、……雷ちゃんがパンツを見られて殴ってしまったときも怒らずに謝ってくれたのです!!」

「ちょ、電、なに言いだすのよ!」

 姉があわてて口をはさもうとするのにも気付かず、叫ぶように言葉を続ける。

「ミンスクさんは普通の艦娘と違うかもしれないけど、敵ではないのです!戦う相手とは違うのです!!」

 

「――――お、おう……」

 

 普段はおとなしい少女のごくまれに見せる激情に、提督は思わず声を出してしまった。

 先ほどとは少々質の異なる沈黙の中で、一旦停止した思考を再開する。

 

 提督たちの見るところ、電も勘の鋭さでは叢雲に次ぐものを持っている。敵に対して甘くなるバイアスが無ければ、電の直観だけで大方判断を定めてしまってもいいと思うくらいに。ただ、今回はそのバイアスが直接効いてくる状況だけに、電の意見に引きずられるのは危険だと思っていたが――――

(それでも電がここまで言うのは珍しい)

 今の電の様子はこれまで何度か「敵も出来れば助けたい」と言ってきたときの抑えたような様子とは全く違っていた。

(そして「敵でも助けたい」ではなく「敵ではない」と言っていた。「普通の艦娘とは違う」と言った上で「戦う相手ではない」と)

 

(…………)

(…………)

 

 わずかな時間の後、バイアスを考えて割り引いていた電の発言の重みを上方修正することにして口を開いた。

 

「たしかにそうかもしれないな――――実際――――そう、

いまだかつて艦娘のパンツを見てなぐられてあやまる深海棲艦がいただろうか!?いや、いない!」

 

「「「し、司令官?」」さん?」

 突然一人芝居を始めた提督に、あっけにとられる艦娘たち。

 

(――おっと、これは勢いで相手を押し切るときのやり方だった。ここで自分自身を押し切ってどうする)

 

 指揮官である自分はその種のパターンに流されることなく判断する必要がある。そう考える提督の指示は、結果として当初の予定と似たものに落ち着いた。

 

「とにかく起きてくるのを待って話を聞く。全てはそれからだ」

「それまでは交替でついてもらう。何か変化があれば、それが敵対的なものでなくても即座に知らせること」

 

 そして何人かの艦娘の不安げな表情を見てつけ加えた。

 

「夜中に起きてきて『おなかがすきました』とか言い出しても困るだろう」

 

 

 

 そのころ、駆逐艦叢雲はミンスクの艦体に接近して調査を行っていた。

 

 投錨して艦娘が上陸した後の艦体は眠っているかのように反応が薄く、叢雲の感覚にひっかかるものも少なかったが、それでも監視と護衛および調査の応援に名取がやってくるころには艦体から得られた情報について判断を下し終えていた。

 

「敵の感じはしない」

 

 前置きなしの叢雲の言葉に名取がうなずく。

 

「――――でかいわね。赤城よりも大きいんじゃない?」

 

「ええ、全長は大和さん以上みたいですよ」

 

「飛行甲板も巨大。それで斜め。提督が言ってた“あんぐるう・でっき”ってやつかしら」

 提督の発言を聞き間違えたのか、異世界からなにかを召喚しそうな名称を口にする叢雲。

 

「どんな飛行機を積んでるんでしょうか。甲板上に無かったのでわからないのですけど」

 

「これだけ大きければ新型機でも余裕ね。ま、それはじきにわかるでしょ。それに艦橋も巨大」

 

「そうですよね。最初見たとき、なんだかデパートみたいだって思っちゃいました」

 

「でも砲撃を受けたらいい的よ」

 

「多分旗艦設備や、航空戦を指揮する設備が入ってると思うんですけど」

 

 辛口の叢雲と、おとなしい名取はかけ合いのように話しながら目の前の大型艦について確認を続けていった。兵装は……、電探は……

 

「それにしても、これだけ近くで調べても反応が無いなんて。ホントに眠ってでもいるのかしら」

 叢雲の知る僚艦であれば、たとえ艦娘が上陸していても乗組員妖精が気付いて出てくるはずだったが――――

 そこまで考えたところで、叢雲も脳裡に先ほどの上陸時のシーンが浮かぶ。

 

「図体は大きいけど、なんだか頼りなさそう。温若者(ぬるわかもの)って感じね。戦場(いくさば)でものの役に立つのかしら」

 

「もしかすると艦娘の方に何かあるのかもしれないからそちらを見に行くわ。予定より早いけどここは暁に替わってもらうから」

 

 叢雲は要港部にやってきた未知の大型艦に対する当座の評価を定めると、苦笑いする名取を残して岸壁に向かった。

 

 

 

 そのころのミンスク

 

 ミンスクは眠っている。

 




このあと数話分は以下のような流れになる予定です。
(それぞれが1話というわけではありません)





(ネタバレ注意)





ポエム(1)
ポエム(2)
目覚め
紹介(1)
食事(1)
紹介(2)
食事(2)
世界(設定)紹介
就寝
起床
訓練へ

出撃もしないまま延々話が続く(しかもしばしば――今回ほど長期にはならないようにするつもりですが――投稿が滞る)のが耐えられない、という方は、なにかそれっぽいタイトルが出るまでお待ちいただけると幸いです。
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