嘘吐きでごめんなさいw
流石にもう二月半ばまで更新は無いです。
誤字修正いたしました。
空さん、ありがとう!
全体的に文章を直しました。
タケブさん、ご指摘ありがとうございました!
「オハラの消滅」
「これはどういう事だ?」
「確かに、我らはオハラへのバスターコールを要請した」
「しかし、島その物を言葉通りに消し去り、海にまで深き爪痕を残すとは」
「そのような戦力があるとは聞いておらんぞ、センゴク」
赤い土の大陸の上に存在する、世界政府の所在地――聖地・マリージョア。
そこで海軍本部元帥センゴクは世界のトップともいわれる五人――五老星に先日のオハラの件について呼び出されていた。
先日、世界政府にとって知られてはならない事を知ってしまったオハラにバスターコールの要請を彼ら直々に命令はしたが、報告で知った元オハラの有った場所の惨状は計算外であった。
なにより自分たちの与り知らぬ所で、あれ程の威力を持つ何かがあるのは容認できない。
「その件につきましては、こちらの認識が甘かったと言わざるを得えません」
「ほぉ、それでは貴様にも予想外の事だったと?」
「智将といわれる貴様らしくもないな」
五老星の睨みつける様な視線による圧迫感をセンゴクは静かに受け止める。
センゴク自身も未確認だったとはいえ、あれ程の破壊を引き起こす物を海軍が保有している事を報告していなかったのでは、五老星の疑惑も無理は無いと考えていた。
「それよりもだ」
「あの惨状が一海兵によって引き起こされたと言う方が問題だ」
「その問題の海兵はどうなのだ?」
即ち、政府にとって有益になり得るのか、それとも、有害になるやもしれないのか。
古代兵器並みの破壊力を一個人が保有している現状は容認しがたい物である。しかし、海賊王の公開処刑により予定していた秩序の回復はその逆の結果となり、海賊が急増し海軍の権威をも失いつつある現状で、その力を手放すのはあまりにも惜しい。
だから今一度訪ねる。
その海兵が政府に忠実ならば良し。そうでなければ……
「その心配はありません。アレは目をつけたガープ中将に恩義も感じているようですし、その性格からして、まず自分から軍を出る事は無いでしょう」
センゴクは五老星の考えを断つ様にはっきりと答える。
そのセンゴクの様を見て五老星はしばしお互いに目配せをして意思の確認をすると口を開く。
「貴様がそこまでいうのならば……信じよう」
「そう、今は世界に対する抑止力が一つでも多く必要だ」
「しかし、その抑止力になりうる海兵をただの一兵士として置くわけにもいかんぞ」
「なるべく海軍から動けなくしなくてはな」
「わかっているな? センゴク」
「――ええ、分かっていますよ」
その有無をいわせぬ五老星の態度にも動じず、センゴクは自らの考えを五老星に伝えるとその場を後にした。
ウツホSIDE
「うぅ~」
私は海軍本部のとある部屋で机の上に両手を投げ出して項垂れていた。
項垂れた私のそばには数枚の書類が散らばっている。数は少ないが私の処理速度からすれば大仕事になる量だ。
最近、難しい事考えようとすると、頭がごちゃごちゃになってよくわからなくなる様になったな~。
こういうのは、私には向いてないんだよ~。
何時もなら私はサインだけして後は部下に任せるのだが、この間のオハラ以来、私がやらなければいけない書類が増え、最近は巡回任務や討伐任務が減り、本部からあまり出ていない。
討伐任務もキツかったけど、デスクワークは勘弁して欲しい。
項垂れながらも、ちょいちょいやっていた書類が一枚完成し、最後に私のサインをする。
――海軍本部殲滅部隊隊長、霊烏路空大佐
っと。
これがオハラから帰って来た私にいきなり与えられた地位だったりする。また昇進したよ……しかも二階級昇進って殉職みたいでなんかな~。
といっても隊員は変わっておらず、隊に名前がついて、受ける任務が多少変わっただけだけどね。
今までやって来た討伐任務や巡回任務もあるけど、その数が減り通常は本部待機。そして要請があった場合、直ぐさま殲滅任務――対海賊の討伐任務と違い、対地域の殲滅戦を目的とした任務――に就くのがこの隊の主な仕事。
それともう一つこの隊の設立理由とも言える重要な仕事がある。
それは
「うにゅ~、まだあるよ~銀爺(ぎんじい)」
「……」
私が仕事の量に挫け、たまらず声をかけたシルバー電伝虫の銀爺(命名、私)はチラリとこちらに一瞬目をやると、我関せず、といった感じに目の前にある餌の葉っぱを、むしゃむしゃ、と食べてこちらを無視する。
この部屋にいる時の何時もの光景なので向こうも慣れたのだろう。……最初から無視されてたけど。
私の隊が殲滅部隊になる時に一緒に渡されたのが、このシルバー電伝虫だ。
バスターコールへの強制参加。それが、この隊の設立理由でもある最重要任務である。
殲滅部隊隊長は海軍で唯一、シルバー電伝虫を専用で渡されることになった役職らしい。どうでもいいけどね。
「あっ」
「……」
無視する銀爺に気分転換を含めた仕返しをしようと人差し指を伸ばすと、私の手が届かない所にゆっくりと移動していった。
その顔を見てみると、どこか小馬鹿にした様な顔で飄々とこちらを見ていた。
因に、この子はオハラの時に私の船にいた子をそのまま貰っていたりする。
どうせ貰うなら初めて任務で使った子が良かったからこの子にしたのだけど、任務の時といいやっぱり意地が悪いかも、この子。
銀爺は私の手の届かない日差しの良い所に移動した後、気持ち良さそうに眠り始めた。
まぁ、なんだかんだ言っても気に入ってはいるんだけどね。
気分転換ができなくなった私は諦めて残りの書類に目を通し始めた。
が
「うにゅ~、やっぱり良く分からないよ~」
数分もしないうちにまた同じ様に、机に項垂れることになったのだった。
「いらっしゃいませ~」
ギィ。っと古びた扉が開く音に振り向くと、扉を開けて数人のお客さんが入ってきたので、急いでさっき空いた机の上を片付けて、その席に勧める。
今はちょうどお昼なので、店内はごった返しており大忙しだ。
「おくうちゃ~ん。料理追加ね~」
「お~い、おくうちゃん。こっちもお酒持って来て~」
「おくうちゃ~ん」
あの一件でこの町ではかなり有名になっていたらしく、数年ぶりにも関わらず、ここに来るお客さんのほとんどが名前で呼んでくれる。
数日前に来てから、久しぶり私を見る為に来ている人もいるそうだ。一ヶ月もいなかったんだけどな~。
私はせわしなく店内を駆け回り注文を取ると
「マスター、料理とお酒これだけ追加で~す!」
「……」
カウンター越しにマスターに酒場の雑踏の音に掻き消されないよう大声で伝える。
それをマスターは視線だけで答え、今出来上がった料理をカウンターに乗せ、次の料理に取りかかった。
私はカウンターに乗った料理を客に運ぶ為に手に取るが、それを運ぶ前にピシリと足が止まる。
「あれ? ……これ誰の注文だっけ?」
料理を手に取ったはいいが、誰が注文したかを忘れてしまった。
マスターも忙しいから聞くのも悪いしと、必死に思い出そうとしていると頭の上の髪の毛がある方向に軽く引っ張られる。
その方向にはこっちに気がついたのか軽く手を上げて待っているお客さん。
「あっ! あのテーブルか! ありがとう、銀爺」
「……」
そのお客さんが注文した人だと思い出し、直ぐに料理を持っていくと、銀爺は口にくわえ引っ張っていた私の髪を離し、また私の頭の上を静かに陣取る。
前に働いていた時は忘れるなんて無かったんだけど、何故か今はちょくちょく忘れる。最初に忘れた時に困ってあたふたしてたら、いつの間にか頭にのぼって来た銀爺が今みたいに教えてくれるたのだ。それ以来、私の頭の上に陣取って忘れたら教えてくれる様になった。
う~ん、意外にいい子だった。
先ほどからの様子で分かる通り、私は今、懐かしきサークリュー島の酒場で働いている。
別に海軍を辞めた訳ではないし、酒場で正式に働いている訳でもない。
――数日前
私はここの所毎日の本部待機による書類仕事で、何時もと同じ様に机に項垂れていた。
巡回任務も討伐任務もまわってこず、殲滅任務にいたっては設立してからまだ一度も就いていない。
バスターコールのようなものがそうそうあっても大変だろうけど、いい加減デスクワークはキツい。体力面で疲れなくなってからは精神面での疲労を強く感じるようになった。
よくわからない書類相手より海賊相手のがずっと楽だった。
バスターコールでもかからないかな~。と物騒な事思っていた時、部屋の外が騒がしくなった。
気になって耳を傾けてみると兵士達の叫ぶ声が聞こえて来た。
「クザン中将はいたかー!?」
「やはり、おられません!」
「自転車がありませんので、おそらく……また散歩に出かけたのではないかと」
「あの人、一度出かけると数日帰ってこないんだぞ!?」
「ガープ中将もいないぞー!」
「あの人もか!? 仕事まだ残ってるのに!」
「休暇でしばらく故郷に帰ると、置き手紙がありました!」
「また勝手に、センゴク元帥に怒られるぞ!」
……そういえば、私もここ数年お休み貰ってないな~。というか、海軍入ってから訓練の日々だったし、ガープ中将に言われていきなり任務の連続とお休み貰った事無いや。
貰った所で行く場所無いけど、故郷か~…………
SIDEOUT
――海軍本部ウツホの部屋
『サークリュー島に数日間散歩してきます。書類サインだけはしておいたから、あとは私の字をマネてやっといて。 Byウツホ』
「「「「「「「数日間は散歩って言わねぇー!!」」」」」」」
机の上に書類と一緒に置かれていた置き手紙を彼女の部下達が見つけたのはウツホがサークリュー島に向かって飛んでいった数時間後だった。
クザンといい、ウツホといい、ガープ中将に恩義がある者は彼の影響を少なからず受けるらしい。
ウツホSIDE
というわけで、故郷とは違うけどこの世界で最初にお世話にもなったサークリュー島にお休みがてら来て、マスターのお店の二階の宿で泊まっている。
中将達だって休んでるみたいだし、置き手紙して来たから大丈夫。
そして、最初に来た日に久しぶりにあったマスターとお話ししていたら、お店のお客さんが私の事に気がついて、その事を町の人たちにも広めたらしく、いつの間にかお店にすごい人数が来てしまった。
私は前に町を襲っていた海賊を倒して、その後の町の復旧を手伝ったのでこの町では結構有名である。それと、町の復旧資金はその海賊団の船長の懸賞金を当てているので船長を倒した私はかなり感謝されていた。
本来、海軍に入る筈の私が倒した海賊の懸賞金は入らないんだけど、町の復旧資金が必要だったし、町の人たちが海賊のほとんどを捕まえていた事もあったので交渉したら、全額は無理だったみたいだけど何割かは貰えたみたい。
私は要らなかったので詳しくは聞いてないけどね。
そんなこんなで、町の人たちが食事するついでに私に会いに来て店が何時も以上に繁盛してしまい、マスターが忙しくなってしまったので私から手伝う事にしたのだ。
ところで、私は給仕の仕事をしていて特に町の人たちと会話はしていないのだけれど、ただ単に物珍しくて見に来てるだけじゃないよね?
最初は、マスターの所にはちゃんとお金を払って泊まろうとしたのだけど、お手伝いをしたら
「……お前のおかげで店も繁盛したし、仕事をしているのだから金はいらん」
とのことで、お金は払わなくてよくなった。朝の宿の仕事はしないので前みたいに給料は出ないけどね。
まぁ、要らないけど。海軍本部将校のお給料はかなりお高いのです。
普段使わないから溜まりっぱなしだしね。……あれ? もしかして、使った事無いかも?
それで、ここに来てから酒場で働いている訳だけど
「おくうちゃ~ん、お肉追加~」
「お~い、おくうちゃ~ん」
「こっちもお願いね~、おくうちゃ~ん」
「「「おくうちゃ~ん」」」
うにゅ~!! 忙しい!
三日経っても全然人が減らないし、何故かカウンターの人まで私に注文する。マスターに直接言ってよ、たまに注文忘れて困るんだから!
休みに来たのに休めてないよ。書類仕事よりはいいけどね。
そんな食事頃で客がいっぱいの店を私が一生懸命に駆け回っていると
ガンッ、と酒場のドアが強引に開かれ
「おい、酒持って来な! それと、うまいもんもな!」
人相の悪い男達が数人、ゾロゾロと入って来きては、男の中の一人が開口一番にそう偉そうに命令した。
……見た目や態度からして海賊みたいだけど、どうやってこの島に入って来たのかな?
この島は偉大なる航路の入り口――リヴァース・マウンテンから記録(ログ)を貯めて進む七つの航路からは外れており、基本的に記録指針の指すままに進む海賊はやってこれない。この島に来るには当初の記録指針を無視してこの島と繋がる記録を持つ島に行くか、永遠指針を使って同じ様に航路を外れるしか無い。
それに、この島は前に海賊に襲われてから海賊に対してそれなりに警戒してるから、海賊船が近づいて来たら騒ぎになる筈なんだけど。
チラリと横目でマスターを見たけど、マスターは特に何も言わないのでお客として扱うみたい。
私も休暇中で別に捕まえる気は無いので、変な事しない限りお客さんとして扱う事にする。
「いらっしゃいませ~。すいませんが、ただ今満席なのでしばらく……」
「あぁ!?」
「おいおい、お嬢ちゃん。あんまりふざけた事言っちゃダメだよ」
「そうそう、こわ~い目にあっちゃうよ?」
私の言葉を遮って男達がそんなふざけた事を言う。
にぎやかだった店内も男達のせいで静まりかえってしまい、店内の雰囲気は最悪だった。
男達の態度に、客として不合格の印を心の中で押した私が動く前に
「まぁ、お前ら。そう言うな」
「え、いや。すいやせん」
「けれど、船長~」
男達の中から、ひょろっとした目つきの悪い男が前に出て来て、文句を言ってきた男達を窘める。
他の男の態度からして、どうやら海賊達の船長らしい。
「それに、席は直ぐ空くみたいだしな」
ジロリ、と船長の男が近くの客の席に目をやると、そこにいたお客さん達は焦ってお金を置いて出て行ってしまった。
そうやって席が空くと船長がその席に座り、それに続いて部下達もそれに続いて座っていった。
「それじゃあ、酒と食いもん適当に持って来てくれ」
席に座ると船長の男が笑いながらそう言った。
う~ん、これは有りなの?
私はそういった意味を込めてもう一度マスターを見る。
「……」
あっ、有りなんだ。
この程度なら酔っぱらいと変わらないらしい。
マスターがそういうならいっか、と私はお客さんがいたテーブルを片付け、食べ終わっていた食器と置いていったお金をカウンタ-にもっていった。
「「「「「ギャハハハ」」」」」
汚らしい笑い声が響き、店内は先ほどと同じ様に騒がしくなっている。ただ、騒がしいのは海賊達のいるテーブルだけで、他のお客さんは静かに食事をして、食べ終わったら直ぐに出て行ってしまっている。
やっぱり迷惑じゃない?
「……」
確かに港町だから荒くれ者もいるし、そう変わらないかもしれないですけど。
そういった客はマスターのお店にはあんまり来ないじゃないですか。
「……」
あ、はい。向こうから暴れるまで何もしません。
どうやらマスターの基準では、暴力を振るわなければ厄介なお客さん程度らしい。
私はお客さん達の注文ラッシュが無くなって急に暇になったので、無口なマスターと目線だけで会話をしてカウンターに座り、唯一注文が来る海賊達の方を見ながら休んでいた。
SIDEOUT
テーブルについた海賊達は酒を飲んで気分がいいのか、大声で笑いながらこの島に来る事になった経緯を話し合っている。
「しっかし、危なかったな~」
「あぁ、だけどうまく逃げ切れたぜ」
「おかげで船の進路がずれちまったけどな」
「こうしてちゃんと島にも着けたし、いいじゃねえか」
そこで一息つき、グッ、と酒をジョッキで煽り、運ばれた大量の料理に手を付ける。
料理を口に運びながら大口開けて笑ったり、喋ったりしているので食べ物が散って汚ならしいが、彼らにとってはそれが普段の食事のときのあり方だ。
彼らは、この島には本当に偶然で来れたのだ。
記録指針が指す通りに航行していると、海軍の船団に鉢会わせてしまい、何とか逃げ仰せたものの航路を大きく外れ、だからといって船団がいるであろう方向に直ぐに戻る訳にも行かずに困っていた所、たまたまこの島にたどり着いたのだ。
そして、この島の裏手に船を停め、海軍の船が無い事を確認した後にやっとこさ安心してこの酒場に入った所だった。
海賊達はお互いに海軍を撒けた事に祝い合っていると、海賊の一人が静かにとある話をきりだした。
「逃げられたのはいいけどよ~、この辺りにはヤバイ奴がいるらしいぜ」
「あん? なんのことだ、そりゃ?」
問われた海賊の一人は急に顔を暗くして、おどろおどろしく語り始める。
「見つかった海賊団は全て壊滅させられ、その海軍とは思えないあまりにも残虐な手口によりそいつを前にした奴に無事な奴は誰一人おらず、その力は島一つをも消し飛ばすと言う、海軍の秘密兵器……地獄の人工太陽」
「「「……」」」
男がさも恐ろしそうに語るので、聞いてた海賊達もその雰囲気に飲まれ、ゴクリ、と息をのむ。
「そりゃあ、どんな兵器だ? 噂の古代兵器ってやつか?」
「でも、確かそりゃあ世界政府が禁止してるんじゃなかったか?」
その雰囲気によってある程度の沈黙が続いたが、直ぐに気になる話題に聞いていた海賊達が疑問を飛ばす。
「いや、秘密兵器っていっても人間だ。地獄の人工太陽ってのは二つ名だ」
「二つ名なのか? 随分変わった二つ名だな」
「それに、人間が島一つ吹っ飛ばすってありえねぇだろ」
「どんな奴なんだ?」
「俺も聞いた話だからなぁ~、詳しくは知らねぇんだ。でも、この辺りで有名だった何十もの海賊団が忽然と姿を消してるのはマジだぜ」
「くっ、くっはははははははははははは」
我慢できずといったふうに、高らかに笑い声がある男から漏れる。
件の話をしていた男達がその主に目をやれば、そこには手で顔を覆って男達の船長がさも可笑しそうに笑っていた。
「船長?」
その突然の船長の姿に疑問を持った男の一人が声をかけると、船長は一頻り笑った後、ゆっくりと口を開いた。
「いや~、悪い悪い。そんなデマを真顔で話し合っているお前らがあまりにも可笑しくてな」
「えっ、デマなんすか!?」
「なんだ、脅かしやがって」
「真面目に聞いて損したぜ」
船長の一言で、先ほどまで興味深気に質問していた男達がその話をした男に非難の視線を浴びせるが、話をした男は、とんでもない、とそれに慌てぎみに答える。
「デマじゃないっすよ! 実際に海軍の秘密兵器の話はあちこちに流れてますし!」
「いやいや、俺が可笑しかったのはよ。お前が出任せを言ってる事じゃなく、海軍が流した出任せをお前らが真剣に信じてるという点だよ」
「へ? か、海軍が流したデマ?」
「ちょっと考えりゃあ分かるだろ? 海賊王の処刑で縮小する筈だった海賊達が逆に急増。しかも、本部も襲撃に合って半壊だったらしいじゃねぇえか。そんな次期に都合良く秘密兵器なんて、そんな大物が出てくるかよ。地獄の人工太陽なんて今まで欠片も聞いた事あるか?」
得意げに話す船長の問いに対し、海賊達は顔を見合わせた後、皆、首を横に振り否定の意を示す。
それを見た船長は更に可笑し気に語る。
「だろ? 増え続ける海賊に業を煮やした海軍が取った苦し紛れのデマとしか考えられねぇよ」
「じ、じゃあ、海賊団が消え去ったのは?」
「俺たちがこの島に来る事になった船団がいただろ? 海軍の奴らこの辺りで大きな網を張ってんのさ」
「「「おぉ~、なるほど」」」
「それに逃げきれなかった間抜けな奴がその噂の切っ掛けだろ。第一、無事な奴が誰一人いないつ~なら、どうやってその情報が流れてんだよ? それが何よりも海軍が流してるデマだって証拠だ」
そりゃあそうだ。とその船長の話を聞いた男達は納得し、酒と料理を煽ってまた騒ぎ始める。
「さっすが、船長っすね!」
「懸賞金四千万ベリーは伊達じゃない!」
「お前はもう変なデマを信じねぇようにな」
「ちぇ~」
話をした男は一度不貞腐れた様な顔をしたが、直ぐに調子を戻し笑顔になり料理に手を付けた。
「おい、そろそろ行くぞ」
「「「うぃ~す」」」
海賊達は一頻り飲み食いをすると船長の一言で次々に席を立ち、酒屋の出口に向かって行く。
ワイワイ、と食事によって満たされ気分よく歩く海賊達の前をある人物が遮る様に立ちふさがり、それによって海賊達は歩みを止める。
「お勘定~お願いしま~す」
にっこり、と愛想のいい笑顔を向けて立ちふさがったのは、エプロンを付けた酒場の店員である少女――ウツホだった。
海賊達は食事を終えると全員がそのまま出口に向かっていき、誰も勘定を払いにこず。また、テーブルの上にも料金を置いていないので、海賊達が店を出て行く前にウツホが先回りをしたのだ。
ウツホのその言葉に立ち止まった海賊達は、ニヤニヤ、と嫌らしい笑みを浮かべ合う。
「お~い、誰か金持ってるか~?」
海賊達の先頭を歩いていた船長の男がふざけた様に部下達に聞く。
部下達も船長が何を言おうとしているのかを理解し、その嫌らし気な笑みを深め、それに便乗する。
「俺は持ってないっすよ、へへへ」
「あ~、俺も無いっすね~」
「お前持ってるか?」
「クククッ、いんやぁ~、もってないなぁ~」
誰一人、金は持っていないと明らかに嘯きながら、大げさに振る舞う。
その予定調和の茶番劇を聞いた船長の男も、大げさに手で顔を覆いウツホに向かって答える。
「いや~、それは参ったな~。と言う訳で、悪いなお嬢ちゃん」
そういって海賊達はウツホの横をすり抜けて店から出て行こうとする。
しかし、それをウツホは軽やかに横に移動し、海賊達の道をもう一度、笑顔のまま遮る。
そのウツホの行動にふざけていた海賊達は態度を変え、嫌らしい笑みを浮かべていた顔をしかめる。
「おい、お嬢ちゃんよ。いい加減にしな」
「あんまり俺達を舐めるなよ?」
「別の方法で払ってやっても良いんだぜ?」
船長の男が部下に目線で合図を送ると、海賊達は腰に付けていた剣やピストルを引き抜き脅しにかかる。
突然の行動に酒場に残っていた他の客達は叫び、立ち上がり自分に向けられない様に店の奥へと逃げていく。
ウツホの首にも脅しの為に剣の刃が添えられているが、ウツホは特に怯えた様子も無く、海賊達を視線から外しカウンターの奥にいるマスターの方に視線を向けている。
それをどう思ったのか海賊達は口元に笑みを浮かべ、ウツホを無視してマスターの方に是非を問う。
「どうするよ? 店長さんよ」
「……」
マスターは無言で首を、クイッ、と出口の方向をさす様に動かす。
「わかりゃあ良いんだよ」
マスターのその行動を、自分たちに従うと解釈した海賊達は大人しく武器をしまう。元々、脅しだけで暴れる気はさほどなかったのだ。従わなかった場合はウツホを首を斬ってみせしめにしようとはしていたが。
首から剣を離されるとウツホは小走りに店の二階に通じる階段を駆け上っていった。
「あ~あ、怯えちゃって可愛そうに」
「全然そんな事考えてねぇ~癖に」
「「「ぎゃはははははは」」」
その様子を見た海賊達は我が物顔で店の外に出て通りに出る。
その時
バンッ、と通りに出た海賊達の頭の上で酒場の二階の窓が強引に開かれ、海賊達の目の前に先ほどまで目にしていた人物が飛び降りて着た。
その人物は先ほどと違い、掛けていたエプロンを外し、背にマントを羽織り、右手には奇妙な棒を付けた酒場の店員の少女――ウツホだ。
飛び降りて来たウツホは先ほど見せた人受けの良い可愛らしい笑顔でなく、どこか高慢で見下した様な笑顔を海賊達に向ける。
突然の事に驚いていた海賊達だったが、自分たちに目の前に飛び出して来たのが先ほど自分たちが脅した時に怯えて逃げた少女だと分かると、怒りに顔を歪め、気の短い奴らは武器を抜きだす。
ウツホの海賊達を馬鹿にしている様な態度も頭に来たが、先ほどから食事をして気分が良い所に何度も出て来て、いい加減に煩わしくなって来たのが一番の理由である。
「おい、こりゃあ何のまねだ? お嬢ちゃん」
「お勘定を貰いに来たのよ」
そのウツホの言葉を聞いた海賊達の何人かがその手に武器を持ちウツホに近づいていく。
「あぁ、なるほど。つまり、お嬢ちゃんは……」
「死にてぇらしいな!」
ウツホに近づいて来た海賊の一人が剣をウツホに向かって振り下ろす。
彼らはもう少しこの町を見回ってから色々しでかすつもりで、殺しなどの面倒ごとはまだするつもりは無かったのだが、荒くれな海賊である彼らに元々計画性など皆無。彼らに取っては多少予定が狂った程度のもので、頭の中では既にウツホを斬り殺したらそのまま暴れる事を考えていた。
斯くして、哀れ、酒場の店員の少女は斬り殺され、かつて海賊に襲われやっと復興した町は再び海賊の手によって滅び去るのだった。
実際そうなっていただろう。店員の少女が海賊達がデマだと嘲笑った海軍の秘密兵器――地獄の人工太陽でなければ……
――数分後
「助けてくれ! か、金はほんとに持ってないんだ!」
酒場の前の通路に船長の男の許しを乞う叫びが響く。その周りには部下の海賊達が酷い有様で倒れ苦痛の声を漏らしている。
ウツホは仰向けに倒れている船長の男の腹を像の足で踏みつけ、ユラリ、と高熱で周りに陽炎を纏わせている制御棒を男の首の横ギリギリに添えている。先ほど自分に剣を添えたお返しだろう。
男の許しを乞う叫びにウツホは制御棒を退かす。
それに男は助かったと、ほっ、と息をつくが
「ここにあるじゃない」
「へ?」
男がその言葉に疑問に思い、ウツホを見上げると
「四千万ベリー。お釣りは……えぇっと、よくわかんないけど、貴方達が飲み食いした分と壊した通路の分には十分だしね」
「道を壊したのはお前の……」
ゴシャァ!
「ガハッ!」
今度は可愛らしい笑みを浮かべたウツホに男は顔面を潰され気絶した。
因みに、海賊達は知らなかった事だが、ウツホが二階に行ったのは怯えていたからではもちろん無く、給仕の仕事中には外しているマントを取りにいったからで、マスターの合図は海賊達に向けたものではなく、目で「捕まえますね」と言ってきたウツホに「外でやれ」という意味で向けられたものだった。
まぁ無茶な話だが、これに気がついていれば、もしくは海賊達の誰かがウツホの事を知っていれば、この海賊団は壊滅する事無く無事にこの辺りを抜けれたかもしれない。
襲う筈だった町の住人に名前すら知られなかった海賊団は、酒場の飲食代を船長の懸賞金で払う為にその日、壊滅した。
ウツホSIDE
懸賞金貰う為に海軍に連絡したら凄く怒られた。……海軍本部に戻ったらガープ中将達も怒られてたけどね。
後、私がサインした書類の続きはやってくれていなくて、溜まった分と勝手に散歩に行った罰として追加された分を泣きながらやる事になりました。
ぐすん。
やっぱり時間無いですね~、更新してますけどw
ちょいちょい、書いてて、短い閑話的な話なら正月にもしかしたら上げれるかもな~。とか考えてて、結局間に合わないし。
今回は閑話的な、状況説明的な物と日常編を一つ。
今回の話は、ガープに影響受けた奴は似る。というが言いたかっただけです。
ここのウツホがよく寝るのは、ガープに教育されて似たからですw
蒼雉とかエースとかもよく寝るのはガープのせいだと思うんですよね。
ルフィは血繋がってるから遺伝だろうけど。
コングだすか、五老星だすか迷って、結局よくわからないコングより五老星にしました。
もっと軍側もたくさん出してくれないと、軍側のキャラ把握ができないよ……。
皆様、アンケートにご回答ありがとうございました。
アンケートの解答が真っ二つに分かれて、あんまり意味はなかったですがw
いや、色々、参考になること書いてもらったので、全然無駄ではないですけどね。
皆様のアンケートのご回答の結果考えまして、幼ルフィとの出会いは無しの方向にしたいと思います。
出会って欲しいと言ってくださった方申し訳ございません。