設定をwikiで読み直したり、これからどうするか思いついても、うまく文章にできなかったり、リアルが忙しかったりと大変でした。
今回の話ももう少し内容があったのですが、思った以上に長くなりそうだったので、またもや分割。
次の話とセットで投稿した方がいいかもと思ったのですが、これ以上更新遅れるのは避けたかったので取り合えず上げました。
盛大に噛んだ自己紹介の後、私は最初に話しをしたマントを付けた男の人――リオレッジ大佐に連れられ、海軍船に乗り込んだ。
広い甲板から船内に入り、大佐の後ろに続き通路を歩く。
「君はたった一人でバーダインを倒したそうだね?」
「へ? あ、は、はい」
初めて見た海軍船の船内を物珍しそうに見渡していたので、気の抜けた返事をしてしまった。
返事をすると大佐は顔だけこちらに向けて、その口に軽く笑みを浮かべる。
「派手に怪我をしてるようにも見えん。なかなか優秀なようだ」
「い、いえ。偶然、勝てたようなもので、今思うと無謀にもほどがありました」
「偶然で懸賞金二千八百万ベリーを捕まえるか。だとしたら、そちらの方が驚きだよ」
そう謙遜するな。そう言って、大佐はいっそう面白そうに顔を歪める。
いやいやいやいやいやいやいや。本当に偶然なんです。謙遜なんてしてませんから。
「いや、そんな私、今まで戦った事も無くて。基地で正式に着任いたしましたら、ちゃんとした訓練を受けたいと思ってます」
実力があると思われて、着任早々前線に出されてはたまらないので、私は精一杯、自分の考えを伝える。
「初の実戦であれだけ一方的にバーダインを押さえ込んだのかね? 奴の容態を見たが死にかけだったぞ? これはますます楽しみだな」
大佐は今度は声を上げて笑いだして通路を進んで行く。
あぁぁぁ~、違うって言ってるのに……聞けよ、おっさん。
大佐の後ろを付いて行きながら、私が心の中で軽く荒んでいると
「ふむ、着いたな。ここが君が基地に着くまで、この船で使う部屋だ」
どいてくれないと見えませんって大佐。
リオレッジ大佐の身長は見た感じ二メートルもある。軍隊という事でかなり鍛えているのだろう、肩幅もがっちりしていて、そこから「正義」と書かれた海軍独特のコート――マントだと思っていたらコートだったらしい――を付けている。今はせいぜい百六十センチぐらいしか無い私から見たら壁に近い。
実はさっきから、かなり見上げて話してたりする。この体になってから、人と話す時は基本的に見上げる事になるから、もう慣れたけどね。
さすがに大佐に、どいてくださいとも言えないので、大佐の後ろから横に回り込むと、通路の端にポツンと木の扉が見える。
大佐を見れば、目で開けろと言ってくるので、扉を開けて部屋に入る。
部屋に入ると少し埃っぽい空気が鼻をかすめる。
元々、倉庫なのか部屋の半分は、木の箱が積まれ、モップやバケツ等も置いてあり、使える範囲としては二人部屋ぐらいの大きさになっている。
横を向けば、随分、放っておかれていた様に見える二段ベットが置いてある。
「通常ならば他の海兵と同じ部屋で寝食を共にするのだがな。今、何所もいっぱいでな。それと女という事もあるので、艦の風紀を守るため、この倉庫を使ってもらう事にした」
あっ、やっぱり倉庫なんですね。別に良いですけど。
「まぁ、基地に着くまでの短い間だ。多少埃っぽいのは我慢してもらうぞ」
「いえ、別に気にしていません」
「そうかね? それと、これが君の制服だ。早速、着替えたまえ」
私に海軍の制服――半袖のセーラーの上着に、青いズボン。カモメを模したマークにMARINEの文字が書かれたキャップ帽――を渡し。大佐は部屋の外で待っていると、部屋を出て行った。
他の服を着ると何か落ち着かないので、なるべく今の服を着ていたいのだけど、軍に入った以上そう言う訳にもいかないよね。
制御棒を外して、今着ている服を脱ぎマントに収納し下着姿になる。
靴は貰ってないから仕方ないんだけど、このままで良いのかな? 片方、像の足なんだけど……まぁ、いいか。
さっそく貰った制服に袖を通そうとして
ギィィと部屋の扉を開くと、扉から軋んだ音が鳴る。随分、使ってないのかも。
「ふむ、終わったか……む? 何故、着替えておらんのかね?」
大佐が疑問に思うのも無理ない。
私は貰った海軍の制服でなく、先ほどまで着ていた、いつもの服のまま部屋から出て来たのだから。
「気に入らなかったのかね? しかし、海軍に入る以上、規律は守ってもらわないと困る。伍長になれば私服が認められるが、君はまだ……」
「いえ、気に入らなかった訳ではないんです」
ちょっと失礼かと思ったが、長くなりそうだったので大佐の言葉を遮って答える。
「ふむ、ではなぜかね?」
「着替えようとはしたんですが……」
「ふむ」
「羽が邪魔で着れなかったんです」
「……」
気まずい沈黙。
背中の羽が私の気持ちを表すかの様に、申し訳なく垂れ下がっている。
しばらくお互い無言でいると、大佐は自分の顎に手をやって、しばし髭を撫でると口を開いた。
「ふむ、そういえば君は悪魔の実の能力者だったね。動物系はたしか完全な人の形態にも成れたはずだが?」
「あっ、その」
「いや、よく見ると今の姿も人獣型とは言えないね。何の実を食べたのかね?」
やっぱり聞かれたか。
私はこの世界では異端な存在だ。
安易に妖怪です。なんて答える訳にもいかないので、悪魔の実の能力者にしておこうと前から決めており、今回、海軍に連絡を取ってもらった際に能力者だと告げておいた。
一応、悪魔の実辞典でなるべく詳しく調べていたので、考えておいた悪魔の実を告げる事にする。
「正式な名前はわからないのですけど、動物系幻獣種・トリトリの実モデル八咫烏。だと私は認識しています」
「なんと! 自然系よりも珍しいと言われている動物系の希少種とは!」
心底驚いたという顔をして、大佐はその高い背を屈めて、しげしげとこちらを見てくる。
顔近いです大佐。というか見て何かわかるんですか?
「え、え~と。それで、モデルになった幻獣種の特性なのか、他の形態への変形はできないんです」
「ふ~む。さすがに私も希少種に関しては全く知らないのでな。そういう事もあるのかもしれんな」
「は、はぁ。そいったわけで制服が着れなかったんです」
「そういったことならば仕方あるまい。君は裁縫はできるかね?」
「うっ、すみません。やったこと無いので難しいのはできないと思います」
「いや、謝ることではないよ。誰だって最初はできんものさ。ただし、これから覚えておきたまえ、海の上では必須技能だ」
「はい!」
それに敬礼して答えると、大佐はかわいらしいものを見たと顔に書いてあるのを隠さず、軽く声を上げて笑い、後で直した制服を渡そう、とそう言って歩き出した。
いきなり敬礼したのは変だったかな~? いや、でも海軍に入ったんだし、よかったよね?
私はそんなことを考えながら、若干、恥ずかしさで頬を赤く染めまた大佐の後ろに着いて行った。
後日、聞いた話しだと。まるで背伸びしたがりな娘――ちなみに大佐に娘はいない――が誇らし気に敬礼をしていた様に見えたので、つい笑ってしまったとのことだ。
モップをバケツの水に浸し、床を拭く。
甲板以外に歩く所が無いのに意外と汚れている。モップを置いて、雑巾で壁や窓の縁を磨けば何所から出てるのか埃が結構とれる。
私が船に乗って早くも数日がたった。
今、私は背中に羽を出す所を開けた海軍の制服を着て、船のいたる所を清掃している。
この船に乗った日からの私の仕事である。
所謂、雑用というやつだ。
なんか、サークリュー島にいる時とやっていることがあんまり変わらないな~。
最初から前線に出ろと言われるよりは良いけどね。
それに船の上だと私、掃除くらいしかできることが無いし。船のこと何も知らないのは、やっぱり海軍としてはまずいかも。でもここの海軍って、戦闘強かったら良いみたいな所あるしな~。
とか思いつつ、ここいらの清掃も一段落着いたので他の場所に向かう。
しかし、海の上って……暇だ。
清掃して、食事の時間になれば食堂で食事を食べ、食べ終わったらまた清掃。
入ったばかりで知識も無い私には、やることがほとんどない。今の所、天候も落ち着いていて他の海兵ですらやることが少ないのだ。
清掃以外にも雑用だから、料理とかの雑用もやるものだと思ったのだけど、厨房はコックの仕事場と決まっているみたいで、そういったことはコック見習いがやるらしく、一般の海兵は入ることもでき無い。
そういった訳で、基地に着くまでの間、私はひたすら船の清掃をすることとなった。
――世界のほぼ中心にある、三日月状の島、マリンフォード。そこに海軍の本拠地、世界中の正義の戦力の最高峰――海軍本部がある。
その正面には、あまりにも巨大な門「正義の門」が存在しており、その門が開く時できるタライ海流によって、エニエス・ロビ―、インペルダウンと繋がっている。
門をくぐれば、正面に海軍と大きく書かれている、日本の城のような建物――本部基地と、港に数えきれないほどの軍艦が停泊しているのが見える。
その前には、海兵達の家族が住む大きな町があるが、その日本風の建築物でできた美しい町並みは、そのほとんどが半壊しており今は見る事ができない。
海賊王、ゴールド・ロジャーが処刑される一週間前、ロジャーのライバルといわれた海賊――金獅子のシキがマリンフォードに襲撃。
海軍本部元帥、仏のセンゴクと海軍の英雄、モンキー・D・ガープ中将によってシキは取り押さえられたが、その戦闘の余波で町が半壊してしまった。
との事をリオレッジ大佐が長々と説明してくれた。
私は初めて見た正義の門の大きさと、半壊はしているが、古い日本風の建物に興奮していたので、正直あんまり聞いてなかった。
大佐も苦笑いしている所を見ると、たぶん聞いてない事は気づいていたんだと思うけどね。
なんかこの人、私の事、手のかかる娘扱いしている節があるんだよな~。雑用の合間に頻繁に呼び出されては、やった事も無いチェスの相手をさせられた。
もちろん全然勝てなかったけどね、大佐が明らかに手を抜いた時を除いて。
勝った時はすごく嬉しくて気がつかないんだが、後で手を抜かれたと気がついてがっかりする事が何度もあった。
たぶんその様子も楽しんでたんだろうな~。
なんか最近、精神年齢が肉体に引っ張られてる気がする。……あれ? 肉体年齢の方が遥かに高いからこの場合は違うのかな?
他の海兵の人達も子供扱いしてたり、最初の自己紹介の時のミスのせいで「うにゅほ」とか呼んできてたし。
見た目は子供だから仕方ないけど、船の中では始終、娘や妹扱いだった。
ここ本当に軍隊か?
マリンフォードの港に船を停泊させると、私はリオレッジ大佐に連れられ本部基地に向かい、海兵になろうと決めて約一ヶ月、ようやく正式な海兵となった。
これからは、本部で三等兵(新兵)として毎日、過酷な訓練が始まる。
本来は雑用から始まるのだが、三千万近くの賞金首を倒せる戦力を遊ばせる余裕は今の海軍には無い。元々、慢性的な人手不足であり、更にロジャーの処刑以来、海賊が急激に増えた上、先日のシキの襲来でマリンフォードは半壊し、海軍の威厳も脅かされた。
使える戦力は直ぐにでも使いたいのが現状だ。
三千万近くの賞金首を倒せるのならば、もっと高い階級を与えられても可笑しくはないが、任官直後はどんな理由であろうとも三等兵より上は無理なそうだ。
しかし、これから行われる訓練の成果次第で、どこかの隊に配属する際に一気に階級が上がる事もあるとの事だ。
実際、能力が高い者は配属時、既に将校(少尉以上の階級)の地位にいる者は珍しくないらしい。
一部の場合を除いて戦闘能力=階級という、この世界の海軍、特有のシステム故、成り立つ事である。
ここまで連れてきてくださった、リオレッジ大佐達とはこれでお別れだ。
もしかしたら、大佐達の隊に配属される事もあるかもしれないが、そうでなければあまり合う機会も無いだろう。
「リオレッジ大佐」
「ふむ?」
娘扱いだったりしたが、お世話になった。それに本当に短い間だったが、なんだかんだいって私はこの人を気に入っていた。
だから精一杯の感謝をこめて、今度こそ笑われないよう海軍のキャップを深く被り
「これまでお世話になりました! そしてこれからも、よろしくお願いいたします!」
自分ができる限りに、奇麗に敬礼した。モデルは船にいた皆だ。
「ふむ。君がこれからの訓練の後、何所に配属されるかはわからんが、私達は同じく海軍(ここ)でお互いに信じる正義を行う。なれば場所が違えど共に戦う事に変わりは無い」
リオレッジ大佐は前と違った笑みを顔に浮かべ、次ぎ合う時を楽しみにしているよ。そう言って去って行った。
また、笑われてしまった。今度のは良い笑顔だったけどね。
というか、マスターといい、大佐といい。私の周りにいる中年の男性は異常にかっこいいな~。
あのかっこよさは見習いたかったな~。
男だった時に……。
メインの内容を次回にしてしまったため、今回はずいぶん内容の無い話になってしまいました。
感想で次回わかるかもといった内容は全て次話になります。
おもわぬ分割だったので今回のは閑話のようなものと思ってください。
ちょいリアルで問題が発生し、忙しくなってきてしまい、更新の速度が落ちそうです。
暇な時になるべく書いていこうとは思ってますが、年末年始はかけないかも。
この話、ようやくこれからなのに……。
不定期更新が本領発揮すると思いますのが、どうかご了承ください。
それはそうとお気に入り100件超えたのが地味に嬉しかったですw
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